【感想・ネタバレ】新装版 ひめゆりの塔のレビュー

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Posted by ブクログ

▼題名は知っているし、中身も大体察しがつく。そして恐らくそれは間違っていない。けど読んでいない。と、いうグループに入る1冊。▼「ひめゆりの塔」初出1949年。講談社文庫。石野径一郎(いしのけいいちろう)という方が書かれた小説。ノンフィクションではありません。▼石野さんは1909-1990だそう。沖縄の人で石野という姓は、元沖縄県民の自分としては「?」と思ったのですが、ペンネームで本名は高江洲(たかえす)さんだとネットで知って納得。▼首里士族の家系で戦前に東京の大学に行き教員になり、並行してブンガク活動をされていたそうなので、戦前の沖縄県民としてはざっくり恵まれている境遇だったのだろうと思います。まあ、本を書く活動をされる方はほぼ皆さんそうでしょう。▼戦後直後の沖縄には色んな意味で簡単には渡航できませんから、石野さんは「現地に行かずに聞き取り取材をもとに書かれた」そうです。戦後に、どうやら雑誌編集などを仕事としながら執筆活動も行ったとのこと。▼「ひめゆりの塔」は1949年から雑誌に連載。経緯は知りませんが、1951年には演劇化。そして1953年には東映制作配給で映画公開。今井正監督、水木洋子脚本、津島恵子、香川京子など出演、音楽は古関裕而。古関さんは「露営の歌」「長崎の鐘」「オリンピックマーチ」など、すごいキャリアですね。朝ドラになる訳です。▼この1953年東映・津島恵子版の「ひめゆりの塔」が超・大ヒット。「東映を破産から救った」とまで言われたそう。実は未見なんですが、ネットで役名をざっと見た感じ、内容は原作からかなり変更されていると思います。まあ小説のまんまだとさすがに一般映画としてはキツイ。酷すぎる。▼その後、1956年(日活)、1968年(日活、吉永小百合、浜田光夫)、1982年(独立プロ、栗原小巻、古手川祐子)、1995年(東宝、沢口靖子)などなどで映画化されています(ただ、全てが、小説「ひめゆりの塔」の映画化ではありません)。▼小説として読んだ感想で言うと、大変に失礼ですが、「予想よりも面白かった」。もっと、悲惨なだけのメロドラマかな、と覚悟して読みました。いや、十分に悲惨なんですが、悲惨な中にも10代主人公たちの「平和な日常の頃の人間関係やキャラクター」が描かれていて、それが「戦場の悲惨な現実」の中に手触りを残すところが、サトウキビ畑に海風が吹いたかのように胸がザワつきます。激動の中の無邪気な少女たちが、無邪気なぶんだけ状況を浮かび上がらせる。この手法は「若草物語」なんかも同様。▼とは言え、一つの小説として考えると主人公たちが観念的だったり、違和感を感じることもあります。何でもそうですが、短所をあら探しすればキリがありません。ただ、長所は凄いですね。無論のこと小説ですから、「事実をベースとして想像した物語」なので、ノンフィクションだと混同してはいかんと思いますが、小説という形式にしなければ得られない、不条理・理不尽へのフルスイングな怒りの情熱は、受け取れます。脱帽です。僕もあなたも、たれであれ、二つと無いヒトの命、尊厳、人生が、政治や忖度やプライドのために、ゴミのように捨てられて行きます。仕方無かった、では済まされない。▼1945年の4月~6月に行われた「沖縄戦」のど真ん中にたたき込まれた、沖縄県立第一高等女学校(校誌が「乙姫」)と、沖縄師範学校女子部(校誌が「白百合」)の生徒たちのお話です。ひめゆり学徒隊、というネーミング(どこまで使われたかはかなり疑問だそうですが)で看護要員として戦場に動員されました。(男子中学生は「鉄血勤皇隊」として動員されました。かつての大田知事がその生き残りです)どうやら史実で言うと職員含め240名のうち、123名が死亡したそうです。▼沖縄戦は、首里陥落以降は特に、戦争というものでもなく。勝ち目も無いのに県民全部巻き添えにして砲火の中を何ヶ月も逃げ惑った挙げ句、軍人(将校)たちが一般人にも「玉砕」を求めました。6月23日に司令部機能が自決するのですが、どう考えても雌雄は決して居た最後の数週間で全体の死者(死者行方不明者併せて30万人くらいか)の6割を数えたという、痛ましい戦争です。▼飢え、病気、集団自決、自殺命令、スパイ疑惑、などなど色んな事がありますが、その中で傷病兵の看護に使われた女学生たちのことは印象に残っていたらしく、多くの同類の慰霊碑がありますが、ひめゆりの塔は特に有名です。1946年7月に建立されたそう。▼長く日本本土で暮らしていた作家だからなのか、全体に「沖縄人=絶対善」「ヤマトンチュ=軍人=絶対悪」というヒステリックな世界観にはなっていません。▼むしろ、「へー」と思ったのは、城野、八木、という名前の登場人物(軍人)を除くと、物語内に名前を持って登場するヤマトンチュの軍人なり兵隊は、大まかに言うと人間味のある、かつかなり理性的知性的な描かれ方。▼ただ、当たり前のことですが、これは聞き書きを元にしたフィクションであって、ノンフィクションではありません。作者も戦場にいたことはない。(ただ、東京なりで空襲体験はあるはずで、短期間だけ兵役体験もあるようです)

