【感想・ネタバレ】勉強法 教養講座「情報分析とは何か」のレビュー

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Posted by ブクログ

佐藤優が、講義の内容をまとめたもの。内容が濃く、よく学生の中にこのような高度な勉強法を一生懸命実践している者がいるものだ、と感心してしまう。勉強になった。
「イスラム教原理主義過激派は、アッラーは一つなので、それに対応して地上においてもたった一つのイスラム法によって統治がなされ、全世界を単一のイスラム帝国が支配すべきだと考える。そして、この目的を達成するためには暴力やテロに訴えることも躊躇しない、というのがイスラム国(IS)やアルカイダなど、過激派の特徴だ」p18
「ISにとって最大の標的は米国だが、欧州の方が難民などの形で入り込むのはずっと容易だ」p21
「サイクス・ピコ秘密協定(1916)に基づいて、欧米の都合で中東の宗教、歴史、地理、部族の分布などと無関係に国境が引かれ、建設された国家が機能不全を起こしていることが原因で、その結果、ISが生まれたのである」p22
「日本と韓国、日本と中国の間で客観的な歴史観を持てばいい、という意見が聞かれるようになっています。これは歴史を知らない人の言い方です」p27
「ローエンタールやアメリカ陸海軍のリーダーシップなどは、まさに小説を読まない官僚型の人たちに向けたリーダーシップ用のマニュアルです。インテリジェンスをテクニック(技術)として見る、典型的なアメリカの考え方です。これに対して、イギリス、ロシア、イスラエル、その他のヨーロッパ諸国は、基本的にインテリジェンスはアート(芸術)と見ています。訓練をすれば誰にでもできるというものではない。訓練をしてなれるのはテクニカルスタッフのレベルで、高度な分析官、あるいは高度な情報収集や情報収集者を運営するインテリジェンスオフィサーには、特別な才能が必要であると考えています」p28
「日本においても、創価学会員に対して、情報機関は職務の本能として警戒します。ぎりぎりのところに来た場合、彼は創価学会と日本政府のどちらに向くのかと警戒する。裏を返すと、こうした二重忠誠を問われない宗教は、宗教としてはほとんど形骸化している」p31
「プーチンは「元インテリジェンスオフィサーという言葉は存在しない」ということをよく口にしています。要するに、国のために働きたいと情報機関の組織に入ったなら、その人間は組織をたとえ離れても、一生国家のため、インテリジェンス機関のために尽くすものであるという考え方の持ち主です」p38
「(インテリジェンス分析)合理的に説明できないときは、知識が不足しているか、切り口を間違えているか、その両方か。そのいずれかと考えるべきでしょう」p52
「戦前の日本は大変な情報大国でした。トップはイギリスでしたが、戦前の二番目は、私はソ連だったと思っています。三番目が、実は日本。現在も、インテリジェンス能力がいちばん高いのはイギリスです。その次はイスラエルでしょう。三番目はロシア。アメリカは軍事力で圧倒していますから、情報が不正確でも負けない。そうすると、アメリカという国家にとってインテリジェンスは、死活的に重要な問題でないことになります」p100
「(ホガースの風刺画)ビールは金持ちが飲むもの。ジンは貧乏人が飲むもの」p136
「教養をつけるためにマニュアル的にできることはありません。マニュアル的なものは教養とは結びつきません」p196

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2018年10月21日

Posted by ブクログ

前半は収集した情報を知識でどのように結びつけて、正確かつ深く理解するかを諜報機関の実例を挙げて論述。後半ではその知識と思考力をどのようにして得るかを教材まで挙げて具体的に説明してます。これぞまさしく「リベラルアーツ」、とても勉強になりました。

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2018年05月13日

Posted by ブクログ

元外交官の佐藤優による、文字通りインテリジェンスについての一冊。

インテリジェンス(情報機関)でなくとも勉強になった。

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2023年03月20日

Posted by ブクログ

大学やカルチャーセンターなどでの講義・講演のいくつかを書き起こしてまとめたもの。
それにしてはある程度網羅的で、かつ章と章に繋がりが見られるのは、ひとえに編集者の力量だろうと思う。
あるいは、予め書籍化することを合意した上で、編集者が一年くらいついて回って、方々の講演内容についてもプランニングしたり口を出したりしたのだろうか。

