感情タグBEST3
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古今東西のシネアストの中で、最も妥協なく映画制作に臨んだのはチャップリンという見解がある。本書を読む限り、勝新太郎も負けていない。
出演交渉を断ったのだから、カツシン版『戦場のメリークリスマス』は夢の夢として、カツシン版『影武者』ならフィルムが何尺か残っている気がする。いつか観られる日に期待したい。
ブルース・リーとの共演が流れたのは惜しまれる。『ドラゴン怒りの鉄拳』を観た勝の感想は「紙芝居みたいな映画だな」だと聞き及んでいたが、本書によれば「これはマンガだよ」
マンガといえば、私の中では手塚治虫『火の鳥 鳳凰編』映画化の際、我王は勝新太郎が演じるべき、という想いがある。
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黒沢監督ともめて降板した映画「影武者」
代役は仲代達矢さん。
「戦場のメリークリスマス」での
代役はビートたけしさん。
人生は本当に運だということが分かるのではないかと。
勝新太郎さんから学べることが多くあるのでは。
それとこれからのテレビ業界の行く先が
わかるかもしれない一冊かなとおもいますよ。
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昔いたという勝新太郎が目の前で生きているような内容だった。
時代劇のすさまじいまでの職人たちのつばぜり合いが見えてくるようで、そんな時代の中の、一時代を築きあげた勝新太郎という天才が何を追求し、何を映画の中に残してきたのか。
こだわり抜いた作品を作ろうとし、そのために周りを振り回しつづけてきたすさまじい生き様に驚愕した。
作者の取材力も素晴らしく、時代劇にほとんど触れずに来た自分にも伝わる良い本だった。
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勝新太郎が、ここまでの“クリエイター”であることは、まったく知らなかった。テレビの「座頭市」で勝が口伝いに演出プランを練っている音声が残されている。次から次へと口をついて出てくる市の世界観、ストーリー展開はすごい!と思った。まわりのスタッフはヒヤヒヤものだと思うけど…。それだけに、名監督はなかなかうまくいかず、黒澤明の「影武者」から降板させられる。現場で当時流行したホームビデオを回していた、というのが最終的な理由というのも面白い。完成しそうになると壊してしまう。そんな勝新太郎の生まれついての性が彼の人生を湾曲させまくる。とても読み応えのある評伝でした。
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山城新伍さんの『おこりんぼさびしんぼ』読んでからの『天才 勝新太郎』だったけどどちちも素晴らしいし、魅力的な人をここまでうまく伝えられるのは著者の力量と対象への想いや気持ちがあるからだとわかる。いろんな人がオススメしてくれるのもわかる。
すごいわ。
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勝新太郎は、たしかに天才だったのだ。台本は初めからあって無きが如し。突然、即興で芝居を始める勝。プランの変更につぐ変更。混乱をきわめる現場と振り回されまくるスタッフ。しかしフィルムをつなげてみると、とてつもない作品に仕上がっている――こんな綱渡りのなかでよく作品をつくれたものだと思う。評伝を読む楽しみが凝縮された傑作。
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面白かった!カツシンのイメージが変わった!勝新太郎は、日常でも勝新太郎を演じることによって勝新太郎でいることができたのだろう。オレ何言ってんだろう(笑)いずれにしろ、「天才」とは周囲が作り出した姿に過ぎないということだ。
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小さな時に、勝新が「影武者」から降ろされた!!ってお袋が騒いでいたときからが僕の勝新に対する記憶なんだけど、全盛期ってそんなに知らないんだよな、ビデオの中でしか。三味線を弾いてる姿がエライ格好良かった記憶があるけど。
彼が「影武者」を降ろされたってのには、彼が演出家だったからって要素が強いんだね。ただの俳優だと思ってたんだけど、プロデューサーであり、演出までやってただなんて、正にスーパーマンだよ。僕も「座頭市」は何本か見てて、殺陣や演出がスゴいなあと思ってたけど、それも一手に引き受けてただなんて。
著者はまだ若いんだけど、当時のことをよくヒアリングしてるし、何より自分の時代でないことに、それも歴史的事実いなっていない近過去のことにここまで愛情を持って書けるのはスゴい。当時の熱気がよく伝わってくる。映画関連では「くたばれ!ハリウッド」以来の面白さだった。
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テレビでの勝新太郎監督・脚本(あってないようなものだが)・主演の「座頭市」を見ていないが、脚本の芝居に縛られず現場で芝居を口立てで作ってフィルムを原稿用紙のように使って記録していく即興演出の成果というのが見てみたくなった。DVD借りようか。
そういう作りの映画で興行的に成功するのは至難の業で、北野武の映画が当たらないと言われ続けたのと近いところがある。
黒澤明とのコラボがお山の大将は二人両立できず空中分解したのも無理からぬところがあるのがわかる。
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圧巻です 天才は生きにくい そう思わずにはいられない 奥村利男は勝新太郎として生きた そして勝新太郎は座頭市の映像そのものとして生きた
