【感想・ネタバレ】「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明のレビュー

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Posted by ブクログ

20200715
クリステンセン氏の有名な『イノベーションのジレンマ』を経済学的視点で、定量的に解明した返歌。
自身も曲がりなりに経済学部出身で、需要や供給、動学的視点での研究は興味深かった。
今一度エッセンスを述べると、既存企業は、競争によって利益が落ちないよう(数量効果・価格効果)、①抜け駆けの誘引は高い(供給サイド)。また、②開発能力(投資=動学的観点)においても、既存アセットを行かせる事で新規企業よりも優位な点が多い。しかしながら、既存企業の既存事業がある事で、車内的な制約や株主からの制約を受け、③共食い(置換効果=需要サイド)に尻込みしてしまう問題がジレンマであった。これだけでもインサイトに富む命題である。一般的には、経営者の無能や政府の規制の欠陥と思われるが、優良であるがゆえに制約というジレンマに悩むという、常識を超えた示唆だったからだ。
その示唆に対して、伊神氏はもう一歩踏み込み、実証研究のプロセスとして①データ分析、②実験、③シミュレーションをやってみせた点が鮮やかである。結果を見るだけでも有益だが、そのステップ(構造化→進むための思考法)を追体験できたことは、より有益であった。全てを吸収しきれたわけではないが、進み方の考え方こそ心にとどめ、自分なりの思考様式ができるよう励みたい。

//MEMO//
クレイテンセン教授の名著であるイノベーションのジレンマの経済学的解明という。クリステンセン教授は、どちらかというとビジネスケーススタディから導き出した命題であったが、伊神氏は経済学的に証明するというのか。
ゲーム理論や、統計学など、理論で上記命題が証明できたら非常に面白い。そしてやはり、企業も自身も優良であり続けることは、停滞を意味するということを一層肝に銘じるであろう。

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2020年12月31日

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 Yale大学の若き経済学者による、教育的な自伝である。

 「イノベーターの経済学的解明」のタイトルにつられて購入した。私は前半の「イノベーター」の部分に着目していたが、本書における著者自身の力点は後半の「経済学的解明」に置いていたように思う。
 著者が自身の博士論文を以て経済学の全体像を感覚で理解できるよう提示している。需要・供給・均衡・限界といった基礎的な概念から、差別化と競争、社会厚生、静学/動学、実証研究の形態の各トピックまで、幅広く紹介している。非常にスピーディーで熱のこもった筆致であるためか、サクサク読める。

 経済学はしばしば、「モデルが現実的でない」との批判を受ける。しかし本書は、その批判が筋違いであることを示す。「モデルが現実的でない」と考えるのは、そもそもその理論の有用性を理解していないからだと断じる。そこに自身の問いが発さればこそ、その問いと背後の文脈に応じたモデルが活きてくる。イノベーターのジレンマをはじめとする諸々の社会的現象を、単純なモデルによって説明することの意味を、次のように説いている。
「世の物事や人の感じることを言葉で言い尽くすのは土台無理な話だが、それにも関わらず人は言葉やその他諸々の手段を使って、何かを表現し伝えようとする。方程式やギリシャ文字だけで経済活動(やそれを含む有象無象)を表現し切ることは難しい。難しいというか、そもそも現実世界の『枝葉』を削ぎ落して単純化するためにモデルという箱庭を作ったわけだから、数式自体には『現実』がほとんど登場しない。それにも関わらず、数式の行間を読み、背後の事物に想像力を働かせることは可能である。」(第10章)
 既存企業にとっては、既存事業と新事業の共喰いを乗り越える必要がある旨を一連の実証分析から示唆した後、その背後に潜む現実に対して想像力を発揮させていく。その想像力の発揮はまさしく、洗練された問い/仮説と、モデルによる頑健な裏付けがあるからこそ、意味を成すものに思えた。

