【感想・ネタバレ】最良の嘘の最後のひと言のレビュー

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Posted by ブクログ

最良の嘘とは何なのか。
その嘘にあなたはなんて答える?

読み終わった後の満足感は、言葉にできないほど。
河野さんの小説で一番好きな作品。

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2020年08月30日

Posted by ブクログ

世界的に有名なIT系大企業ハルウィンが出した、たった一名分の求人告知の内容は、「年収8000万円で65歳までの雇用を約束。ただし応募条件は超能力者であること」。
数多の応募者から審査を経て残った7名の「超能力者」たちが、社員の椅子をかけてコン・ゲーム形式の最終試験に臨みます。

超能力者同士の争いと言えば、横山光輝の「バビル2世」と言ってしまうと年齢がバレますが…
比較的最近なら飯田譲治さんの「NIGHT HEAD」や本多孝好さんの「ストレイヤーズ・クロニクル」、漫画なら「文豪ストレイドッグス」などが思い浮かびます。

ただ、本作の超能力者たちの能力はそれらの作品でメインとなっているような格闘や争いごと向けのド派手なものではありません。そう、時に地味ですらありますが、まさに騙し合いにうってつけの能力揃いなんです。

最終試験の時間は6時間。その間に7人たちは誰かと手を組み、また離れ、別の誰かと手を組むなど登場人物同士、何度も騙し騙されつつ、社員の切符を巡って手に汗握る頭脳戦を繰り広げます。
(社員という立場でなく金目当ての候補者たちもいるので、社員になった時の年収の分け前を約束すれば彼らを味方につけることも可能というわけ)

彼らの能力はどんなものなのか、それを使ってどんな風にゲームを進めるのかは述べませんが、タイトルの意味と合わせて、ぜひ本書を手にして読んで確かめてほしいと思います。
予想もつかない展開に目まぐるしく、でも心地よく引きずり回されて、たどり着くラストでは「あー、面白かった」と言いつつ、また最初から読み直したくなる。そんな体験ができること保証します!
※これは嘘ではありません(笑)

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2017年04月08日

Posted by ブクログ

想像していたものとは違っていたけど、徹頭徹尾嘘まみれで最後のネタばらしが爽快だった。
情報量的に(自分自身で)推理できる話ではないので、ミステリではないことを念頭に楽しむことがおすすめ。

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2023年09月11日

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ネタバレ

加藤が、市倉の幼馴染でハッキングの超能力を持った仲秋を殺すために仕組んだ、8000万円の金をかけた超能力者を雇うゲーム。けど市倉は全部見抜いて死んだふりして加藤を騙した。

ナンバー1 加藤→美琴を事故死させるため
    2 穂積→金のため。美琴からの依頼のため
    3 シド→犬のふりをしてた。不当な研究告発のため
    4 日比野→友達が欲しかった
    5 高橋→聖沢をハルウィンの社員になるため
    6 聖沢→ハルウィンの社員になるため
    7 市倉→仲秋が死亡する未来を防ぐため

面白かった!けど今見返したら全然なんのこっちゃわからんな。わかりやすいあらすじ書いてくれ私!

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2020年05月18日

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『鋼鉄都市』のSFミステリを思い出させるような
超能力者同士のMF(マジックフィクション?)ミステリ
『ジ・エンターテイナー』のリズムでさくっと読める一冊
『サクラダリセット』もそうだったけれど
よくぞこの設定で破綻なくミステリ仕立てに出来るものだと感心する
ただライトノベルだった『サクラダ』と比べると
登場人物の造形着地点がもうひとつ定まらない感じ
感心はするが娯楽小説として不可欠の感動に至る押しがどの作品でも弱いと思う
悪い意味であざとくなく自然に押し付けがましくない
より印象深く記憶に残る揺り動かしとなる舞台上の場が欲しいところ
『ジ・エンターテイナー』が示すようにそういう効果を狙ったお話ではないのだろうけれど

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2018年10月17日

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超能力者のだましあい。
舞台設定も含め、一捻りした展開と、隠されたキバの強さに終始驚かされた

