【感想・ネタバレ】モスクワの伯爵のレビュー

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Posted by ブクログ

人生を投げないって実はすごく難しくて、かっこよくて、魅力的!正しく、賢く、健やかに!健気に!生きたいな!

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2023年11月02日

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めっちゃ好き……
大変な境遇だけどずっと陰鬱とした雰囲気じゃないので読んでて元気が出るし、出てくる人が親切で良かった……
ソフィアが好きです。

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2022年08月29日

Posted by ブクログ

「優雅な生活が最高の復讐である」という言葉を地でいったような、ホテルという箱庭の中のめくるめく日々。限られた環境の中でも知性と明るさで朗らかに乗り切る伯爵の姿にこれこそが教養だ、という感じがした。

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2022年05月05日

Posted by ブクログ

革命政府に無期限の軟禁刑を下され、高級ホテル「メトロポール」の屋根裏で、一生暮らさねばならなくなった、「アレクサンドル・ロストフ」伯爵。

しかし、心技体ともに貴族としての誇り高き精神を持ち続ける彼の人生は、表向きは以前と変わらぬような、落ち着いた華やかさを見せているように感じるが、振り返ってみると、山あり谷ありの波乱万丈なものであり、大切な人との別れや、自分の人生を投げ出してしまいそうな時もあったが、気付いたら、やはり彼自身の人間性により、変わらぬ優雅さを纏って人生を歩む姿に、彼の、安易に譲ることのできない生き様を感じられたような気がしました。

そして、その人生は、たとえ私が体験できないようなものだとしても、何か共感めいたものも感じることができたのが、また印象的であって、女子供にあたふたする姿や、度胸をきめた一発勝負的な場面等には、貴族も感情を持った人間なんだなと(当たり前だが)、思いました。

また、彼の人生以外でも読み所は多く、彼の口から話される豊富な知識─歴史や文学、食事やワイン、音楽に映画、哲学、果てには人生観までも─を味わえる楽しさも心地良く、私的には、映画「カサブランカ」の細かいシーンから考察される、世界を変えるための密かで確かな一歩に、とても納得させられるものがありました。

更に、訳者あとがきにあるように、数字への尋常ならざる拘りから、人間の感じる時間の流れ(長短)を、小説内で再現していたり、序盤のエピソードが、後半の別のエピソードに反映されていたりと、ストーリーテリングも面白く、ロシア革命時代の知識が無くても、充分楽しめると思います。

なぜなら、作者の「エイモア・トールズ」が描く人間の姿に、時を超えた普遍的なものを感じたからであり、以下のような見方をしてくれる方の小説が、楽しくないわけがないからです。

『人間はまことに気まぐれかつ複雑で、愉快な矛盾のかたまりであり、正しく見極めるには、熟慮どころか、再熟慮すべきなのだ─そしてできるかぎりあらゆる時間に、できるかぎりあらゆる状況で親しく付き合うまでは、軽々に判断しないというゆるぎのない決意が必要なのだ』

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2022年02月26日

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面白かった。
軟禁生活の中でもハリを失わない伯爵の生活と、人柄。
閉ざされた世界の中でも出会いと別れがあり、
だからこその終わり方だと思った。
自分が年齢を重ねた時、またもう一度読みたい。
作中で娘に語り継がれた二つの言葉は私も大切にしたいと思った。

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2022年01月20日

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ロシア革命後、革命政府にモスクワメトロポール・ホテルの屋根裏部屋での無期限の軟禁刑を下されたロストフ伯爵。元貴族だからという理由である。誇り高く、裏表のない人物であるロストフ伯爵のユーモアと思いやりに溢れた日々が綴られている。
印象的な教えは、
・自分の境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷になるということ。
・モンテーニュの金言ー叡智のもっとも確かなしるしは、常に朗らかであること。
久しぶりに本の主人公のような人になりたいと思わされる一冊だった。ぜひ映像化されてほしい。

