【感想・ネタバレ】シャープ「企業敗戦」の深層 大転換する日本のものづくりのレビュー

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Posted by ブクログ

シャープについての本を続けて読んでいる。その4冊目。
筆者は学者であるが、もともと、シャープに技術者として、33年間勤務されていた方なので、特に技術的な記述に説得力を感じた。
背景をご存じない方には分かりにくいが、シャープが企業として破綻し、台湾の鴻海の出資を仰いだ、この本の表現を使えば「敗戦」となった理由は、例えば以下のようなことだ。
1)大きすぎた設備投資。シャープは液晶を主力事業として位置づけ、テレビ用の大型液晶工場を矢継ぎ早に建設をしていた。亀山第一工場、亀山第二工場、堺工場である。筆者は、そのうち、特に堺工場について、採算がとれる投資額を超えた過大投資になっていたと主張している。
2)シャープは、液晶テレビを高級品・ハイエンド品と位置付けていたが、2009年時点で安価な液晶テレビが市場に出回りはじめ、値崩れを起こすし、価格競争を伴うコモディティ品となりつつあった。堺工場の稼働開始は、2009年であり、ちょうど液晶の市場の構造が変わり始めた時である。すなわち、市場の変化を読み切れないまま工場建設に進み、非常に悪いタイミングで稼働させてしまったのだ。
3)シャープは、堺工場を「垂直統合型」の大型工場として設計し稼働させたが、電機業界は、「水平分業」の時代に入っていた。アップルが典型であるが、部品をモジュールとして扱い、それぞれ、専業メーカーから買い、鴻海のようなところが組み立て、設計とマーケティングはアップルが行う、というようなイメージである。最初から最後まで自前で行う「垂直統合型」の事業構造は時代遅れとなりつつあった。
4)液晶は、あくまで部品である。それを活用したアプリケーションにシャープは強みを有していなかった。テレビは一時強かったが、他のアプリケーション、スマホやPCなどにシャープは強みがなかった。
5)シャープは「内弁慶」であった。国内市場では強かったが、グローバル市場では存在感を発揮できなかった。グローバルなマーケティングに経験が浅かったのである。

等が、シャープの「敗戦」の理由としており、非常に説得力がある。

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2022年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

前著作、シャープ液晶敗戦の教訓、の続編。

液晶のシャープとして垂直立ち上げに成功した亀山工場。第一、第二を経て第十世代のパネルを作るべく堺に巨大な工場を作る。

液晶パネルの戦略としては間違ってなかったが、企業経営としての判断、方向性としては、結果的にこの巨大な投資が命取りになる。

前著作に経営数値及びその後の顛末も含め肉付けした、シャープという企業の液晶にまつわる興隆と没落を纏めた良書。

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2020年02月13日

Posted by ブクログ

 シャープで液晶事業本部技師長をつとめられ,立命館アジア太平洋大学の教授として御活躍の中田先生のシャープの苦境に関する著作の二作目です。今回はシャープがホンハイに買収されるに到った経緯と,なぜそこまでシャープが苦境になったのかという中田先生の分析が述べられています。
 とくに私が興味を持ったのは,シャープがホンハイに買収されるまでの経緯が述べられた前半の話です。新聞や雑誌などでは,断片的な情報になりがちなのですが,一連のまとまった経緯とした叙述を読むことで,流れとして経緯を把握できたと思っています。
 また,シャープが敗戦を喫した経緯とその理由の分析も興味深く読みました。前作と同様に,外的な環境の「変化に適応できなければ淘汰される」ということがシャープに当てはまってしまったわけですが,これを他山の石として捉えるのか,その対策をどうしていくのか考えることはとても大切だと思います。
 ホンハイに買収された後のシャープやその他のメーカがこれからどういうことになっていくのか,未来に起こる出来事をどのような文脈で捉えていくかという観点からも,いくつものことを示唆している著作だと思います。

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2016年07月07日

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