【感想・ネタバレ】総員起シのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

吉村昭による短編小説集。太平洋戦争末期、現日高町厚賀沖にて、兵員輸送船「大誠丸」が米軍の攻撃を受け沈没した事件を主題とする作品『海の柩』が収録されています。実際に多数の将兵が亡くなった事件である為非常に暗い作品ですが、戦争という現実の中で暮らしていた厚賀の人々の姿が克明に描かれています。(日高門別 あ)

0
2017年07月20日

Posted by ブクログ

総員起しは、森史朗の「作家と戦争」で紹介された小説だったので読んでみた。終戦後になって沈没した潜水艦から、死亡した当時のままの姿で発見されたというショッキングな内容が書かれていた。一貫して、吉村昭の小説に描かれている死に際の内面に迫っていく手法なだけに身に迫る怖さがある。ここには、「手首の記憶」など短編5編が掲載されているが、あっと言う間に読み終わってしまったという印象である。中には、吉村自身が「私」はという主語で論じるスタイルもあり、面白い。ストーリーの構成としては、ショッキングな場面から始まり、そこに至る事実経過や取材の場面が書かれ、最後に、タイトルともなっている出だしのキモの部分に焦点が当てられ、何故という問いが解されていくのだ。

0
2016年10月10日

Posted by ブクログ

戦争にまつわる実話を基にした5つの短編小説。

 もう、ずーっと読みたくて、古本で探しても見つからず1年。我慢できずに新刊をお取り寄せしました。読んで良かったです。戦争の悲惨さ、当時の人の思い、傷跡…。あくまで、「実話を元にした小説」なのでしょうけれど、Wikipediaなんかで調べただけではイメージ出来ないいろいろな情景が胸に迫ってきます。とても読みやすい小説で、引きこまれました。

『海の柩』
 北海道で大量の水死体がある村に流れ着いた。その中に、手・腕のない死体が多く紛れていた。
『手首の記憶』
 南樺太で起きた、看護師の集団自決。数名の看護師以外は一命を取り留めたが、彼女たちがその後背負ったものは…。
『烏の浜』
 終戦を迎えたにも関わらず、女性や子供の多く乗った船が沈められ、彼らとその遺品の多くが増毛町に流れ着いた。
『剃刀』
 沖縄戦において、牛島軍司令官は崖上で月を背景に自決したというが、それは本当なのか?
『総員起シ』
 急速潜航訓練中に不幸な事故によって沈没し、102名を乗せたまま鉄製の柩と化した「伊号第三十三潜水艦」を9年ぶりに引き揚げると、そこには眠ったように当時の姿のままの船員たちが…

0
2015年03月07日

Posted by ブクログ

昭和40年代に雑誌で発表されたのが初出であるという5篇の作品が収められている。5篇共に読み応えが在る。

色々な意味で、各作品に「惹かれる理由」が私個人の中に在るのだが、それらを割り引いても、各作品は「流石に高名な吉村昭の作品!!」という魅力に溢れている。題材となっている挿話も、「考えさせられる」とか「迫るモノが在る」ものである。安価で読み易い文庫でもあるので、多くの人に奨めたい一冊だ!!

0
2014年01月25日

Posted by ブクログ

戦中戦後の恐怖、理不尽、悲哀を綴った短編5編。
「海の柩」が一番刺さったが、他にも三船殉難事件を扱った「烏の浜」、伊号第三十三潜水艦を扱った標題作など良作が鎮座。戦争という不気味な怪物が生み出した事象は、極限下での状況を踏まえた意思決定の在り様について考えさせられた。

0
2021年05月04日

Posted by ブクログ

前から気になってはいたものの、読んだことのなかった吉村昭。どこまで史実なのかわからない部分はあるものの、司馬遼太郎とか清武英利に似た感じだろうか、太平洋戦争の知らぬ歴史を興味深く読んだ。ドキュメンタリーや映画よりもよっぽど戦争の悲惨さや人間の浅ましさが心に響く小説であった。他の本も読んでみたい。

0
2020年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終戦前後に起きた悲劇を題材とした5篇を収めた短篇集。
残念なことにいずれも、現代では風化し、
忘れ去られた事件になり下がっているようだが、
それだけに衝撃的だった。
とりわけ『海の柩』、『手首の記憶』、『総員起シ』の読後感は重かった。
戦争とは、軍隊とは理不尽の塊であり、
戦争に負けるとはこういう事なのだなあ。
目頭が熱くなった。

0
2018年12月20日

Posted by ブクログ

 吉村氏の本2冊目。氏のおかげで戦中、戦後史に俄然興味がわいている。この作は、戦後8年ほどを経て引き上げられた潜水艦の様子の記述に、とにかく度肝を抜かれた。おそらくこの艦だけでなく、他の場所でも多くの沈没艦があるはずで、それらの記録も一部には残っているのだろう。しかし、氏の綿密な調査により、ここまで詳らかになったものはほとんどないのでは?
 30年以上も前の本の新装版ということで、さすがに当時小学生の自分はこの本を知る由もなかったが、とにかくインパクトがあった(その後、自分の生まれた年に発刊された書籍に、この沈没艦から9年ぶりに現れた軍人の姿を収めた写真も見た。本書をさらに記憶づけるに十分なものだった)

0
2014年02月09日

Posted by ブクログ

「海の柩」は次々と流されてくる兵隊の水死体、という状況からして恐ろしいのですが、それらに共通するある特徴の理由がわかった時、あまりの殺生ぶりに戦慄せずにはいられませんでした。「総員起シ」は潜水艦サルベージのドキュメントとして非常に興味深い話でした。せっかく戦争を生き残ったのに、9年後に引き揚げられた潜水艦のメタンガスで死んでしまった三名の元海軍技術士官が不憫でならない。

0
2018年09月16日

Posted by ブクログ

かなり以前に発表された作品であり、関係者が多く存命だったためか、終始とても生々しく描かれている。

読後、なんともやりきれない感が残る。

0
2014年01月14日

「歴史・時代」ランキング