【感想・ネタバレ】薔薇密室のレビュー

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Posted by ブクログ

何処までが現実で、何処までが幻覚、或いは妄想なのか…。
色々な物の境界線が曖昧で、知りたくてどんどん引き込まれていきます。
最初は倒錯的な嗜好の男性が語り手となっている所為か、
一寸読みにくかったですが、視点が切り替わる事で、
ぐっと作品に惹かれます。
耽美、退廃、背徳、戦争…沢山の要素がぎっしり詰め込まれていて、
濃厚且つずっしりと感じる物語。
今年読んだ中で1番じゃないかと思う作品でした。
詠み手は選ぶかもしれませんが、好きな人はどっぷり嵌れます。

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2013年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「死の泉」では読後、というよりは最後の一文でぷんと濃いウイスキーのような悪の匂いが立ち上った。
本作では中井英夫直系の人間=薔薇というオブセッションを受け継ぎながら、なおかつナチスを題材に取りながら、最後にはさわやかな柑橘の香りが。
これはあくまでも良きにつけ悪しきにつけではあるが。

視点の多様性、語ること書くことへの思索、幻想の混入、など真骨頂。

いい気分で酔わせてもらった。

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2013年03月22日

Posted by ブクログ

作中作と作中現実(?)が入り混じる物語。読み解こうと進めば進む程、こんがらがってくる。薔薇と人間の融合、等というモチーフを扱いながらもSFに走ること無くミステリーとして仕上がっていて、本当に素晴らしい小説だと思う。作中の言い回しを借りると、どんなに不幸な人間をも陶酔させる力を持った物語です。
第一次世界大戦が舞台となっていて、最初は取っつきにくいかと思ったけれども、一度世界に引き込まれたらさくさく読めます。

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2013年02月22日

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幻かそれとも現実か
美しさと醜さが入れ混じり
官能的な物語に浸れる一冊
個人的に好きでしたが好き嫌い分かれると思います

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2012年12月14日

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ネタバレ

ミルカ側の物語が好き。
ユーリクの愛情がまっすぐ過ぎる。せめてミルカが生きてる事を知って欲しかった。

読み終わってから冒頭部分を読み返してさらに切なくなった。

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2012年06月06日

Posted by ブクログ

久しぶりに続きが気になって一気に読んでしまった。
カテゴリー分けがこんなにも難しい作品は珍しい。
ミステリーとして読むと正直言って結末は物足りないと思う。

でも面白かった。
美しくて哀しい。


ミルカとユーリクの章が個人的にツボにはまってしまった。
思わず久しぶりにきゅんとした。

またじっくり読み返したい。

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2012年04月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ずいぶん前に読んだものの再読。
前半部分しか憶えていなかった。
それと、「物語を必要とするのは、不幸な人間である」という、ものすごく印象に残っている言葉を知ったのは、どうやらこの本だったらしい、ということがわかった。
ミルカとユーリクは、最後に薔薇の僧院で再会するように記憶していたんだけど、ぜんぜん違った!それこそ私の脳が勝手につくった物語だ。
前半をよく憶えているのは、私の好きな「物語」だからだろう。薔薇の咲き乱れる僧院という箱庭、アンネの日記のようなミルカの生活、いい人そうなホフマンさん。

最終的に、ミルカとユーリクは「現実」へ戻っていく。
ヨリンゲルたちは僧院に残るけれども、それは「物語」ではなく、続いていく「日常」だ。
ナタニエルだけが、「物語」を追い続ける。

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2024年02月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

視点が変わるごとに、ああ、そうなのかと。世界と世界が繋がった瞬間にああ!あなたはそうなのか、と思った。はじめのコンラートの話がありえないほどに非現実的だったのも腑に落ちました。

終わりはヨリンゲルの語りで締め括られるのだけど、敢えてミルカを止めなかったのは、どこかでその惨状を乗り越えられるだろうと思ってるのだろうか。ミルカとユーリクを再会させてあげたかったな。

そして新たな創造世界を求めて狂気の支配者は南米へ。誰かに悪夢の種を植える所業は続けられるわけだね。

身体は大人で心は子供のナタニエル、身体は子供で心は大人のユーリク。対照的な二人にそれぞれの形で愛されたミルカ。

どっぷりと皆川博子さんの世界を堪能しました!

