ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
3pt
三十五になるさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。希敏の父、カナダ人のフレデリックは希敏が一歳になる頃、美しい顔立ちだけを息子に残し、母子の前から姿を消してしまったのだ。何かのスイッチが入ると大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった──。痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語。 表題作他四作を収録。芥川賞受賞作。
アプリ試し読みはこちら
Posted by ブクログ
文体は美しく、情景が湧き上がる。 短編4つの話の重なり方がとても良い。 読後に子供の頃の記憶を辿ったような感覚になる。
九州の片田舎、離島、カナダ、結婚、離婚というさまざまなキーワードが絡み合いながら、今と9年前の記憶が交錯する。何度読んでもその都度楽しめる。でもちょっと複雑で、読めば読むほど面白くなる作品だと感じた。再読することになりそうだ。
NHK日曜美術館で朴訥としゃべる小野正嗣さんの芥川賞受賞作「9年前の祈り」とその続編。妻が面白かったと読み終えた後に手に取った小説。大分県の南部、過疎の集落に息づく人々と異人まれびととの交流を描く。そこに小野さんの兄おそらく軽度の知的障害がある方を「タイコー」として織り込んでいく。人が住まなくなって...続きを読むいく地域を今現在として描いていくローカルでありながら、地域を超えた私の生きる今につながる空間として実感させる作品であった。今後も小野さんの作品を読み続けていこうと思った。
読書開始日:2021年8月29日 読書終了日:2021年9月1日 所感 内容や構成は、視点が頻繁に変わるためかなり難解ではあったが、 怒哀表現が完璧だと感じた。 自分が感じたことのある心情が、包み隠さず詳細に描かれていた。 本書は題別で話が進行していくと思っていたが、全てがつながっていくという自分好...続きを読むみの構成。 ただやはり純文学ということもあり複雑で、しっかりとした繋がりは見せてくれない。 ただ人間関係なんてそんなもので、実はつながっていても知らない、気づかない、思い出さないなんてざらだ。 リアルに即していると思う。 ここからは個人的な解釈だが、 さなえは、過去のみっちゃん姉に救いを求めた。 さなえの現状を乗り越えた先が、みっちゃん姉だと思いたかった。 さなえはいまにも負けそうだった。 「とにかくそんなものから解放されて自由になりたかったのだ」がかなり痛烈。 本物の希敏を、理解が及ぶ希敏を見たいあまり、無理に引っ張り出す際にできるあざ。 経験したことはないが、共感せずにはいられない。 自分を通して生まれ落ちた天使が、到底理解の及ばないものとしたら、誰でもその心境になるはず。 そして、みっちゃん姉もやはりさなえと似たような時を過ごしたのだろう。 カナダへ訪れた際、教会での「九年前の祈り」はまさしく、伽=タイコーに対しての祈りだった。 人一倍祈っていたのはそのためだ。 その祈りが通じて、伽=タイコーは、立派に成長をした。 「生きていくうちに摩耗し消えていくはずの驚き」に付きまとわれながらも、人に尽くした。 そして千代子を救った。 悪の花の題、千代子の題で、かなり熱中して読み進めた。 真鶴に似た鳥肌が立った。 さなえの祈りも届けばいいと切に願う。 九年前の祈り あんパンの皮だけ食べるような会話だった 額には玉の汗 苛立ちと怒りがざらつく熱風となってさなえの顔を焼いた 怒りの表現がうまい 発酵、腐敗 みっちゃんねえの顔に明るい色の花が、嬉しそうな笑みがパッと広がった 美しい天使の中に埋もれた本物の息子 無垢の世界をそれとして見つめることのできるさなえだけが、皮肉にも無垢から限りなく遠かった とにかくそんなものから解放されて自由になりたかったのだ どこの世界に明るいだけんの人がおるんか 意地の悪い優越感 ウミガメの夜 お見舞い どうせ無駄なことをするのだから 悪の花 目の端に白く濁った汁が滲んだ 生きていくうちに摩耗し消えていくはずの驚きがいまだにタイコーとともにあった いや、ちがう。千代子の方が、トミという名の最初の妻と同じ道を辿ったのだ 忙しなさと熱意を失っていくにつれて涸れていったあの水