端々に著者の危機意識の現れが感じられる。
まえがきのパリ同時多発テロからあとがきの安全保障関連法案までそれは貫かれているが、起きている事象それ自体に加え、それを取り巻く政治や言論の側にも、強くそれを感じているようだ。
政治家も官僚もマスコミも知識人にも、ベースとなる史実や背景が共有されていないので、どうも議論が上滑りになっているし、その結果、世論も施策も明後日の方向に向かっているように、著者には見えている。

では、どうすべきか。
ということで、もっと教養を持ちましょうという話になるのだが、ことはそんな簡単ではない。

一つは「教養」を身につけるにもその前提となる受け皿が必要だが、結構それが欠けている人が多いということ。

もう一つは、「教養講座」を開いている著者がこれを言うのも矛盾するが、「教養」を蓄えるためのマニュアルなどない、ということだ。

前者については、中等教育終了時点(高校卒業時点)の知識は受け皿としてまんべんなく持っていてしかるべきだというのが著者の意見だ。
中等教育の基礎体力が国家のレベルを決める、と主張するだけあって要求レベルは高い。
とはいえ、著者自身は「詰め込み」が悪だとも「ゆとり」がだめだとも言わない。諸外国の例を多く引くが、その中でもロシアとイギリスというその両極端の事例に触れるのも、どちらにも国家としてそうする理由・狙いがはっきりと理解できるからだろう。

高等教育の話にはなるが、大学の設置ひとつとっても利権団体の意向がまずあったり、あるいは文部官僚自身の天下り先が確保される大学・学部の認可が優先されたり、歴史教科書に至っては、周辺諸国を刺激しないことが第一義にあるようにしか見えない状況である。

長年、各々の国家がそれぞれの生存をかけて諜報活動を行っている現場に居た著者からすれば、国家観も国家戦略も、そのかけらすら感じない教育というのは、良し悪しは別にして信じられない、といったところか。

無論、国家によって牢獄に繋がれた経験のある著者である。それがあるべきだとかそれが正しいなどとは言わない。
ただ、中立な歴史などあり得ない。イギリスは大英帝国を、ロシアは大国であったソ連を、自身の歴史として教えている。国家とはそういうものだ、と言うのみである。

そういったものの不在と、大学受験の選抜法自体が中等教育の現場の形を決定づけてしまっている弊害が何度と無く書かれる。

今の受験制度に対応した効率の良い勉強をした人ほど知識に凸凹があり、その欠けている部分が決定的なものになっているケースがままあるわけである。
端的に私立文系の大学受験をすることを前提に高校入学早々に数学を捨てた人は、難しいんじゃないか、とかなりはっきり言っている。

そこでやり直しの勧め。
具体的な勉強法は、『読書の技法』に書かれていたことと重なる部分が多い。

矛盾するようだが人気予備校講師の手による受験参考書・問題集の利用が謳われる。
以前『読書の技法』の書評で、実際にそこまで取り組む人がどれほどいるだろうか、という主旨のことを書いたのだが、著者もそのあたりは気になっていたのだと思う。教養を身につけたいと思っている人に高校や中学の勉強からやり直せ、と言うのだから。
そこで本書では「プライドを一度括弧の中にいれて」とうまいことを言っている。
それから自分の欠損を記した「秘密のノート」を作る提案も。

そういった遠回りなことを勧めているからかもしれない。カルチャーセンターの主要顧客であるからして直接的には語っていないが、著者は団塊の世代はもう救いようがない、と考えているように見える。
戦中派は常に死と隣り合わせの状況で知識を吸収しているのでそれが血肉となっているとか、大学紛争以降日本の高等教育は崩壊したとか、二十代・三十代前半の方は数学をやり直してみたら良いとか。
ここで言われてないことをつなぎ合わせれば、そう読めてしまう。
いや、極論を言うと団塊の世代だけでなくそのジュニア世代たるロスジェネあたりまでまとめて用済み、の姿勢だろうか。

