【感想・ネタバレ】怪談 牡丹燈籠のレビュー

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ネタバレ

15日間で1種の話をまとめた当時の寄席を講談速記したものだそうで、読み応え抜群。負の連鎖による奇妙なめぐりあわせ。有名なお露と新三郎の話が進む傍らで、孝助の物語が同時進行している。読み終えると、忠義の従者による仇討譚という印象が強まった。お露にも新三郎にも罪がないので、ふたりの結末は気の毒としか思えない。死者の執着より生者の悪行のほうが目立ち、孝助側は胸がすくような勧善懲悪の物語だった。

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2020年09月18日

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 カランコロン カランコロン

 下駄の音を響かせ旗本の娘の亡霊が愛しい男の元へと通う。
 先導する女中の亡霊の手には牡丹燈籠、ぼんやり光る。


三遊亭円朝の口演を速記で写した本です。
読者としては、本を読みながら江戸時代の登場人物像を頭に描くとともに、
円朝の口演を寄席で聞いているように各登場人物の声色や状況説明を噺家の声で想像するという、二重に想像できる楽しみが。
さらに速記術というものの記録としても興味深いですね。たまに矛盾がある(登場人物の年齢とか)は、速記のための記載ミスか?と思われるとか。

「牡丹燈籠」といえば、恋人に冷たくされ死んだ女の亡霊が男の元に通い祟り殺す、
…というような認識だったのですが、通しで読んでみると随分印象が違いましたね。
大元の話である中国の「牡丹燈記」を円朝が江戸時代を舞台に膨らませたもので、主従の忠義あり、仇討あり、人情あり、裏切りあり、母子再会ありと盛りだくさん、幽霊話はほんの一部、しかも実は…という、本当に怖いのは人間だねえというお話。裏切りやら殺傷沙汰やらには、これは相当悲惨な終わり方か?!と覚悟したけれど一応因果応報と言うか悪行には報いが下り、忠義の心は報われるという幕引きでありました。全体的に女は報われないな~。f(^^;)

物語の舞台が地図上で分かる範囲で、地名が出てくるとどうやって移動したのかな?など想像しながら読みました。
舞台の旗本屋敷って私の会社の近くみたいです。旗本屋敷の地名が出てきたときには笑ってしまった(笑)

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2015年04月04日

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ネタバレ

渡る世間はなんとやら。一寸先も真っ暗闇でだだっ広いように目には映るが、結句いくら走り回ろうとその場で足踏みしてただけってこってえ……。と、似非牡丹灯籠の登場人物みたいに書いてみたら、まあ胡散臭いことこの上ない。それにしても、こりゃあそれぞれの身分をよーく踏まえてないと、「なんだいこいつあ。おいらには理解できないやい」となりそうで怖い怪談ですね(そこじゃない)。特に「おいおいおい、お前さん、七面倒臭いことは言わずにさっさと敵討ちなんてお止めよ、え孝太さんや」「いやいや、奴は武士なればこれは道理。横槍いれなさるな」と何度も何度も一人芝居。もちろん、贔屓は孝太さんです。安直なネーミングも目に掛けぬよ。それにしたって、カランコロンカランコロン。うるさくって寝られないやい。

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2013年04月28日

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ネタバレ

複雑な人間関係に翻弄されて少々読みにくい印象があるが、怪談としての秀逸さは相変わらず。
牡丹燈籠が怪談の中でも特徴的な理由は次の二つ。
まず、ここに登場する幽霊は、怨みつらみで化けて出る霊ではない。
次に、幽霊であるにもかかわらず「足がある」。
以上を踏まえてぜひ読んでいただきたい。
露の想いの強さに、打たれる何かがあってほしい。

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2012年07月30日

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これを読んでる最中に、CDで落語の「お富与三郎」と「真景累ヶ淵」を聴いたら、すべてが渾然一体となって訳が分からなくなったけど、楽しかった…。円朝まみれ…。

もしドラえもんが現れたら、人形町の寄席末広で「牡丹燈籠」が15日間連続口演された明治17年に連れて行ってもらうことに決めた。

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2011年05月29日

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円朝って天才なんだなーと思います。
漱石が愛したのも道理です。
初めて口語文体で書かれた本です。文学史的にも重要です。
もっと円朝の名と牡丹灯篭が有名になって欲しいなぁ。