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2021年10月11日

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ホテルに一生軟禁。ロシア革命後の貴族の話なんて
さぞかし陰鬱な話なんだろうなぁ。と思いきや
180度違い、紳士で魅力的な伯爵は、決して投げやりにならず、友情や愛を育んでいきます。
始まりから最後の1行まで面白くて魅了されました。

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2021年09月14日

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ロシア革命の混乱期、爵位を持つ多くの白系ロシア人が国外へ逃亡し、異国にあって極貧の生活を余儀なくされたことはよく知られている。

この物語の主人公であるロストフ伯爵も、革命政府のもと裁判を受け、銃殺刑こそ免れたものの、それまで暮らしていたホテルからの禁足を命じられる。もし、一歩でもホテルから出ようものなら銃殺だと脅されて。本書は32歳から始まった伯爵の軟禁生活を、最終章の64歳まで描き切る。このように書くと、いかにも悲しみと苦しみに満ちた物語を想像するかもしれないが、そんなことは全くない。実に愛すべき、ユーモアと出会いに満ちた物語である。

それは、ひとえに主人公のロストフ伯爵がとても魅力的であるからだろう。真面目で誠実であり、貴族であることを少しも鼻にかけない。高い教養と洗練された趣味を持つ本物の紳士なのだ。苦難にあって、彼はあきらめたり、悲嘆に暮れたりすることはない。それこそヤナギのように、折れることなく、しなやかに、その環境に自ら歩みよるのである。

何の予備知識もなく読み始めたため、史実に基づいているのかと思ったが、完全なフィクションのようだ。だが伯爵が軟禁生活を送ったメトロポールは、今も実在する高級ホテルである。HPを見ると豪奢な造りと有名な朝食を確認することができる。

通勤電車であたふたと読むよりは、紅茶にジャムでも落としながら読みたい本。軟禁生活とパンデミックの隔離生活を掛けたのか、ビル・ゲイツがコロナを乗り切るための一冊として挙げたことでも知られる本書。いや、そんなこと関係ないでしょう。ただ純粋に、読書を楽しめばいいと思う。

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2021年01月20日

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614頁!厚い!長い!読んでも読んでも終わらない。何度も挫折しそうになった。でも帯の『時代が変わっても残したいものがあった。革命後、ホテルに軟禁された伯爵。閉ざされた世界で彼は人生を再発見する』に支えられ、読後は感動が待ってるに違いないという思いで読み進んだ。主人公の伯爵はもちろんのこと、他の登場人物たちも人間味がありユニークで温かい。一生ホテルに軟禁という自分の運命を受け入れ前向きで知識が豊富な教養人、真の紳士とはこういうものか…と、思わせてくれる伯爵。とくに伯爵がソフィアに言った二つの助言は、自分も心に刻みたい。

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2021年01月11日

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2019年の緊急事態宣言時に購入
閉ざされて世界で生きることになった男の話を、あえて、むしろ救いを求めて読む。でも「感動するぞ!」と意気込まないとやってられない様な状態に世界が一変した為、感覚のバランス(この本を買った理由と価格に引っ張られ過大評価しないか)が保てなくなり、また非常に仕事が忙しくなったため中断
2020年、再挑戦

1922年、モスクワ。
革命政府に無期限の軟禁刑を下されたロストフ伯爵。
高級ホテルのスイートに住んでいたが、これからはその屋根裏で暮らさねばならない。
ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っている。

ホテルでの軟禁生活が始まったばかりの頃に出てくる
「自分の境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷となる」この言葉が、物語全体のテーマ

ホテルのレストランで出会った
少女ニーナ(父親の都合でホテルに篭りきりホテル内のありとあらゆる場所を熟知)

伯爵の旧友ミーシカ(伯爵を訪ねてくるクセのある文学者の親友)

ホテル内のレストラン料理長のエミール(美食を追求する、ちょっと短気)

マネージャーのアンドレイ(魔法の様な仕事ぶり)