なお、全編を通してアメリカのことはほとんど書いていない。
著者自身に訪米経験がなく、また前科者であるので今後もその機会がないだろうことは要因の一つではあろう。

ただ、こういった教養的なものがまるっと欠落しているこの人工的な国家については、そもそも著者の関心外なのだろうと思う。

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2018年05月17日

Posted by ブクログ

講義を書籍化しているためか、行ったり来たりして読む感じ。
総じて、これまでになかった視点もあり、興味深く読めた。

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2022年06月18日

Posted by ブクログ

池上さんとのコラボされていた本で佐藤さんのことは知っていたけれど、今までそれ以外1冊も読んだことがなかった。
外交官をされていたこともあってか、各国の裏事情に精通されており、なんとなく触れてはいけない領域な気がしていたからかもしれないが、最近哲学や歴史を学ぶにつれ、世界の情勢を少しずつ理解できるようになって、佐藤さんのことにも興味を持つようになった。

歴史もそうであるが、物事の見方には常に主語があり、その人から見たストーリーとして捉えられる。客観的事実などないように、どの立場からみたストーリーなのか、それを踏まえながら物事を見ていくことが大切なのだと改めて感じた。

また教養を身につけることは、勉強することであり、そのやり方を間違えれば正しい教養は身につかない。
この本を通して、教養の身につけ方が少しわかったような気がする。
もう30代半ばだけれど、今からでも遅すぎることはないと信じて学んでいきたい。

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2021年11月03日

Posted by ブクログ

情報を見極める力は構造を理解して多角的に見ること
見方を変えれば全て合理性がある

テクニックがあるわけではなく基礎教養、高2ぐらいまでのレベルの知識がベースとなる

内容が難しく読むのに苦労する本だった

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2021年10月21日

Posted by ブクログ

タイトルから、頭がいい人による勉強法講座かと思ったら、全然違う、大学かどっかでの講義の文字起こしを改題したものだった。

別の興味として、ロシア外交や各国の教養レベルや初等・中等教育の話は面白かったけど
タイトル詐欺は結構嫌いなので評価上げられない。

抽象に戻ってくれる事があまりなく、ずっと具体的な事象と背景の話を熱くされてたので、置いてけぼり感が強かった。

信者からしたら、「お前の理解力が足らないからだ」となるんでしょうし、実際それあるんでしょうが。

ベースの教養が足りないと感じたら義務教育の教科書に立ち返るとか、方法論はめっちゃタメになった。

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2021年01月17日

Posted by ブクログ

「勉強法」というシンプルなタイトルになっていますが、もともと『危機を覆す情報分析 知の実戦講義「インテリジェンスとは何か」』(KADOKAWA)として刊行された本の加筆修正版です。

著者の多くの本と同様に、イスラムやロシアといった国々をはじめとする国際情勢の動きや、新資本主義の問題にかんして、外交官として活躍してきた著者自身の観点からその本質を読み解く解説がなされています。それに加えて、そうした情報分析をおこなうための基礎的な教養を身につける方法が示されています。

著者のこの類の本は、これまでもう何冊も読んでいるが、さすがに食傷ぎみです。

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2019年07月02日

Posted by ブクログ

他の本と同じようなことが書いてあって新鮮な学びは特にないとわかっていても文体がかっこいいから買ってしまう私のような人間が本当のファンだといえるのではないだろうか?
著者のいう教養というものがなんなのかよくわからない。この本で著者は一言でいえばまずは高校卒業程度までの各教科の勉強を徹底することを勧めている。しかし、そう闇雲に平均的に勉強したところで、教養が得られるのだろうか?
自分はそこが著者と考えが違って、まずは得意分野を引っ張り上げて伸ばすこと、そして山がなだらかに稜線を作るように周辺の分野を強化してゆくこと、これが教養を形成する方法だと思っている。むしろ稜線さえ作れず高層ビルみたいに得意分野(得てして経済学か情報工学)でしかものを語れない人は、著者の方法がよいのか自分の方法がよいのか?そこは考えどころではあるねー。

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2018年04月19日

Posted by ブクログ

今月の4冊目。今年の8冊目。

今のうちに勉強したいとおもい、ふと目に止まったので。とりあえず、語学を学習しようかなと思います。

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2018年04月17日

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