【感想・ネタバレ】ブロディーの報告書のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

乾き、こわばり、血の味、人間の体臭、闇。
『伝奇集』とは違う作家が書いているようだ。
現実を追究しているにもかかわらず、かえって現実から浮遊してしまう。

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2019年07月16日

Posted by ブクログ

様々な人物の末期(まつご)が淡々と叙述されていくところは
山田風太郎『人間臨終図鑑』のようだ。
表題作を除いては幻想的でもメタフィクショナルでもないが、
我々と異なる時代、遠い場所に生まれて死んだ人たちの――
恐らく多くは作者が
実体験・聞き書きに尾鰭を付けたと思われるドラマが
味わい深い。

晩年、作風がアッサリしていったのは、
視力の衰え(最終的に失明)から
口述筆記に移行したことと関係があったのだろうか。

以下、特に印象的な作品について。

「じゃま者」
 ならず者が暮らす地域に住んでいたニルセン兄弟の逸話。
 彼らは一人の女を共有したが……。
 自ら招いた三角関係の無残な清算。

「グアヤキル」
 それぞれが属するカテゴリの代表的人物である
 二人の交渉が全体の動向を左右する、
 連動して決定される様が象徴的に綴られ、
 ラテンアメリカ独立運動の立役者二人について語る
 二人の学者の論戦が描写されている。

「マルコ福音書」
 医学生バルタサルは、いとこに誘われ田舎の農場へ。
 管理者らは無教養で他人に無関心だったが、
 バルタサルが文字を読めない一家のために
 読み聞かせを行なうと、
 彼らは聖書のマルコ福音書に耳を傾け……。
 皮肉で残酷な結末だが、
 不思議に乾いた笑いが込み上げてくる。

「ブロディーの報告書」
 1839年刊『千一夜物語』第一巻に挟まれていた
 宣教師デイビッド・ブロディーの手稿を
 スペイン語に翻訳したという体裁のフィクション。
 後進地帯で伝道に従事したブロディーが見聞きした
 ヤフー族の特異な習俗について。
 これはいかにもボルヘスらしい面白さ。

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2018年03月29日

Posted by ブクログ

マルコ福音書は外部の知識人/知性者を神=生贄とする原始宗教とキリスト教の関係性を描いているが他の作品でもみるね。ここまで書いてちょっと違うかもしれない

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2012年08月06日

Posted by ブクログ

他のアルゼンチン生まれの人とどこかイメージ違うなー、とwiki
ってみた所、お父さんがイングランド、お母さんがウルグアイの人なのね。

つらつらと短編を読んでみました。ちょいちょい本人が出てきて、これは創作?昔話?

本文中にグスタフ・マイリンクの「ゴーレム」がサラリと話題にのぼり、あれしかまともなのないと。それは褒めてんだよきっと。
夢の中で夢を見ていると表現していて、ハッとした。

静かなあじわい。

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2018年11月27日

Posted by ブクログ

ボルヘス後期の短編集。ガウチョがたくさん!やや単調。最後のブロディーの報告がよい、ボルヘスらしいと感じる。

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2014年05月08日

Posted by ブクログ

ボルヘス後期の短篇集。南米特有の場末の雰囲気には、日本の小説では味わえない異国感がある。「マルコ福音書」の終わり方がよかった。書かれないラストに思いを馳せ、書き出しに立ち戻る。「めぐり合い」の二本のナイフの物語はロマンチックだ。p68「物は人間より持ちがいい。」

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2014年01月20日

Posted by ブクログ

ボルヘスは”鬼面ひとを脅かす”ところが好きなので、物足りなさはある。「じゃま者」「マルコ福音書」「ブロディーの報告書」は寓話的で好みの雰囲気。

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2013年07月20日

Posted by ブクログ

ボルヘスの短編は基本2種類に分けられる。1つは西洋形而上学を自在に駆使して構築される高尚文学。そしてもう1つは、故郷アルゼンチンを舞台にガウチョや荒くれの人生が伝聞されていく口承文学的な作品だ。本書は後者のタイプの作品を大部分とする事で自らをアルゼンチンの土着的文脈に再定義。そしてラスト前の「マルコ福音書」はその民族性が西洋史の起点と交差し超克する瞬間を描き出し、最後の表題作はガリバー旅行記とアルゼンチンの歴史を合わせ鏡とすることで自国文化の非西洋的側面を肯定する。南米の味がするボルヘスもまた、悪くない。

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2013年07月12日

Posted by ブクログ

ボルヘス後期の代表作ということで、作家の全仕事における本書の位置づけやら意味付けは、解説を読むのが一番。
一読者としては、面白かったか否かだけを。

それなりに面白かったけど、それまでのボルヘスファンが落胆を禁じ得なかったというのも頷ける。
老作家は意図して作風を変えたわけだけど、フツーになっちゃった的感想は少なからずあったんじゃないだろうか?
ボルヘスの名を伏せて読ませたら、別の作家でも通ったんじゃないかという。
特にチンピラものについてはコルタサルを想起させるものがあって、なぜボルヘスが感は否めないかも。

『めぐり合い』『ファン・ムラーニャ』『マルコの福音』などが秀逸。

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2013年02月20日

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