【感想・ネタバレ】マルティン・ルター ことばに生きた改革者のレビュー

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Posted by ブクログ

宗教改革を展開し、現在のプロテスタントに繋がるマルティン・ルター。非常に読みやすい文体で、スラスラと読めました。
この本で描かれているルターには、キリスト教に対する深い理解と、熱心な信仰、そして自身に向き合う誠実な態度がありました。それらのどれか一つが欠けても宗教改革に辿り着くことはなかったでしょう

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2023年08月30日

Posted by ブクログ

全180ページのマルティン・ルターに関する小振りの評伝。ルターといえば、世界史の授業で、95か条の論題を教会の扉に貼りつけて、ローマ・カトリックに真っ向から喧嘩を売った人と思われているだろう。しかし、貼りつけた事に関しては、ルター自身は何ら言及しておらず、同時代の人々の目撃証言に当たるものもないとのことである。

神の「義」の再解釈
ルターの業績は、当時のキリスト教的統一世界において何が画期的だったのか? それは神の「義」を再解釈したことである。ルター以前は、神の「義」とは、「努力を怠る人間に対して、怒りをもって裁きを下すもの」として捉えられていたが、ルターは、神の「義」を「神からの『恵み』であって、イエス・キリストという『贈り物』として人間に与えられたもの」と解釈した。ルターによって、神は恐ろしい「裁きの神」から慈しみ深い「恵みの神」として再解釈されたと言える。

十字架の神学
ルターは「十字架のみが我々の神学である」と説いた。中世では、十字架とそこに磔にされたキリストの姿は、”忌むべき象徴”として捉えられていた。その像を180度逆転させて、むしろ無残に磔にされたキリストの姿こそ、神が人間に与えた「義」であり、人間の救いとは、キリストの受難と十字架の姿を、”神のあるがままの姿”として受け入れることで成就するとした。

聖書というテキストの再翻訳
ルターの大きな業績の一つとして、聖書をドイツ語に再翻訳したことも挙げられる。当時、聖書はラテン語に翻訳されていたが、民衆はラテン語を理解できず、単にローマ・カトリックから派遣された司祭の言葉を聴いているだけだった。ルターは民衆が日常で使っていたドイツ語に再翻訳したことで、聖書を大衆と共に「読む」行為が生また。それにより、ローマ・カトリックによる独占的な解釈が打ち破られ、民衆が各自で信仰と向き合うようになった。これが後の宗教改革へとつながったとする。宗教改革の元の語は、”Reformation(再構成)“である。本書では、Reformationにより、「キリスト教的統一世界であった西欧が、ルターの始めた運動をきっかけにして細分化し、キリスト教世界であることは変わらないものの、従来のあり方とは全く別の多様なキリスト教世界に再形成された」 (P.117) とまとめている。

他にも、ゲルマン世界においては、損害に対して等価の賠償を必要として、その賠償には代理を持って当てられるという慣行があった。これが「贖宥」の起源である話も面白い。ルターを通して、中世の歴史と当時の社会が熟練の筆致で書かれており、大変おすすめである。日本人には解りにくいルターの思想を初めて知るには最適な新書であろう。

評価 9点 / 10点

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2020年03月16日

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【宗教改革とは、そのルターが、聖書のことばによってキリスト教を再形成した出来事であった】(文中より引用)

16世紀ヨーロッパにおける「宗教改革」を語る上で、決して欠かすことのできない人物であるマルティン・ルター。その半生を「ことば」というテーマで切り取りながら描いていく作品です。著者は、ルーテル神学校名誉教授を務める徳善義和。

マルティン・ルターの簡潔にしてわかりやすい伝記として評価できるだけでなく、現代を生きる我々にも通底するテーマである「ことば」を軸とすることにより、その半生が今日的意味を持って迫ってくる作品でした。難解な解説といった趣もなく、非常に手に取りやすい一冊だと思います。

目からウロコがたくさん☆5つ

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2019年07月24日

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お父さんのハンスは「俺は息子を大学にやるぞジョジョーッ!」と言ったそうで。
ルターさんが雷にうたれそうになったところは石碑がたっているんだとか。「歴史の転換地」っていう名前で。
確かにルターさんが雷にうたれなかったとしたら宗教改革はなかったわけだから、なんだかそうすると神様の意思とかそういうものを信じそうになってしまう。
ルターのいいところは宗教者に厳しく民衆に優しいところだと思う。知識はあるのにそこから目をそむけている神学者や司教にはきつい口調で説き、無知の状態にある民衆へは優しく教えを説いてやるっていうスタンスがかっこいい。いつか神学者たちもわかってくれるはずだって信じてたんだろうなあ。
けどやっぱり苦しむ宗教っていうのは理解できない。
ルターは「翻訳の父」といってもいいと思うんだけどなあ。

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2012年11月15日

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ルターの生きていた頃の時代背景についてよく書かれていて、宗教改革の始まりについてよくわかる一般書です。歴史では軽く勉強したけど何故こうなったのかわからない…って人にお勧めです。

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2012年10月24日

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ルターの業績を追いながら、宗教改革の本質について書かれた本。「ことば」というコンセプトでルターと宗教改革を説明している点がよい。

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2012年09月25日

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ルターの教義や反ユダヤ主義?的な要素が、その後の全体主義につながった可能性があるかもしれないという関心事にもとづいて読んでみた。

