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半世紀以上生きているのにも関わらず、タイトルしか知らず。自分の成熟さがようやく追いついてきたのか。
1966年に発行されたこの文庫本は、文体も昔ながらであるが、だからこそ、トルストイの思想がよく伝わってくる気がする。トルストイは、愛の人、信仰の人、労働の人である。クリスマスにこんな本を読むと感動してしまう。
「イワンのばかとそのふたりの兄弟」「人にはどれほどの土地がいるか」をはじめ、どれもすばらしい民話だ。民話なんて子どもの頃読んだ以来だ。でもこの民話は心が枯れてしまった大人たちのためにあるような気がする。
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「人はなんで生きるか」とはまた違う民話の面白さがあります。結末がちょっとシュールで笑ってしまうものもありました。そういったギャグ感(?)のあるものやかなり今を生きる私たちに身につまされるものもあるので私としては面白かったです。
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名作とされながら、子供時代を通じて読んだことがありませんでした。今、人生の秋に差し掛かる年齢になって、この作品の輝きがどこにあるかがわかるような気がしてきました。
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◎ただのバカな男の話?いいえ、我々の愚かさの話。
イワンのばか 他8篇を収録。
「イワンのばかとそのふたりの兄弟」
兄で軍人のセミョーンと同じく兄で商人のタラースとは裏腹に、イワンは妹と両親と働きながらひっそりと暮らしていました。
この3兄弟を悪魔が狙います。様々な策でタラースとセミョーンは悪魔に貶められてしまいます。さぁ、イワンは同じように悪魔にやられてしまうのか。それとも。
イワンに象徴されるような真面目で勤勉な者と、セミョーンやタラースのように儲けなど私利私欲に走る者とが対照的に書かれている。
自分の考えが、私利私欲に走って悪魔にやられてしまいそうになりませんように。
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童話を絵なしで読んでいるよう。聖書を読んでいるようで、なかなか滑稽かつグサリとくる話ばかり。
「労働が美しい」というのは、トルストイがソ連に影響を与えたということもまた真実なのだろうか。
ロシアでマルクス主義が実現したのも頷ける気がする。
結局、マルクス主義はある意味「馬鹿」でしか実現できないのか・・。
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イワンのばかとそのふたりの兄弟
小さい悪魔がパン切れのつぐないをした話
人にはどれほどの土地がいるか
鵜の卵ほどの穀物
洗礼の子
三人の隠者
悔い改むる罪人
作男エメリアンとから太鼓
三人の息子
以上9編
トルストイ晩年の作品
ロマンロランが芸術以上の芸術とした
宗教に基づき読者の人生に寄与し、かつ明瞭単純簡潔
戦争放棄、愛の福音、人間平等、金銭否定、無抵抗主義、汎労働主義
生きるためには
自ら清く
つかむところを持ち
自ら燃えること
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「イワンのばか」の悪魔ってなんとなくかわいい小動物みたいなところがある。消えてしまう時に、地面にすっぽり黒い穴をあけていくところもひょうきん。「洗礼の子」「人にはどれほどの土地がいるか」がとてもいい。特に後者は、「世にも奇妙な物語」にすればかなり怖いものになるだろう。
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すばらしい、やっぱりトルストイはおもしろいなあと実感。
どれも限りなく単純なはなしなのだけれど、たとえば情景が浮かんでくるような描写が抜きんでてる。だから普通におもしろい。
質素でいることの幸せさってわかるんだけど、それをすぐ忘れてしまうくらいこの世界は誘惑に満ちている。苦しくなってやっと気付く。ほんの少しのもの、一つしかないものを大切にしなくては。
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人間が幸福になるためには、どうあるのがよいか?
のトルストイの答なんだと思いました。
悪を罰しても、さらなる悪を生み出すだけである。
悪人にも罰することではなく愛を。
理想論・・。しかし、ものすごくひきつけられました。
「イワンにバカ」については兄たちににもっと深みをもたらしたら、おもしろいとも、思いましたが、民話なので、わかりやすくつたえようとしたんだと思うのでこんなもんかと。
もし、「兄たちが全人類の幸せの為に、兵、金を欲する人だったらどうなのか」という答をトルストイだったらどう考えるのかと思いました。
大きな目標をもってそれを実現し、自分を成長させるということとは違う人生のありかたのように感じました。
トルストイが好きになりました。トルストイのほかの作品も読んでみたいとおもいました。。
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「イワンのばかとその2人の兄弟」他8編の民話集。
ロシア民話によく登場るするというイワンのばかと狡猾な2人の兄弟が主人公の物語は、短編であるものの、読み応え大。人間の欲、労働、金、戦争、愛、平等等数えきれないほどの要素がこれでもかと言うほどに詰め込まれている。それなのに、平易な言葉でわかりやすく、くどくなく面白おかしく、考えさせてくる。いや〜、これは語り継がれるはずだ〜!
