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Posted by ブクログ
アラビアンナイトをベースとした小説。
あとがきによれば、著者は交響曲「シェエラザード」から浮かんできた構想を作品にしたとのこと。
個人的にこのようなアラビアをベースとした作品が大好きなこともあり、ディズニー作品の「アラジン」の世界観をイメージしながら、楽しみながら読んでいた。
主人公が突然異世界に飛ばされてしまう話はよくあるが、中学生女子が魔神になってしまうのはなかなか斬新で、なかなか思うように行かず自分が水に弱いことを少しずつ知っていったり、試行錯誤を繰り返しながら魔神のように振る舞えるようになっていったりするところがおもしろい。
ハールーンをはじめとして、ラシード、ミリアムなど登場人物がみな魅力的で、読む手が止まらない。
個人的には、異世界ものでよくある
・異世界の登場人物と恋愛関係になる
・元に戻ったら時間が経っていなかった
という展開がないところがおもしろいと感じる。
実際、主人公のひろみはハールーンに対して好意を抱き始めていたのかもしれないが、ハールーン自身は外の世界を見たい、という強い意志がありその目標に向かって一直線である。
そして、ひろみが魔神として過ごしていた間も現世では時間が経っている。私は、自分は1人しかいないからこそ、有限の時間をどこに使うかを考えて精一杯その時間を生きていくのだと考えている。ひろみが自分の意思ではないにしろ自分の時間をアラビアンナイトの世界で過ごしたことで、自分の行動に対して責任を持ち、前に進めたし、片思いしていた宮城のことも吹っ切れたのだと思う。
ひろみの高校時代を描いた作品(続編ではないとのことだが)もあるそうなので、ぜひ読んでみたい。
また、この本に出会ったのはたしか学生時代の国語の試験で引用されていたのがきっかけだったはず。出会わせてくれた先生に感謝したい。