裁縫師のマリーナ(伯爵がやたらと迷惑をかける)

ホテルを訪れた女優のニーナ(女優としての再起をかけ奮闘中)

…様々な人と出会い。交流を深めていく、どの人も印象的で伯爵は生活の中に変化と希望を見出す。

章が進むにつれ
過去の出来事や、出会いが意外な形で問題を起こしたり、または思わぬ解決を招いたり。
ロシアで起きた変化に沿って、翻弄される人も出てくる。

全てが一律に良いことに向かうわけではなく、現実と同じく悪いことも起こる。
数週間、数年単位で進む日々が記されているが、一日一日を懸命かつ優雅さを忘れずに生きている。
これは、駆け足で読むのはおすすめしない。
じっくりと読むべき。
(読み直して正解だった)

そして、コロナの問題がよぎる。
私達も家を出ることが出来ない。
出たとしても最低限の買い物や用事を済ませて帰る生活の中で、家の中での楽しみ方を模索する人達をニュースで見かける。
私はそれを「頑張るなぁ」くらいに冷ややかに見ていた。だけど楽しむ工夫を凝らしたり、何でもない日々の中で起きたことをSNSに投稿したり、誰にも公開せず日記をつけたりすることは、それも「日々を見つめ直す行為」なのではないかと、この本を読んで気付かされる。
無理をする必要はないはず、でも「受け入れる」よりも良い答えを探そうと動く方が良い気がしてくる。

久しぶりに「生きてるうちに必ずまた読もう」と思う物語だった。

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2021年01月11日

購入済み

ブラボー

ブラボー!!!

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2020年02月12日

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なんと言おう。今年最高の読書体験。ベスト1。
軽くネタバレですが、ロシア版ゴージャス『ショーシャンクの空に』。何度笑い泣きしたことか。金箔を効果的に使った装丁も大好き。
ロシア革命により生涯を豪華ホテルの屋根裏部屋に軟禁されることになった伯爵が、死を考えながら幾度も生きる意味を見つけ、人と絆を結んでいく。
もともとホテルが舞台の話は好物なので、舞台となっているモスクワ・メトロポールという実在する超一流の宿の、細かく書き込まれた舞台裏も、プロに徹するスタッフの仕事ぶりと人柄も、すべてが極上の味として刻まれました。
抜き書きしておきたいセリフ、場面、考察がたかさんあるけど、「自らの境遇の奴隷となってはならない」が今の自分にはいちばん響いたな。歳だから、忙しいから、柄じゃないからとあきらめたり、夢見ることすらしなくなったことが、どれだけ私の人生を貧しくしてきたか。
ってわけで、ランチ時間に皇居の散歩にでかけてみたりね。
そんなふうに行動を変えてくれる本ってそうそう出会えない。
ずっと読んでいたかった。味わっていたかった。
ありがとう!!

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2019年10月24日

Posted by ブクログ

32年間のホテルでの軟禁生活。ホテルでの出会いや事件を通して強くなる人々との強い信頼関係。それは揺るぎ無い伯爵の人間性なのだろう。読後感がとても良かった。

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2019年09月22日

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名作。
ホテルに軟禁された32年間が、ゆっくりと進むところと
あっという間に過ぎ去るバランスが絶妙。
登場人物もとても魅力的。

再読したい。

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2019年08月18日

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長い。しかし面白い。
本文600頁を超えるのに、特漉き用紙を使っているのか、少し部厚いくらいの製本になっている。
歴史ある高級ホテルの室内装飾を思わせるカバーの色使いも、この本にふさわしい上品さを感じさせてくれる。
いまなおNYTのベストセラー・リストに名を連ねているのも納得できるもので、これをしっかりした造本で翻訳出版してくれた早川書房に感謝。
翻訳も読みやすい。
しかし、この小説の著書はてっきりイギリス人と思って読んでいたらアメリカ人で、しかも投資家だったと記されていてびっくりした。

