【感想・ネタバレ】シロアリ 女王様、その手がありましたか!のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

チェック項目28箇所。この本は魅惑のシロアリワールドを紹介するものだ、退治にとりかかる前に、生物としてのシロアリの本当の姿を知ってほしい。「白蟻」だからアリかと誤解されやすいが、アリとシロアリは分類上は全くちがう昆虫だ、アリはミツバチやスズメバチなどハチに近いのに対し、シロアリはむしろゴキブリに近い、簡単に言えば、アリは翅をなくしたハチであり、シロアリは社会性を高度に発達させたゴキブリなのだ。日本はシロアリの分布の北限で、シロアリのほとんどは熱帯や亜熱帯にいる、そのうち、人間に多少とも被害をもたらす種はほんの100種足らず、大部分は、枯れた植物を分解することで、生態系の物質循環に大きな役割を果たしている、ハチ目昆虫のオスは母巣を飛び立ってメスとの交尾を終えるとすぐに死んでしまい、メスのみでコロニーが創設される、しかし、シロアリのコロニーは基本的に一夫一妻で創設される、つまり、アリやハチの巣には繁殖虫として女王のみがいるのに対し、シロアリの巣には王と女王が存在する、シロアリのコロニーではワーカーや兵アリも基本的にはオスとメスの両方の姓で構成されている。ハチ・アリの社会は女性社会、シロアリの社会は男女共同参画社会である。シロアリの社会は、構成員のほとんどが発生学的には幼虫である、したがって、現在の役割が確定的なものではなく、将来、今とは別の役割につく可能性、つまり「分化全能性」を残している、たとえば、多くの下等シロアリでは、ワーカーから女王になったり、羽アリになる予定だったニンフが羽アリになるのをやめて巣に残り、王や女王の繁殖を引き継いだりすることもできる。シロアリでも巣を飛び立つ羽アリだけはちゃんと黒い、羽アリは外皮にメラニンという黒い色素をもっているが、ワーカーはその色素をほとんどもっていない、白いというより、スケルトンなのだ。メラニンだってただではない、実はメラニンはチロシンという、シロアリにとっては貴重なアミノ酸を材料にしてつくられるので、とても高価なものだ、つくらなくて済むなら、そのコストをほかに回せる分だけお得である。シロアリは何と最長で12日間も水の中で行き続けたのだ、空気だけ送り込んでも3日は生きられる。ヤマトシロアリ……5月初旬から下旬にかけて、羽アリは出会いを求めて一斉に飛び立つ、飛び立った羽アリが無事に新たな巣を創設できる確率は、大ざっぱにいって何万分の一という話だ、そうでなければ、世の中がシロアリで溢れかえってしまう。羽アリにとって巣を飛び立つことは、ほとんどの場合、死を意味するのだ、かわいそうな羽アリたちは、飛び立った直後から次々と鳥に捕食されていく。いったん羽アリになったら最後、巣にとどまることは許されない、一切に群飛するタイミングで巣を飛び立たなかった弱気(?)な羽アリは、なんと巣の中ですべてワーカーの攻撃を受けて殺されることになる。実は昆虫の中には同性同士の性行動が観察されているものが珍しくない、こうした現象のほとんどは、異性が全くいないなど特殊な状況下でのごくまれなできごと、あるいは性の誤認による異常行動だと考えられている。翅を捨てたシロアリが地上を歩行している間は、アリに捕食されるリスクがきわめて高い、しかし、アリは一度に一個体しか捕らえることができないため、二個体でタンデム歩行すれば、アリと遭遇しても、どちらか一方は捕食を免れることができる。単独のメスはオスを求めて歩き続けるが、どうしてもオスが見つからない場合は、一匹で巣づくりを開始した、オスの存在しない二匹のメスのペアやメス一匹だけの巣でも卵が産まれ、その卵から正常に幼虫が孵化して発育したのだ。万一、病気で死亡した個体があった場合には、シロアリたちはそれ以上巣内に病気を蔓延させないよう、抗菌物質を含ませた巣材で塗り固めた「お墓」をつくって入念に埋葬する。