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以下、備忘録。

▼主人公はひめゆり部隊の
・伊差川カナ
・伊差川ミト
の姉妹と、
・荻堂雅子(うたこ)
であると言える。

▼南部での彷徨から始まり、摩文仁でのカナの生き残り、恐らくは投降、という場面で終わる。

▼女性の石川先生=冒頭の章で、足を滑らせて急流?に落ちて死亡。自殺なのか。

▼長嶺真也=カナの親戚。途中で巡り会い、別れる。一応士官。雅子が慕情を寄せる。カナとの恋愛を疑う。

▼細川三之介=冒頭の章にだけ出てくる、金沢出身の兵隊。

▼吾妻先生、という男性教諭が居て、ミトが純に恋をしている。

▼城野、という軍医と、宮村という婦長、そしてほぼ出てこないが校長。軍医の八木。このあたりが、ザックリ言うと悪い役。

▼波平暁子という女生徒が、一見、軍国主義派の少女のように出てくるが、実は主人公たちと同じく理不尽への怒りを持っている。最終的に城野の殺して自分も死んだように描かれる。

▼福田と清見というヤマトンチュの兵隊ふたりのエピソードが印象に残る。

(以上)

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2020年03月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルは知っているけれど、小説を読んだことも映画を観たこともなかった作品(大多数の同世代が、同様であろう)を、今さらながら読んでみた。

小説としては、少々読みにくい。
(視点人物が前ぶれなく唐突に、次々と変わってゆく……。)

しかしそこには、(作品自体はフィクションであっても)歴史が物語る歴然とした事実が積み重ねられているため……、身につまされる思いで読み進め“させられ”た。


沖縄戦についてはここで多くは語れない。何を語ってみても、チープな感想にしかならないから。

唯一言えること……日本人は、皆これを読むべし。
語らなくて良い、感想など言葉に表さなくて良いから……皆、「ひめゆりの塔」を一度は読むべし。


★4つ、8ポイント。
2017.02.20.図。

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2017年02月21日

Posted by ブクログ

もっと悲しくなるストーリーかと思ってました。
戦時中であっても昭和初期という時代でも、10代の女子なら恋したり、友情関係とか色々あって、悲惨な境遇ながらも青春があって、悲しいだけのストーリーではなくて、でもちょっと文章が読みにくかった。

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2022年08月14日

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