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2019年08月08日

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装丁のブルーグリーンに惹かれて手に取り、見返しを読んで購入。まだまだ始めなのが嬉しい。久しぶりに好きな本見つけた。どんな風に進むのか不安もあるけど、とにかく今は出会えて嬉しい。


読み終えて、、、
初めは、気持ちの穏やかさや品格の良さの持つゆったりとした印象が心地よいと思った。甘かった。最後の方は心配でしばらく読めず。意を決して読み始めたら気になりすぎて落ち着いて読めず。

哲学書のような捉え方もできる。歴史書でもある。そしてもちろん物語でもある。

午後もう一回読もう。

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2019年07月27日

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1922年ロシア革命後に軟禁刑になったロストフ伯爵。ロシアの高級ホテルの屋根裏部屋で過ごすことになりホテルから一歩でも外に出れば銃殺刑に。ホテル内の閉ざされたなかでも伯爵は背筋を伸ばし紳士として周りを思いやりながら生活する。ホテルスタッフたちとの交流、友情、少女との出会い。そこからの鮮やかな日々。軟禁という生活のなかでも心持ちでかわる日常の色。ユーモアを忘れず人との時間を大切にし自分にできること、やらなければいけないことを見つけそれをまた人に返していく。狭い世界に閉じ込められても出会った人、見つけたもの、その全てが愛おしく思えるようなとても素敵な物語。

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2019年07月05日

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1922年、革命後のロシア(ソ連)。新政府によって王族や貴族が次々処刑されるなか、パリから祖国に戻り、そのまま残ることを決めたアレクサンドル・ロストフ伯爵。過去に発表した一篇の詩のおかげで死を免れた伯爵だが、それからはモスクワの中心地にある高級ホテルから一歩もでられない軟禁生活を送ることに。滞在していたスイートから狭い屋根裏へ移され、客から従業員へいつしか立場を変えながら、ホテルが全世界であるかのように味わい尽くそうとした男の半生記。


トム・ハンクス主演のスピルバーグ映画みたいな小説。装幀から漂うウェルメイド感は読者を裏切らず、古き良き時代の上品な世界に連れていってくれる。
ロストフはソ連にとって文字通り「古い時代の人間」になってしまったのだが、各国の要人も訪れる高級ホテルであるメトロポールにはまだまだ彼と同じ時代の流儀と矜持を持った人びとが残り、働き続けている。最初あくまでメトロポールの客だったロストフは、時代を経てレストランの給仕長を担うことになる。確かにそれは時代が変わろうと、「どんな喧騒のなかでも、倒れたカクテルグラスを元に戻す」という優雅な秩序回復のしぐさが求められる役職なのだ。
ロストフが客であることをやめ、ホテルで働くようになる転換点が「さらば」の章なのだが、ここで自死を選ぼうとしたロストフと、そうとは知らず話しかけてきた養蜂家アブラムとの屋上での対話が作中で一番好きだ。二人が共に懐かしく思いだすニジニ・ノヴゴロドでの平和な日々は、二人の階級差が最も開いていた時代の記憶でもある。伯爵と養蜂家は膝を付き合わせて蜂蜜を賞味し、ロストフは自殺を取りやめる。
社会主義からは取り残されたが、ホテルには居場所を作ることができたロストフと対立するのが、メトロポールに併設されている庶民派ビストロの給仕から党員のコネで出世していくビショップだ。順調に出世していくところからして彼は外の世界で上手に立ち回っているんだろうけど、ホテルには必要とされていない、だからロストフを逆恨みするという悲しいキャラクターである。
ビショップはあとで読者をスカッとさせるためにヘイトを溜めていることがわかりすぎてしまい、彼の扱いは最後まで愛がなくて悲しかった。オシプすら愛嬌たっぷりに描かれているというのに。ロストフが逆恨みを買いやすいというのは妹の死をめぐるエピソードでも念押しされていて、それは彼の身についた優雅さの強調でもあるのだろうけど、私は庶民なのでちょいちょい鼻に付いてしまう。チャールズとの「このホテルは僕たちみたいな人間のために作られてるんですよ」なんて会話を、元投資家のアメリカ人が書いてると思うとイラッとする(笑)。でもこれは『バベットの晩餐会』にも通じる、貴族文化に対する憧憬と反発という大衆の二律背反そのものなんだろう。
この小説の一番の魅力は文体だと思う。「チャーミングな文体」と評されて、作者は「伯爵が引きだしたもの」と答えたらしいが、終始ユーモラスな地の文のテンションに引っ張られて最後まで楽しく読めた。古き良き完全な神視点の三人称だけど、これは全てを見ていたメトロポールの声だったのだろうか。日本語でも「チャーミング」という言葉がぴったりな訳文に仕上げてくれた宇佐川さんに感謝!

