【感想・ネタバレ】〔少女庭国〕のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「女子中学生といういきものの観察記録」

表題作はどこか感傷的で儚い小品。補遺からが世界観の本番だった。
残酷で不条理で、たくさんの死と生が積み重なっていく様子がドライな文体で綴られていく倒錯感。ちょっと他じゃ味わえない感覚ですね。
殺し合い、人肉食、奴隷制度……まーグロいしエグいし目を背けたくなるような場面が続くんだけど、文体がどこまでも客観的なので想像力を適度に下げながら読めて安心。安心かな?
観察日記みたいな距離感で進めといて最後のふたりのパートで急にエモくなる緩急の付け方もずるい。好き。

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2022年11月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

卒業式会場に向かっていた中三の羊歯子は、気づくと暗い部屋で目覚めた。部屋は四角く石造りだった。部屋には2枚ドアがあり、内一方には張り紙がしてあった。
"卒業生各位 下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし、死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする"


無限に囚われた少女たちの話。以前ハヤカワ文庫さんが行っていた、「ハヤカワ文庫の百合SFフェア」の対象作品のうちの1冊で、先に言っておくとなかなかの奇書、あるいは実験小説の類に近いかと思います。
ちなみに、ここは個人的見解によると思いますが、私はあまり百合味は感じませんでした。

卒業式に向かっていた少女、気が付くとそこは暗い石造りの部屋の中。部屋には2枚のドアと、そのうち一方に貼られた張り紙しかなく、張り紙には「卒業試験」と称する脱出の条件が。ドアを開けても開けても、一部屋につき一人の少女しかおらず、中三の女子は無限に増えていくばかり。
これは、そんな無間地獄に囚われた少女たちの記録です。
即座に隣室の少女を殺害しようとする少女がいれば、ひたすらドアを開け続ける少女、開拓を目指す少女もいる。
表題作は『〔少女庭国〕』ですが、『〔少女庭国補遺〕』がその3倍くらいある。基本的には、ずっと説明したような謎の空間に閉じ込められた少女たちがどう生きたかを追っているだけです。
ストーリー紹介だけをさらっと見るとデスゲーム系小説っぽいのですが、そういう感じではなく、数倍速でみる建国史のような、予想外に壮大な話。
そんな中でも中三女子はやっぱり中三女子で、リアルな口語に近いセリフ(「~~じゃんでも」や「まじだとやだねっつってたのだから」など)が簡単に脳内再生できてしまって、こんな荒唐無稽な話なのに感情移入しやすいのが不気味で何となく嫌な感じ。
それと同時に、知覚できない上位存在に弄ばれる卑小な存在である人類、のような概念を感じ取ってしまい、虚無的な気分になれます。

ちょっと変わった小説を読みたい方にお勧めです。

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2023年12月24日

Posted by ブクログ

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ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の数をmとする時、n-m=1とせよ。
卒業試験として課された命題だけを見ると、脱出ゲーム、デスゲーム、バトルロワイヤルなどが想像されますが、そういうものも含めた人類史のような一冊でした。
意外な広がりもありつつ、核心には触れない。映画CUBEを見たときの感覚に近い。
少女たちを閉鎖空間に閉じ込めて何やかんやという話が好きなんでしょ、ということかな。
五九[東南条桜薫子]のエピソードがこの本のすべてという気がしました。

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2023年12月19日

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〈ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする〉という卒業試験に放り込まれた中3女子たちのお話。
〔少女庭国〕よりも〔少女庭国補遺〕からが本番でした。
大叙事詩…勃興と滅亡を繰り返す中3女子たち。
世界には部屋と扉と中3女子しかなくて、生きていくとしたらそれらでどうにかやっていくしかない。食べ物飲み物、生活の道具…部屋と扉と中3女子しかないので“それらでやっていくしかない”。
レポートのように書かれる子もいれば、しっかりストーリー仕立てで描かれる子もいました。
SF、デスゲーム系、百合、架空の歴史書…どれにも当て嵌まるし、でも初めて読む質のお話。終わらない小説でした。
過去方向へ進んでいった子たちが、一面に花々が咲き乱れる部屋に辿り着くのが良かったです。(何から生えてんだ…)と思ったので、その感慨もちょっとで終わりました。

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2023年07月30日

Posted by ブクログ

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 悪趣味と言える状況下に放り込まれた少女達が殺し合いをさせられる。端的に言い表せば、それだけの作品であるけれど、〝少女〟という年代の多様さが書き表されている様にも感じました。
 怖いもの知らずで無鉄砲な行動に出る子、終わりの見えない現状に閉塞感を感じる子、誰かの為に頑張れる子、仕切りたがりでリーダー気質の子。特殊な環境下ながら、少女らしさを発揮して現状を何とかしようと悩んで行動している少女達。皆、一様に同じ行動を取るわけではなく、似ていながらも違う行動を取り、違う結末を迎えている。その多様さが少女の持つ個性を魅せられている気がしました。

 少女庭国補遺では、単調に自殺し殺し殺されてゆき、時折開拓や入植がされ、話し合い殺し合いと繰り返しの様に似た展開が続きます。その殆どが悲劇的な結末を迎えるのですが、その希望の無い中に見えるからこそ、百合と言える展開が映えている気がします。
 そして、そんな悲劇的な物語が続いたからこそ、最後の石田好子と本田加奈子の2人が一際平和に見え、2人きりの空間にずっと浸っていたくなる様に思えました。

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2022年05月04日

Posted by ブクログ

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これは、百合なのか…SFなのか…?と考えてしまうがたしかに百合だしSFなんだなぁ、という感想に困る不思議。 卒業式に向かう中3女子生徒は気がつくと白い四角い部屋にいて2つのドアがあった。少女庭国は結構コミカルに進むが、補遺はひたすらに同じ境遇の女子生徒の物語を羅列している。カニバリズムとか、他に食べ物がないから仕方ないけどあっさりやっててビビる。まぁ無限に起きる女子生徒のうちの1つだしね。過去方向の扉を壊した時は革命かと思ったが、先も後も同じなんだよね。老いたロジ子とか、戻った生徒は無事なのだろうか。

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2022年01月16日

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