【感想・ネタバレ】囲碁殺人事件のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

竹本健治を『涙香迷宮』から読み始めたので、これが牧場智久初登場作品かー、という感慨を持って読んだ。12歳の智久くんはちょっと生意気な、まさに小学生といった感じで、涙香迷宮の大人びた高校生の感じとは違うねえ。

暗号は棋譜が出てきた時点で投げてしまったけど、ミステリとしてはかなりオーソドックスで、ウロボロスのような大混乱を気にして構えて読むと、意外と肩透かし。トリックも今読むとそれほどでもない気もするけれど、読みやすいし、どんでん返しだし、途中途中の伏線(私、毒でも盛られてるのかと……)もきちんと回収されて、面白かった。

ただ、囲碁が全然わからない身には途中挟まれる石の並び方の図やその説明が悲しくなるほどわからず、結末を理解できるのだろうかと心配してたけど、そんな心配は無用だった。いやわかる方がより楽しめるんだろうけども。

法月綸太郎の解説で、智久、典子、須堂の3人が『虚無への供物』の三人(藍ちゃん、久生、アリョーシャ)に倣ったものだろう、とあって、なるほどーと思った。あんなに不謹慎じゃないけど、典子の途中の後悔なんかには久生の影があるような気もしたし、何しろ作者が竹本健治だものね。『虚無への供物』からの影響を綺麗に溶け込ませるくらいするだろうな。
解説にはこの作品の明るさについても言及されていて、他の作品と比べると少し浮いている、とあったけれど、私は涙香迷宮→ウロボロスシリーズ→本作という順で読み始めてしまった上に匣の中の失楽も未読なので、本作の立ち位置みたいなものはあんまり把握できていない。他も読んでみたいけれど、囲碁、将棋、トランプがゲーム三部作とまとめられながら、後の将棋、トランプを『狂い壁 狂い窓』と合わせて狂気三部作ともまとめられていると聞くと、ちょっと怖そうで腰が引けてしまうなあ……。

0
2020年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

囲碁、全然知らないんです。
なので棋譜を使った暗号は全然ピンと来なかった。
ていうか、かなり囲碁に詳しくないと、暗号の真意は腑に落ちないんじゃないかな。

囲碁界の鬼と言われる槙野九段がタイトル戦の第2局目に凄い閃きで勝利しかかったその夜、首切り遺体で発見される。天才少年棋士智久と大脳生理学者須堂が事件に挑む。

1人殺されるシンプルな事件。
途中棋譜の暗号から導き出される推理は根拠がよく分からなくて、集中して読めなかった。
しかも推理が間違ってて読者は惑わされる。まぁ高根犯人だと動機に無理がありすぎるし、真犯人は別人フラグ立ってたけどね。
真相は面白く読んだけど(特に頭を切り落とされた理由)、眼科医の死は謎のままだった。
マジで予行演習なの? あんなに小心の犯人に予行演習でヒトを殺したりできない気がするんだけど。
それとも全く関係ない事件だったってこと?
ていうか、智久、『匣の中の失楽』のナイルズみたいだった。

犯人、槙野を殺しただけなら師匠を思っての自殺幇助で不問ってのは許すけど、智久にあんな怖い思いさせといて見逃すのは、何だかなー。
推理が真相とかけ離れてるからって、推理した人を脅すの意味分からない。
どんだけ察してちゃんだよ。
1番のツッコミどころは、槙野、死にたいならちゃんと自死しろや。
飛び降りとかして頭潰して死ねばいいんだよ。