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2022年06月18日

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死の泉という作品を読んだあとに、こちらの作品にあたりました。
第二次世界大戦前後のドイツ、マッドサイエンティスト、政治や社会から隔絶された不気味な空間、登場人物たちそれぞれの運命の糸が絡み合うドラマチックな展開、などなど、死の泉と共通点がいくつもあるものの、ここでは全く異なる世界が繰り広げられ、新たな感動を得られました。こんな充実感に浸れる作品は中々出逢えません。

長年にわたりソ連やドイツはじめ周辺国に翻弄され続けているポーランドのことも詳しく知ることが出来ます。なぜドイツとポーランドを舞台にしたのかは、最後まで読めば理解できるようになっています。勘のよい方は、もしかしたら結末を予想できるやもしれません。

一番素敵なポイントは、主人公のうちの一人(この作品は見方によって主人公が変化します、そこも見所です)である、ミルカという薄幸の少女の内面描写です。
彼女の持つコンプレックス、恋への憧れ、健気さ、打算、家族への愛と本心、、様々な場面でミルカ自身が語ります。女性の方なら特に、ミルカの、ユーリクに対する自然な愛情と、一瞥しかしていない端正なヨアヒムに対する盲目的な恋慕が共存する複雑な乙女心に、グッと来るかもしれません。
大抵の人が直視したくないような自分の弱さや醜さを、よくもまぁこんな自らえぐり出してくれるな笑、とツッコミも入れたくなるのですが、これだけ描写してくれるからこそ、最初から最後まで彼女のことを自然と応援したくなり、結果どんどん皆川さんワールドにはまりこんでいくことになります。
皆川さんは、極限状態にいる人間のなかの美徳&悪徳をほんとうに違和感なく表現してくれるので、どのキャラクターも厚みがあります。なぜこのキャラクターがここでこんな行動をとるのか、ちゃんと筋が通っています。万が一わからなくても、読み進めれば必ずや理解できるよう仕掛けています。そのため、
[なんだこのキャラ、ウザいな。このキャラは嫌い]
と感じることは基本的にないと思います。
読み進めるほどに、何が真実で何が夢想なのか、今どこの視点にたってる描写なのか、徐々に倒錯していく耽美な混沌に、溺れること間違いなしです。
是非手に取ってみてください。


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2020年12月02日

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とても面白かったです。仄暗い世界観にひきこまれ、くらくらしながら読みました。どこまでが幻覚なのか、正気の在り処を見つけられませんでした。戦時下の描写は胸に痛く、皆川さんにしか描けないだろうなと思ってしまいます。薔薇と若者や少年の融合も狂気的でしたが、綺麗だろうな。幻想的な物語でした。

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2019年03月09日

Posted by ブクログ

美しいバラの花と腐乱した死臭、
生きた精液がかおるような妖しい序盤の物語から一転、
謎の語り手の物語に。
そして、語り手は少女に移り。
物語は視点を変えながら、事実か創作か幻覚か夢想か
あやふやになる記憶と現実が、ミステリーの騙しの
ためではなく、この物語の世界として溶け合い
一気にラストまで読み手を導いていく。
そして、それまでの世界を一気に転換してしまう
ような最後の最後。人が現実の中で
爽やかな愛を胸に力強く立ち上がる姿よ。

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2016年06月13日

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ネタバレ

初皆川作品。圧倒され、惑乱させられた。次々と語り手が交代していくことにより、たった今まで現実と思って読んでいた物語が虚構に切り替わり、そして次に読んだ物語も虚構へと……、現実との境界が分からなくなっていく。どれも完結しない物語。登場人物が感じる混乱が私にも伝播し、酔う。ミステリ作品として、最終的には現実が提示されるわけだが、それでも残されたひと筋の非現実-詳細は伏せる-により、この惑乱は解けずに終わる。

