【感想・ネタバレ】九年前の祈りのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

文体は美しく、情景が湧き上がる。
短編4つの話の重なり方がとても良い。
読後に子供の頃の記憶を辿ったような感覚になる。

0
2021年08月13日

Posted by ブクログ

九州の片田舎、離島、カナダ、結婚、離婚というさまざまなキーワードが絡み合いながら、今と9年前の記憶が交錯する。何度読んでもその都度楽しめる。でもちょっと複雑で、読めば読むほど面白くなる作品だと感じた。再読することになりそうだ。

0
2019年08月17日

Posted by ブクログ

NHK日曜美術館で朴訥としゃべる小野正嗣さんの芥川賞受賞作「9年前の祈り」とその続編。妻が面白かったと読み終えた後に手に取った小説。大分県の南部、過疎の集落に息づく人々と異人まれびととの交流を描く。そこに小野さんの兄おそらく軽度の知的障害がある方を「タイコー」として織り込んでいく。人が住まなくなっていく地域を今現在として描いていくローカルでありながら、地域を超えた私の生きる今につながる空間として実感させる作品であった。今後も小野さんの作品を読み続けていこうと思った。

0
2021年11月25日

Posted by ブクログ

読書開始日:2021年8月29日
読書終了日:2021年9月1日
所感
内容や構成は、視点が頻繁に変わるためかなり難解ではあったが、
怒哀表現が完璧だと感じた。
自分が感じたことのある心情が、包み隠さず詳細に描かれていた。
本書は題別で話が進行していくと思っていたが、全てがつながっていくという自分好みの構成。
ただやはり純文学ということもあり複雑で、しっかりとした繋がりは見せてくれない。
ただ人間関係なんてそんなもので、実はつながっていても知らない、気づかない、思い出さないなんてざらだ。
リアルに即していると思う。
ここからは個人的な解釈だが、
さなえは、過去のみっちゃん姉に救いを求めた。
さなえの現状を乗り越えた先が、みっちゃん姉だと思いたかった。
さなえはいまにも負けそうだった。
「とにかくそんなものから解放されて自由になりたかったのだ」がかなり痛烈。
本物の希敏を、理解が及ぶ希敏を見たいあまり、無理に引っ張り出す際にできるあざ。
経験したことはないが、共感せずにはいられない。
自分を通して生まれ落ちた天使が、到底理解の及ばないものとしたら、誰でもその心境になるはず。
そして、みっちゃん姉もやはりさなえと似たような時を過ごしたのだろう。
カナダへ訪れた際、教会での「九年前の祈り」はまさしく、伽=タイコーに対しての祈りだった。
人一倍祈っていたのはそのためだ。
その祈りが通じて、伽=タイコーは、立派に成長をした。
「生きていくうちに摩耗し消えていくはずの驚き」に付きまとわれながらも、人に尽くした。
そして千代子を救った。
悪の花の題、千代子の題で、かなり熱中して読み進めた。
真鶴に似た鳥肌が立った。
さなえの祈りも届けばいいと切に願う。

九年前の祈り
あんパンの皮だけ食べるような会話だった
額には玉の汗
苛立ちと怒りがざらつく熱風となってさなえの顔を焼いた
怒りの表現がうまい
発酵、腐敗
みっちゃんねえの顔に明るい色の花が、嬉しそうな笑みがパッと広がった
美しい天使の中に埋もれた本物の息子
無垢の世界をそれとして見つめることのできるさなえだけが、皮肉にも無垢から限りなく遠かった
とにかくそんなものから解放されて自由になりたかったのだ
どこの世界に明るいだけんの人がおるんか
意地の悪い優越感

ウミガメの夜

お見舞い
どうせ無駄なことをするのだから

悪の花
目の端に白く濁った汁が滲んだ
生きていくうちに摩耗し消えていくはずの驚きがいまだにタイコーとともにあった
いや、ちがう。千代子の方が、トミという名の最初の妻と同じ道を辿ったのだ
忙しなさと熱意を失っていくにつれて涸れていったあの水

0
2021年09月01日

Posted by ブクログ

小野正嗣さんは、『水に埋もれる墓』『にぎやかな湾に背負われた船』と読んで、興味のある作家となった。どの作品も郷里である大分県のリアス式海岸にある小さな集落に根ざした物語だ。一方で小野さん自身はフランスに長く住んでいてインテリのイメージがある。そのギャップに興味がわく。いまの時代はグローバル化とローカルの再発見が同時進行していると思うのだが、小野さんの小説はローカルに徹底し、血の繋がりならぬ地の繋がりを見据えた先に、人間の悲しさや愛しさが描かれている。特にこの小説は、他界したお兄さんに捧げられている。付録に収録された芥川賞のスピーチが心を打った。

0
2018年07月28日

Posted by ブクログ

第152回芥川賞受賞作。
著者が生まれ育った大分県の過疎地や周囲の人々を底流に、着想されたものと推察する。
過疎地に生まれた主人公(さなえ)が、東京に出て異性との不幸な付き合いを重ねた先に、カナダ人と巡り合い、特異な感受性をもつ子供(希敏:けびん)を授かるが、突然失踪されて破局、シングルマザーとなり故郷に舞い戻ってくる。
そこで、昔なじみのおばさんの息子の入院を耳にする。9年前にカナダ人の案内で、おばさん達とカナダへ旅行したときの記憶が蘇り、現在の希敏を抱えた状況と、おばさんの不憫な息子に対する想いが交錯しながら進行していくが、互いの終着点がフェードアウトしていく。読者に残る余韻で評価が分かれるだろう。