が、あたりまえといえば、あたりまえだが、基本、神学系の人が書いていることもあって、基本、ルター側にたった評伝。

というわけで、あまりダークサイド?には立ち入らないが、それでも、ルターとユダヤの関係、そして、ナティスのルター利用の話しもページ数はすくないながら、記述がある。

なんと、ナティスは、ルターの作った讃美歌を行進曲的にアレンジして、民衆を鼓舞して、敵であるところのユダヤ人の戦いにむかわせたそうだ。おそろしいことだ。。。。

というのは、個人的なマイナーな関心事だが、本自体のテーマは、「ことば」。

なるほど、まさに「ことば」が世界を生み出すわけだ。そして、「宗教改革」であって、「革命」ではない。ゆっくりと民衆側から改革を進めていくプロセスは学ぶところ多し。

とはいえ、この宗教改革を起点、政治プロセスが起動して、ヨーロッパはしばし戦争がつづくことになるわけだが。。。。

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2021年10月05日

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間口が広く取られているので読みやすく、歴史の大きな転換期というエキサイティングな題材もあって一気に読んだ。時代の変わり目の雰囲気も新書サイズながらそれなりに掴みやすい。

カミナリに打たれて教会に入ったってのは知らなかったな。

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2018年04月08日

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世界史の教科書での切り取られたルターでは、やっぱり浅かった。
ここには生きたルターがいる。
信仰にまっすぐ向き合ったルター。
その限界ですら、共感を持って読み終えた。
難解なところはない。
reformation は改革ではない、再形成が訳語として適切だと。
生きたドイツ語を作って使ったのが画期だったのだ。

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2018年03月16日

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マルティン・ルターと言えば宗教改革の人。ということはもちろん知っているが、しかしじゃあ、具体的にどんなことを知っているのか、と問われたら殆ど何も知らないのだった。
で、取敢えず入門編っぽいものを読んでみたけど、ルターの伝記ではないので、分かったような分からんような…。
明らかに強迫神経症としか思えないルターがなぜ、民衆に届くように聖書の言葉を語りかけたいと思ったのか、がよく分からず、そこが分からないと、宗教改革の発端となった『95ヶ条の論題』をわざわざローマに問おうとしたのかが謎のままだ。

そういったこととは別に、当時の世相なども触れられているのでそれは新鮮だった。
例えばルターですら、修道院に入って初めて聖書を手に取った(しかも鎖で厳重に管理されている!)とか、当時の礼拝は全てラテン語だったので、一般大衆にはチンプンカンプンだったとか。
聖書を読んだこともなく、礼拝で何を語られているのかもわからず、どうやってキリスト教を信じていたのだろう?
当時の人たちのキリスト教信仰と、現代の我々のそれとは、随分様相が異なっているようだ。

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2013年07月22日

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ルターのキリスト教への影響の大きさに改めて驚かされた.
聖書に還るという原理主義的な側面.
聖書の解釈の大転換.
特に,聖書の言葉そのものを民衆に届けたことの衝撃は非常に大きい.
現在,我々がキリストがどのような人で何をしたか.
それを知っていること自体が,ルターの功績であると考えると彼の偉大さは計り知れない.

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2012年09月13日

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ネタバレ

宗教改革の立役者であり、歴史に与えた影響は大きい。偉大な人物であり、今日の我々の生活の様々なところで、彼の遺産を受け継いでいる。彼の生き様も素晴らし。

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2012年07月01日

Posted by ブクログ

帯には、「聖書を読み抜いた男」とある。聖書というテキストを徹底的に読み込むことで信仰の新たな姿への理解に達し、神学の哲学からの解放と、中世の教会一体に染まった西欧を新しい時代へのreformationに導いたルターの生涯を辿る。

聖職者が「支配者層」として民衆から遊離した神学・哲学の世界で閉鎖的に研磨していた中世のカトリック。しかし歴史は中世の終りを迎えるべく準備を進めていた。

中世から近代への展開点を、宗教改革の立役者の生涯という軸で眺めること、そしてルターの限界がナチスのユダヤ人迫害まで一つの糸でつながっていたことなど、ふつうの日本人としては縁遠い話なのだが、この本で知ることができる。視野がぐっと広がる想いである。

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2018年10月14日

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マルティン・ルターって初めて賛美歌を始めた人なのか。
ルターというと宗教改革だとか免罪符(贖宥状というのが正しいらしい)に反対した人という革命家・異端児というイメージだった。本書を読んでみるともう少しソフトな感じかな。聖書に真面目に向き合い、とにかく聖書に殉じた人といったところ。それまでラテン語訳しかなかった聖書をドイツ語訳した人でもある。
カトリックのやり方に疑問をもって対立したという改革者のイメージより庶民に聖書の中身を教えようとした伝道師の要素のほうが強いような気がした。日本だと坊さんが辻説法とかしてたがあんな感じだろうか。
少し意外だったのは、ナチスがルターを英雄視していたことや、ルターがユダヤ批判を書いた本を使って反ユダヤを説いたことなど。ルターとナチスの繋がりなんて全く思いもしなかった。

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2012年08月15日

Posted by ブクログ

教科書で学習するようなわかりやすさで書かれている。
讃美歌もまたルターの発案だったことも知りました。
イメージとして持っていた「過激な人」ということではなく、信念を貫き通す人だったのですね。
カトリックとプロテスタント(反対しかしない人)の単純な二分法ではなく、折衷的なイギリス国教会などもあることも知りました。

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2012年06月27日

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