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2022年10月29日

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ロシア文学や、彼の国を舞台にした話に関しては物々しくて殺伐とした印象があった。(イラストもさることながらライトグリーン・ゴールド・モノトーンのコンビネーションが完璧な表紙とそれにマッチした上品な花切れに一目惚れしたのが動機…)

それに対して本書はお貴族様が主人公なので、彼の人柄や彼を取り巻く世界が実に紳士的でエレガント!長ったらしい小話や馴染みのない彼らの近代史、凝ったモノの例え・言い回しのせいで何度も立ち止まらなきゃいけなかったけど、少なくとも読んでいてイラつくことはなかった。

のらりくらりと(絶対に真似できないような)受け応えをし、時には自分から首を突っ込んだりして難題をかわしていくさまは「お見事!」と拍手を送りたくなる。(バーでドイツ人からの「挑戦」に受けて立つ場面は痛快)

「人間は生きることに真剣であるべきだが、時間に真剣すぎてはならない」
「自分の境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷となる」

一族の金言がなかったら伯爵もあそこまで楽しんで、ときには果敢に乗り切ることもできなかったはず。
それにしても…こちらが時間にとらわれている一方で当の伯爵本人は相手にもしていないのがやっぱり不思議。歳を重ねて経験を積めばそんな境地にもなるのかなと彼のロングステイを振り返っている。

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2021年10月21日

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ロシア革命によりモスクワの高級ホテルに軟禁されることになったロストフ伯爵。スイートルームから屋根裏部屋へ移され、ホテルから一歩も出ることができなくなる。だが、伯爵はそれまで通りホテルでの生活を紳士として続ける。ホテルの従業員たちと親しくし、貴族としての身のこなし方や知識からレストランで重宝され、泊まり客の女優の危機を救ったことからベッドを共にすることになり…。
軟禁されているとはいえ、ユーモアとセンスと知識で伯爵らしい生活を続けているのだが、あることから女の子の養育を任される。伯爵の生活に、女の子の父親としての生活が加わる。

あり得ない設定なのに、伯爵のセンスにどんどんひかれていく。思わずクスリとしたり、ニヤリとしたり。ハッピーエンドを目指して、ハラハラが止まりません。

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2020年08月29日

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ロシア革命の後、ホテルに軟禁されてしまった伯爵の半生。
時代に流されながらも、「自らの境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷となる。」をモットーに、紳士的で洗練された日々を過ごす。
そこには出会いも別れもあり、幻想的なラストを迎える。

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2020年08月23日

Posted by ブクログ

久々に読み応えのある小説を読みました、面白かったです。
設定に合わせて、旅館に閉じこもって読みました。今年の夏休みの思い出。

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2020年08月10日

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ネタバレ

ロシアと言うと、本だとトムロブスミスのチャイルド44、絵画だと奇しくも作品内でもあがっていた雷帝が自分の息子を殺しちゃうやつ、映画だとナイトウオッチャーとかからのイメージがメインだった。知らない(想像もしなかった)ロシアがそこにあった。こんなに愛すべき魅力的な人々で溢れた国なの?(失礼)というのが正直な感想でした。
面白かった。