こんなの知ってて座頭市観たらたまらんね
こないだ借りた勝新太郎のCDが良かったのも三味線のバックグラウンドがあったからだと分かり納得だ
繊細な心の内をありありと哀しくも描ききっているので、さぞかし古くから勝氏の近くにいた作者なのだろうと思ったのだが後書きみて驚いた 僕より年下じゃん 調査力、描写力に恐れ入りました
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「パンツ」と言えばすぐ「コカイン」と連想できるように後世の我々に多大なる影響を与えた、われらが勝新太郎のノンフィクションです。
大映や勝プロなどの方々への取材をもとに書かれていますが、まぁタイヘン。
こういう天才と一緒にやるのは。
でもヒトゴトと思って読むとひたすらおもしろいです。
いまの世の中なら存在そのものが"炎上"してるようなお方なので良い時代に活躍されてよかったです。
個人的には「人斬り」の岡田以蔵役がベストですね。
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自分が好きなのは兵隊やくざだが、この本を読んで座頭市への想像以上の入れ込みの凄まじさを初めて知った。役者として天才だと思っていたが、そうではなく映画の天才ということも改めて知った。
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前に『俺 勝新太郎』を読んでいたが、正直、あまり覚えていなかった。読み始め、ちょっと面倒になったが、『俺勝新太郎』より、第三者的な形で整理されていて、最終的に面白く読めた。周りの人は大変だな〜というのが正直なところ、現代、これからは、こういう人は出てこない、もしくは支える人もいないだろうな。
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私たちの世代にとって勝新太郎といえばなんといってもパンツにコカインのイメージが強烈すぎて、子どもごころにもとにかく規格外なとんでもないおっさんだなということだけはわかった。
(この「とんでもなさ」は、おそらくあの時代の映画人が多かれ少なかれ共通してもっていた資質なのであって、私じしんまさにそこに魅力をかんじたからこそ黄金時代の日本映画にずぶずぶとはまりこむようになったのだが、それはまたのちの話。)
さいごの映画「座頭市」(勝新にとって最後の、という意味です)がせいぜいリアルタイムで、かつての、プログラムピクチュアとしての座頭市は東京の大学生として名画座やビデオでみた口だ。テレビシリーズにいたっては、まともにみたことすらない。
さて関係者への綿密な取材をもとに語られたここでの勝新の姿は、予想以上というべきか、やっぱりとんでもないものであった。
ただしそれは、みるひとそれぞれの内に消化できないほどの大きさ、強烈さ、を突きつけるなにものかなのであり、だからこそ「規格外」なのだ。制御できない何かを敬して遠ざける、といえばきこえはいいが、要するに「怖い」のだ。安寧とした日常を打ち破りかねない存在感を無意識にも感じとっているから、「パンツのおじさん」とレッテルを貼り、笑いをまぶして、どうにか自分のなかにおさまりどころをつくるのだ。
没後17年、そろそろ私たちは勝新太郎という存在をまるごと受けとめる時期にきているのではないか。
そしてそのために、この本はまたとない材料を提供してくれるだろう。
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表題は「天才 勝新太郎」だが、紙一重の所で「奇人」、もっと言えば「狂人」としか思えない不世出の俳優だろうと思う。
数々の逸話を残して別世界へ行ってしまった「カツシン」。もし生きていたら座頭市に代わる何かを仕掛けてたのではないかと思うが、一方で、これに固執しすぎて映画界から追放されるような事件を起こしたかも知れないともイメージしてる。
よく、俳優は役柄になり切るというが、この人の場合は「憑依」してそのものになってしまう所が本当に怖さと凄みを感じた。
但し、絶対にこんな人とは付き合いたくないと誰しも思うだろう。
そういう意味でも、「狂人」とはこういうもの、かつて映画界に一人の「狂人」がいた歴史を知る意味でも一読に値すると思う。
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評伝として、とてもよく書けている作品だと思う。勝という才能と熱情があふれている人物を、冷静にしかも息遣いも感じられるほどに描いている。勝という映画人が、天才とは思わないが、北斎が画狂人と称したようには、映像を愛した人だったのだろう。テレビシリーズの座頭市の記憶がなく、あらためて見直してみたいと強く思わせる、そんなパッションが伝わる文章でした。天才というタイトルは、著者の本意だろうか。
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取材力に驚きます。まるで見て来たかのような筆致にひきこまれます。が、我に返ってみると勝新太郎さん、アスペルガー症候群のような…コダワリが良い方向に向うと天才。主治医のような信頼出来る脚本家さん達の経過観察のもと、映画制作スタッフの理解と、介助によって、無二の俳優さんでありつづけた印象も拭いきれず、ひとりぼっちでは成立しない人生だったと思われます。玉緒さんはじめ家族から見た勝新太郎さんはほとんど登場しませんでした。
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[ 内容 ]
「座頭市」と豪快な勝新伝説で知られる勝新太郎。
本書は映画製作者としての勝とその凄まじい現場をスタッフの証言を元に再現し、繊細すぎる実像を浮き彫りにする。