だましあいのような頭脳戦が好きだが、特にSF的な要素があるのは面白い

作中、最良の嘘とは?という問いかけがある。
嘘にもいい嘘と悪い嘘があるなんていうが、「いい嘘」のルールが分かると、少し生きやすくなると思う。

よく考えてあると思うので、参考にしたい

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2017年10月24日

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企業が超能力者を求めてる。ただし雇い入れるのは1名。自称超能力者によるバトルロイヤルが始まる。
もっとブラフによるウソつきゲームかと思ったら思ったよりホンモノの超能力者という設定。それでも騙されるのが気持ち良いストーリー。

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2017年07月05日

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河野裕さんらしいミステリでした。まんまと最後まで騙されました。人によって持っている情報量が違うから読者はさらに騙される。嘘がたくさん、言葉で翻弄されます。超能力系だから派手なバトルなどを想像しますがそういう展開にしないところが好きです。ヒントがたくさん散りばめられているけどそれに気づくのは難しい。サクラダリセットを彷彿とさせる超能力者たちがたくさんで、ファンにはある意味楽しかったです。

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2017年06月17日

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かなり複雑なストーリーだった。登場人物がほとんど本当のことを言ってない。まさにコンゲーム。誰が誰を騙しているのか、整理した上でもう一回読みたい。

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2017年05月31日

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超能力者たちの鬼ごっこ。   
嘘つきたちの騙し合い。   
7人の群像劇。   
あれも嘘でこれも嘘でそれも嘘。   
そして超能力バトル!   
やっぱり超能力があると幅が広がるなぁ。
裏の裏の裏の裏は裏。    

最良の嘘の最後の一言は、『ありがとう』。

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2017年04月25日

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【収録作品】幕が上がれば演じ続けろ/嘘つきたちは夜の街を走る/最良の嘘について/物語は舞台裏で決まる/ふたりの関係/最後の言葉に至るまで 
 「超能力者」という設定はファンタジーなのだが、その真偽も含めてのコン・ゲームで、面白い。

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2017年04月02日

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超能力者たちによる騙し合い。最初、ブギーポップのパンドラを思い出したけど
、やってることは騙し合いが中心なのでテイストは大分違う。
登場人物はもちろん、読者の方も積極的に騙しにくるのでやや混乱する。というか、これはミステリーとしてフェアなのか?と疑ってしまうくらい。ちゃんと読み返さないとその辺の評価はちゃんとできないけど、小説として考えると登場人物が魅力的なのでよし。

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2017年03月28日

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ある大企業の採用試験。それを得るには騙し合いに勝つ。
変わった作風に目を惹かれるし、これを徹頭徹尾実行できるのは凄いと思うが、今ひとつ入り込めず。
パッと目を惹かれる展開がなく、掴みどころがないままに物語が終わってしまった印象が強い。

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2024年04月13日

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ネタバレ

 7人の超能力者が,年収8000万円の地位をめぐり,採用通知書を奪い合うという設定は極めて魅力的。ジエンターテイナーの音楽が度々登場するように,スティングのようなコンゲームを意識しているとも思われるが,登場人物の超能力が便利すぎて,登場人物間での騙し合いという感じはあまりしない。
 特に,ナンバー2穂積のトレード,ナンバー4日比野のフェイク,ナンバー5高橋のビジョンの能力が,採用通知書を奪い合うという設定にマッチし過ぎている。これらの能力が強すぎるので,頭脳ゲームにはあまりなっていない。
 この小説の肝は叙述トリック。ナンバー4である日比野が何かを企んでいると見せ掛け,ナンバー3の仲秋の考えが挿入されている。これが,分かりにくい。普通に読んでいると,日比野が何かを企んでいると読める。この謎解きが親切ではないので,結局,どこまでが叙述トリックで,どこまでが本当の日比野の内心なのかが分かりにくく感じた。実際は,全て仲秋の内心で,日比野の内心は一切書かれていないのだが,仲秋と日々野の書き分けが十分にできていないため,この点が分かりにくくなってしまっている。
 仲秋のハッキングの能力も便利過ぎで,ソラというアプリケーションを作って,採用試験の参加者に配るというのもやり過ぎ感がある。この小説の全体的な仕掛けが大掛かり過ぎて,やられた,騙されたと感じにくくなってしまっている。
 登場人物も全く魅力がないわけではないのだが,しっかりと書き分けられているわけではない。高橋と聖沢がしっかり書き分けられていないのも難点。登場人物の書き分けがしっかりできていないから,叙述トリックや入れ替わりが生きていない。
 見るべきところが無いわけではなく,ナンバー3が仲秋美琴がソラというアプリケーションを作り,採用試験を裏から操作していたという真相は驚けるものではある。しかし,やられたと感じない。何でもアリなのと感じさせてしまうのは驚きという点ではマイナス。ナンバー7の市倉も,どのようなキャラクターなのかつかみきれない。しっかりとキャラクターが描けていないともいえる。最後は,仲秋や加藤まで出し抜くことになるのだけど,そこまでの切れ者には見えない。
 面白そうな設定だけど,それを活かし切れていない。叙述トリックも,もっと効果的に使えたはず。雰囲気としていい部分もあるだけに,惜しいと感じなくはない。決して面白くない作品ではない。エンターテイメントとしてはそれなりに楽しめる。サプライズ感に乏しいだけである。


