【感想・ネタバレ】阪堺電車177号の追憶のレビュー

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作中で流れる時間は、約80年間にも及ぶ。80年間以上も走り続けた電車と、そこに縁が在った人達の物語ということになる。
大阪市の南側から堺市に軌道を敷設している阪堺電気軌道が在る。併用軌道(路面電車)区間が多いが、一部は専用軌道になっている。この阪堺電気軌道では、「昭和一桁」に登場した車輛であるモ161形が非常に長く使われている。2023年現在も未だ残っているという。
本作は、このモ161形の1輛である「177号」が、「少し年配のおっちゃん」という具合に擬人化され、長く働き続けた“人生”を振り返る部分が冒頭に置かれた6つの篇にプロローグとエピローグが添えられる。各篇は昭和一桁の頃から平成までの様々な時代に沿線で繰り広げられる挿話である。
6つの篇は昭和8年、昭和20年、昭和34年、昭和45年、平成3年、平成24年で、プロローグとエピローグは平成29年と時期が明記されている。各々の篇の時期の世相を反映しながら、様々な人達の層我が展開するが、各篇の作中人物に相互にかかわりが在る、または同一人物が登場しているというのも在る。曾祖父母、祖父母、父母、息子や娘、その子達と4世代か5世代の人生を運んで来たような電車の周辺の物語が実に味わい深い。
本作を読むと、未だ在るらしいモ161形を眺めに行ってみたくなる…また本作は、短い期間の連続テレビドラマか何かのような風情も在るかもしれない。読んで、深い余韻が在る作品だ。

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2023年09月13日

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阪堺電車177号という、路面電車にまつわる
人々の悲喜こもごもを、時間軸に沿ってたどる、
という体裁の連作短編集。

デビューして、85年間の現役生活を終えて、
間もなく解体される177号が、自分の意思を持って
長い歴史を振り返りっていく...という始まりなので、
ファンタジーに分類してはみましたが(^ ^;

戦前から戦中・戦後、そして現代に至るまで、
様々な時代のさまざまな人々が登場して、
それぞれのストーリーを紡いでいく。
一つひとつの作品は、ミステリ色が強かったり、
社会派要素があったり、人情話だったりと、
多彩なラインアップとなっている(^ ^

時代を超えて、ある登場人物が
複数の作品にまたがって出演してたりもする。
「オチ」が着いたと思ったら、その先にもう一展開あったり、
反対に「オチがない」と思ってたら、次の作品で
「その後の展開が分かる」仕掛けになってたり(^ ^

とにかくあれこれ工夫した作りになっている...が、
読みやすい文章と、的確な時代・背景描写、
若干の鉄ちゃん成分と、イヤミの無い関西弁のセリフと、
魅力たっぷりでたいへん楽しく読める作品です(^ ^

エピローグもほっこりできて心地よい読後感(^ ^
ネタバレが怖いので、詳しくは書けませんが...(^ ^;

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2020年11月04日

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阪堺列車177号にまつわる戦前から現代までのファンタジー
各短編は微妙に登場人物がオーバーラップしている

ちなみに、177号は架空の号機だが(実際の160系は176号まで)兄弟機はいくつか未だ現役

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2021年02月20日

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ネタバレ

関西の人、いや大阪人であっても梅田起点文化圏の人には、存在程度走っていても今一つメジャーじゃない、阪堺のチン電。その電鉄会社の中で85年間一線で走り続けた車両を擬人化して、沿線に関わる風景を短編小説とした作品集。
俺自身は梅田文化圏よりなんだけど、妻がばっちりチン電文化圏に生息しているんで、結婚してからは、この辺も詳しくなり、しっかり楽しませて頂きました。

そういう生い立ちの小説だから…いや、それ以上の部分で、ストーリーも思わせる趣旨も、伏線の張り方も、クライマックスも、時代選択も、あらゆる部分がローカルである。
例えれば関西ローカル時代の、上岡龍太郎が吼えまくってた時のナイトスクープ的なマニアックさ。
このマニアっくなローカルっぽさが、好きならきっとたまらんだろうと思うし、嫌いな人にはちょっと臭いんじゃないかなぁ。(俺は好き)

NHKBSで関西のみ、もしくはテレビ大阪でドラマ化してくれたら、きっと面白いと思う…いや、ラジオドラマの方がエエかもなぁ、NHK大阪かOBCで!

