【感想・ネタバレ】生存する意識――植物状態の患者と対話するのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

意識とはなにか、様々問いを立て、実際の症例と共に脳の仕組みを解き明かしていく非常に興味深い本だった。哲学的な問いや倫理的な問題もはらんでいるが、テクノロジーの進化に期待せずには居られない。著者の様々な問いを見て、改めて脳の不可思議さを感じた。まさに脳とは宇宙なのだと思う。

0
2022年05月08日

Posted by ブクログ

この本に出会ったのは、日本経済新聞の毎週土曜日に掲載される「リーダーの本棚」で日本医療研究開発機構センター長の浜口道成氏が取り上げておられたことがキッカケでした。

fMRIという機器を使って脳の画像を検証することで、いわゆる植物状態にある人にもさまざまなレベルの意識があることを明らかにした画期的な本です。植物状態=脳死=人間の死だと勝手に思い込んでいた私にとってはまさに目から鱗の衝撃でした。

テクノロジーの進化と新たな実験方法の開発により、生と死の狭間のいわゆるグレイの領域にいる植物状態の患者とのコミュニケーションが可能となり、そこに意識が存在することが明らかにされた。このことは人間にとって新たな希望をもたらすものではあるが、同時にとても重たい課題をも突きつけるものだと思う。AIや遺伝子、宇宙などの大変革時代の中にあって、この人間の意識についての新たな知見は最も根本的で重要なものだと思う。

0
2022年04月29日

Posted by ブクログ

植物状態と診断された患者の中には実は意識を持っている、それを表現する術がないにすぎない、という人が少なからず存在する。この衝撃的な事実を明らかにした一冊。
と言っても、医学書・科学書チックな本ではない。その大きな理由は二つ。ひとつは、かつてのパートナーが植物状態になってしまったという著者の私情がそこかしこに表出すること。そして、もうひとつは「意識とは何か?」を問う極めて哲学的な領域に踏み込んでいること。
意識が芽生えるのはいつなのか。物心がついたとき?まさか。受精した時?それも違う。とすると、その間のどこか。一歳?生まれた瞬間?意識の概念を形作る輪郭がグラグラ揺らぐ。

0
2019年08月13日

Posted by ブクログ

事故や病気で脳が損傷し、生きてはいるが反応がない、意識がない、いわゆる植物状態となった患者さんたち。実は、そのうちの15%〜20%の方は、周囲で起こっていることを認識し、理解しているし、コミュニケーションを取ることができることがわかったという驚愕の事例。まだまだ検証が必要ではあるものの、技術の発達や、診療の工夫により、今までわからなかったことがわかるようになり、それによって、定義や判断基準が大きく変わることになる。今まで話しかけても意味がないと考えられていた患者さんが、実はそのことを認識していて、我々にわかるように反応はできないけれど、ちゃんと思考している。これは、その後の治療方針や、もっというと延命措置の是非に関わる重大事項。技術の発達によって、いろいろな、複雑なことを、前例にとらわれずに考えなければならないのだ。

0
2022年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。植物状態の人間に意識は、人格はあるのか?どうすればそれを証明できるのか?という謎にせまる研究者の本。なかば著者のエッセイのような趣で、植物状態となった患者の人となりにも触れ、家族の献身にも目を向ける。著者は子供の頃に生死をさまよう壮絶な闘病生活を経験しており、母親の脳腫瘍による死、元恋人の突然の植物人間化という個人的な事情にも突き動かされ、たくさんの患者との実験、ふれあい、科学技術の進歩を通して植物人間の隠された意識へと手を伸ばしていくのだ。
意識があるのかないのか不明な「グレイ・ゾーン」と呼ばれる状態はまさに人の生と死のはざま。必然的に常にドラマティックになり、どうか実験でいい成果が出ますようにと思わず祈りたくなる場面も多い。植物状態の人でも明瞭に意識と感覚、記憶を保っている場合がある、というのは驚いた。救いの見えない状況でもわが身をなげうって懸命に介護を続ける家族たちの姿に心は痛むが、世界でどんどん進む研究や科学技術の進歩への信頼が著者の中で揺らがず存在しているため、この本はあくまで希望的な調子を崩さない。現代では人類の進歩というものに悲観的になることも多いけれど、それでもどこかで人類は進んでいると信じたくなる一冊だった。

0
2022年08月28日

Posted by ブクログ

いわゆる植物状態の患者の脳内はどうなっているのか?

学術書のようでありながら、まるで小説のように読みやすく、興味をひかれる場面も多く、感動もする。
植物状態にある人は、ドラマで見るようにあんなにきれいに眠ったままの姿なのか?少しは反射的に動いたりするのではないかな…というか実際に仕事で意識障害に陥った患者さんを何度も見かけるので、でもずっと看護したりしているわけでもなくチラッと見かける程度なので、きちんと知りたいな…という気持ちから手にとった書籍だったけど、多くのことを学べたし、考えさせられることも多く、繰り返して読みたいと感じた。
延命するかどうかという選択、そこに意識の有無が深く関わっている。意識とは、その人をその人たらしめるもの。さらに、他人とも共有しうる集合意識と著者の考えが展開されるにつれ、なんだか泣きそうになった。感動した。読み応えのある一冊。
それにしても、意識を確認するために様々な取り組みをして発見を重ねていくのは、すごいですね。

0
2021年07月29日

Posted by ブクログ

植物状態の患者に意識があるのかどうか、あるとすればどうやってコミュニケーションできるのか?身体からのアウトプットが全くできなくなった状態の人とのコミュニケーションの手法を開発した脳科学者の感動的な著作。

0
2020年09月30日

Posted by ブクログ

原題:INTO THE GRAY ZONE A Neuroscientist Explores the Border Between Life and Death
原題の通り、「グレイ・ゾーン」と呼ばれる生と死の境目の状態にいる患者の意識について挑んだ神経科学者の本である。著者は、植物状態と診断された患者の15〜20%に実は意識があることを発見した。反論に対抗するため、脳がただ刺激に応答して自動的に反応しているのではなく、確かに患者に意識があり意図的に刺激に応じていることを実験で示した。「テニスをしているところを想像してください」と「家の中を歩き回るのを想像してください」という問いかけで植物状態の患者と会話することに成功する。これから先、植物状態の患者と難なく会話することができるようになるのかもしれない。
植物状態の患者と会話できるようになることで、患者本人が死を望んだ場合どうするべきかという「死ぬ権利」の問題について考えさせられた。患者本人が望んでいるからといって、それが正常な思考判断で行われていると言えるだろうか。苦しく辛い状況におかれた患者が楽になりたい一心で死を考えている場合、その望みを叶えることが一番するべきことなのか、わたしははっきりとそうだとは言えない。植物状態でも意識を保ったまま長く生き延びられるかもしれないことがわかった今、肉体を失った人間はどう生きるかということを考えなくてはいけないのかもしれない。

0
2019年04月22日

Posted by ブクログ

植物状態と診断され、見かけからは全く反応がないように見えるひとに、意識がある場合があるという事実に、驚いた。これまでは、専門医師が診断しているので、植物状態イコールその時点で意思を持たず、かつ、将来も回復は困難なものと思い込んでいた。
植物状態と診断されても、見た目には何の反応も示さなくとも、意思がある場合があることは、当事者やその家族にとってはものすごく重要な事実だ。医療やケアの仕方も変える必要がある。
また、著者も言われている通りだと思うが、人間は一人では今の我々のような人間にはなれない。他者との関係が自分であり、他者もまた同じである。

0
2019年02月27日

「学術・語学」ランキング