感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
童話を絵なしで読んでいるよう。聖書を読んでいるようで、なかなか滑稽かつグサリとくる話ばかり。
「労働が美しい」というのは、トルストイがソ連に影響を与えたということもまた真実なのだろうか。
ロシアでマルクス主義が実現したのも頷ける気がする。
結局、マルクス主義はある意味「馬鹿」でしか実現できないのか・・。
Posted by ブクログ
トルストイがロシア各地に伝わる民話伝承を、いわば改作して書き上げた民話集。トルストイと言えば「戦争と平和」だけれど、あちらが私には今ひとつピンと来なかったのと対照的に、こちらはとても楽しく読むことができた。色々な諷刺や教訓、「生き方」論、あるいはトルストイの芸術論を引き出すことも可能なだけれど、とても透明感のあるこの物語を前にすると、そういう小難しいことを考えるよりも、水を飲むようにただただこの中に流れるものを自分のものにできたらなぁと思う。
非常に宗教的な「善きものへ向かっていこうとする」物語群、と言うと、宗教という言葉にアレルギーを持つ人々に毛嫌いされそうだが、ここにあるのは、信仰というものが持つ一番澄んだ部分である。それを現出させるのは、「イワンのばか」に代表される、ひたすらに自分の手を動かして働く、「頭を使って働く」ことをしない人々。そこがまさに民話的、というかむしろ神話的ですらあるところで、この答えを素直に、「何を着ようかと思い悩む」野の花になれない現代社会の人間が受け入れて生きていくのは途方もなく難しい。
一方で、これを書いたのがロシアの貴族で「手で働く」ことのない人物であり、家庭を顧みず妻は生活を支えなければならなかったということを考えると、不思議な気持ちにもなる。そのことはこの物語の価値を減じる訳ではないのだけれど、ここに描かれる透明な世界は、トルストイの心象風景というよりも、憧憬に近い光景だったのだろうかという想像がよぎるのだ。そうだとすれば、トルストイは、自分の現実とこの天上の風景の間で、時に非常に苦しんだのかも知れない。
Posted by ブクログ
一貫して,正直・実直を賞賛し,欲望を戒めるお話。
イワンのばかとそのふたりの兄弟
小さい悪魔がパンきれのつぐないをした話
人にはどれほどの土地がいるか
洗礼の子
鶏の卵ほどの穀物
三人の隠者(ヴォルガ地方の伝説から)
悔い改むる罪人
作男エメリヤンとから太鼓
三人の息子
Posted by ブクログ
読んでいる最中は、これが「民話」と題されていることに違和感を覚えた。どの短編も冒頭に聖書の一説が引用されており、内容に関しても道徳的且つ「神」を主題としたものが多く、宗教説話の色が濃いと感じられたからである。
しかし、民話とは日本で言うところの昔話であり、そこに筆者の主張や宗教性を見いだすものではないというのは、単に日本的な価値観であるのかもしれない。
解説を読むまで気付けなかったが、「手にタコを持つものだけに、パンを与える」という一説には宗教的道徳性だけでなく、トルストイの徹底した平等主義も示されているらしい。
何にせよ、改めて「西洋文学はすべて聖書に通じる」のだなあと改めて感じさせられた。