附の「チェス殺人事件」は多重解決ぽくて簡単な読み物としてはなかなか楽しめた。
まぁでも自殺なんだろうな。迷惑。

0
2020年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

○ 総合評価  ★★★☆☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度   ★★☆☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★★☆☆
〇 読後感   ★★★☆☆
【レビュー】
 竹本健治の初期の代表的なシリーズであるゲーム3部作の第一弾。被害者による嘱託殺人という,やや変化球ではあるが,竹本健治の作品の中では比較的オーソドックスな本格ミステリという評価になっている。ポイントは,「純粋語盲」という病気が脳の病気であることを知った牧野が,「純粋語盲」であることを隠すために,自分の死体から,首から上を切断してほしいと杉沢に頼んでいたことだろう。これは,死体の頭部を切断する理由
として,それなりの意外性がある。この「死体の首を切断した理由」がこの作品のキモといえる。
 作品全体の構成としては,牧場智久が推理した「犯人が高根である。」という推理が間違いであり,本当の探偵役である須藤信一郎が,この事件の本当の構成=牧野猛章が自分の脳の病気を隠すために行った自殺であり,槇野を崇拝する杉沢が嘱託殺人として槇野の首の切断を行ったという真相を見抜くという構成になっている。読者が牧場智久が探偵役だと思っているとこの真相には驚くことができるという計算なのだろうが,残念ながらそこまでの意外性は感じない。殺人予告だと思われた珍曨の存在が,殺害予告ではなく,槇野自身が作ったものだった。これらの情報が,本格ミステリとしてフェアな形で記述されている。竹本健治作品の中では,比較的まともな本格ミステリ。それでも,そもそもの事件側「殺人事件」といえるか微妙だという本格ミステリといっていいか微妙な作品になっている。手軽に竹本健治の作品がどんな作品か知りたいという人に勧めるにはいい作品かもしれない。竹本健治が好きな人なら十分楽しめるがやや物足りないと感じるかもしれない。そういう作品だろう。
 もう一つ収録されているチェス殺人事件は,囲碁殺人事件より竹本健治らしさが発揮された作品。あちらこちらにモルグ街の殺人のオマージュと思われるような記載がある。飯島と葉山という二人の容疑者がいる状況で被害者である巣羽根が自殺ともとれる形で死亡する。容疑者のどちらが真犯人ともとれる推理がされた上で,巣羽根が自殺したともとれるような終わり方をする。短編でありながら,謎を謎のまま終わらせるという竹本健治らしい終わり方をしているミステリ。竹本健治好きなら,十分楽しめる作品だが,一般的な評価としてはどうだろう。投げっぱなしで終わっているミステリとしては失敗作と感じてしまうかもしれない。個人的には好きな作品だがそこまでデキがよい作品とも思えない。★3で。