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2009年10月04日

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 落語家円朝が幕末1861-1864年頃に、中国の小説などを元ネタとして作った物語で、1884(明治17)年にこれを速記した本が出版されている。話し言葉による物語なので、これはまさに「言文一致」である。
 読んでみると現代文とさほど変わらず、意外に読みやすいし、面白いからどんどん読めてしまう。そして物語は非常に複雑だ。登場人物も多くサブストーリーが錯綜し、おおきな物語を形成している。これを読んで「小説ではない」と断ずる理由は無い。西洋の近代小説と比較しても大変面白い、まさに小説作品なのである。もっとも私は上田秋成の『雨月物語』も見事な近代小説だと思っているので、逆に明治以降、そんなにヨーロッパ文学に注目した「小説」をことさら作り始めようとする必要があったのかな、と疑問に思う。
 本作、「怪談」と呼ぶにふさわしいのは、武士新三郎を恋い焦がれるあまりに死んだお露が、お付きの女とともに幽霊となって現れ、新三郎のもとを毎夜訪れるという、有名な話だ。これを映画化した古いものを以前観たが、いかにもおどろおどろしい雰囲気を作っていた。が、この本を読むとそんなにおどろおどろしいわけでもない。単に「死者の幽霊が出る」というコトへの恐怖が描かれているだけで、もともと恨んで出た霊ではないから害は無さそうではあるけれども、毎夜霊と会い続ける新三郎が次第に痩せ衰え、顔に死相が現れる、という点がまがまがしい。幽霊なるものがケガレ(気枯れ)と捉えられているために、常人がそれに触れると災厄を負う、という民間の思想が呈示されている。
 が、この幽霊談はごく一部だけで、後半はそれとは直接つながらないストーリーで、別の青年が主人の仇討ちを果たす活劇となっている。複数の物語を取り込んだ複合体としての物語なのだ。
 後半の主人公の善なる資質の表れとして、主人への「忠義」がしきりに強調されている。まあ、江戸時代の武士階級の常識なのだが、どうもこの「忠義至上主義」というものは、その流れが現在の日本にもひそかに受け継がれており、良い部分もあろうけれども、悪い思想ともなっていて、忠義だけに生きるゆえに、今や社畜などという経済奴隷が日本中に生まれそのストレスからしばしば凶事を行い、また、安倍晋三への忠誠から中央のエリート官僚が公文書を改ざんするなどという社会-悪に結実しているような気がする。上のもの=お上にひたすら尽くし、そのお上の行いの善悪については全く問わず、つまりひたすら隷従することにおいて下っ端は善悪等の判断を捨て去ってしまう。こう考えてみると、忠義そのものが善悪の一般倫理より上に来てしまうと、ロクなことにならないのではないか。
 まあしかし、「忠義」に関する日本文化の「病」については、本書のレビューとは直接関係ないから、追い追い考えていこう。
 本作は、幕末に生まれた豊かな小説作品として、多くの人を楽しませることが出来るだろう。速記による話し言葉のエクリチュール化が、このような奇跡的な結晶を実現してくれたのだ。

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2022年02月28日

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お国が悪人すぎてしびれる。徹底して悪人。
それにしても、本当にこれを語っていたのだろうか? 追いかけて聞いている人もいたのだろうか? いたんだろうな。すごいな。

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2020年04月02日

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作者による口演を速記で読み物にしてある。江戸言葉のリズムがトントンと伝わる。

牡丹燈籠と言えば幽霊話で有名であり梗概は勿論知っていたが、原作は主従敵の因果話や、勧善懲悪の仇討ち話までてんこ盛りとは知らなかった。人物像をシンプルに描き出し、感情移入させ、ハラハラさせて気を持たせる展開でぐいぐい引き込む。まったくストーリーテリングの妙がここにある。終盤のご都合主義もご愛嬌。