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どれも味わい深い。
・イワンのばかとそのふたりの兄弟
軍事、経済の愚かさを説き、頭脳労働ではなく、肉体労働の価値を説く。
「ああよしよし!」の繰り返されるセリフが味わい深い。
・小さな悪魔がパンきれのつぐないをした話
余剰物と飲酒への皮肉。
・人にはどれほどの土地がいるか
欲望が人を滅ぼす。
・鶏の卵ほどの穀物
自分のことを自分でやる社会。誰かのため、ではなく。いかに今の世が、当たり前から外れているか。
・洗礼の子
どうすれば根本的に悪を滅することができるのか。含蓄深い。
・三人の隠者
祈り形にとらわれる、愚かさと本当の祈りの崇高さ。
・悔い改むる罪人
あれ、最後はなぜ開くの?こんなご都合主義の人間に。信仰とはそんなもの、という皮肉?
・作男エメリヤンとから太鼓
権力に打ち勝つとんち。
・三人の息子
わかりやすい昔話。人のために善をなす。
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中高生の頃から何度となく読んできた本。ロシアによるウクライナ侵攻の報道を見聞きするたびに、この本を思い出して、久しぶり読み返した。トルストイがロシアに伝わる民話を元に1886年に発表した「イワンのばかとそのふたりの兄弟」や個人的に大好きな「人にはどれほどの土地がいるか」など9つの短編が収められている。「イワンのばか…」は、今あるもので手にマメができるほどしっかり労働することの価値を描いていたし、「人…土地…」では、足るを知ることの大切さを教えていた。はたしてプーチンは読んだことが無いのだろうか。ロシアには人の道を教えてくれるこんなに素晴らしい物語があるのに。
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ロシア文学を読みたくなって。
宗教色の強い民話。
最初はあんまり意味わからないなと思ってたが、トルストイの思想がふんだんに入ってることに気づいたら、この話たちを通して言わんとしてることがなんとなく分かってきた。
真の芸術は宗教的感情を土台として一般の民衆にも広く理解される普遍的なものでなければいけない、というトルストイの主張から「民話」という形としてうまれた。
たしかに少々説教くさい部分はあるものの、努力するものが報われ、労働することや罪を償うことの大切さを平易な文章から感じることができる。
大人になってからもなるほどと人生を悔い改めるものになるには違いないが、確かにこれは子供にも読ませたい。
書かれたのはかなり昔だが現代でも通ずると思う。
ちなみに解説が丁寧でわかりやすいのでおすすめ。
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"人はなんで生きるか"より悪魔の登場頻度が高い。
悪魔とは自己の内に潜む欲や我を指す。
夏目漱石の則天去私、仏教の解脱、老子の無知無欲など、
古今東西の求道者達が人間の欲(悪魔)を否定しているのは決して偶然ではなく、真理がそこに存するからであろう。
そしてそれを平易かつ味わい深い筆致で描いてみせるトルストイには脱帽せざるを得ない。
Posted by ブクログ
強欲な人、ズルい人を戒めるのではなく、自分の中の強欲さやズルさを戒める本だと思った。
登場する悪魔は、ファンタジー的なものではなくて、「魔がさす」の意味で、一匹追い出しても次々と執拗に入り込んできては理不尽なまでに攻撃してくる、自分の中の悪魔に負けないように、と解釈した。
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「イワンのばか」の他に八篇の物語がおさめられている。どれも、ぇ、小学生向き?と思ってしまう。解説から拾いあげると「明快、単純、簡潔、平易かつ簡素な言葉、わかり易く、面白い」まさに!でもその底には「トルストイ自身の血みどろな精神的苦闘を経て体得した愛の副音が説かれている」ぅむ。だれでも読めるわかる民話の中に、人としての生き方を奥底深く心をえぐるように・・・うっ〜、我が胸に突き刺さる。ぉ〜、レフ・トルストイ恐るべし、すっかり虜になってしまいそうだ。次は「人はなんで生きるか」を読もう。
でも、数ヶ月たったら他にどんな話があったのか忘れてしまった。(2013年1月5日記す)再読してみたいな。
