【感想・ネタバレ】「理系」で読み解くすごい日本史のレビュー

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Posted by ブクログ

地理と歴史の好きな私にはぴったりの本です。この本の著者である竹村氏の本に数年前に出会ってから、これで9冊目となります。

縄文時代から明治以降に至る、日本の文明・文化の底力は「理系の力」にあるとして、ここの出来事を解説してくれています。日本の地形を理解した上で、これまでに行ってきた、技術力、知識の集積・伝搬の素晴らしさを分からせてくれる、読んでいて力付けられる本です。

以下は気になったポイントです。

・日本に奇跡の力があるとしたら、島国として大陸と隔絶していた以外には、雪深い地域が多いということが挙げられる。雪国人口密度はカナダ、ノルウェーと比較して飛び抜けて高い(p5)日本人ほど小さいものを「かわいい」と愛でる民族は見当たらない、細工しないものを「不細工」といい、詰め込まない人を「つまらない奴」という。縮小することは、日本人の美意識にまでになった。これは日本列島の厳しい地形と気候に適応したからに他ならない。日本人はリーダーになるのではなく、心ゆくまで「縮小」の工夫に勤しみ、未来文明の指針を世界に示せばいい(p11)

・日本刀は玉鋼(たたらで作った鉄=和鋼、p52)による美観と切れ味、強靭さ以外に、鋼を組み合わせて4つの部位で構成する。芯となる「心金」側面の「側金」峰(棟)の部分の「棟金」刃部分の「刃金」を積み重ねて、何度も熱して鍛え接合「鍛接」を行う(p49)

・日本刀の「折れず」「曲がらず」は、材料工学の「靭性、剛性」を両立させていることになり、現代の工学でも高度な技術である。「よく切れる」は、含有炭素量を調整し、刃先は硬く、芯に向かうにつれて硬さが下がることで実現されている(p55)

・法隆寺五重塔は、世界最古の木造軸組建築物の一つであると同時に世界最古の五重塔である、現在日本には80塔以上ある、明治維新以前に建立されて現存しているものが22塔、1000年以上の歴史があるのは、法隆寺と奈良県室生寺五重塔、京都市醍醐寺五重塔である(p70)

・五重塔とスカイツリーの心柱は、制振システム(建物の揺れを主に地震動の反対側への動きを加え制することで建物が破壊されないようにする)である(p73)

・長篠の戦いまでは、軍勢が多数である方が断然有利とされていた野戦は、鉄砲の登場とその戦法によっては、少数で多数に打ち勝つことが不可能ではなくなる、という歴史的転換点だ(p90)


・江戸時代以前に築造されて太平洋戦争でも焼失することなく現存している天守を「現存天守」とよび、12箇所ある。日本の技術の粋とも言える天守は、維持・保存にも伝統的城郭建築の技法が守られている。(p95)

・室町時代以降は将軍家が大名に「屋形号」を与えるなど制度化されたことで、「御屋形様」が尊称となった。関東八屋形は、宇都宮氏、那須氏、結城氏など、それぞれの国の守護を屋形から出すシステムとなった。(p98)

・鉄砲や大砲が進歩したことで、小さな縄張しか確保できない山城より、平地で広い城郭を確保し、堀や曲輪を広大にする方(平城)の方が防御しやすくなった(p108)

・家康が関ヶ原後に江戸を選んだ理由として、1)関西、中部の森林=エネルギー源の消失、2)湿地帯だった関東地方の可能性(水田地帯に変貌させる)を見通していたから(p116)

・29日の月、30日の月を交互に並べることで12ヶ月を1年にしたのが「太陰暦」これだと1年=354日となり、太陽の1年よりも11日程度短いので、閏月を何年かに1度入れた、これを「太陰太陽暦」19年に7回、閏つきを入れて季節と帳尻を合わせていた。太陽暦の最初は1年が304日、その後355日、そして365.25日と改良された。端数を調整するために4年に1度、2月に閏日を挿入したのがユリウス暦(p128)

・明暦の大火(1657)の後、徳川御三家の屋敷を江戸城外に転出、武家屋敷は1300軒あまりが江戸城内から、赤坂・市ヶ谷・小石川に移った、寺社は70あまりを、浅草、芝に移転、町人(3000軒以上)は、日本橋・京橋あたりから、本所、深川などへ移転した。幕府は江戸城天守の再建を断念した(p150)

2021年5月3日作成

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2021年05月03日

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