 冒頭で掲げられた問いに対する結論は、凡庸なものであった。それでは長々とした論証は無意味だったのか?と筆者は問う。答えは当然、「否」。以下は引用である。
「『結論』や『解答』そのものに、大した価値や面白みはない。そうではなくて、
・そもそもの『問い』
・その煮詰め方、そして
・何を『根拠』に、いかなる『意味』において、その『答え』が言えるのか、
つまり『どんなことを、どんなふうに考えながらそこに到達したのか』という『道のり』こそが、一番おいしいところであり、大人に必要な『科学』というものだ。」
 ここが著者の最も伝えたい主張であるに違いない。というのも本書は、「経済学を初心者に向けて紹介する本」以上に大きな意味を持っているのだ。そうではなくてむしろ、著者自身の研究を例にしながら、いかに知的好奇心を探求する営みが楽しく、(もしかすると)尊い行為であるかについて力説した書である。
 そして上記の引用はまさしく「結論」に他ならない。そのためここだけを見てもあまり響かないかもしれない。しかし、著者の具体的な研究とその背後にある頭の使い方と意志を追体験することで、その結論は格段に説得力が増す。

 自分の日々の営みに自信が持てなくなった時に、帰ってきたい一冊。

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2020年04月26日

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既存企業がイノベーションに本気になれない理由

「研究開発能力が高くても、合理的かつ戦略的であっても、新旧製品が共喰いを起こしている」
つまり、「能力」の問題ではなく、「意欲」の問題

「創造的破壊を生き延びるには創造的『自己』破壊の必要が有る」
「生きる為には死ぬしかない」

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2019年11月16日

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ネタバレ

本書では、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を底本にして、実際にイノベーションのジレンマはあるのか、あるとしたらどういった理由が存在するのか・・・といった問題を実証することを目指し、様々な概念と方法論を定時している。

実務でコンサルティングや技術開発(イノベーション)を行なっている身からすると、やっぱり社内競合(本書でいうところの「共食い」)は本当に企業の中でよく見かける。
一方で「抜け駆け」を目指した意思決定は、本書でも珍しい例と言われているが、残念ながら一度も見たことがない。

難しいのは、ただ「共食い」するだけならともかく、ITによってそもそも提供価格が大幅に下がってしまうと、マーケットサイズ自体が小さくなってしまうことがあるということなんだよね・・・。

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2019年07月29日

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ネタバレ

伊神先生は

イェール大学の准教授。本当は実績を残すために、日本語の本など書いている場合ではないと思うのだけど、後書きにあるように色々な思いがあって休日を使ってこの本を書いたようです。これ、本ではなくて授業とかで直接話を聴いたら、きっともっと面白かったのだろうなと思いました。

この本は結構面白い構成で、最初にざっとサマリーのようなものが書いてある。さすがは大学の先生。語り口はエッセイ調。

説明されている経済理論は3つ。置換効果(共食い)、抜け駆け、能力格差。実証研究の手法も3つあってデータ分析、比較対象実験、シミュレーション。で、そもそものクリステンセン先生のHDDの事例をベースに実証研究の結果を示すというもの。

最後の最後にまとめが書いてあって、これも3つ。

①既存企業は、例え有能で戦略的で合理的であったとしても、新旧技術や事業間の「共食い」がある限り、新参企業ほどにはイノベーションに本気になれない。(イノベータのジレンマの経済学的解明)

②この「ジレンマ」を解決して生き延びるには、何らかの形で「共食い」を容認し、推進する必要があるが、それは企業価値の最大化という株主にとっての利益に反する可能性がある。一概に良いとは言えない。(創造的「自己」破壊のジレンマ)

③よくある「イノベーション促進政策」に大した効果は期待できないが、逆の言い方をすれば、現実のIT系産業は、丁度良い「競争と技術革新のバランス」で発展してきたことになる。これは社会的に喜ばしい事態である。(創造的破壊の真意)

