【感想・ネタバレ】海を撃つ――福島・広島・ベラルーシにてのレビュー

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Posted by ブクログ

NHK Eテレで紹介あり、著者が語る淡々と語る、あの日から福島での日々。静かに怒っているというお話に、思わず引き込まれました。海を撃つ、という言葉の意味合いも最後にわかり、その重さを受け止め兼ねております。小松理虔さんの新復興論と合わせて読んでゆきたい本でもあります。★五つ

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2021年06月26日

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福島第一原発事故による放射能汚染にどう向き合えばいいのかという素朴な問いの一つの答えは、何はともあれまずは線量を測ることからだと、自身も携帯用の線量計を身に付けながら、汚染の実態がわからず不安を感じている住民に、少しずつ線量観測することを広めていく。それは、筆者がチェルノブイリ原発事故後の対応を、実際にノルウェーとベラルーシのそれぞれ現地を訪れることから知り得た答えでもあった。
いま、世界は新型コロナウィルスの感染脅威にさらされている。有効なワクチンもないまま、とりあえずは自衛するしかないという状況の中で、唯一確かなことは、筆者たちが放射能汚染の実態を知るために線量計を携行して実態を確認したように、新型コロナウィルスについても、今はひたすら検査をすることが最も有効な対策なのだということを再確認することができた。

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2020年07月22日

Posted by ブクログ

筆者の安東量子さんは、広島のご出身であるが、福島ご出身の方とご結婚され、開業のために福島県いわき市の山間部にお住まいになっていた時に、震災を経験される。
現在、「ETHOS in Fukushima」という団体の代表を務められているが、その団体のHPには、団体の目的が下記の通り記されている。
【引用
原子力災害の福島で暮らすということ。それでも、ここでの暮らしは素晴らしく、よりよい未来を手渡す事ができるということ。自分たち自身で、測り、知り、考え、私とあなたの共通の言葉を探すことを、いわきで小さく小さく続けています。
【引用終わり】
この文章の中に言及されており、また、本書「海を撃つ」の中でも記述があるが、安東さんや仲間たちは、いわき市の北側の末続地区という場所で放射線量を測る活動を長年続けてこられ、また、「共通の言葉を探す」ために、「ダイアログ」という名の、対話のための集会を続けてきておられる。

ETHOS(エートス)プロジェクトのHPには、その末続地区での活動(アトラスと呼ばれる)にかかるレポート「末続アトラス2011-2020」のPDF版が掲載されている。上記の末続地区での放射線量測定のPJは2020年で一区切りとなったが、その間の活動の内容等がこのレポートにまとめられている。2022年10月発行、140ページに及ぶ長いレポートである。
そのレポートのあとがきの最後に、安東さんは下記の通り書かれている。
【引用】
自分自身も被災地に住む人間の一人として、つらかった出来事が薄められていくことは希望に違いないと思う。
だが、そのことが、事故が起こった背景にある社会の欠陥をも同時に忘却されていくことになるのでは、事故後の苦労も骨折り損となってしまう危険性がある。平穏を取り戻すと同時に、教訓を深く刻み続けること、この相反するふたつの動きを両立させることは簡単ではないのは確かだ。この記録がその一助になってくれることを願っている。
【引用終わり】
「測る」こと、測り続けることが、末続地区の人にとっては、ある種の「平穏」を得るための一助になった。しかし、平穏を得たからといって、原発事故が起こり、そして、住んでいた土地を追われたり、あるいは、住んでいた地域が崩壊に近い危機を迎えたりしたことの、そもそもの原因や対応のまずさについては忘れてはならず、それを、このようなレポートの形で残しておきたい、という意味であろう。

本書のあとがきに安東さんは、震災の後、「誰かを助ける力が欲しい、痛切にそう願った」と書かれている。その願いは実現しているのではないか。

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2023年06月06日

Posted by ブクログ

「ここで暮らしてきたのだ。ただここで」

理屈ではない。数字でもない。
ただここで暮らしてきたという事実。

誰も決めることはできない。
その人の価値を。
その人が愛する庭を。
その人が愛する土地を。

故郷を失うということが、これほどまでに、つらく、そして複雑な感情を引き起こすのか。

「支援」というものの難しさを実感する1冊。

相互の違いを埋め、信頼を生み出すための魔法があるわけではない。愚直に足を運び、困りごとを聞き、一緒に考える。それしかできないのかもしれない。

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2022年01月23日

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