【感想・ネタバレ】アフリカの蹄のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

帚木さん、さすがです。
ストーリーはドラマチックでぐいぐい読ませるし、人物は魅力的だし、何よりこの題材。

フィクションではあるが少し前の南アフリカ共和国に状況が似ていて、スラムに生きる黒人たちが欲していたのは本当に小さな、よその国では疑問すら持たないような当然の権利だった。

日本人として恵まれた環境に生きていること、充分幸せ(偏った価値観かもしれないが)なのにきちんと感謝できていないこと。そういうのはもちろん感じて頭のどこかで反省したりはするんだけど、たぶん大事なのはそこじゃない。別に説教くさいわけでもなく、読んでいる間はただただ子供たちの病気が治りますようにと祈っていた。

ただ白人側の章を読んでいると、あんなに親から刷り込まれていたら迫害を当然と思うのも無理はないのかも…と思ってしまった。流されやすい自分が嫌になる。いやでもやっぱり重要なのは人種ではなく一人ひとりの人格だよね。

最後のゼネストと、そこからの世界の反応は感動でした。

目次を読むだけでも、そこにまた物語があるようで涙ぐむ。

AMANDLA!

0
2014年04月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

傑作。
ただ感動。
帚木さんの本はいま別のを読み進めているが、
この"アフリカの蹄"は越えられないと思う。

アパルトヘイト下の南アフリカが舞台。
心臓移植を学ぶため、一人日本から留学した作田信。
友人のサミュエルと恋人のパメラとの出会いから、
黒人スラム街の診療所を手伝う事に。

ある日から黒人の子供のみに原因不明の奇病が発生。
薬も医療器具もないなかで必死に戦い続けるが、
裏では国家的な民族浄化が粛々と進められていた、という話。

まぁーまぁー、よくあるストーリだが、
まず白人の差別感情がすさまじい。
黒人を家畜以下に考え、家畜以下に扱う。
どこまでも追い詰めていく狂った選民思想に寒気がする。

ただ、差別する側の人間は、自分が見えない。
いかに狂ってしまおうが、狂った側に居てはそれが分らない。
そして、差別する側とされる側の中間にいる人間は、
疑問を持ちながらも、差別する側付いてしまう。

作田信は、そんな邪念を払い除けながら、
ついに黒人スラム街の人間と共に差別に対して立ち上がる。

非暴力による行動によって、最後には勝利を勝ち取る。
作田達の行動を世界中が助けるシーンは、涙なしには読めない。
感動。
感動。
感動。

どれだけ援助を必要としている人々がいるか。
何をしろと言うわけではない。
何かをしなければと考えさせられる作品である。

0
2012年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

南アフリカのアパルトヘイトを題材にし、白人の支配層が絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を殲滅しようとする。

そんな中で心臓移植を学ぶ為に南アフリカに来ていた日本人医師・作田信が主人公をつとめます。

大学病院へ行かない時間を使い、スラム街の診療所の手伝いを始めた頃にその地域で生活する黒人の子供たちの間で奇妙な病が流行りだす。

次々と命を落としていく幼い子供たち。

作田はなんとかしょうと、大学病院に患者を連れて行くも、黒人だからという理由で診察すら受けることを許してもらえない。

時を同じくし、作田の周りの人々が彼に対し圧力をかけ始める。

その間にもどんどん広がりをみせる病と、命を落とす子供たち。

使命感に燃える作田はウイルスの専門家レフ助教授に助けを求め、ついに絶滅したはずの天然痘が黒人の子供たちの間でだけ蔓延していることを突き止める。

医療ミステリーの要素、冒険小説の要素も加わった作品であるが、アパルトヘイトという人種差別に立ち向かうヒューマニズム作品。

積読となっているネルソンマンデラの「自由への道」を読みたいという欲望と共に、人間の恐ろしさと温もりに触れられる作品でした。



説明
内容紹介
絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師。留学先の南アフリカで直面した驚くべき黒人差別に怒り、貧しき人々を救うため正義の闘いに命をかける。証拠品の国外持ち出しは成功するか!? 黒人差別に怒る日本人医師を描く冒険小説!絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師。留学先の南アフリカで直面した驚くべき黒人差別に怒り、貧しき人々を救うため正義の闘いに命をかける。証拠品の国外持ち出しは成功するか!? 山本周五郎賞受賞作家が描く傑作長編冒険サスペンス。
内容(「BOOK」データベースより)
絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師。留学先の南アフリカで直面した驚くべき黒人差別に怒り、貧しき人々を救うため正義の闘いに命をかける。証拠品の国外持ち出しは成功するか!?山本周五郎賞受賞作家が描く傑作長編冒険サスペンス。
著者について
1947年、福岡県生まれ。東京大学仏文科卒業後、TBS入社。2年間の記者生活を経て九州大学医学部に進んだ、現職の精神科医。’93年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞を受賞。著書は『臓器農場』『空夜』『総統の防具』『逃亡』など多数。

0
2021年08月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これは良かった!正直『閉鎖病棟』があんまり好きじゃなかったから、期待はしてなかったんだけれど、いい具合に重くて。
アパルトヘイトがあった頃の南アフリカ共和国を舞台にした、日本人医師・作田信を主人公としたストーリー。本当にこんな非人道的な政策がとられていたのか…。人間てむごいな。合衆国大統領が黒人の現代からは考えられない。まあまだ差別は残っているんだろうけど。
ラストの大行進(スト)の場面は、なんだか胸がじ~んってんなったよ。

0
2019年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師」の話。

医療系のパニック小説も実は好きなので、本の紹介文を見て予約。
だが実際に読んでみて、ウィルスの怖さ以上に人種差別の問題が何よりも大きく重い。
アパルトヘイトについて、恥ずかしい事に大雑把な知識しか持っていないが
本書に描かれる「この国」の様子は、当時の実際の状況を表しているのだと思う。
黒人医師サミュエルの言葉「黒人が解放されることは、白人が解放されることなんだよ」が胸に来る。
誰かを抑圧し支配して生きる事は、実際には自分自身が、人間として大切なものをすり減らし失って生きていくことなのだと思う。
久しぶりに真面目なことを考えたような・・・心に残る一冊です。

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2012年08月08日

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