これが結論なのだけど、印象的な引用が2つあった。

「自分がもっともほしいものが何か判っていない奴は、欲しいものを手に入れることは絶対にできない。キクはいつもそう考えている」(村上龍「コインロッカー・ベイビース」

UCLAのエド・リーマー博士の2つの質問。1)「君の問いは何だ? What's your question?」2)「世の中の誰がその問いに関心を払うべきか? Who should care about your questions?」

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2019年02月24日

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前半は素晴らしい目から鱗 後半はもう一つピンとこなかった
以下は前半の収穫物

因果関係と相関関係(128) 
因果関係はストーリー、頭の中で創造するもの AIには作れない
相関関係 Dataの中にあるもの 発見するもの

イノベーション
プロダクト・イノベーション
プロセス・イノベーション 製造・販売費用の低減

勝者総取り 戦わずして勝つのが最善 独占の妙味 
複占は1/2ではない 客数は半減、単価も半減
 10億件✕@100円=1,000億円
  5億件✕@ 50円= 250億円

既存企業の弱点
 ①人や組織の惰性
 ②従来事業の成功体験
 ③大きな組織は情報の伝達効率が悪い

資本Capital
 貯めるのに時間のかかる資源
 人的資源
 知識資本
 関係資本
 ブランド資本

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2018年11月10日

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高度な思考が平易な表現で語られる良書。すらっと凄いこと言っていてかっこいい。特にジレンマの解明は分かり易く、必読。

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2018年11月04日

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ネタバレ

これは、必読書だと思います。

平易な表現で、最先端の経済学が目指すものを実証的に語ります。「盛者必衰」。なぜ優良企業はイノベーションに乗り遅れるのか? どうすれば防げるのか。5.25インチから3.5インチに移行したハードディスク・メーカーのデータを元に、論理的に、説得力をもって突き詰めています。

本書の出発点である「置換効果」は、デジタル化が進む新聞業界が典型例です。デジタルに移行すればするほど、現在稼いでいる紙と食い合うからです。「何も自分の代で完全移行しなくても……」と経営幹部や年長社員ほど考えるだろうと。一方で、ハフィントン・ポストなどのネット専業のイノベーターは、突き進むだけ。

さて、既存の新聞はこのまま座して死を待つのか。「そうではないだろう」と思います。この本を読んで得た結論です。ポイントは単なる置換以上のものを生み出すこと。馬車メーカーは自動車を製造に転換すれば、生き残れたことでしょう。問題は、それを支える「意欲」の源泉をどこに求めるか。

「あなたが本当に知りたいのは何なのか、それはあなたにしか分からない。データの生成過程がどうなっているのか、それは表面に出てくるデータの内容ではなく、データの母体となる現実世界そのものについての洞察である」……明日を生きるための勇気と意欲が湧く書だと思います。

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2018年08月04日

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ネタバレ

イノベーションのジレンマの本。認識を深めるべく読書。本質的な構造を平易にわかりやすく紐解いてくれている良著。

メモ
・代替性がある場合、共食いの分だけメリットが減少する。
・抜け駆け、守備的m&a。くいとめによって、そうしない場合に失われる分だけ、そこに投じるコストの価値が生じる。既存事業が大きく支配的である方が、既存側の取得インセンティブが、新規側の継続インセンティブを上回る。

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2022年04月22日

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終わりの方で「既存企業に欠けていたのは能力ではなく、意欲」とまとめられている。それをここに書くのはネタバレになるが、ただ、そのネタが重要なのではなく、なぜその結論に至るのかが重要。話の展開の面白さもあって、巻末に挙げられた参考書「ミクロ経済学の力」にも引き続く。

