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Posted by ブクログ
『 勝手に「ラジオ」特集 #5 』
ー加藤千恵さん『ラジオラジオラジオ!』ー
加藤千恵さん、初読でした。本書のタイトルは、地方都市の女子高生・華菜が、友人・智香と共にパーソナリティを務めるラジオ番組のタイトルです。
東京やTV業界へ憧れを抱く華菜、対照的で堅実派の智香を中心に、主人公・華菜の視点で描かれていきます。読み進むほどに、華菜の独りよがりな一面が表出してきます。
2人の間柄だけでなく、周囲との関係も次第に微妙にすれ違うようになり、その過程が繊細にかつ丁寧に描かれています。
大人の普通感覚からしたら、華菜の考え方や言動は突っ込みどころ満載で、教え諭したくなります。それでも、悪気がなく、若さゆえ(?)の華菜の自意識過剰さや身勝手さに共感したり、感情移入したりする人も多いのでは? と思わされる、瑞々しくも爽やかな青春小説だと感じました。
140ページ程度の中編表題作の他に、短編「青と赤の物語」も収められています。
物語のない(禁止された)世界に生きる若い男女2人が、小説という物語に救われる様子を〝物語風に〟描いています。「なぜ本を読むのか?」という問いへの、著者のひとつの答えでしょう。小品ながら、秀作でした。