純粋さが加速させる狂気のノンフィクション。
[ 目次 ]
第1章 神が天井から降りてくる―映像作家・勝新太郎(冬の海;演出風景の録音テープ ほか)
第2章 負けてたまるか―映画スター・勝新太郎の誕生(「御簾」の裏側;屈辱の映画デビュー ほか)
第3章 勝プロダクションの設立(勝と市の快進撃;座頭市のサービス精神 ほか)
第4章 オレは座頭市だ―『新・座頭市』(座頭市、テレビへ;勝新太郎一家 ほか)
第5章 神が降りてこない…(黒澤明からの使者;『影武者』順調なスタート ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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勝新といえば玉緒の旦那で、大麻をパンツに隠してた人というのが僕ら世代の勝新に対する一般的なイメージ。
でも、この本でこんなに凄い人だったのかと。
天才にしか見えない世界、
まさに狂気に満ち満ちた世界だなと筆者の文筆力に感服。
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「おれは新聞に載るような男になりたい。それには犯罪者になるか
スターになるかだ」
父の仕込みで見事な三味線の腕をもっていた勝新は、裏方に徹した父の
世界から「表の世界」に飛び出して行く。二枚目スター・長谷川一夫の
真似から始めた勝新だったが、後年、彼の代名詞ともなった「座頭市」
との出会ったことで世界が広がって行く。
それは役者として勝新を開花させたばかりか、演出者としての勝新の才能を
大きく引き出して行く。
脚本はあってなきがごとし。現場で勝新が思いつくままに、ストーリーが
展開する。それを支えたのは臨機応変に、勝新が繰り出すイメージを作り
上げようとする優秀なスタッフに恵まれたことも大きかった。
「座頭市はそんなことはしない」
いつしか勝新が座頭市を演じているか、座頭市そのものに勝新がなって
しまったのか。その境界線がなくなっていく。
時代劇役者はいくらでもいる。しかし、勝新ほど見事な殺陣が出来た
役者は、私は彼の兄・若山富三郎以外に知らぬ。
演技者として、演出者として、まさに天才だったのだろう。それだから
こそ、制約ばかり多くなり、予算の取れない日本の映画界では活躍の
場を失っていったのだろう。
「影武者」が、「戦場のメリー・クリスマス」が、勝新だったら…と
考えずにはいられない。勝新の「影武者」、見てみたかった。
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大スターらしい豪放磊落さと市川雷蔵に対しての劣等感、映画に対し一切妥協しない脚本、演出、繊細な人間観察力と愛情あふれるスタッフへの気配り、アンビバレンツな魅力あふれる希代のマーシャルアーツ剣劇スターの栄光と挫折を描く「役者バカ一代」
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かつて、「時代劇は死なず!」という、京都太秦で時代劇を製作し続けるスタッフに焦点を当てた一冊を書いた著者。今回は俳優・勝新太郎と、彼を支え続けた大映京都、勝プロのスタッフを描く。改めて大映京都の技術水準の高さを感じました。そしてあの「影武者」降板の真相。本当のところはどうだったのでしょうか?
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大胆きわまりない人だっていうのはなんとなく知ってたけど、とにかくすごい人だった!っていう感想です。
豪放磊落。
もうすごい。ホントに武将のような人。音感がとにかくよくて、三味線奏者だった!!!っていうのも驚きだし、もうとにかく演技に命を捧げてた。っていうその姿勢の貫き方もすごい。そして、人たらしでもあったらしいし、気難しくもあったらしい。
ジャッキーチェンが勝新太郎の演技を見て業界入りしました!って挨拶に来たのは印象的だし、漫画みたいな動きでちょっと一緒に共演は無理って断った相手がブルースリーっていうのもなんかすごいんだな。勝新太郎!って感じでした。
中村玉緒がちょこちょこ出てくるんだけど、この中村玉緒にはどうにも逆らえない勝新太郎の姿もなんだか可愛い感じでした。笑笑
ホントにすごいひとだったんだな。と。実感させられる一冊でした。
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イオンモールで購入する。バスの車中、ドトールで一挙に読む。正直、期待ほど面白くない。ただし、面白くないわけではない。期待が高すぎただけです。僕のこの俳優への認識は、「迷走地図」、「中村玉緒」、「大麻」です。多分、この認識が世の多数派でしょう。第1に、幹部候補生ではなかった。最初は、ゲテモノ映画ばかりだった。芸術映画、社会派映画は好みではなかった。第2に、脚本家、演出家を兼ねた俳優だった。そのため、脚本家、演出家との衝突は必然だった。黒澤監督が例外ではない。全ての巨匠と衝突している。これは意外だった。最後に、テレビの内情は意外でした。大映崩壊後、組合管理になり、安価な料金で有能なスタッフが雇えた。徳間書店がオーナーになり、通常の料金を払う必要になった。東京へと仕事場を移すことになった。東映撮影所への評価の低さはどうもよく分からない。それだけです。
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どんな仕事でも期日などの制約のため、質を犠牲にしているのに、
勝新はそれに耐え切れなかった。
そればかりは、耐えているやつにも我慢ができなかった
仕事がなくなり、部下の交友関係にも影響がでてもなお、自分の理想を求めるところは、狂人と呼びながらも尊敬してしまう。