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2020年02月17日

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古典「イノベーションのジレンマ」を(勝手に)アップデート。計量経済学によって実証的にイノベーションを検証した筆者の論文、を一般向けに解説した本でもある。「イノベーションのジレンマ」は大半がインタビューや文献を考察の元にしており、「無能だから失敗した」のか「失敗したから無能と判断された」のか、これでは循環論法に陥りかねない。また人は意図して、そして意図せずに自分にも嘘をつくので、語られたことだけで論理を構築するのは危うい。

内容は音楽で言うなればA→B→A'のような形式で、まず序幕で背景や本書での要旨、著者の問題意識を読者と共有する。実はこの時点でほぼ解答はでているのだが、しかしそこに数字による裏付けはない。そこでBにおいて、現実の雑然としたデータから、モデルに合わせて必要な数字を抽出し、当てはめる。ここは相当噛み砕いてはいるものの、元が論文なのでかなり高度な内容も含んでいる。そしてA'の結論は、驚くようなものではない。著者も言うように、当たり前のことを当たり前にこなすのが一番むずかしいのだ。しかし、そこに数字による裏付け、モデリングがあるかないかは全然異なる。
数学モデルであれば、仮想的なシミュレーションを行うこともできるし、現実が違う挙動をしたときに修正することもできる。

「真のコストを他のデータから逆算する『顕示選好の原則』で数値を計算する」おそらくこれが古典的な経済学の考え方で、むしろ自分はそれよりも先に行動経済学の本を読んでいたので、行動経済学がどのような問題意識で生まれたのか、ということもわかって気がする。

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2019年09月10日

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すごく頭の整理になる本でした。
途中のモデル化のところは確かに難しいが、読み飛ばして良いと著者が言ってくれているのでスムーズに読めた。
残念なのは、最後の結論がぼやっとしてしまっていること。イノベーションを生み出す方策について言及できておらず、「旧事業とバランスを取りながら共喰いを乗り越え新規事業に挑戦すること」って感じでまとめられていてガックリきた。

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2019年07月06日

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イノベーターのジレンマ という本を経済学者の方が、コネコネしながら語った本。
共喰いがあるので既存企業はイノベーションに本気にならない。
抜け駆けすると得なので既存企業は競合を早めに買収する。
能力格差。基本的にきぞんきはつよい。

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2019年02月22日

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いくつか難問が挙げられている中でも、能力面より心理的なものが壁として高いと感じる。社内政治がある中で新規事業にスター社員を送れなかったり、不採算となった既存事業を切り捨て、人材を切り捨てる、または新規事業にシフトさせるような人の異動配置がとくに難しい。誰だって人から憎まれたくはない。

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2019年02月17日

Posted by ブクログ

『イノベーターのジレンマ』を過去に読んだことがあるので、読んでみたけど、全く読んでいなくても問題なく本書は読むことができる。
経済学は全く得意じゃないけど、分かりやすく書かれていて面白かった。「第5章 実証分析の3作法」とか全く歯が立たないところもあったけど、初心者でも読みやすい本だと思う。
フェイスブックやグーグルなどの大企業が、ぽっと出のスタートアップ企業を大金を積んで買収する理由が良く分かった。自分の身を脅かす可能性のある芽は早いうちに摘んでおけっていうことなのね。

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2019年02月06日

Posted by ブクログ

良書。イノベーションを生み出すチャレンジは何かというテーマについて、ケーススタディから得られていた知見を、経済学の手法で理論化し実証してみた、という本。「イノベーションって、ノリで語られていて、いまいち何について話しているのか分からないな」とモヤモヤしていた身としては、イノベーションの定義付けからしてくれたので色々すっきり。おかげでこれからはイノベーションについて少し科学的な議論ができるようになった気がする。学部で学んだ経済学のrefresherとしても良い。

