【感想・ネタバレ】東京裁判のレビュー

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Posted by ブクログ

A級とB級、C級戦犯の違いは何かから知らなかったが、本書を読んで東京裁判がどんなものだったのかを知ることが出来た。本書は客観的であり、膨大な事実をもとに書き上げられているため、悪戯に日本人が大好きなパル判事を持ち上げたりと言った事もなく、安心して読むことが出来た。検察側、弁護側、判事側とそれぞれが自国の背景を抱えながら参加し、うまく行ったり行かなかったりと、そこにも人間模様があるのが生々しく、主張と妥協の末にやはり物事決まっていくよなと思う。

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2022年10月02日

Posted by ブクログ

映画を観るにあたり、予習として読みました。
国際関係の視点が強いことが本書の特徴であり、東京裁判の特徴や欠陥などを論じつつ、当時の主要国の対外利益を踏まえた行動を解説するあたりが非常に面白い。どちらかに偏りがちなトピックにおいて、冷静な根拠分析かは著者の意見を述べていることにも好感を持てる。

アメリカが裁判の平等性に拘ったこと、赦免時には裁判の正当性と冷戦情勢の変化による早期決着のジレンマに挟まれていたことなどは、読み進めるに当たり非常に面白かった。

アカデミックでありやや難しい気がするが、読み応え十分の良書。

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2022年08月16日

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[法廷という政治]丁寧に第一次資料を積み重ねながら、今日においても論争が絶えない東京裁判を、「国際政治」の場だったと捉え直した作品。戦中・戦後の混乱の中で、各国・各人の異なる思惑がいかにして東京裁判という場に結実したかが解き明かされています。著者は、2008年にサントリー学芸賞(思想・歴史部門)を本作で獲得した日暮吉延。


東京裁判やその評価に関する書籍は数あれど、ここまで総合的に透徹した情報や見解を盛り込んだ作品は珍しいのではないでしょうか。国際政治という強弱の軸を東京裁判にとおすことにより、本書は長年続いた正邪に関する論争に今までにない回答をもたらすだけでなく、何故にこの「歴史」が外交課題としてまだじくじくと疼くものであるかをはっきりと示していると感じました。

〜東京裁判というのは、「文明の裁き」と「勝者の裁き」の両面をあわせもつ「国際政治」であったととらえる。「文明か勝者か」ではなく、「文明も勝者も」なのである。〜

2008年に「今更」の感がある東京裁判に関する本がサントリー学芸賞を受賞したことからも、この見方がいかに新鮮なものであったかがわかる気がします☆5つ

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2016年09月12日

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表題の「東京裁判」とは、いうまでもなく、戦後日本の占領期において、聯合国側によって戦争犯罪者を裁いた「極東国際軍事裁判」のことで、そこで東條英機元首相らが「A級戦犯」として裁かれたことなどは一般常識の範疇であろう。しかし、わたしたちはほんとうに、この裁判について知っているといえるであろうか。この本を読むと、われわれがいかにこの裁判のことについて表面的な智識しか持ち合わせていないかに気づかされ、驚かされる。たとえば、B・C級裁判にかんしては、教科書でもほんのすこししか触れられていないので、本書に登場する関聯する記述のいっさいがいちいち新鮮な驚きであった。あるいは、戦犯の釈放について。戦犯と聞けばとかく東條英機らが死刑に処された事実にばかり眼を向けてしまいがちだが、じっさいにはもっと刑が軽く、しかも途中で釈放されたような戦犯のほうがずっと多い。このことだけでもずいぶんはっとさせられるが、のみならず、国民的に戦犯の釈放を歎願する運動が起こり、国会でも同趣旨の決議がなされていた事実となると、はたしてどれほどの人間が知っているであろうか。しかも、その処遇をめぐる決定のウラには、日本や聯合国各国における権謀術数があったのである。戦争犯罪はむろん悪いことであり、それを擁護する気は毛頭ないけれども、その犯人がけっきょくは減刑され釈放されていて、しかも純粋に裁判を通した結果ではなくて、各国が妥協点を探った結果としての超法規的措置であったと聞けば、違和感を抱かずにはいられない。許されないはずの行為を犯した人間を、そんな本質からズレた方法で許してしまってよいのであろうか。そうなると、東京裁判じたいの位置づけというものもますます怪しい。ネット右翼が時折その正当性を云云することがあるのも、もちろんそれに与するつもりはないけど、ある意味では的を射ているのかもしれない。とにかく、東京裁判というものの実態について、今回は掘り下げて学ぶことができてよかった。