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2018年11月05日

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立川志の輔さんの「牡丹灯籠」が素晴らしいので、その元ネタとなっているこの本を読むことにした。15日間かけて円朝さんがかたったという大作、見事だと思った。
志の輔さんの噺を最初に聴いたときに、これは、日本のシェークスピアだと感じた。

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2015年08月24日

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千年読書会、2014年10月の課題本でした。。

落語の名人、三遊亭円朝による創作落語、
明治時代の時、最新技術であった速記で記録されたもの。

意外なほどに“怪談”要素は薄く、
どちらかというと“仇討”が主な要素でしょうか。

圧巻なのは、劇中の登場人物の多さと、
彼らの関連性の複雑さ、“奇縁”とはよくいったもの。

意外な所で意外な人物がつながり、
“因果応報”をも考えさせてくれる内容。

江戸時代の“匂い”も十分に漂っていて、
かの有名な“カランコロン”の雰囲気もなかなか。

そんな中、一番“怖かった”と感じるのは、、
“生きている人間の悪意”、なんて風に。

最後は大団円となるのが救いですが、、
幽霊の方がよほど“純粋”だとも感じました。

よくもまぁ、これだけの悪意が集まるものです。

江戸の匂いが豊かに残っていたであろう明治、
これは“生”でも聴いてみたかったですねぇ、、

落語、未だに経験はありませんが、是非試したくなりました。

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2014年11月06日

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真景累ヶ淵に続きまして三遊亭円朝・・・
これまた怪談噺・・・
読んでて止まらなくなっちゃうんだなぁ・・・
古い文章ですから、本来読みにくいんだけど・・・
これがまたどうもスイスイ読めちゃう・・・
クセになるなぁ・・・
たまらんなぁ・・・
元が落語ってーのもあるし・・・
ストーリーもやっぱり古くさいんだけども、でも面白い・・・

累ヶ淵に比べてしまうと因縁の怖さ、壮絶さが少し劣るんだけども・・・
やっぱり深い因縁の話・・・
登場人物が大体どっかで繋がっている・・・
話が進むにつれてこんなに繋がっててイイの?って言うぐらい繋がっている・・・
最後は悪いこたぁ出来ませんぜ、ってな勧善懲悪だけども・・・
読んでると、どうしても健気な方に肩入れしたくなっちゃう・・・
単純な勧善懲悪はあんまり好きじゃないはずだったのに・・・
悪いヤツはとことん悪いし、憎くってたまらなくなるよ・・・
上手いなぁ円朝さん・・・

前半は怪談がメインで・・・
後半は仇討ちのみ・・・
やっぱり何が怖いって、幽霊より人間ですね、ってーヤツ・・・
悪さをするのは人間・・・
怖いのは人間様・・・
これは昔も今も変わらない・・・
お決まり・・・
定番のルーツの一つだね・・・
ルーツを楽しむのは乙なこって・・・
普通の小説に飽きたらこういうのも有りでしょうね・・・
いや、もちろん本当に幽霊が出てきたらそりゃ怖いけどね・・・

前半の怪談部分は怖かったなぁ・・・
イケメンの萩原新三郎に・・・
超カワイイけど奥手のお嬢様のお露さんが恋しちゃって・・・
いわゆる一目惚れですがね・・・
イケメン過ぎて・・・
恋しくて恋しくて・・・
会えないで・・・
恋しくて恋しくて・・・
病気になって死んでしまう・・・

すると・・・

ある月夜・・・
そうそう、皆さんご存知のあの例の時間帯・・・
皆さんが寝静まった頃・・・
カランコロンカランコロンと・・・
下駄の音が聞こえてきて・・・
牡丹の模様が入った燈籠を携えて・・・
死んじゃったお露さんが・・・
死んでもなおさら会いたい新三郎に・・・
会いに来る・・・
キャー!!っていう・・・
毎夜毎夜会いに来て・・・
憑り殺されちゃうよー!ギャー!!っていう・・・
女性の情ってヤツも怖いねぇ・・・
って、これまた定番ですね・・・

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2012年09月12日

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夏だし、怪談でも、と思ったけど怖くないなー。幽霊出てこないもんなー。