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2020年03月15日

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不思議な小説。帝政ロシアからソ連へと変わる時代を舞台とする。主人公のロストフ伯爵は裁判で、メトロポール・ホテルを出たら銃殺という刑に処される。ロストフ伯爵が暗い人生を歩むのかと思いきや、ワインホテルの食事を楽しみながら、それほど不自由ではない生活を送る。転機はソフィアという子供を預かったところから。父親はシベリア送りで、母親は夫を追いかけていくという状況なので、本当の家族が一緒になるのは絶望的である。ソフィアと伯爵の奇妙な生活を長らく送り、大団円へと向かう。

伯爵を客観視すると、軟禁状態ではあるものの、外出できないだけで不自由なく生活しているように見える。でも、事はそんな単純ではない。自由とは何かを考えさせられるし、他人を娘と思う、そして父親だと思われることに対する人間としての思いなども作品を通して伝わってくる。

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2019年11月05日

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書名からロシア文学だと思うかもしれないが作者はアメリカ人。原作は英語で書かれている。原題は<A Gentleman in Moscow>(モスクワの紳士)。邦題は主人公アレクサンドル・イリイチ・ロストフが帝政ロシアの伯爵であることに由来する。小説が扱うのは一九二二年から一九四五年まで。小説が始まる五年前の一九一七年、ロシアでは二月革命と十月革命が起きている。貴族には、亡命、流刑、投獄、銃殺など、悲惨な運命が待っていた。

暗い予感に躊躇するかもしれないが、早まってはいけない。主人公のロストフ伯爵は銃殺刑を免れる。革命前に書いた詩が人民に行動を促した事実が認められたのだ。従来どおり、モスクワの超一流ホテル、メトロポールに住むことを許される。ただし、部屋は最上級のスイートから屋根裏部屋に変わる。ホテル外に一歩でも出たら銃殺刑という処分。貴族のプライドを傷つけ、自由を奪う、見せしめの刑である。

伯爵は意気消沈したか、それとも自分をこんな目にあわせた相手に復讐を誓っただろうか。自暴自棄になっただろうか。とんでもない。名づけ親である大公の「自らの境遇の奴隷となってはならない」というモットーに従い、新しい境遇を受け入れ、第二の人生に足を踏み出してゆく。伯爵は逆境を前向きにとらえ、新生を愉しむ。その姿はむしろ明るく颯爽としている。

この伯爵という人物が実に魅力的だ。小説の魅力の大半はこの人物にかかっている。当意即妙の話術。文学や音楽に関する教養。人を惹きつける態度物腰。人間観察力による客の差配。料理の選択とそれに合わせるワインに関する蘊蓄を含め、貴族として持ち合わせている資質に加え、主人公だけが持つ人間的魅力に溢れている。

貴族とか紳士とかいう人々はこんなふうに生きているのか、とその優雅さにため息が出る。何しろ、父が作らせた時計は一日二度しか鳴らない。紳士たるもの時間に縛られてはならぬのだ。朝起きたら、コーヒーとビスケット、果物を摂り、昼の十二時に時計が鳴るまでは読書。<ピアッツァ>で昼食を楽しんだ後は好きなことに時間を費やす。晩餐はレストラン<ボヤルスキー>でワインを伴に、食後はバー<シャリャーピン>でブランデーを一杯。そして夜十二時の時計の音を聞く前に眠るというもの。

机の脚に隠された金貨の力もあり、欲しいものは取り寄せる。外に出ずとも暮らし向きに不自由はない。午前中は読書で時間がつぶれるが、午後の無聊をどうしたものか。主人公を退屈から救うのが少女ニーナとの出会いだ。仕事に忙しい父親に放っておかれたせいで、ニーナはホテルを遊び場にしていた。伯爵はニーナに案内されホテルのバックヤードに通暁する。秘密の通路や隠し部屋は単なる遊び場所ではなく、後に出てくるスパイ活劇での出番を待つ。伯爵と少女との会話がチャーミング。