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トルストイがロシア各地に伝わる民話伝承を、いわば改作して書き上げた民話集。トルストイと言えば「戦争と平和」だけれど、あちらが私には今ひとつピンと来なかったのと対照的に、こちらはとても楽しく読むことができた。色々な諷刺や教訓、「生き方」論、あるいはトルストイの芸術論を引き出すことも可能なだけれど、とても透明感のあるこの物語を前にすると、そういう小難しいことを考えるよりも、水を飲むようにただただこの中に流れるものを自分のものにできたらなぁと思う。
非常に宗教的な「善きものへ向かっていこうとする」物語群、と言うと、宗教という言葉にアレルギーを持つ人々に毛嫌いされそうだが、ここにあるのは、信仰というものが持つ一番澄んだ部分である。それを現出させるのは、「イワンのばか」に代表される、ひたすらに自分の手を動かして働く、「頭を使って働く」ことをしない人々。そこがまさに民話的、というかむしろ神話的ですらあるところで、この答えを素直に、「何を着ようかと思い悩む」野の花になれない現代社会の人間が受け入れて生きていくのは途方もなく難しい。
一方で、これを書いたのがロシアの貴族で「手で働く」ことのない人物であり、家庭を顧みず妻は生活を支えなければならなかったということを考えると、不思議な気持ちにもなる。そのことはこの物語の価値を減じる訳ではないのだけれど、ここに描かれる透明な世界は、トルストイの心象風景というよりも、憧憬に近い光景だったのだろうかという想像がよぎるのだ。そうだとすれば、トルストイは、自分の現実とこの天上の風景の間で、時に非常に苦しんだのかも知れない。
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民話というか童話というか。
トルストイの短編をおさめたもの。
一貫しているのは
人間の浅ましさ、儚さ、欲深さ、云々
そんな人間の汚い、どうしようもない本質を描写
好き。
Posted by ブクログ
インパクトのあるタイトルなのに、子供時代を含めた何故か読んだ記憶がなかったので読んでみた。
表題作は、愚直さも極めれば偉大である、ということか。全ての民族はそれぞれの流儀で偉大である、と思うが、ロシアは特に独特と思えてくる。
19世紀のロシア文学は、ひたすら、ウォッカと(これは今もか)、決闘と、不倫と、ロシアンルーレットのイメージだが、本作は民話だけあって、お酒が少々出てくるくらいで、キリストと悪魔の登場が多い。
「三人の隠者」は、「人は何で生きるのか」の中の「二老人」と同じテイストで面白かった。宗教的権威が意図せず堕ちる様が心地よい。
Posted by ブクログ
子供のころに読んだイワンのバカ。
今読むと、また違った感じを受け
人と人がどう関わって生きていくのかについて
トルストイが考えていることが少しわかる気がしました。
欲張らず、妬まず、人のために・・・
そんなイワンが一番の幸せ者。
でも、実際、人は欲もあり、妬みもする。
だから頑張れる時もあると思うこともある。
一方で、イワンのような働き者こそが
幸せにならないと。
働かざる者食うべからず・・っと思うこともある。
Posted by ブクログ
非常に有名だが読んだことのなかった「イワンのばか」.タイトルから想像したのは全く異なり,むしろ「ばか」と思われていたイワンが最強,という話だった.どの話も宗教色が強いのだが,説教臭くもなく,素朴なロシアの農民達が「幸せとは何か」をめぐる物語を繰り広げる.この本全般を一言で表わすと「足るを知る」.
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一貫して,正直・実直を賞賛し,欲望を戒めるお話。
イワンのばかとそのふたりの兄弟
小さい悪魔がパンきれのつぐないをした話
人にはどれほどの土地がいるか
洗礼の子
鶏の卵ほどの穀物
三人の隠者(ヴォルガ地方の伝説から)
悔い改むる罪人
作男エメリヤンとから太鼓
三人の息子
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読んでいる最中は、これが「民話」と題されていることに違和感を覚えた。どの短編も冒頭に聖書の一説が引用されており、内容に関しても道徳的且つ「神」を主題としたものが多く、宗教説話の色が濃いと感じられたからである。
しかし、民話とは日本で言うところの昔話であり、そこに筆者の主張や宗教性を見いだすものではないというのは、単に日本的な価値観であるのかもしれない。
解説を読むまで気付けなかったが、「手にタコを持つものだけに、パンを与える」という一説には宗教的道徳性だけでなく、トルストイの徹底した平等主義も示されているらしい。
何にせよ、改めて「西洋文学はすべて聖書に通じる」のだなあと改めて感じさせられた。