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2016年01月04日

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本書は、東京裁判が「『文明の裁き』と『勝者の裁き』の両面をあわせもつ」ものとした上で、国際政治の舞台及び手段であったと提唱している。さらに本書は、国際政治としての東京裁判の目的が、「連合国と日本の双方にとって『国際政治における安全保障政策』」にあったことを指摘している。

本書は、「歴史」の確定自体が政治的行為であるとしたうえで、東京裁判を「国際政治の結果」と割り切ることが重要であるとの見解を示している。今後東京裁判を考えていく上で、「文明の裁き」「勝者の裁き」といった従来の対立構図にこだわるのではなく、「国際政治の結果」として成功したのかどうかを考えることが、研究の一方法であることをも語っているのではないだろうか。

内容、文章ともに非情にわかりやすい。東京裁判が何だったのかを考えたい人には必携の一冊だろう。

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2010年07月17日

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東京裁判を勝者にやらせたのは失敗だったと笹川良一は言っていたらしい。
事後立法そのもののA級戦犯より、九州帝国大学米兵生体解剖事件と言ったB級戦犯の方が罪は重いし裁かれて然るべきだと言う見解は、その通りだろう。
だが日本人の中には勝者による敗者への一方的リンチだと感情、反発が残っていると思う。

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2023年10月19日

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改めて東京裁判について見つめ直すことが出来ました。
知らなかった所も、よく分かりました。
何だかんだ言っても、結局勝者が敗者を裁く、歪んだ裁判です。

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2023年07月08日

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極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判を様々な角度から克明かつ実証的に論じた一冊。
著者の立場は、「東京裁判史観」といわれる肯定論に立つものでもなければ、単純な否定論に与するものでもありません。
「あとがき」から引用すれば、

東京裁判の「意図」よりも、政策としてどうだったかという「結果」を評価し、そのさい「連合国側から見た場合」、「日本側から見た場合」と目線を変えることが有用であると考えている。

と、明快に宣言されています。

章立ては以下の通りです。

第一章 東京裁判をどう見るか
第二章 東京裁判の枠組みはいかにして成立したのか
第三章 連合国は何を告発したのか
第四章 日本はどのように対応したのか
第五章 判決はいかにして書かれたのか
第六章 なぜ第二次東京裁判は実施されなかったのか
第七章 戦犯釈放はいかにして始まったのか
第八章 なぜA級戦犯は釈放されたのか

裁判の成立過程から、逮捕・起訴、審理の過程、判決、後処理まで一連のフェーズに分け、また、判事団・検察団・弁護団それぞれのグループの構成や内部での路線対立など事細かに論証されていきます。判事側にしても、弁護側にしてもまったく一枚岩ではなく、個人個人の信条やそれぞれの出身国の国内事情、あるいは個人的なレベルでの好き嫌いも含めて深刻な路線対立が存在したことが明らかにされており、そのことからだけでも東京裁判を一元的な肯定/否定で評価することが不適切であるということができると思います。

これを読むと、東京裁判が「裁判」という形を取りながら、まぎれもなく「政治」であったことがよくわかります。
連合国側がドイツのニュルンベルグ裁判とのバランスに腐心したり、裁判に参加した連合国側各国がそれぞれに異なる国内世論の影響に配慮する必要があったり、冷戦構造が確立していく中で東京裁判が東西両陣営の駆け引きの場になったり、と枚挙に暇がありません。
また、戦犯に対する日本国内世論も時代につれて変遷していく過程にも興味深いものがあります。終戦直後は戦犯に対して非常に厳しい世論があったものが、裁判の長期化・占領の終了を迎えるにつれて同情論へと変化し、そして戦犯釈放が完了し高度経済成長を経て経済的に豊かになるにつれ戦前否定の考え方が一般化するとともに戦犯に対するネガティブな見方が支配的となった、と解説されます。

これまでまったく知らなかったトリヴィア的知識も得ることができました。
たとえば、
・A級、BC級といった戦犯の区別は、悪質度や重責度でABCと並べたといった序列関係にあるものではなく、単に裁判所憲章第五条の(a)項(b)項(c)項に該当するというだけの意味しかない。
・占領終了後、巣鴨プリズンが日本政府管轄になって以降は、「一時出所」の制度が相当緩やかに運用され、A級受刑者においても「3、4日外泊して帰ってきて一晩監獄で過ごしまた帰宅する」なんてことも珍しくなかったり、「職業補導」名目で企業に毎日「通勤」するBC級受刑者がいたりなどした。といった話。

克明に記述された大作なので読むのはちょっと大変ですが、東京裁判の全体像をイデオロギーから離れて客観的に知りたい、という人にはお勧めの一冊です。

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2019年01月06日

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安倍首相の靖国参拝を受けて再読。思えば本書を最初に読んだのも、小泉首相(当時)の参拝問題がきっかけだった。