1
2021年04月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読みづらかった~。文章にまとまりがなくて読みづらい。キャラクターのバックグラウンドや綿密に描くところは高村薫っぽく、しかし高村女史ほどの文才があるわけじゃないからただただ「読まされている」感じがする。ストーリーにテーマがあるのも、そこを支柱にして進めているのは(真面目に話を練っているんだろうなあと)伝わるんだけど、肝心の言葉が散らかっていて全然入りこめなかった。

0
2022年09月10日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞作『九年前の祈り』を含む4編を収録した1冊。
収録作品はどれも大分を舞台にしており、登場人物がほんの僅かずつ繋がっていたりします。田舎の、閉鎖的な息苦しさが特徴的です。
どこがどう、とは具体的に言えないのですが、何となく言葉選びが印象的でした。

きっと、人によっては読んでいてすごく息苦しさを覚えるのではないかな、と思います。

0
2022年06月18日

Posted by ブクログ

基本的に、芥川賞受賞というだけで読むことはもうしないんで、本作も、どこか別のところで取り上げられているのを見かけたのかも。で、結構久しぶりに同賞受賞作を読んだ気がするけど、やっぱり合わないす。内容はいかにも取りそう、って感じがするけど、正直、どこが面白いのか理解できず。どれだけ文学的であろうが、物語の内容自体が面白くない以上、魅力を感じろという方が難しい。短編集なんだけど、上記の訳で、表題作以外まではちょっと読む気が起こらず。なんで積読。でもきっと、この先改めて手に取ることもあるまい。

0
2021年10月12日

Posted by ブクログ

大分県、佐伯市を中心にして主人公の心の内の葛藤を表した作品集。それぞれの短編は関係しているようだが、名前が違ったりしていて独立した短編と考えると霊的な次元の違いがあるのか?筆者の兄が直前に亡くなったと言うことなので、それが影響した作品なんだろう。

0
2020年06月05日

Posted by ブクログ

日曜美術館でお馴染みの小野正嗣さん。
小説のほうは、今回が初めて。

表題作以下、「ウミガメの夜」「お見舞い」「悪の華」と、短編が四本。
どれも大分県の海辺の田舎町、佐伯市が舞台となっている。
最初は偶然舞台が同じなのかと思っていたが、緩やかにつながった四作ということらしい。

表題作は、カナダ人男性との間に男の子を設けるも、捨てられて故郷に戻ってきたさなえという女性を主人公とする。
彼女の四歳の息子は、美しい顔立ちをしているが、おそらくコミュニケーションの力に障害がある。
息子に手を焼きながら、一方で無神経な母親の言動にも傷つけられる。
過去にカナダでの研修で一緒になり、やはり育てにくい息子を持っていた「みっちゃん姉」の存在がさなえを導いていく。
そのみっちゃん姉は、今、息子が脳腫瘍に罹り、大学病院で看病をしている。
こう書いていくと、暗くて深刻な印象だろうが、不思議なのはイメージが美しく、むしろキラキラ光があふれている感じがするのだ。
不思議な読書体験。

作者の自作語りは、普段あまり読まないようにしている。
でも、今回は読んでよかったと思う。
さなえの息子、希敏は、泣き始めると手が付けられず、そのさまは何度も「引きちぎられたミミズ」と表現される。
これは、小野さんによるとベケットからきたもので、そこに弱いものというだけではなく、ちぎられてもまた頭やしっぽが生えてくる、再生のイメージをもつものだという。
そう読んで、キラキラ感にも合点がいった。

連作をつなぎとめている存在はみっちゃん姉こと渡辺ミツと、その息子のタイコー。
読み終わると、この人たちが、どこか聖母子に見えてくる。

0
2019年12月14日

Posted by ブクログ

熊本出身、安藤さなえ、35歳。
母は沖合の文島出身。
息子、希敏(フレデリックとの息子ケビン)。
渡辺ミツ(みっちゃん姉)。
9年前、町の企画のカナダ旅行。息子が買ってくれた赤いリュック。
教会でひざまずいて真剣に祈る。
息子が大分の病院で脳腫瘍で入院。さなえはお見舞いに行くことに。
厄除けになるという文島の貝殻と砂をお土産として取りに行ったが、
希敏が落としてしまう。

0
2019年10月27日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞作の表題作を含む4編が入る。連作というのか登場人物が重なる短編集。危惧したとおりでやっぱり芥川賞受賞作って何が言いたいのか、何を描いているのか読み解くのが難しかった。
 小野さんは大分県の現・佐伯市の出身で、4編ともそのあたりが舞台になっている。自分にとっての小野さんのイメージって「日曜美術館」の司会をしてたり、そのときのファッションとか見ても都会的でややクセのある人という感じだったので、大分の田舎町が舞台というのは意外な感じだった。
巻末に芥川賞受賞時のスピーチが載っていて、そこでは小説のなかの登場人物のモデルであろう亡兄への感謝が語られていて、それがよかった。都会的なイメージ・印象の小野さんだけど大分にしっかり根っこがあるんだな、そのことを大切にしているんだろうなと感じた。

0
2019年01月27日

Posted by ブクログ

初小野。芥川賞受賞作。表題作。ま、偏見だが女性が描きそうな内容に感じました。希敏は障がい者なのだろうか?そんな子を何処か憎みながら接している母・さなえ。みっちゃん姉他、おばさんたちはよう描けていましたw 他全四篇は同じ場所を舞台にした作品集のようだ。付録の文章を読み「嗚呼、だからか…」と、この何とも云えない重い気持ちの原因は。人生が生き写しのように描かれていました。

0
2018年06月19日

「小説」ランキング