〇 概要
 世界的な大企業,ハルウィンが,4月1日に年収8000万円で超能力者をひとり採用する。自称超能力者の7人が3月31日のよるに街中で行われる最終試練に挑む。1通しかない採用通知書を奪い合うコンゲーム,ミステリ

〇 メモ
〇 1話 幕が上がれば演じ続けろ
 ナンバー7の市倉とナンバー4の日比野の出会い。二人が仲間になろうと言っているところに,ビルからナンバー1が落ちてくる。日比野はナンバー1が持っている採用通知書を奪う。
 そこにナンバー2の穂積とナンバー6の聖沢がやってくる。二人はナンバー1から採用通知書を買い取る約束をしていた。市倉をナンバー1と勘違いし,採用通知書を持って逃亡した日比野を追う。
 聖沢が「トレード」の能力を使って日比野から採用通知書を奪う。ナンバー5の高橋が「ビジョン」の能力を使って二人から採用通知書を奪おうとするが,返り討ちに会う。しかし,トレードで奪った採用通知書は偽物だった。
〇 2話 嘘つきたちは夜の街を走る
 穂積と聖沢は,ノックアウトした高橋を車のトランクに隠す。穂積と聖沢は警官に目を付けられ,二手に分かれて逃走
 日比野と市倉はナンバー3に会いに行くかどうかの相談をしているところで,スタンガンを持った人物に襲われる。市倉がスタンガンで眠らされるが,日比野に救出される。日比野はフェイクで聖沢に偽物を掴ませたが,黒いスーツを着た人物等に襲われる。日比野は市倉の再会。フェイクの能力を使って逃げる。その直後,日比野はタクシーに乗るが市倉が乗る前に走り出し,日比野と市倉は再び離れる。市倉は謎の追ってに追われながらナンバー3に出会う。ナンバー3は柴犬だった。市倉に穂積が接触する。市倉のところに,本物のナンバー1,加藤から連絡が入る。
 タクシーに乗った日比野は,桜井という女性がいる場所に連れてこられ,採用通知書を売ってほしいという交渉が行われる。桜井の雇い主はナンバー6の聖沢だった。
〇 3話 最良の嘘について
 穂積と市倉は日比野と聖沢がいる倉庫に向かう。そのタクシーの中で,最良の嘘について話合う。穂積は最良の嘘は真実でないかと言い,市倉は最良の嘘は誠実な嘘だという。
 倉庫での交渉。しかし,交渉は決裂。穂積はナンバー3のスマートフォンを使って日比野を奪還する計画を立て,それは上手くいったが,聖沢サイドは全てのスマートフォンを奪おうとしていた。
 穂積は採用通知書と日々野を連れて倉庫を脱出したかに見えたが,実際は採用通知書ではなかった。高橋がビジョンの能力で採用通知書に見せかけていただけだった。本物の採用通知書は,まだ日比野の手元にある。
 改めて交渉。穂積サイドの狙いは市倉のスマートフォンを奪うこと。聖沢サイドの狙いは採用通知書を奪うこと。所々で,日比野の考えのように描かれた仲秋の考えが挿入される。
〇 4話 物語は舞台裏で決まる
 交渉に向かうまでの話。聖沢サイドの狙いは採用通知書を持つ日比野を奪うこと。そのために,ニセの採用通知書を穂積に売りつけようとする。支払の担保のために,穂積が市倉を殴るシーンを日比野のスマートフォンで撮影するという名目で日比野を奪おうとする。交渉に向かおうとする穂積に加藤から連絡が入る。加藤は高橋が穂積を裏切ると告げる。
〇 5話 ふたりの関係
 加藤という不確定要素を含みながら,ほぼ予想どおりの展開。穂積サイドと聖沢サイドの交渉。交渉の場は倉庫の近くの広い駐車場。交渉は成立。加藤からの連絡により,本物の採用通知書は日比野が持っていることをしり,穂積はトレードで本物の採用通知書を奪う。
 勝利を確信した穂積のところに高橋と聖沢が登場する。高橋と聖沢は手を組んでいた。高橋が失格したと見せ掛けていただけだった。
 高橋と聖沢は最初から入れ替わっていた。聖沢として穂積と行動をともにしていたのは高橋。そして最初にノックアウトされたのは聖沢だった。