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2019年02月16日

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住吉さん行くのに乗る電車です。
昭和8年から平成29年までを短編で繋いでいます。
えらいコテコテの大阪弁やなぁと思いながらよみはじめましたが、ほのぼのとした中でちょっとした事件も起こり、とても面白かったです。
読んでたら急にちく満そば食べたくなりました。

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2024年02月11日

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ネタバレ

 大阪を走る阪堺電車177号は昭8年から平29年、85年の歴史を。昭8.4、昭20.6、昭34.9、昭45.5、平3.5、平24.7、平29.8の時代の節目節目の世相を電車、運転士、乗客の視点から綴る物語、連作短編集。昭8年、昭20年は想像の世界ですが、昭34年以降は、ああそんなことがあったなと時代を思い出しながら楽しみました。山本巧次「阪堺電車177号の追憶」、2017.9発行。

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2023年05月17日

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チン電走ってるこの辺に住むの憧れて、遂にその夢叶い、そしてこの本に出会い、さらにこの辺が好きになり。今では、ちょっと車輌にも詳しくなり。大阪の忙しないイメージとはかけ離れた、ノロノロ走るチン電にのんびり穏やかな住人さんたち、好きだな。

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2022年02月26日

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知ってる景色が出てきて、大阪弁で語られる話で、親近感があり面白かった。ひとつひとつの話が繋がっていて最後に伏線回収されて読後感最高だった。自分も撮り鉄になって阪堺電車を撮りに行きたくなってしまった。次の休みにカメラを持って行ってみよう。

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2021年06月29日

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阪堺電車、現役最古のモ161形177号を巡る人々との連作短編集。関西弁飛び交う人達との優しい、温かい話がいっぱい。じんわりとして、ホッコリします。

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2021年01月16日

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ラジオドラマ化されるということで購入。
大阪を走っている路面電車、阪堺電車。その中で一番古い電車がストーリーテラーとなって、その時代時代に起きたことを描いていく連作短編集です。

一応、電車が案内人ですが、各短編では、重要な役割として描かれています。ちなみに小説に出てくる161形177号の電車は、存在しません。(176号までは存在します)

ちょっとしたミステリーあり、復讐あり、人情ありなど様々なジャンルを味わうことができ、面白かったです。
最初に登場した人物も後々、再登場しており、その辺も楽しむことができ、飽きさせませんでした。
また、中盤になると、各短編集の結末が、えっ?と驚くような結末を迎えたり、伏線が後々に解決されたりと進めば進むほど読みたくなるような作りになっていて、面白かったです。

個人的には、馴染み深い電車ではありませんが、ちょっと乗ってみたくなりました。
ラジオドラマが楽しみです。

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2020年03月09日

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・阪堺電車で85年間走った177号電車(モ161型)はおそらく廃車も近く、これまでにあったことを思い出していた。
・個人的に地元の話ではある。あんまり乗る機会はなかったけどエリア的には南の方以外は自転車でほぼカバーしてた範囲内。なので、題材だけで親近感はある。
・かすかにミステリ仕立てのハートウォーミング系な6つのお話。
・同じ人が他の話でも出てくる。全編をつなげるのは強いて言えば雛子はんかな。
・著者のことは知らんかったけど表紙カバーの絵には記憶があった。たぶん、と本棚を探ったらやっぱり森博嗣はんの絵本『猫の建築家』の絵を描いた佐久間真人はんやった。

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2020年02月11日

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期待以上に良かった!
時代の移り変わりも良かったし、連作短編なので色々と登場人物が絡んでいて面白かった。

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2019年06月28日

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阪堺電車177号に関わる人々の事件が、連作として描かれる。時代は戦前から戦後、そして現代まで。事件には、前の章で登場した人物や、その子孫が登場し、あたかも、読み手も長年人々の生活や事件を見守ってきた阪堺電車177号となったかのように、沿線の人々の歴史、人生をみることができる。
事件は最後の最後にどんでん返しや、ようやく真実があかされたりと、読んでいて実に楽しかった。