例えば「A級戦犯」という言葉。今日では「敗けた責任を負う者」として使われることが多いが、東京裁判で裁かれたのはそうではなく、それまでの国際法では規定されていなかった「戦争を起こした罪」が“事後法”として適用された。本書は膨大な史実をもとに、一切のイデオロギーを排した地点において、東京裁判を総括している。

本書を読むと、東京裁判が当時の国際状況を反映した、いってしまえば「ゲーム」であったこと、そしてそのゲームは今も続いていることを感じる。一方で靖国へのA級戦犯合祀が東京裁判否定論者によってなされたという事実を考えると、この問題は国内でもそう簡単に対処できるものではないと思う。

結局のところ、靖国問題は、日本人として東京裁判を肯定するのかどうかという根本的命題の表層でしかない。すなわち「ゲーム」を否定するのかどうかということだ。そしてそのことは、ほぼ全世界を敵に回すことに他ならない。そこまでの覚悟をもって、世界を相手に主張することができるのだろうか。本書を読むたびに、頭の中でそんな堂々巡りを繰り返している。

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2015年06月07日

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尖閣を巡るプロパガンダの中での戦後秩序発言。河野談話を見直しを発言をした安倍首相に対する米の反応。先の大戦の戦勝国は、勝ち取った枠組みを手放しはしないのだ。このような国際環境を理解するには、「東京裁判」を巡る政治史的理解は避けて通れない。本書は、主観を排しながら経緯をまとめている点で、必須の基本的文献であろう。

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2013年04月03日

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[ 内容 ]
「東京裁判から60年。ようやく〈事実〉に基づく、冷静かつ実証的な研究がなされる時代がきたとの感に打たれた。〈歴史〉が待ち望んでいた書だ。」――保坂正康(ノンフィクション作家)
東京裁判は「国際政治」の産物以上のものではない。
イデオロギーを排し、徹底的な実証と醒めた認識で「文明の裁き」と「勝者の報復」をめぐっての不毛な論争にいまこそ終止符を打つ。

[ 目次 ]
第1章 東京裁判をどう見るか
第2章 東京裁判の枠組みはいかにして成立したのか
第3章 連合国は何を告発したのか
第4章 日本はどのように対応したのか
第5章 判決はいかにして書かれたのか
第6章 なぜ第二次東京裁判は実施されなかったのか
第7章 戦犯釈放はいかにして始まったのか
第8章 なぜA級戦犯は釈放されたのか

[ POP ]


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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年11月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「共同謀議」という概念の導入により被告を一網打尽にすることができたが、裁判は長期化した。この東京裁判を受容することは日本側にとっての安全保障政策であって、戦後政治と対米協調への移行をスムーズにし、「東京裁判史観」は学問的な概念ではなく、また「自衛戦争論」や東京裁判否定論を言ってみても、それは東京裁判の法廷審理を国内的次元で再現することにしかならないと言う。

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2016年08月13日

Posted by ブクログ

学校でも習い、その後大人になってからも夏になると耳にする東京裁判。
でも実態について詳しくは知らなかったのでいい勉強になりました。

この話題に関する話は様々な思想などにより、知るというよりは、刷り込むような本が多いように思います。
その中で、本著は比較的、証拠書類などを元に当時の東京裁判を読者の目に浮かびあがらせることに成功している1冊と思います。

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2011年05月02日

Posted by ブクログ

 新しく知る情報もあっておもしろいはおもしろかったのですが、主義に流されないことを気にしすぎるあまり、歴史の持つおもしろさがかけてしまったように思われます。淡々と事実が適時されるのはよいのですが、退屈に感じることがあったというのが、正直なところでもあります。最も、最新の情報をもとに書かれていて、正確な東京裁判の理解の助けとなることは確実でありましょう。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

本書は是非をあえて論ぜず、東京裁判を「国際政治」の枠内で論じようとするところに非常な新鮮さを感じました。

本書を読むと、「東京裁判」を利用し国際政治への緩やかな復帰を目指していた吉田茂を中心としたグループの考え方がはっきり読み取れます。

東京裁判を利用したのは、アメリカでもイギリスでもない、ほかでもなく日本そのものだったのだワケです。

もうひとつ、東京裁判というと始めに結論ありきの裁判と見られがちですが、検事団、判事団ともに多くの意見の齟齬が生じており、判決までほうほうの態で漕ぎ着けたということが本書でよく分かりました。

そこには冷戦の始まりという国際政治の影響が、すでにこの裁判を覆っていたことを本書は鋭く指摘しています。

東京裁判を語る上で、近年稀に見る好著。

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2009年10月04日

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