 穂積のスマートフォンはまだ生きている。穂積のもとに,再度加藤からの電話が。最後に逆転をするためには,高橋のビジョンの能力を排除する必要があるとアドバイスをする。
〇 最後の言葉に至るまで
 市倉は,交渉をするために聖沢がいるヘリに上り,ヘリから落ちて死ぬ。ここで,少しずつ違和感が広がる。日比野の考えと思われている描写と日々野の行動との違和感が広がる。
 ナンバー3仲秋美琴は,聖沢から採用通知書を受け取る。仲秋はソラという有りもしない進行役を用意して,試験のルールを捻じ曲げた。ハルウィンが用意していた本物の勝利条件は,日付が変わる瞬間に採用通知書を手にしていることだった。仲秋の能力はハッキング。電子回路を持つ物を操る能力だった。ナンバー1の加藤が登場。加藤は本物の超能力者だった。加藤はビルから飛び降りることで,最後に仲秋と出会う場面が来ることを知っていたのだ。
 仲秋はハルウィンで超能力者が虐げられていると考え,そのことを告発しようとしていた。しかし,実態は違う。加藤は使途不明の金を横領していた。加藤は本物の超能力者であり,今夜の試験は仲秋を呼び出すために計画されていた。加藤は安全に仲秋の口を封じようとしていたのだった。
 仲秋は死亡する…本当は,仲秋のフェイクが死亡する。日比野は,市倉に頼まれ,市倉の仲秋のフェイクを作り殺害した。加藤を騙すために。
 全ては市倉の計画だった。市倉の企みで高橋と穂積も加藤がいる部屋に集まり,加藤の企みを頓挫させる。
〇 エピローグ
 ネタ晴らし。おそらく入り組んだこの物語について,よく分かっていない読者に対するサービス。最後は,市倉,仲秋,日比野が一緒に過ごす場面を予測させる形でエンド 
〇 加藤仁
 ナンバー1。能力はフォーサイト。未来予知能力の一種で,行動の結果を事前に知ることができる。ハルウィンの子会社であるブルーウォーカー特殊人材研究所の元所長で,この採用試験を計画した人物。仲秋美琴を事故死させるために参加。結果は失敗
〇 穂積正幸
 ナンバー2。能力はトレード。二つの物質の場所を入れ替えることができる。職業は探偵。採用試験の前に,ハルウィンの子会社であるブルーウォーカー特殊人材研究所の職員と交渉をしていた。金のために参加。聖沢から5億7000万円,仲秋から15万円の報酬をそれぞれ受け取る。
〇 シド→仲秋美琴
 ナンバー3。能力は不明。正体は柴犬ではない。能力はハッキング。電子回路を持つ物を操る能力。ハルウィンの社員になり,超能力に関する不当な研究を告発するために参加。結果は失敗
〇 日比野瑠衣
 ナンバー4。能力はフェイク。物質のコピーを作り出すことができる。参加目的は友達を作ること
〇 高橋登喜彦
 ナンバー5。能力はビジョン。視覚情報に特化したイメージを対象に送ることができる。聖沢をハルウィンの社員にするために参加。結果は成功
〇 聖沢巧。
 ナンバー6。能力はアポート。遠方にある物質を取り寄せることができる。本当は超能力者ではなかった。ハルウィンの社員になるために参加。結果は成功
〇 市倉真司
 ナンバー7。この物語の主人公。能力はメッセージ。危険を事前に察知することができる。市倉は,メッセージの能力で小学校時代の友人である仲秋美琴が死ぬシーンを見る。仲秋を救うためにこの採用試験に参加していた。結果は成功
〇 ソラ
 音声入力対応の秘書機能アプリケーション。採用試験の間はソラを起動しておかなければならないとされている。
〇 仲秋美琴
 市倉の小学校時代の友人。市倉が再会したいと思っている超能力者
〇 桜井
 聖沢に雇われた協力者の1人。
〇 叙述トリック
 まるで,日比野の考えのように,仲秋の考えが示されている叙述トリックが仕込まれている。
〇 誠実な嘘
 市倉が考える誠実な嘘にはルールがみっつある。ひとつ目は自分のための嘘ではないこと,ふたつ目は相手が信じるまで嘘をつき続けること,みっつめは,ネタばらしで,だました相手と一緒に笑える嘘であること