【メモ】
〇 囲碁殺人事件
 竹本健治によるゲーム3部作の第1弾に当たる作品、囲碁のタイトル戦「棋幽戦」の第2局の2日目に,優勢だったはずの「碁の鬼」,槇野九段の首無し死体が発見される。
 事件があった2週間以上前に,「珀星センター」という碁会所で,「鬼の首を獲る」という「珍曨」(盤面全体に及ぶ詰め碁)が残されていた。これが殺人の予告と思われていた。
 棋幽戦は,氷室優位を妙手で牧野優位に逆転したところで封じ手。その状況での牧野の死体が発見される。殺人予告としての珍曨の存在と相まって,まれに見る猟奇殺人だと報道される。
 牧場智久達は珀星センターという碁会所で事件について話し合う。その中で高根は旅館の風呂で人が消失するという事件に遭遇する。渡辺二段は,夜中の2時頃に牧野九段の部屋の前に謎の影が存在することを目撃していた。智久はこの事件が連続殺人事件であるとして,6月29日頃にあった殺人事件で首の切断の実験をしていたのではないかと推理する。その被害者は囲碁好きの医者(斎藤敝二)で警察も関連性を意識し始める。
 推理会などの後,智久のズボンのポケットに碁の記録を取るために使われる紙が入っており,白丸と黒丸が並んだ状態で描かれていた。入れた可能性があるのは、高根,日下,須藤,渡辺,杉沢のいずれかかとも思われた。また,眠っている智久の首にマジックで赤い線が書かれていた。
 2回目の推理会が行われる。渡辺二段は消去法で杉沢四段しか犯人足り得ないと考えるが,杉沢には動機がない。智久は,推理会のメンバーの中に犯人がいるという。智久は犯人が誰か分かっているが,確証がないうちは犯人の名前は言わないという。智久のポケットに入っていた囲碁の棋譜は暗号ではないかとも考える。
 その後,智久が犯人と思われる人物に命を狙われる。 須藤は,棋譜の暗号を解く。棋譜の白石と黒石の「ダメ」が重なる部分に注目すると・・・「ぐけんにはしを」と読める。 
 智久の推理では犯人は高根了吉。動機は経営不振に陥った会社を立て直すためのベストセラーを出すため。智久が高根を疑ったのはでっちあげの証言をしていることも原因の一つ。
 智久はその後,倉庫のような部屋に閉じ込められる。珍曨の謎に気付く。全曲的死活論の上に立てば,あの首は死なない。警察の捜査で高根には完璧なアリバイがあることが分かる。
 事件の謎を解いたのは須藤。須藤は陳曨は殺人予告ではなかったことを踏まえて推理を進める。そして,槇野九段が「純粋語盲」であったことを見抜く。真相は,槇野による嘱託殺人。牧野は「純粋語盲」について相談し,脳の病気であるとアドバイスを受けたが,その秘密を知ることになった斎藤医師を殺害する。絶頂期で死ぬために牧野に心酔する杉沢に殺人を依頼する。実際に牧野を殺害した実行犯は杉沢。杉沢は,推理会をする智久などに真相を暴いて欲しかったが,検討はずれの推理をする智久を脅していた。
 最終的に智久は工場跡から発見される。最後は高根が風呂であった人物が須藤であったことを明かして終わる。
牧場智久
 知能指数208の天才。囲碁の天才少年。この時点では12歳。 
須藤信一郎
 大脳生理学者。32歳
牧場典子
 牧場智久の姉。須藤の研究所で働く。
牧野九段(牧野猛章)
 囲碁の鬼と呼ばれる。棋幽戦の対局者
氷室七段(氷室遼司)
 精密機械と呼ばれる。棋幽戦の対局者
御原九段
 囲碁のプロ。牧場智久の師
高根了吉
 「月刊烏鷺」という囲碁の雑誌の編集長
杉沢四段
 囲碁のプロ。牧野に心酔する。棋幽戦では記録係を務める。
渡辺冴子
 女流棋士。2段。
三上
 棋幽戦の取材をしていた記者
日下
 アマ棋界の最高峰として勤めていた商社を辞め「珀星会」という碁会所の運営をしている人物
斎藤敝二
 棋幽戦の数日前に殺害された人物。犯人に首を切断されかけていた。

〇 チェス殺人事件
 師具町(もろぐ)町で,巣羽根(すばね)邸で,巣羽
根という人物が密室で殺害される。巣羽根から招待を受けていた牧場智久と典子が,遺体の発見現場に出くわす。チェスプレイヤーの飯島と編集者の葉山という人物が巣羽根邸にいた。密室には「オランウータン」と呼ばれる特殊なオープニングの場面のチェス盤が残されている。密室,オランウータン,「巣羽根」という被害者,師具町(もろぐ)町という町…これらからエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」が連想される。これは密室殺人事件ではないのか。
 智久は推理を披露する。チェス盤が横になっていたことなどを気付いて殺人事件だと考えるが,飯島か葉山のどちらが犯人か,この作品では明らかにされない。それどころか,そこまで計画された巣羽根による自殺だったのではないか?典子のそういう疑問でこの物語は終わる。

0
2019年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『匣の中の失楽』に続き、竹本作品二作目。ルールの件が複雑過ぎて全くわからなかったけれど、楽しく読めた。『匣の中〜』同様、真相の部分は謎なのね^^; 殺害動機には意外性があり、被害者?の心情には、なんというか、ま、プロだったらそうなってしまうのも判るかなぁ…。
「チェス殺人〜」は、ポーの超有名作品の真相がサラリと明かされており、未読の方は要注意。私は未読だったので…(-_-;

0
2017年05月26日

「小説」ランキング