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2019年01月04日

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最後あたりにまとめが書かれてあった。
①既存企業は、たとえ有能で合理的であったとしても、新旧技術や事業間の「共食い」がある限り、新参企業ほどイノベーションに本気になれない。
②このジレンマを解決して生き延びるには、何らかの形で共食いを容認し、推進する必要があるが、それは企業価値の最大化という株主にとっての利益に反する可能性がある。一概に良いこととは言えない。
③よくあるイノベーションの促進政策に大した効果は期待できないが、逆の言い方をすれば、現実のIT系産業は、ちょうど良い競争と技術革新のバランスで発展してきたことになる。これは社会的に喜ばしい事態である。

またお勧めの本も記載してあるので
参考になる。

本の内容とは関係ないが、あとがきを読んだ感想
・4歳の娘がいて子煩悩な父親らしい。
・感謝の言葉に奥さんのことが書かれていないのは離婚して
いるのだろうか。親権も別れた奥さんにあるのだろうな。
 切ないな。

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2018年09月16日

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結論が目新しいわけではないけど、イノベーターのジレンマ的なものが好きな上級労働者に対して、緻密に誠実に積み上げていってる一冊というか。

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2018年07月10日

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本書はイェール大学で教鞭を執る日本人経済学者が、経営学の泰斗であるクリステンセンの研究を、経済学的見地から定量的、理論的に深掘りした、という本になります。クリステンセンの書いた『イノベーションのジレンマ』は世界中でベストセラーになった本ですが、この著者が指摘しているように、書かれている内容自体はかなり定性的で、他の経営学のフレームと比較しても科学性に乏しいというような批判はありました。

そのような背景のもと、著者は経済学の専門家として、クリステンセンの世界観をモデルに落とし込んだと言うことになります。内容は確かに経済学の知識がある方が望ましいですが、そうではなくとも理解できるように書かれていると思いました。また私自身経済学の論文を読むことはたまにあるのですが、この著者が述べているような構造になっていることをあらためて認識できました。その意味で非常に勉強になりました。

本書はクリステンセンのかなり抽象的な記述を具体的、科学的にしてくれているという点で有意義なのですが、インパクトというか一般の人々への訴求度合いについてはやはりクリステンセンの語り口の方が有効と言わざるを得ません。クリステンセンは最近では“How will you measure your life?”といった本も書かれていますが、文章力、表現力が非常に高い。ハーバードでは彼の授業はいまだに人気が高く、その理由は彼の語り口にあるといいます。普遍性、再現可能性という意味で経済学の役割は非常に高いですし、「数字に語らせる」ことは大事だと思うのですが、他の人間への訴求となると、最後は人間力が大事で、抽象的、個別的であったとしてもそういう語り口の方が人々の印象に残ってしまうのが、人間の難しさでもありおもしろさでもある、と本書を読んで感じました。

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2023年04月30日

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イノベーターのジレンマはどうして起きるか。
共喰い現象=新しい製品が、既存のヒット商品のシェアを奪う。
置換効果=既存企業は、新商品によって失うものが大きいのでイノベーションに本気になれない。
競争効果=既存企業は、他社の新規参入によって失うものが大きいので、本気で独占的地位を守ろうとする。

世の中の競争はほとんどは不完全競争なので、ゲーム理論でないと分析できない。
ライバル数は少ないほどいい。
近視眼的な判断をする理由=人や組織の惰性、過去の成功体験に引きずられがち。ビデオチェーン店のブロックバスターはオンライン配信化には成功した。しかし既存店を切れなかった。大企業の情報伝達効率の低下。

インテルはメモリ事業から撤退。メモリのインテルは死んで、CPUのインテルに生まれ変わった。
コダックはデジタル化には成功していたが、フィルム事業の利益率が高かったため、手放せなかった。

貯めるのに時間がかかる資源を資本と呼ぶ。人材、知識、ブランド、関係。、など。

1、新製品と旧製品の代替性が高いと、需要の共喰いが発生して新商品に切り替えずらい。
2、とはいっても、ライバルの参入を許すと、市場の独占度が下がるので、早く新技術を導入すべきである。
3、研究開発能力は既存企業も新規企業も優劣は付けがたい。