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2020年10月28日

Posted by ブクログ

初読み作家さんが続きます。

ちょっとスピード感がありすぎな感じはあるけど、The Entertainer をBGMに展開するストーリー。The Sting が一番好きな映画である自分、この雰囲気を嫌いになれるはずはない・・・ただし評価は厳しめにならざるを得ない(^^;

全体を通して、登場人物の区別がつきづらかったのが惜しいところ。かなり捻られてるので、もうちょっと特徴を出して区別しやすく描かれてたら。
そういう意味では、映像向きかも?

PS
グループSNEの方なんですね。気になります。

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2020年08月11日

Posted by ブクログ

超能力者たちがその能力を使って競争する話。
互いの能力をほぼ知りつつ何とか優位に立とうとする駆け引きは面白いが、複雑な仕掛けを入れ過ぎたお陰で後半は上手く要素をまとめきれていない印象を受けました。惜しい。

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2019年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

平熱系超能力コン・ゲーム小説。Googleをモデルにしたと思わしきハルウィンという企業が超能力者探しをするという、一見すると壮大なシチュエーションだが、その大風呂敷に反して、話自体は緻密なトリックと嘘の応酬である。限定条件のバトロワ的な、血で血を洗う荒っぽさや緊張感はないものの、応用力のある超能力や偏執的なまでのルールの恣意的解釈などはこの作者ならではの持ち味だろう。他の作家ならもっと大仰な嘘をつくのだが、この作者は他の作者なら捨てる部分を拾って有効活用するような、謂わば捨てられた食材で美味しく調理するスキルに長けた作家だと思う。

ただ、いくつか難点もあり、まず登場人物の描写がやや薄っぺらいことだろう。キャラクターはテンプレートではないものの、能力のほうの印象が先行するばかりで人間的魅力のあるキャラクターがおらず、感情移入できなかったのは残念であった。恐らくその理由としては登場人物の数がやや多すぎたのと、身振りが極端に少ないことで、台詞以外に判別がつく要素がなく、写実性に乏しい。それがどこか浮世離れした雰囲気の理由でもあるので、一概に欠点とは言えないのだが……。それに就活で遭遇する競争相手というのは非常に印象の薄いものなので、そういう意味ではリアルかもしれない。登場人物とその能力一覧は途中で出たものの、もくじに欲しかったように思う。