薔薇の僧院。薔薇と人間を合体させる狂気の研究。男娼と黴毒。姉の美しい恋人。美しき劣等体。ナチとSS。重厚な文体。出てくるモチーフは確かに倒錯、耽美なのだが、そこには頽廃のような爛れた空気よりも、「業」という名の毒と閉塞さを感じた。(それにしても、ドイツ語の響きの耽美に聞こえることよ。)

作中で繰り返し唱えられる「物語を必要とするのは、不幸な人間だ」という一文、これが本作品が投げかける「業」の主たる要素だと思う。舞台は第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけてのドイツとポーランド。ドイツ第三帝国というヒトラーの大きな物語、ここを舞台に更なる自分の物語を紡ごうとする登場人物。そして読み手たる私はこれを一つの物語に構築しようと試みる。つまるところ人間は皆不幸なんだな。

確かに見た目は"厚い"けれど、決して"長く"は感じない一冊。

(ちょと苦言、冒頭の小序、これは最後に持ってきて欲しかったなぁ。恐らく救いになっていると思われるが、ほとんど結末を提示しているに等しいので。結末ももうひとひねり欲しい気はした。)

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2013年01月31日

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とても良い香りで、味も抜群の料理を食べていると、不意に奥歯で砂利を噛んでしまった。

温かくて手触りの良いストールを巻くと、ちょうど首の後ろの部分にに何かの棘がついていた。

靴に入り込んだ小石。

わずかに漂ってくる悪臭。

そんな決定的に不愉快だとは云えないまでも、落ち着かない気分になる物語。

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2012年11月29日

Posted by ブクログ

なんて美しく、退廃的で、歪んだ世界!
「死の泉」同様、どっぷりと皆川ワールドに浸ってしまいました。

美青年を薔薇と結合させ、永遠の美しさを保つ。
「死の泉」で、少年の美声に異常なまでに執着した医師を思い出します。

夢と妄想と現実。読んでいるうちにその境目が曖昧になる。
何冊か読んできましたが、皆川さんの真骨頂はそこなのかな、と。
美しい悪夢のような物語に溺れてしまいそう…

一読しただけでは、とても理解できたとは言えませんが、
幻想的な世界観をたっぷりと堪能できました。

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2012年10月14日

Posted by ブクログ

 第1次世界大戦から第2次世界大戦にかけてドイツ・ポーランドの国境近くの修道院で行われた秘密の実験。
 
 脱走兵に、ポーランドの少女、修道院の作男、と、語り手は変動していく。でもって、どれも<信用のならない語り手>なのだ。
 なので、翻弄され困惑し、気がつくとがっつり世界に取り込まれている。

 にしても、薔薇と人間を融合させるという実験が、あの病気の治療云々につながっていくとは…。
 とはいえ、まぁ、どれもこれも共感できない人物のオンパレードで、ある意味、人間の基本的な嫌な部分、というか自分自身が嫌悪していることを凝視させられる気になる。
 やっぱ、怖いです、皆川博子。

 でも、癖になる面白さ。

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2012年06月10日

Posted by ブクログ

脱走兵コンラートが逃げ込んだ古い僧院では、ホフマン博士が人間と薔薇を融合させる実験を行なっており・・・
いくつかの物語が交錯しながら、しだいに集約していき、思わず引き込まれる。理屈はともかく、この物語の世界にハマったもん勝ちって感じかな。

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2012年05月28日

Posted by ブクログ

頑張って読み終えた。

私の日常とかけ離れた、濃密で妖しい、美しくねじれた世界。

触れようと手を伸ばせば、容赦なく鋭い棘で傷つけられ、こちら側に来る勇気はあるのか、と静かに詰問される。

私は流れ落ちる血をも忘れ、汝に見とれるばかり。

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2012年05月20日

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