怪談かと思ったら敵討ちもの。うまくいってよかった。
しっかし、おばけより人間の方がよっぽど怖いわ。
円朝さんの名演で聴くことが出来たらよかったなぁ。

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2012年08月03日

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ネタバレ

感想より何より、まず一番驚くのは「あの日本三大怪談の一つである牡丹燈籠には本物の幽霊は出てこない」ってこと。びっくりだ。
いや出てたのかもしれないが。どっちにも取れる。
もちろん幽霊はお話に出てきます。あの有名な駒下駄をカランコロンいわせてるとか、描写も細かく力入っていて怪談物らしくそこは物語のハイライトでもあります、が。後半で伴蔵が実は幽霊は自分がでっち上げたんだという発言をし。
で、考えてみればお露の幽霊に会っているのは萩原以外には実は伴蔵だけ(声だけならおみねもだけどこの二人はグルだし)、ということなんかに気づく。合理的に考えればこれがモロに答え。

っていうことなんだけど、読者はやっぱり地の文を信じなきゃいけないのがルールなんです。そっちでは先にいったようにさもお露の幽霊が本当に出てきたかのように書かれている。伴蔵の話を信じるならそこだけ地の文は故意に嘘を語ってるってことでやっぱり違和感がある訳です。あとから考えると普通は意識されない「これは誰の目が見ているんだ?」ってことを感じてしまう。それ思われた時点で地の文の信頼感かかなり揺らぎますが。
一方で伴蔵の話信じるなら信じるで「あの十両は?」とか「お札剥がして云々の部分とかメリットのない嘘の部分はなんなんだろう」なんて疑問が結構出てきます。
ていうか牡丹燈籠はやっぱり本物の幽霊が出てくる話って一般に思われているお話ですし。どうなんでしょうか。

そして中身は探偵小説ばりにガンガン人が死んでいくお語でした。「じゃあ殺しちゃおう」ってすぐ思うんだものこの登場人物達は。そして思ったことは即実行。素晴らしいですね。

しかしこんなに長くて登場人物も多く結構関係複雑なお話、今の私達は文字で読むから良いけど、元はこれ落語。話して聞かせてたっていうんだから。どう考えたってお客さん途中で飽きる。そもそも話が面白いとか関係なしに人の話を聞き続けるのは結構集中力使うし続かないだろう。それを飽きさせないで語り通せた(しかも理解もさせられた)って想像を絶する名人だ。聴いてみたかったなー。

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2011年06月23日

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女の幽霊が出る話だと思ったら、忠臣の敵討ち話だったのに驚いた。

幽霊はほんの添え物の上、後半の記述から、ひょっとしたら伴造の狂言殺人だった可能性もあり、やはり生きてる人間が一番恐ろしい

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2011年05月09日

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歌舞伎座で観た牡丹灯籠(~お峰殺しまで)で、私が知ってた牡丹灯籠(お露新三郎‐お札はがし)は序章に過ぎないことを知り俄然興味が。
手に取ってみてびっくり。これって人情話だったのね。
知っている“つもり”の話をちゃんと読んでみようという気にならされた一冊。
いつか落語でも通しで聞いてみたい。

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2010年07月29日

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わっ。岩波文庫を一気読みすると思わなかった。有名な『カランコロンと下駄の音がして…』というのは殆ど物語の発端。そこから始まる巡る因果の糸車。愛欲と金銭欲のしがらみは巡り巡ってお主殺し親殺しの敵討ちへ。因果応報南無三。

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2011年08月19日

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七月大歌舞伎の予習に。
同じ円朝の「真景累ヶ淵」に比べると話もシンプルだし、怪談要素も少なめ。かわりに舞台にした時の見せ場は多そう。

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2016年03月06日

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生きている人間メインの人情話というかなんというか。
泣かせるわけでも笑わせるわけでもなく(いや、泣かせる意図はあったのかな?)ご主人様がスゴク良い人でした。
だから、余計にお国さんがムカつくというか(にして典型的なお妾さんだ)敵討ちは成功したのよね?
かなり緻密に作られた良い話だったと思いますです。
読みやすかったし。
ただ、怪談ではないですよ!

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2009年10月04日

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