【感想・ネタバレ】〔少女庭国〕のレビュー

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ネタバレ

「女子中学生といういきものの観察記録」

表題作はどこか感傷的で儚い小品。補遺からが世界観の本番だった。
残酷で不条理で、たくさんの死と生が積み重なっていく様子がドライな文体で綴られていく倒錯感。ちょっと他じゃ味わえない感覚ですね。
殺し合い、人肉食、奴隷制度……まーグロいしエグいし目を背けたくなるような場面が続くんだけど、文体がどこまでも客観的なので想像力を適度に下げながら読めて安心。安心かな?
観察日記みたいな距離感で進めといて最後のふたりのパートで急にエモくなる緩急の付け方もずるい。好き。

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2022年11月08日

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卒業式会場へ続く通路を歩いていた少女は、ふと暗い石造りの部屋で目覚める。この部屋には二つの扉があり、片方にしかドアノブがない。ドアには以下のような文面の張り紙がある。「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ」。扉を開けると次の部屋にも少女がおり、張り紙があり、また次の部屋にも少女がいる。

このシンプルな条件から、どんな物語を想像するだろう。この物語は、おそらくその想像の通りには全くならない。

異常な世界に突如放り込まれた少女たちの思考と行動はリアル。羅列された「生命行動」はデスゲーム系への否定的命題を投げかけるし、それは「物語」というもの自体に対してまで波及する。

クローズサークル化での卒業試験は、世界のルールであり、この物語の上ではそれ以上の何も表していない。だからこそラストの展開はどこか理不尽な世界への一つの答のような気がしてくる。
この理不尽で広大な密室は、我々が住む世界と本質的にどれほど違うのだろうか。そんなことを想う。

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2019年06月23日

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読み始めてすぐに「魔女の子供はやってこない」の人か!と気づき座り直して読みました。
果たしてAIにこれが書けるかな。この人がいる限り創作は死なないなって思う。
三大奇書に並ぶのではないか、と褒め倒しそうになる一方で、子供には絶対読ませたくない胸糞本なので、星の数が難しいです。
後、著者がこの人だってわかってたらきっと読んでない。鬱になりそう。

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2024年04月30日

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脱出できるのは一人だけ。
デスゲームであり、シチュエーションノベルであり、文明勃興記であり、青春小説であり、実験小説であり…百合でもあるのか。
無限に増殖する少女。殺すか殺されるか死ぬか生きるか。不条理を超えた先にある感慨。ともかくとんでもない作品。

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2024年01月14日

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ネタバレ

卒業式会場に向かっていた中三の羊歯子は、気づくと暗い部屋で目覚めた。部屋は四角く石造りだった。部屋には2枚ドアがあり、内一方には張り紙がしてあった。
"卒業生各位 下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし、死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする"


無限に囚われた少女たちの話。以前ハヤカワ文庫さんが行っていた、「ハヤカワ文庫の百合SFフェア」の対象作品のうちの1冊で、先に言っておくとなかなかの奇書、あるいは実験小説の類に近いかと思います。
ちなみに、ここは個人的見解によると思いますが、私はあまり百合味は感じませんでした。

卒業式に向かっていた少女、気が付くとそこは暗い石造りの部屋の中。部屋には2枚のドアと、そのうち一方に貼られた張り紙しかなく、張り紙には「卒業試験」と称する脱出の条件が。ドアを開けても開けても、一部屋につき一人の少女しかおらず、中三の女子は無限に増えていくばかり。
これは、そんな無間地獄に囚われた少女たちの記録です。
即座に隣室の少女を殺害しようとする少女がいれば、ひたすらドアを開け続ける少女、開拓を目指す少女もいる。
表題作は『〔少女庭国〕』ですが、『〔少女庭国補遺〕』がその3倍くらいある。基本的には、ずっと説明したような謎の空間に閉じ込められた少女たちがどう生きたかを追っているだけです。
ストーリー紹介だけをさらっと見るとデスゲーム系小説っぽいのですが、そういう感じではなく、数倍速でみる建国史のような、予想外に壮大な話。
そんな中でも中三女子はやっぱり中三女子で、リアルな口語に近いセリフ(「~~じゃんでも」や「まじだとやだねっつってたのだから」など)が簡単に脳内再生できてしまって、こんな荒唐無稽な話なのに感情移入しやすいのが不気味で何となく嫌な感じ。
それと同時に、知覚できない上位存在に弄ばれる卑小な存在である人類、のような概念を感じ取ってしまい、虚無的な気分になれます。

