【感想・ネタバレ】教養としての 世界史の学び方のレビュー

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Posted by ブクログ

山下範久編著. 2019. 教養としての世界史の学び方. 東洋経済新聞社.

大学学部以上の一般教養授業での使用に耐える、2010s後半時点でのスタンダードな歴史学的トピックを揃えており、使用に耐える。同書は2016–2018年度の立命館大学アジア・日本研究機構での(おそらくは学内競争資金で)採択された研究プログラム「『大分岐』と大収斂:アジアからの世界史像の再構築」の成果物として刊行されており、科研費番号JP17K04102の成果は同書の第I部に反映されているという。コラムを含めた共同執筆者総勢14名は、立命館大学だけではなく全国の研究者・大学教員が参加しているが、研究代表者兼編者の山下範久は立命館大学の国際関係学部教授である。
特に良かったのは、モンゴル帝国の覇権を当時の温暖化と関連づけて図解付きで整理してみせた岡本隆司分担執筆の第4章「アジア史から見る世界史(129–178)。ジャレド・ダイアモンド的な語りとは別に、「どのようにユーラシアの盛衰を眺めるか」について新たな論点をもたらしてくれた。シルクロード、温暖化と寒冷化のサイクル、各国の航海技術の進展と明清王朝・ヨーロッパそれぞれとの関係、世界史=ヨーロッパ史という語り・史観がアジア史を見えにくくしたもの、など。

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2024年03月10日

Posted by ブクログ

帯のとおり「西洋中心史観から全世界レベルで世界史を捉えなおす」本。高校世界史の知識がざっとある程度の身だと、西洋・近代中心の世界史の考え方から、地域、市場、社会、国家、戦争、家族、文学、宗教とさまざまに見直す視点を与えてくれる。

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2022年02月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルが流行りをおったようなものだったのでカジュアルな内容かと思いきや、大学学部導入レベルぐらいの内容の濃さと専門性に圧倒された。

理系の自分にとっては、そもそも日本で言うところの文学部系の学問は「自分が学んだ"学問"と同じものなのか」という疑問があったのだが、最初のほうでしっかりその疑問をといてくれており、歴史学とは何かということをちゃんと解説してくれている。

その後はヨーロッパを中心としたこれまでの歴史学を批判(というか乗り越える)という共通の問題意識から、様々なトピックが提供されている。新書でのお手軽の歴史本とは全く違うので、全ての人が咀嚼可能な内容ではないけど、しっかり勉強したい方にはおすすめ。参考文献も充実している。

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2019年08月01日

Posted by ブクログ

横断的な視点の世界史は興味深い。しかし、記載内容の範囲がとても広いので、それぞれの分野を垣間見る程度になってしまう。詳しくは各分野の専門書で補うことになる。

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2023年09月27日

Posted by ブクログ

おもしろい。世界史の史実ではなく、世界史とはなんなのか、どういうふうにとらえていけばいいのかといったことが書かれている。一言に世界史といっても、さまざまな切り口があり、それぞれの視点によってバイアスがかかっている。自分たちの視点には関係のない地域の歴史に関しては切り捨てられ、なかったことにされていたこともある。また、過去においては自分たちの世界が人間の世界であり、その外の世界には怪物が住んでいるとされていた時代すらある。また現在の世界史はヨーロッパ視点である。このような視点で世界史を考えたことがなかったので非常に興味深かった。

第Ⅰ部私達にとっての世界史はいかに書かれてきたか
近代において歴史学は個性記述的科学として自己を正当化することで科学としての地位を確保し、近代国家の保護をうけ、大学に学部や講座のかたちで制度化され、学会も設立されて歴史学者のコミュニティが組織された。

歴史は過去に関する記述である。
私達が学んでいる歴史的記述は「近代」を基準とするパースペクティブに埋め込まれたものだ。それは唯一の普遍的な世界史のパースペクティブを保証するものではない。
現在地球に住んでいる私達人類は血縁関係などの小さな範囲をこえて大規模な社会的協調行動をとることだ。たとえば「自分たちがなんらかの共通の起源から生まれでており、運命をともにした仲間である」などといったかたちの物語を共有する能力を条件としている。その物語は「神話」と呼ばれることもある。
神話と歴史の区別はしばしば困難な場合がある。
古代、中世、近代の三区分法は、近代(17世紀頃)の歴史学において生まれた。
近代を基準とする歴史館にはバイアスがかかっている。
・近代をゴールとして、過去、中世と時間をたどる物語を形成しようとするバイアス
・時間軸上の社会の変化を近代化に向かう変化として意味づける圧力をともなう。逆にいえば、近代化の尺度で評価できる変化が観察されない社会に対して「歴史がない」という切り捨てを行う傾向を帯びる。
・ヨーロッパ中心主義

・グローバル化のインパクト
歴史学において「グローバル化」といえば「世界が一体化していく傾向」という大きな主題に関連することを指示するために用いられることが普通。
・近代以前の非西欧に、西欧の歴史区分でわけようとすると、うまく分けられない。
・「世界の一体化」とは。グローバルな連関のなかに置かれていたさまざまな「世界」の間の関係の様式が変容していくプロセス。

イマニュエル・ウォーラーステインが「あらゆる国家は発展を目標としており、その発展という目標への進歩は測定可能、かつ合理的な政策によって加速可能である」という考え方の「発展主義」を提唱した。
ヘゲモニーの概念
権力にとって被支配者から支配の同意をとりつけやすくする文化的な優越権のことを示す概念としてイタリアのマルクス主義者であったアントニオ・グラムシが導入したもの。国際関係論の文脈では国際システム全体においてシステムの秩序や規範を定めるイニシアチブをとるほどの大きなパワーを示す概念として一般に用いられる。ウォーラーステインは彼の世界システム論の枠組みの中でそれを定義し直し、資本主義的な世界=経済の中で、生産、流通、金融のすべての面で中核的諸国にたいする優位を保持する国家と規定してそうした国家が近代世界システム基本的な秩序や規範を規定し、これを護持することを示そうとした。