貴族にロマンスはつきものだが、外出の自由を奪われた男は女とどう付き合うのか。密室物のミステリ同様、軟禁状態での色恋は不可能に思える。伯爵はコース料理はメインディッシュから逆算してオードブルを選ぶ。同様に作家はストーリを組み立てる時点で、後から起きる事件の原因を先に置く。綿密に練られたプロットがあって、多くの伏線が張られている。二度読みたくなる。ああ、これはこのためだったのか、と膝を叩くこと請合い。

ホームズ張りの観察眼の持ち主である伯爵は、レストランで客をどの席に案内するのが最適か一目でわかる。その特技を生かして給仕長となる。マネージャーのアンドレイ、料理長のエミールと互いの力量を知る者同士の間に友情が芽生える。その一方で、伯爵の前に一人の男が立ちふさがる。給仕のビショップだ。党の実力者にコネがあり、権力の階段を上ってゆく。この男が伯爵の宿敵となる。

敵がいれば味方もできる。グルジア出身の元赤軍大佐オシブがその一人。外交上の必要から伯爵に英仏語会話やジェントルマン・シップを学ぶうち肝胆相照らす仲になる。もう一人がバーの相客リチャード。アメリカ人ながら育ちの良さや学歴、と共通項のある二人はすぐに打ち解ける。リチャードがプレゼントした蓄音機とレコードも大事な伏線のひとつ。

革命時、パリにいた伯爵は身の安全を図るなら帰るべきではなかった。祖母の国外脱出を援けるためなら自分も一緒に逃げればいい。戦いに加わらないのに、なぜ国内にとどまったのか。それには深い理由があった。新しい友との出会いの中で、過去の経緯が語られる。伯爵の衒気が敵を作り、最愛の妹を傷つけたのだ。王女をめぐる軽騎兵と貴族の恋の鞘当て。ツルゲーネフの小説にでも出てきそうな過去の逸話が伯爵の人物像に陰翳を添える。

貴族であることを理由に処分されながら、伯爵は一概に革命後のソヴィエトに対して批判的な立ち位置をとらない。むしろ、時代というものは動いてゆくものだ、と冷静に受け止めている。しかし、スターリン独裁による粛清やシベリアの収容所という現実は、自分の友人知人の運命と直接関わってくる。ニーナに代わり、その娘を育てることになるのもニーナの夫のシベリア送りがからんでいる。

三十代から六十代までの人生を、伯爵はホテルの外に出ることなく、友達に恵まれ、女性を愛し、「娘」を授かり、子育てを経験し、やがて立派に成長した娘を外の世界に送り出す。どんな時代にあっても、どんなところに暮らしていても、人と人とは邂逅する。階級差やイデオロギー、国籍を超えて、人は人と生きてゆく。近頃珍しい人間賛歌が謳いあげられる。

ひとつの街のように、まるで異なる人生を生きてきた人と人が、ひと時のめぐり逢いを生きる、ホテルという場所を生かして、魅力的な登場人物を配し、ここぞというときに動かす。それまで軽い喜劇調で進んでいた話が、最高潮に達すると、ル・カレのスパイ小説のようなシリアス調に変化する。はじめに張っておいた伏線が次々と回収され、見事に収斂する。

格式あるメトロポール・ホテルの調度は勿論のこと、大きなフロアを泳ぐように動き回る給仕たち。様々な食材をさばくレストランの調理場。林檎の花咲きこぼれるニジニ・ノヴゴロド。ライラックの蜜を求めて蜜蜂が群舞するアレクサンドロフスキー庭園、と魅力溢れる風景が眼の前に浮び上る。まるで映画の一シーンを見るようだと思っていたら、映画化も決まっているという。アンドレイのナイフ四本のジャグリング、エミールの包丁さばき、と見どころは多いが、演ずる役者もさぞ大変なことだろう。