ちょっと変わった小説を読みたい方にお勧めです。

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2023年12月24日

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ネタバレ

ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の数をmとする時、n-m=1とせよ。
卒業試験として課された命題だけを見ると、脱出ゲーム、デスゲーム、バトルロワイヤルなどが想像されますが、そういうものも含めた人類史のような一冊でした。
意外な広がりもありつつ、核心には触れない。映画CUBEを見たときの感覚に近い。
少女たちを閉鎖空間に閉じ込めて何やかんやという話が好きなんでしょ、ということかな。
五九[東南条桜薫子]のエピソードがこの本のすべてという気がしました。

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2023年12月19日

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脱出ゲーム的な話かと思いきや、なんだか世界が発展する縮図を見たかのように感じ、小説を読んではいるのだが、何か他のことが頭の片隅にずっとへばりつくような小説。

他のどんな小説とも似ない、ある種奇妙で独立しているなぁと感じる。

人が増えれば増えるほど厄介だけど、快適な生活はできるのだと実感。支え合いは必要だけど、もはや依存関係になっているんだよなぁ、と。

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2023年08月14日

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ネタバレ

〈ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ。時間は無制限とする〉という卒業試験に放り込まれた中3女子たちのお話。
〔少女庭国〕よりも〔少女庭国補遺〕からが本番でした。
大叙事詩…勃興と滅亡を繰り返す中3女子たち。
世界には部屋と扉と中3女子しかなくて、生きていくとしたらそれらでどうにかやっていくしかない。食べ物飲み物、生活の道具…部屋と扉と中3女子しかないので“それらでやっていくしかない”。
レポートのように書かれる子もいれば、しっかりストーリー仕立てで描かれる子もいました。
SF、デスゲーム系、百合、架空の歴史書…どれにも当て嵌まるし、でも初めて読む質のお話。終わらない小説でした。
過去方向へ進んでいった子たちが、一面に花々が咲き乱れる部屋に辿り着くのが良かったです。(何から生えてんだ…)と思ったので、その感慨もちょっとで終わりました。

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2023年07月30日

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 文句なしに面白い矢部嵩。才能が羨ましい。どうしてこんな奇妙な設定を思いつくのか、普段何を考えてる人なのか頭の中見てみたい。

 この本SFで紹介されてるのか……。SF?か、ある空間に閉じ込められた女子中学生の奇妙(凄絶!)な話。

 この本を読む前に「サピエンス全史」読んでたけど、ちょうどアレと同じ読後感に包まれるよ、何故か(笑)おすすめ!

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2023年04月26日

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ネタバレ

 悪趣味と言える状況下に放り込まれた少女達が殺し合いをさせられる。端的に言い表せば、それだけの作品であるけれど、〝少女〟という年代の多様さが書き表されている様にも感じました。
 怖いもの知らずで無鉄砲な行動に出る子、終わりの見えない現状に閉塞感を感じる子、誰かの為に頑張れる子、仕切りたがりでリーダー気質の子。特殊な環境下ながら、少女らしさを発揮して現状を何とかしようと悩んで行動している少女達。皆、一様に同じ行動を取るわけではなく、似ていながらも違う行動を取り、違う結末を迎えている。その多様さが少女の持つ個性を魅せられている気がしました。

 少女庭国補遺では、単調に自殺し殺し殺されてゆき、時折開拓や入植がされ、話し合い殺し合いと繰り返しの様に似た展開が続きます。その殆どが悲劇的な結末を迎えるのですが、その希望の無い中に見えるからこそ、百合と言える展開が映えている気がします。
 そして、そんな悲劇的な物語が続いたからこそ、最後の石田好子と本田加奈子の2人が一際平和に見え、2人きりの空間にずっと浸っていたくなる様に思えました。

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2022年05月04日

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登場人物の名前と話し方が独特で、ずっと不思議な気持ちで読んでた
こういうシチュエーションに存在する全ての因子を掛け合せて有り得る全パターンを洗い出し、各パターンを骨子として物語の肉付けをした、というふうに見えた

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2022年05月04日

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ネタバレ

これは、百合なのか…SFなのか…?と考えてしまうがたしかに百合だしSFなんだなぁ、という感想に困る不思議。 卒業式に向かう中3女子生徒は気がつくと白い四角い部屋にいて2つのドアがあった。少女庭国は結構コミカルに進むが、補遺はひたすらに同じ境遇の女子生徒の物語を羅列している。カニバリズムとか、他に食べ物がないから仕方ないけどあっさりやっててビビる。まぁ無限に起きる女子生徒のうちの1つだしね。過去方向の扉を壊した時は革命かと思ったが、先も後も同じなんだよね。老いたロジ子とか、戻った生徒は無事なのだろうか。