あと、超能力のトリックや逆転劇などは面白いものの、流石にルールそのものを捻じ曲げるのにはノレなかった。参加者の一人が運営側、運営側の意図的な仕込み、までは許せるし、ルールの抜け穴を探すのは燃えるが、ルールや条件そのものが嘘だというのはとてもつまらない。特にナビゲーション役や勝利条件などがあらかじめ仕組まれていたことというのは後出しジャンケンめいていてミステリとしては微妙である。それなら最初から矛盾するルールを仕込むなり、途中でルールを疑うなどの、ルールに対する疑念という描写も欲しかった。スマートフォンによる紐付けは面白かったが、スマートフォンを入れ替えるだけで入れ替わりが成立したりというのはガバガバな気がしていまいちノレない。最大の欠点はルール周りの不備や曖昧さで、それすらも織り込み済みで書いているため一応破綻はなく成立してはいるのだが、それがいまいちのめり込めない欠点と表裏一体になっている。ガチガチに決められたルールがあるからこそ、かいくぐる楽しみがあり、新たなルールや条件の設定は、状況が変わる一手となるため、そういう部分に面白さを感じる人はいまいち肌に合わない小説だった。

しかしそういった普通のバトロワ的シチュの小説を河野裕流に解釈したら、といぅような面白さはあったように思う。また、超能力に寄り添う人間の悩みや思春期の心情を描かせたら、この作者は天下一品だろう。能力の派手さはないものの、その能力との距離感の取り方の筆致はこの作者ならではである。

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2019年05月29日

Posted by ブクログ

ある大企業が「年収8000万で超能力者を一人採用する」との告知を出し、自称超能力者の七名が一通だけの採用通知書の奪い合いを始める。果たして誰が勝者になるのか?・・・という話。
嘘、裏切り、騙し合い、が連続するコン・ゲーム小説。そこに超能力も加わるので集中して読まないと訳が分からなくなる。良くも悪くもイマドキの小説であり、近年頭が堅くなってきた私には少なからずつらかった。
着地点がキチンとミステリになっていたのと、エピローグで親切な解説があったのを評価。もっと若い頃読んだら傑作に思えたかな?

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2017年09月25日

Posted by ブクログ

超能力者の勝ち抜け勝負みたいな設定。中身は嘘ばかり。言葉の嘘だったり、超能力を使った騙しだったり、情報機器を駆使した騙しだったり。エンタメというよりは何だか暗い。階段島シリーズを思わせる主人公の頭のよさと暗さがある。

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2017年04月20日

Posted by ブクログ

 読んでいて「ブレイクスルー・トライアル」を思い出した。

 優勝者には高額な報酬。
 嘘と嘘との騙し合い。
 そこに1つ足される特徴は、参加者が超能力者だということ。

 超能力者を採用します。
 その採用試験の最終試験に勝ち上がったのは7人だった。

 大学生の市倉は、自分が超能力者だと思っていない。
 能力が高い順に割り振られた番号は、最後の7番目だ。
 採用の条件は、1番が持っている合格通知書を制限時間内に奪い、制限時間1時間前に明かされる場所に持っていくこと。

 最終試験は地方の新幹線駅を中心とした半径5kmの範囲内で行われる。
 昨晩泊まったホテルのロビーで開始時間を待っていると、高校生くらいの女子から声をかけられた。
 彼女も参加者で、市倉と共闘しようと持ち掛けてきた。

 そして開始時間と同時に、ロビーには上から男が落ちてきた。
 ナンバー1のその男が手にしていた合格通知書を手にして走り出す。


 さて、能力者バトルといいながら、語り手の視点はコロコロ変わり、しかも全員が嘘をつく。
 すっげ、わかりにくい。
 さらに、一つのものを二つにコピーしたり、物体を移動させたりする超能力のせいで誰が何持ってんだかよくわからなくなる。

 延々とリピートする"ジ・エンターテイナー"。騙されないでね、と注意されたところで最初から騙されているから話を追いづらい。

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2017年03月20日

Posted by ブクログ

「年収8000万、採用者1名、応募資格は超能力者」という設定が既に秀逸。

いわゆるコンゲーム(信用詐欺)ものだが、そこに超能力という要素が加わると、これは複雑怪奇。騙し騙される登場人物たちと、騙され続ける読者という構図の出来上がりだ。

かなり入り組んだそれぞれの思惑と行動に、ワシは序盤から推理推測を諦めて物語を追う形にしたが、個人的にはその読み方で正解だった。よくこれだけの展開を管理できるなぁ、とゲーム「428」をやった時のような感心。

著者にしては修飾が控えめで、ハードボイルド感があったのも印象的。

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2017年02月27日

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