四匹のメスで創設を開始させると、二匹のメスだけが生き残り、あとの二匹は殺される、一匹パートナーさえいれば、余計な競争者を残すようなことはしないのだ、あるいは二雌ペアに、一匹のオスを加えてみるとどうなるか、あっという間に雌雄ペアができあがり、あぶれたメスは死んでしまう。ヤマトシロアリのコロニーの中で最大のものは、一匹の王に対して676匹の女王を保有していた、これは最大と言われているゾウアザラシのハーレムをはるかに凌ぐ大きさで、筆者の知る限り自然界で最大のハーレムである。遺伝子解析の結果……二次女王たちは創設王の遺伝子を全くもっていなかった、つまり創設王の娘ではなかった、彼女らは、創設女王が単為生殖で産んだ娘たち、すなわち創設女王の分身だったのだ! 王様を取り巻く大勢の美女たちは、遺伝子的にはただ一匹の妻と同じだったのだ。若い二次女王が分化した後、高齢の創設女王はその役目を終え、生きながらワーカーに食べられ、子どもたちの栄養となって消えていく、彼女は個体としてその生を終えても、遺伝的には不死身なのだ。野外の巨大コロニーの王は、どんなに短く見積もっても30年以上は生きているだろう、昆虫の年齢の特定技術が確立されれば、想像を超えた世界が見えてくるかもしれない。女王はソーセージのような大きさになり、中国では万病に効く高価な薬として一匹が100米ドル以上するそうだ、食べると香ばしくタラコのような味でなかなかの美味なのだとか。アリやシロアリのように地中や木材の中に営巣する昆虫では、巣の中で視覚は使えない、そもそもシロアリの多くの種では、ワーカーに眼がない、言うなれば、これらの昆虫は匂いでこの世界を見ているのだ。女王フェロモンは卵から放出されている物質とも共通している、すでに卵が大量にあるという誤情報によって、女王の産卵に急ブレーキがかかったのだ、ワーカーが個々の女王への給餌量を変えて、結果的に産まれる卵の数を制御しているようだ、単為生殖で生まれた二次女王たちは、女王フェロモンを感知できない。ターマイトボールは菌類の一種、平たく言えば「カビ」だった、ターマイトボールがあるほうが、ない場合よりも卵の生存率が高いことがわかった、ターマイトボール菌は他の糸状菌やバクテリアに対する拮抗性を示すので、卵の病気からの保護に役立ったのかもしれない。ターマイトボールとシロアリの関係は、相手をつぶさない範囲で自分の利益を高めるという、ギリギリのせめぎ合いの上に成り立っている。

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2013年05月06日

Posted by ブクログ

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成毛さんの「100冊の本」ハダカデバネズミ、の隣にあってついで買い。でも私的にはこちらがもっとおもしろかった。え?ゴキブリの子孫だったの?それ以前に先祖はカマキリから枝分かれしたの?という導入部もナルホドですが、彼らの社会生活性はアリやハチが終身カースト制度であるよりも柔軟で現代の人間社会に近い。
 自分の持っていたイメージでは、虫の世界は女王様ありき、オスは添え物。巣立った時に交尾したらお役御免でオスはポイ、と思っていた。ところがシロアリさんたちは違うんですね。巣には女王だけでなく王様も住んでいる。女王(=卵を産む)は何(百)匹もいてハーレム状態。さらに王様は何十年と生きる。女王のほうが短命で台替わりする。すごーい!!シロアリになりた~い。でもその何百匹の愛人から選り取り見取りの大奥ではなく、みな奥さん(最初の女王)と同じ遺伝子の分身だそうです、ゲゲ奥さんに何百人に取り囲まれる毎日?厳しそう。(ちなみにクローンではない)。
 気持ち悪いゴッキーの親せき害虫ではあるけれど、ほかにもいろいろユニークな奴らであることがわかりました。

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2014年12月27日

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