小野正嗣さんは、『水に埋もれる墓』『にぎやかな湾に背負われた船』と読んで、興味のある作家となった。どの作品も郷里である大分県のリアス式海岸にある小さな集落に根ざした物語だ。一方で小野さん自身はフランスに長く住んでいてインテリのイメージがある。そのギャップに興味がわく。いまの時代はグローバル化とローカ...続きを読むルの再発見が同時進行していると思うのだが、小野さんの小説はローカルに徹底し、血の繋がりならぬ地の繋がりを見据えた先に、人間の悲しさや愛しさが描かれている。特にこの小説は、他界したお兄さんに捧げられている。付録に収録された芥川賞のスピーチが心を打った。
第152回芥川賞受賞作。 著者が生まれ育った大分県の過疎地や周囲の人々を底流に、着想されたものと推察する。 過疎地に生まれた主人公(さなえ)が、東京に出て異性との不幸な付き合いを重ねた先に、カナダ人と巡り合い、特異な感受性をもつ子供(希敏:けびん)を授かるが、突然失踪されて破局、シングルマザーとなり...続きを読む故郷に舞い戻ってくる。 そこで、昔なじみのおばさんの息子の入院を耳にする。9年前にカナダ人の案内で、おばさん達とカナダへ旅行したときの記憶が蘇り、現在の希敏を抱えた状況と、おばさんの不憫な息子に対する想いが交錯しながら進行していくが、互いの終着点がフェードアウトしていく。読者に残る余韻で評価が分かれるだろう。
芥川賞受賞作『九年前の祈り』を含む4編を収録した1冊。 収録作品はどれも大分を舞台にしており、登場人物がほんの僅かずつ繋がっていたりします。田舎の、閉鎖的な息苦しさが特徴的です。 どこがどう、とは具体的に言えないのですが、何となく言葉選びが印象的でした。 きっと、人によっては読んでいてすごく息苦し...続きを読むさを覚えるのではないかな、と思います。
基本的に、芥川賞受賞というだけで読むことはもうしないんで、本作も、どこか別のところで取り上げられているのを見かけたのかも。で、結構久しぶりに同賞受賞作を読んだ気がするけど、やっぱり合わないす。内容はいかにも取りそう、って感じがするけど、正直、どこが面白いのか理解できず。どれだけ文学的であろうが、物語...続きを読むの内容自体が面白くない以上、魅力を感じろという方が難しい。短編集なんだけど、上記の訳で、表題作以外まではちょっと読む気が起こらず。なんで積読。でもきっと、この先改めて手に取ることもあるまい。
大分県、佐伯市を中心にして主人公の心の内の葛藤を表した作品集。それぞれの短編は関係しているようだが、名前が違ったりしていて独立した短編と考えると霊的な次元の違いがあるのか?筆者の兄が直前に亡くなったと言うことなので、それが影響した作品なんだろう。
日曜美術館でお馴染みの小野正嗣さん。 小説のほうは、今回が初めて。 表題作以下、「ウミガメの夜」「お見舞い」「悪の華」と、短編が四本。 どれも大分県の海辺の田舎町、佐伯市が舞台となっている。 最初は偶然舞台が同じなのかと思っていたが、緩やかにつながった四作ということらしい。 表題作は、カナダ人男...続きを読む性との間に男の子を設けるも、捨てられて故郷に戻ってきたさなえという女性を主人公とする。 彼女の四歳の息子は、美しい顔立ちをしているが、おそらくコミュニケーションの力に障害がある。 息子に手を焼きながら、一方で無神経な母親の言動にも傷つけられる。 過去にカナダでの研修で一緒になり、やはり育てにくい息子を持っていた「みっちゃん姉」の存在がさなえを導いていく。 そのみっちゃん姉は、今、息子が脳腫瘍に罹り、大学病院で看病をしている。 こう書いていくと、暗くて深刻な印象だろうが、不思議なのはイメージが美しく、むしろキラキラ光があふれている感じがするのだ。 不思議な読書体験。 作者の自作語りは、普段あまり読まないようにしている。 でも、今回は読んでよかったと思う。 さなえの息子、希敏は、泣き始めると手が付けられず、そのさまは何度も「引きちぎられたミミズ」と表現される。 これは、小野さんによるとベケットからきたもので、そこに弱いものというだけではなく、ちぎられてもまた頭やしっぽが生えてくる、再生のイメージをもつものだという。 そう読んで、キラキラ感にも合点がいった。 連作をつなぎとめている存在はみっちゃん姉こと渡辺ミツと、その息子のタイコー。 読み終わると、この人たちが、どこか聖母子に見えてくる。
レビューをもっと見る
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
新刊やセール情報をお知らせします。
九年前の祈り
新刊情報をお知らせします。
小野正嗣
フォロー機能について
「講談社文庫」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
アイデンティティが人を殺す
あわいに開かれて
歓待する文学
獅子渡り鼻
水死人の帰還
にぎやかな湾に背負われた船
残された者たち
ファミリー・ライフ
「小野正嗣」のこれもおすすめ一覧へ
▲九年前の祈り ページトップヘ