この本は、「一七世紀前半から一九世紀前半における幕府対外政策のなかでも異国船対策」(P.7)について述べている。この分析により、「ロシア船来航以後の新たな時代的課題に対応するために、どういった準備が幕府にできていたのか、逆に準備できていなかったのかが明らかにされる」(P.10)。「この時期にも、通
...続きを読む商を目的としたポルトガル船、イギリス船の来航があった」(P.7)のであり、常に外国との接触の可能性はあったのだ。
要約するに、
「①キリスト教禁止の徹底にともなうなかで沿岸警備体制を充実させていった段階、②実際の異国船対応から明らかになった課題を克服して沿岸警備体制を再構築した段階、③民心交代後の環シナ海社会の社会経済問題、日本の場合は銅の海外輸出制限から派生した諸問題への対応を支える装置として沿岸警備体制を再定置した段階、④ロシア・イギリス・アメリカといった欧米への警戒が高まるなかで全国的な沿岸警備の強化が図られ異国船対策の抜本的見直しがされた段階」(P.193)
の4段階に分けることができる。
それには、「長崎を中心とした沿岸警備のシステム化が試みられたが、それは大名家の軍事力に依存したものだった」(P.193)。その長崎では、「銃後のことや非戦闘員(老人や女、子供、病人までも含む)の避難場所なども計画された町ぐるみの有事対応策」(P.198)が考えられていた。
中身としては、研究をまとめたもので、教科書的に読めると思う。味気ないと言えばそれまでだが、講談社選書メチエなので、そこはご愛敬。