第Ⅱ部世界史と空間的想像力の問題
世界史はどのような世界地図を思いうべながら書かれてきたか。そして書かれうるか。
今日の一般的な世界的な枠組みは「ヨーロッパ中心主義」である。

つきつめて考えると、なんらかの空間をまとめて「地域」と括る発想と、なにを「移動」や「交通」ととらえるかという発想は表裏一体である。私達はまず地理的な分節があり、その境界をこえることを移動と捉えがちだが、ヒトやモノの移動が先にあって、その移動の流れが作る渦が空間的なまとまりを構成するというほうが歴史の実相に近い。

15世紀末に大航海時代がはじまった。中央アジアではティムール朝がほろび、シルクロードが地盤沈下していった。これは交通の幹線と世界史の舞台が海洋に変わったことを示している。

アメリカの歴史学者ケネス・ポメランツは古くは東西とも等しく経済発展していた世界が18世紀末を境に袂を分かちヨーロッパだけが発展し続けたとする説を提唱して、これを世界史上の「大分岐」と称した。

完全に自立的な地域概念は存在しない。地域概念の背後にはなんらかの意図が存在する。

人類の歴史は移動にまつわる歴史として概観できる。

第Ⅲ部社会科学の基本概念を歴史化する
社会科学の基礎概念を個別に取り上げてそうした概念が近代を基準とした歴史記述にどう埋め込まれたか、そしてより広い文脈の中で時代や場所をまたいでそれらの概念を用いようとする時にどのような課題があるのかのべる。

「市場」という概念。
・人間の本性が交換性向にある、市場交換が人間の社会関係の営みとなにかしらの緊張感をはらむことなく推移してきたという考え方にたいしては多くの歴史家、人類学者たちが否定的な立場をとっている。
・貨幣の起源とその本性
「商品貨幣説」貨幣の価値はその素材の商品としての価値に由来する。
「信用貨幣説」貨幣の本質が「負債」を計算するシステムにあると考える。負債を記録するためのもの。
信用貨幣説のほうが説得的。

「市民社会」概念の歴史性と普遍性
「市場」とは逆に「市民社会」の概念はむしろ西欧の近代化の経験を基準とした捉えられかたがつよく、またそのことが自覚されやすい概念。
3つの市民社会概念。
・全近代社会における「市民社会」
人々の政治的参加によって成立する「公民社会」
・近代的商業社会としての「市民社会」
自由な経済社会。
・ヘーゲル=マルクスにおける「市民社会」と国家の関係

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2020年04月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

会社の研修で推薦図書になっていた一冊。

印象に残ったところ。
・経験というのは個人の体験でしかなく自ずとその範囲も規模も限定されてしまうが、歴史は少なくとも過去5千年にわたる文明史のあらゆる人々の経験の集大成なので、個人の経験より遥かに多くのことを学ぶことができる(p.14)
・「歴史に学ぶ」ことができないのは「人は見たいものを見るのであって現実そのものを直視する人は少ない」から。現実から「意味」を見いだすことができていない(p.17)
・「四大文明」という歴史用語を使うのは日本だけ。四大文明も五賢帝も世界史に不慣れだった日本人が世界史を理解し整理する段階で生み出した一つの分類方法(p.57)
・情報収集力が国家の安全保障を大きく左右するものとなっている。ある意味、物理的な軍備より、情報収集力のほうが重要な時代(p.82)
・マハトマ・ガンジーの言葉。Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever. (明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい)(p.118)
・「過去の事例を見ていくと民族の移動によって言語や文化、そして宗教が入り混じっていったとき、どのようなことが起きるか、ある程度の想像がつきます。ですから、今後、イスラム教がヨーロッパの中に入っていったときに、ヨーロッパの中でイスラム教国家が生まれてくる可能性もあるのです。」(p.184)
・新渡戸稲造『武士道』。宗教でないとしたら、何がわれわれの礼節の背景にあるのか。そう考えた結果たどり着いた答えが『武士道』だった(p.192)
・ポリュビオス『歴史』の政体循環論。ギリシアは独裁制、貴族政、民主政と色々な勢力が権力を持つことを繰り返してきたため常に内紛状態になりやすく大きな国家として成長することができなかった。それに対しローマは独裁制、貴族政、民主政というギリシアが一つずつ行なってきた三つの生体をバランスよく組み込んだ政治(共和制)を行なったので国家を大きく成長させることができた(p.239)
・どんな時代にも立派な人物はいるが繁栄とともにそうした人の絶対数が少なくなっていき社会全体のモラルが低下していく。興味深いのは、モラルが低下していくとともに人々が優しくなっていく傾向がみられること。(中略)退廃に向かう社会では人は自分にも他人にも優しくなる(p.298)

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2020年01月05日

Posted by ブクログ

私は世界史が好きでこの手の本をよく読むが、内容を把握するのは苦手らしい。(それで好きと言えるのか?)
この本は視点がヨーロッパに置かれている一般的な世界史に対して疑問を持たせてくれた点で学びになった。
これまでも「先進国」と「発展途上国」という呼び方にはずいぶん一方的な物の見方だなぁと感じてきたのだけれども、世界史自体が「近代」のヨーロッパが最も先進的であるという当然の前提のもとに描かれていることを意識したことはなかった。

シルクロードと地中海の時代から大航海時代への変遷とか、あまり各地の動きを踏まえて説明できるほどには理解していないけれど、またいろいろな本を読んで少しずつ把握していきたいと思う。

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2019年09月24日

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