【感想・ネタバレ】江戸幕府と国防のレビュー

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Posted by ブクログ

「自国は鎖国中である」と宣言すれば鎖国という状態を維持できるわけではなく、南蛮船、唐船、ロシア船などの来航に、繊細かつ臨機応変な対応があってこそ維持できたことがわかる。外交スタンスとして学ぶべきところが多いのではないだろうか?

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2013年04月17日

Posted by ブクログ

 「鎖国」下の徳川幕府による「異国船」対策、沿岸警備・海防体制の変容・変遷を長崎の状況を中心に明らかにしている。一般に近世の海防問題が自覚されるのは、せいぜいラクスマン来航以降、少し物知りでも「ハンベンゴロウ」事件以降で、江戸時代前期・中期は偶発的な漂流民を除けば、対外的な緊張関係はなかったように錯覚しがちだが、本書を読むとそうではないことがよくわかる。「鎖国」完成後もポルトガル船や英国船の貿易再開を目指す動きや、カトリック宣教師の潜入に対する危機はあり、また明清交替後は中国船の「海賊」行為が問題となり、 特に享保期には密貿易の「唐船」に対する武力行使や囮捜査による拿捕が敢行されるなど、「異国船」問題は幕府にとって終始重要な政治課題であった。

 興味深いのは、フェートン号事件までは「最前線」といえる長崎においてさえも、住民保護の体制は顧慮されておらず、もっぱら「将軍家の威光」の保持だけが問題になっていたという指摘で、海防体制における江戸の幕閣と現地の奉行と関係諸大名間の認識の「ずれ」も含めて、個別領有権と身分制を前提とする前近代社会の「限界」が露呈している。それだけに本書の書名や本文で「国防」「有事」といった近代的な概念を多用しているのは疑問で、叙述自体は充実しているだけに惜しまれる。

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2018年09月14日

Posted by ブクログ

 この本は、「一七世紀前半から一九世紀前半における幕府対外政策のなかでも異国船対策」(P.7)について述べている。この分析により、「ロシア船来航以後の新たな時代的課題に対応するために、どういった準備が幕府にできていたのか、逆に準備できていなかったのかが明らかにされる」(P.10)。「この時期にも、通商を目的としたポルトガル船、イギリス船の来航があった」(P.7)のであり、常に外国との接触の可能性はあったのだ。

 要約するに、
「①キリスト教禁止の徹底にともなうなかで沿岸警備体制を充実させていった段階、②実際の異国船対応から明らかになった課題を克服して沿岸警備体制を再構築した段階、③民心交代後の環シナ海社会の社会経済問題、日本の場合は銅の海外輸出制限から派生した諸問題への対応を支える装置として沿岸警備体制を再定置した段階、④ロシア・イギリス・アメリカといった欧米への警戒が高まるなかで全国的な沿岸警備の強化が図られ異国船対策の抜本的見直しがされた段階」(P.193)
の4段階に分けることができる。
 それには、「長崎を中心とした沿岸警備のシステム化が試みられたが、それは大名家の軍事力に依存したものだった」(P.193)。その長崎では、「銃後のことや非戦闘員(老人や女、子供、病人までも含む)の避難場所なども計画された町ぐるみの有事対応策」(P.198)が考えられていた。

 中身としては、研究をまとめたもので、教科書的に読めると思う。味気ないと言えばそれまでだが、講談社選書メチエなので、そこはご愛敬。

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2013年04月14日

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