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2019年04月28日

Posted by ブクログ

うわっ、電車がしゃべってる。「きかんしゃトーマス」みたいやなと思ったら、ずっと電車目線なわけではありませんでした。

戦前、戦時中、戦後、バブル期を経て現代に至るまで、80年以上にわたって走り続けた路面電車177号の周辺で、本当にこんなことがあったかもしれないと思わされます。普通の人情話かと思いきや、ちょっとしたミステリー仕立てになっている。

大阪といっても、淀川より向こう、ずいぶん南。特にこてこての大阪弁なので、大阪弁に抵抗のある人にはツラそう。大阪に思い入れのある人なら懐かしさ満点。淀川より北育ちの私もなぜか懐かしい。

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2018年12月04日

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85年の歴史の中の連作。
それぞれの人生がつながるので、とても面白い。
電車のことも詳しく書いてあるので、そちらも興味深く読めました。

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2018年09月25日

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阪堺電車はあまり馴染みがないが手に取る。
地名があんまり分からんので、
いまいち入り込めず。
ストーリーは一癖ある内容。
オチを求める大阪らしい展開かと…

住吉さん行く為に久しぶりに乗ろうかな。

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2022年12月29日

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こどもの頃、阪堺電車の沿線に住んでいた。駅名や沿線の雰囲気が、よみがえり、懐かしい思いで読み進めた。車両177号の思い出として昭和初期から平成までを繋いでいく。6つの短編の主人公も少し接点を持ちながら、話が進む。「財布とコロッケ」で、出会った二人は後に結婚し、そのきっかけを作った小学生はのちに電車の運転手になる。「防空壕に入らない女」では、学徒動員で女子学生運転手となった雛子と防空壕に入らなかった信子の出会い、「25年目の再会」で、なぜ、防空壕に入らなかったのかがわかり、「鉄ちゃんとパパラッチのポルカ」で、実はその後も二人の仲は続いていることが描かれている。177号の最後は、結婚した2人が始めた洋食屋50周年の店を飾ることになる。どの話しも、ニンマリしたり、えっ!そうだったの?と驚いてみたり。うん、涼しくなったら乗ってみよう、阪堺電車。路面電車に揺られて見たくなる話が満載。

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2022年08月13日

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コロナ禍前に阪堺電車と百舌鳥古墳群を散策したくて読んだ本。久しぶりに手を取ってみて、阪堺電車で働く人々や沿線の人々とのやりとりがおもしろい。

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2021年09月30日

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阪堺電車の沿線に住んでいるので手に取りました。日本で最も古い現役路面電車の語る大阪下町プチミステリー。なじみのある土地が舞台なのて楽しめました。

連作形式だけど、伏線が張ってあるわけでもなかったのが惜しい気がしました。最後に膝を打つ感じが欲しかった、というのは贅沢?

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2018年09月28日

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第一章二階の手ぬぐい。中々一筋縄でいかない構成にしている。質屋の二階につるされたタオルをめぐる推理。どんでん返しではなくいわゆるオチの妙。最後の落とし方が必要だったかな、あるいは弱すぎる。
第二章防空壕に入らない女。文字通り防空壕に入らない女の話。最後の落ちが今一不自然というか、思わせぶり。未完成を感じる。第三章財布とコロッケ。ほのぼのとした話。しかし少し無理があるかな。第四章二十五年目の再開、第二章の続きになる、なるほど面白い構成だ。第五章宴の終わりは幽霊電車、詐欺師をとっちめる話第六章鉄っちゃんとパパラッチのポルカ、マンションに張り込んでいた記者にまつわる騒動。エピローグ。この小説書きおろし小説だ。各章を読んでも一応のオチがあるが、全体の章が阪堺電車177号を中心としてつながりがあり、最後のエピローグでその種明かしめいたものを再度書いてある。構成としては面白いが回りくどく今一わかりにくい。わざわざ阪堺電車を持ってきた意味が、しかも阪堺電車を擬人化までして作り上げる必要があったのだろうか?構成オチがいまいち成功していないのかなあ?各章の落ちも少し強引すぎたので、もう少し書き方があったのではと、批評家気分で思ったのだが、軽く読み切るには面白い小説ではある。

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2018年09月25日

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