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2022年01月16日

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 ハヤカワ文庫の百合SFフェアに伴い、早川書房の単行本から文庫化された作品。
 とある女学院の卒業生である少女は、卒業式が行われる講堂へ向かう途中、気付くとうす暗い部屋に寝かされていた。その部屋にはドアが二つあるばかりで、一方のドアにはドアノブがなく、もう一方のドアには張り紙がされていた。張り紙には「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ」と書かれている。つまり卒業生の寝ている部屋が次々と続いており、ドアを開放することで、2人の少女が目覚めたならば1人が、5人の少女が目覚めたならば4人が死ななければその空間から脱出できないというのである。

 100頁に満たない短編「少女庭国」はそのような状況で目覚めた13人の少女が、互いに殺し会うのか、それとも別の選択をするのかといった物語である。この物語の結末は気持ちのよいものとは言えないかもしれないが、心に響く良い結末だったと私は感じた。

 しかし圧巻なのはこのあとに続く「少女庭国補遺」である。例えば先ほどの状況で12人が死に1人が生き残った場合、13人目の次の部屋で眠っていた14人目の少女が、また1人目として目覚める。そのように無限に空間が続いていくのだ。
 そしてこのような状況設定の中で、どのようなことが起こりうるのか網羅的に語られるのが「少女庭国補遺」なのだ。少数人数で話し合うか殺しあうかして、1人を選ぶのが基本的なパターンだが、時として国が成立することもある。当然構成員のすべてが少女となるため、帯に書かれているとおり「百合SF建国史」が描かれることになる。

 限定的な状況のなかでどこまで可能性は広がるのか、想像力の極地を体験してほしい。しかし、食糧もない空間での生き残りとなるため、必然的にグロテスクな描写がかなりの頻度で登場する。苦手な方は注意されたし。

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2019年07月10日

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 卒業式へ向かう途中、目が覚めると暗い部屋に貼り紙がありました。
“ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ”
ドアを開けるたびに卒業生が一人倒れています。無限に続くドアと無限に増え続ける少女達。残虐か繁栄か、少女たちの永遠なる建国史。

SFです。しかもかなり特殊かつ斬新な物語。なぜ卒業試験を行うかは分かりません。数式を満たした先は分かりません。どのような仕組みで部屋が続いているかも分かりません。調べることに意味は無いのです、生きるためにはドアを開けて卒業生という名の物資を手にしなければならないのですから。これは理不尽かつ残虐なるルールな中で少女たちが一から作り出す組織、街、国への進化とその過程。

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2023年03月02日

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読む価値がある。印象に残る本で、よく出来ている。奇書の類で私好みではないが、それでも。ミステリーの舞台設定と、試行の繰り返しのなかでの世界観の拡がりかた、しかし最後の作品の閉じ方が異様に印象に残る。たしかに、少女「庭」国である。

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2023年02月26日

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何かの記録文書を読んでいるかのような気分になった。
様々な考察ができるのかもしれないが、自分はこの本の独特な雰囲気が楽しめたのでそれでいいかな、と思う。

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2020年06月06日

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女の子が閉鎖空間に閉じ込められるサバイバルゲームものかと思いきや、そう単純には行かず、思いもよらない方向へと進んでいく。
設定があまりに異質なのと、キャラクターの名前の適当さのためか、悪趣味な仮想空間を観察させられているような気分になる。

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2020年03月19日

Posted by ブクログ

 色々な意味で問題作だよなぁ、と思う。少女庭国にしろ、補遺にしろ。表題作は短くて、むしろ補遺が本番って感じ。
 生活の描写が出てきた後に、それについて詳しい解説がなされるのは、報告書を読んでいるような気分で不思議な感じがする。それがなぜか、っていうのは、読み進めていくと、ああ意図的だったんだな…って分かった。
 壮大なエピソード集(短編集とは違う。叙事詩が近いかな…?)って感じなんだけど、百合として読むのにもSFとして読むのにも、どちらにも明確な結論みたいなものが用意されてなくて、ちょっと消化不良な感じが残る。風呂敷広げるだけ広げて、放ったらかして次を広げるみたいな。ただ、オチは余韻があって…というか、この一連の物語に唯一意味が生まれたと言えるような関係性が育まれていて、良かった。むしろもう最後のエピソードだけでいいと思う。
 SFというジャンルは、ストーリーの面白さのみならず、舞台設定でどれだけ魅せるかという点も重要なジャンルだと思っている。その点、本作の作り上げた世界は斬新であると思う一方、今一歩自分はそれを面白く見ることはできなかった。
 また、ありがちなバトルロイヤルものに対する、豊富なバリエーションの思考実験を試みた小説でもあるのかな、という風に読める部分もあって、そこは面白かった。

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2019年10月27日

購入済み

うーん……

百合SFって聞いて読んでみたけど、自分には合わなかった。確かにSF。でも、百合なのかな?これ。好みがめっちゃ分かれます。

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2022年01月19日

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