相関はデータの中に、因果は頭の中にある。
操作変数法(既出の変数以外の操作変数が存在すれば、それを操作することで、本当の因果関係がわかる)。
共喰いの度合いは、需要の代替性(弾力性)で測れる。

クールノー競争(生産力競争)とベルトラン競争(価格競争)。同質財で価格競争しているがそれなりの利益が出ている状態=生産力を競っている=クールノー競争。

イノベーションのジレンマを解決する方法
1、新事業部を分社化する。しかし、実際はうまくいかない。新規部門に移籍する社員がいない、など。
2、M&A。シスコシステムズはこの方法で成長した。しかしアメリカでも失敗のほうが多い。
3、成功しても旧部門を切れない。武田薬品はビタミン事業を2001年以降にやっと売却した。
4、生き延びるためには、いったん死ぬ必要がある。
5、株主と経営者の最適が違う。新世代の技術のために現在の有望事業をやめるのは、株主にとっては大損。

共喰いがあるのであれば、どこかで主力事業を切り捨てる必要がある。損切りと創業、の繰り返し。

政策でイノベーションを促進できるか。
官製ファンドは、ゾンビ企業を生き延びさせるだけ。
特許の制度を使えば可能か。知的財産権を保護してもイノベーションが促進できるとは限らない。ロダイムの3.5インチHDDの特許の件。最終的には認められなかったが、ライセンス料を支払う会社もあった。

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2021年02月01日

Posted by ブクログ

頭の悪い僕にはちょっとアカデミックで骨が折れた、、けど
結論は納得する。

個人的に、既存企業にとっての"共食い"のうち、リソースとして有りがちなのは人材だと思う。
有望な人材を主流の事業に置くか、新規事業に置くか。
おそらく大半は前者にしてしまっていて、だからこそイノベーションが起きないんじゃないかなぁ。

だとすると、異動ももちろんそうなんだけど
採用からこれまでとぜんぜん違う人材を見極めて、増やしていく必要性に迫られる。
ところが社会的には少子高齢化、売り手市場。
なかなか思うような採用もできなくなっちゃいました…

っていう日本の状況を妄想してました。

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2019年12月16日

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ベストセラーとなったクレイトン・クリステンセン「イノベーターのジレンマ(1997)」の結論をトートロジー(「無能な会社は失敗する」)にすぎないと批判し、理論的・実証的な裏付けのある検証可能なものとして再構築するというのが本書の狙い。結果的に結論はクリステンセンと同じになるのだが、仮説→検証の過程で明らかになる対象業界(HDD製造)と個別企業の特性はもちろん、最終的に株主って誰?政府って誰?という素朴だが根源的な問いに到達してしまうところが面白い。
ただし、本書で扱われる「イノベーション」はややハードルが低く、「HDDインチ数の縮小」という既存製品サービスの外延が対象。そのため、そもそもこれをイノベーションとまで言えるのか、既存とは全く異なる革新的な製品・サービスの場合は結論が異なるのではないかという疑問が浮かぶ。次作を待ちたい。

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2019年05月04日

Posted by ブクログ

シャープや日立等、既存の大企業の経営が立ち行かなくなる理由を、すごくわかり易い文章で書いてくれている。既存企業が新商品を出しても、従来の商品とコンセプトがバッティングしていたら食い合いになるし、新しいコンセプトの商品だと、既存商品との両立が難しく、新規企業にシェアを持っていかれる。インテル社のように、落ち目になった主戦力のメモリ事業をバッサリ切れる会社はほぼなく、ないからこそトップにのし上がれるということか。しかし文章はわかりやすいけど難しい内容で、理解が追いつかなかった。

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2019年04月17日

Posted by ブクログ

イノベーターのジレンマを経済学的アプローチで迫った1冊。とはいえ現代の経営学でも統計分析が主流になっており、学際的な印象は持てなかった。

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2019年04月09日

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