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2019年06月23日

Posted by ブクログ

読みたかった本の中の一冊。 チャーミングな小説でしたが、最後のスリリングな展開には心踊りました。ロシア版『ショーシャンクの空』?。『自分の境遇の主人とならなければ…』は良い言葉でした。 600ページ、大晦日に読み終えて良かった❗映画『カサブランカ』、観てみます

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2022年12月31日

Posted by ブクログ

主人公の伯爵がホテルに軟禁されて過ごす32年間を綴った物語。細かい描写や彼の紳士的で気遣いができるキャラクターを表すシーンが非常に多く、またモスクワの最高級ホテルであるメトロポールを舞台にしていることから、600ページに及ぶ長編小説とはいえ、まるで映画を観ているかのようなストーリーだった。世界からやってくるVIPたち、ゲストから給仕となり最高級のおもてなしをしていく伯爵の姿、煌びやかなクリスマスの内装や、素晴らしい料理の数々。設定が本当に素敵。

私は正直ロシアに関連する歴史に疎いので、舞台となっている皇帝時代からスターリンの時代がきて、そこから更に新しい時代へ進む過程がどのようなものだったのか、うまく解釈できていない。ただ、貴族たちは権利を奪われ、多くの人たちが自由に発言が許されず弾圧されていた環境だったことは理解できた。

一気に読めるものではなく、長くて間延びするストーリーではある。それは事実。
一つ一つの描写は素晴らしいけれど、このシーンは何故必要だったんだろうと思うような内容も多くて、骨太だけど長いな…と感じてしまった。

あと、伯爵の親友だったニーナが、自分の子供を預け、そのまま最後まで伯爵や子供に会いに来なかったところが、歩に落ちなかった。ロストフ伯爵を信用していただろうけれど、一度もこないなんて。それとも、もう生きていないのかしら…。


最後の亡命に見せかけたソフィアと伯爵の逃亡劇も、この後どうなったのかがとても気になる。育った地域に戻るところが、やはり伯爵にとって貴族としての思い出が大きかったのだなと思ったけれど、私の予想は、その後伯爵は国を出て、またソフィアと会うのではないか、と思っている。 

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2020年08月09日

Posted by ブクログ

革命を経て、帝国から共産国へ変わったロシア(ソ連)。貴族だからという理由での銃殺刑を免れ、モスクワの名門ホテルに生涯軟禁されることなった元伯爵の物語。
宝塚に、「神々の土地」という芝居の演目がある。おそらくいま最もヅカファンから支持されている座付き作家上田久美子さんの作品で、30年以上宝塚ファンの私がもしかしたら一番好きかもしれない演目である。帝政崩壊・革命のきっかけともなったラスプーチン暗殺の実行者として知られる、時の皇帝ニコライ二世の従弟 ドミトリー・パヴロヴィチ・ロマノフが主人公のモデルになっている、美しく重厚な作品だ。ストーリーが登場人物を動かすのではなく、登場人物がストーリーを作っている感じがとても好きだ。
それが頭にある状態で読み始めたのだけれど、この小説は全然「神々の土地」とは違った。悲壮感はごく薄く、どちらかというと軽やかでユーモアに溢れた物語だった。
元伯爵も彼と関わりあう登場人物たちもとても魅力的で、温かく、ロシア人に対して私が抱いていたイメージ(というより偏見…)が変わった。
「ここで終わってしまうの?」という幕切れだったけれど、この後の展開を自分なりに想像するのも楽しい。この小説「以後」の伯爵の人生について、きっと人それぞれ想像することが違うんだろうな…

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2020年06月11日

Posted by ブクログ

ビルゲイツがこの夏読むべき5冊の本にあげていたのでふーんと思いながら読んでみた。

確かに境遇に対して楽天的で、主人公の生い立ち、教養、人間力みたいなものが彼を魅力的にしていたと思う。

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2019年07月21日

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