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日本を代表するマルクス主義歴史家による平家物語論。「保元」や「平治」にはない平家のスケールをその戦乱の規模から論じたり、平家物語の増補過程を琵琶法師と貴族・民衆との関係性から論じたりする点は、石母田のマルクス主義的史観の面目躍如だろう。
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『平家物語』研究の基礎文献です。本来、歴史研究者である石母田正が書いた作品論です。これを読まずに「平家」は語れません。『平家物語』の物語の進行にそって、その内容を歴史社会学派の立場で論じていきます。
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平家物語研究の、代表的著作。
重盛や知盛など、平家の運命を見通す存在、また、清盛、義仲、義経が、中心的な人物となっていること、後白河法皇や源頼朝があまり深く関っていないことなどを指摘してくれます。
また、女性や王朝裏の駆け引きが上手く描かれていないことや、もとは叙事詩だったのではないかという指摘もあります。
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戦後の歴史学を領導してきたひとりである著者が、文学作品としての『平家物語』について考察をおこなっている本です。
著者は「あとがき」で、『平家物語』にえがかれている治承・寿永の乱の歴史について研究をおこなっているときに、「いつもこの物語のことが念頭にあってはなれない」と語っています。そして、すでに江戸時代から『平家物語』の記述が歴史上の事実そのままではないという指摘がおこなわれてきたことに触れつつ、「平家物語を独立の物語=文学として正しく理解する努力を自分でやってみてはじめて、歴史の研究者は平家のもつ力から解放され、平家物語を全体として歴史研究のなかに生かすことができよう」と述べています。
著者は、平氏の滅亡へといたる道筋をえがいた『平家物語』の運命観に注目しながらも、歴史のなかに生きる人間たちの種々相が「物語」のかたちであつかわれているところに、その文学的な生命を見ることができることを主張しています。また、貴族の信濃前司行長によって原作が生み出され、琵琶法師によって音曲に乗せられて語られることになったこの作品の「語り物」としての性格に注目し、『平家物語』がどのような歴史的条件のもとで生まれ、人びとに受け入れられていったのかということについて考察を展開しています。
著者は歴史学者ですが、それだけいっそう「文学」としての『平家物語』の輪郭を外から明瞭にえがき出すことに成功しているように思います。
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作者の登場人物の捉え方がおもしろくて、平家物語への理解が深まりました。特に、平知盛。前から登場人物の中で1番好きだったけど、どうして好きなのか、説明してもらえました。
西行や鴨長明といった同時代の遁世者と比較して、平家物語の作者の「人間」に対する興味と愛情を論じていますが、それは同時に石母田正氏のそれと通じるものがあるような気がしました。それこそが、1957年に出版されたこの本が読み次がれている理由なのでしょう。
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内容はともかく、語り口が面白く思わず笑ってしまったり唸ったり。例えば私たちは歴史上の人物や事件について、「これって当時でもあまり評価できないことしてるんじゃ…」と思っても「まあ昔のことだし、今の我々には理解できないこともあるかもね」と評価を留保することがほとんどだと思うけど、石母田正はきっぱり「いつの時代だろうと、堕落は堕落!」と言い切ってしまう。言い切るのが面白いし気持ちよい。それももしかしたら良くないのかも、と思わないでもないけど、文学論としてならアリかも。
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平家物語という文学を文学史の中で捉えなおした史学的文章であるような印象を受けた。
私が根本的な興味を抱いてるのは「平家物語に描かれた平家」ではなく歴史の史上の人物としての平家一門だけれども、「史」としての彼らだけでなく、平家が人々にどのように捉えられていたのか、平家の滅亡が人々の中でどのように消化されていったのかという「歴」の点に関連して、平家物語に対して新たな興味を抱くことができた。良書。
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[ 内容 ]
すぐれた古典文学のひとつである平家物語は何故に長くかつ深く日本人の心をとらえてきたのか。
その力は一体どこにあるのか。
歴史家でかつ古典文学を深く愛好する著者が、時代についての学問的造詣と清新な感覚によって、平家物語の文学としての本質を追究し、登場人物とその運命を生きいきと描く。
[ 目次 ]
第1章 運命について(新中納言知盛;生への執着 ほか)
第2章 平家物語の人々(平清盛の遺言;平家物語の保守的政治思想 ほか)
第3章 平家物語の形式(平家には性質のちがった物語が集成されていること;年代記的叙述の分析 ほか)
第4章 合戦記と物語(橋合戦;作中人物への共感 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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平家物語の入門書として本当に素晴らしい一冊。あまりいいことではないですが、これさえ読めば平家物語を読んだ気になれます。
近年の知盛に関する視点はすべて石母田さんのこの著作が元になっているそうです。彼の知盛論は非常に面白いのですが、一番面白いのはやはり平家物語の「運命論」
メインストリームの清盛、義仲、義経の流れよりも重盛ら著者の視点を得た登場人物に焦点を当て平家物語を読み解くのはとても面白い。
運命に抗わぬ運命論者と運命に抗う歴史上の主要人物達。
平家物語を読む場合はどんな形で読むにせよこの一冊をお供に読むことをおすすめします。
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文学としての平家物語の意義がよくわかり大変面白かった。年代記的なところも文学、主人公がいない、あくまでも平家の滅亡に焦点を当てているなど。とても読みやすかった。依然読んだ、太平記読みと比較しても面白い。
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思いの外、読みやすかった。
平家物語を知るには、なかなか良いのでは。
歴史書、文学の専門書…というよりは、平家物語に纏わる筆者の所見・思いが綴られているように思います。
だから読みやすいのよ。