【感想・ネタバレ】ガリレオ裁判 400年後の真実のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2016年01月14日

ガリレオ裁判を資料を丹念に読み解き、真実を導こうと試みる意欲作。

ガリレオ裁判の一般的なイメージとして、頑迷な宗教人と戦った英雄科学者ガリレオという固定観念があるが、実際は当時の宗教裁判としてはガリレオ裁判は特別に慣例から逸脱しているものではなかった。
また、ガリレオは裁判で異端であることを認め、...続きを読む科学の正しさを主張し結果的には敗れたというイメージが一般的であるが、実際の裁判でのやり取りを見るとガリレオはむしろ異端ではない、つまり無罪を主張しておりそのイメージとはだいぶかけ離れている。
さらに「それでも地球は動いている」という有名なセリフは、彼の死後地動説が正しいという事実が明らかになりその英雄性を物語るための逸話として浮上したものであり、本当に彼が言ったセリフであるという確固たる証拠はなくむしろ疑わしい。

現在では地動説が事実であるということは自明であり、また科学的事実よりも宗教が優先されるということはありえない。そんなことを言ったら変人扱いされるだろう。
しかし当時は聖書の記述に違反する思想を抱くことは重大な罪であると認識されていたし、神は全能であると教えられていた。
歴史を見る時に最も重要なことは、現在の価値観で見てはいけないということである。
これができないと歴史の本質どころか事実そのものを見誤る。

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Posted by ブクログ 2015年11月05日

誰もが知ってるつもりのガリレオ裁判の真実を資料を丹念に追うことから炙り出そうという知的好奇心が掻き立てられる書。オススメ。

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Posted by ブクログ 2022年03月24日

われわれは、科学はガリレオからニュートンに至るまでの17世紀ヨーロッパで生まれたと語る。つまり、近代科学はキリスト教の産物であることを示す。他方で、キリスト教はガリレオを弾圧し、科学の進歩を阻んだということにも触れざるを得ない。ガリレオ裁判を科学と宗教の闘いと見ると、話は単純化されるが、われわれの科...続きを読む学がキリスト教世界で誕生したことの方は説明されないままになってしまう。

著者のあとがきでの上記のコメントは、そうだなあと思わされた。

第二の聖書として、自然を観察し、近代科学を産み出した科学者たちにとって、科学と宗教は対立するものではなく、お互いを補完するものだったのだろう。そのような状況のなか進められたガリレオ裁判。判決としては、教会内の原理主義者を納得させる厳しいものにした一方で、(おそらく)、教皇のもと実態としては刑の大幅減免が行われた。

単純な科学対宗教の闘いという構図に毒されている、日本の中には、このような本が必要だと思う。

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Posted by ブクログ 2016年04月15日

ガリレオ・ガリレイ。当時、信じられていた天動説を誤りだと主張した結果、宗教裁判にかけられ、有罪を宣告される。判決の直後、「それでも地球は動いている」と叫んだエピソードは有名だ。

聖書を絶対として、新しい知識を取り入れようとしない権威である教会を悪とし、現実を見る目を持った科学者を正義のヒーローとす...続きを読むる見方は非常にわかりやすいが、話としては出来すぎている気もする。本当のところはどうなのか。最近になって発見されたガリレオ裁判の記録から、その真実を読み解く。

裁判記録によれば、ガリレオは激しい抵抗をすることなく、主張する地動説も仮説の一つだと教会に媚びるような発言をしている。世間が知る真実のためには命も惜しまない姿はそこにない。

要するにガリレオは優れた学者であったが、世間を敵に回し、命を犠牲にしてまでも地動説にこだわろうとはしなかった。彼にとって一番大事なのは、研究を続けることだったのだ。身も蓋もない結果だが、ガリレオ本人にすれば、不確かな死後の名誉よりも生きている「今」が重要だよな。

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Posted by ブクログ 2016年01月17日

「山口栄一『死ぬまでに学びたい5つの物理学』 (筑摩選書)」では、科学はキリスト教の支配にあったヨーロッパでしか生まれなかったことを考察している。この本と合わせて読みたい。

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Posted by ブクログ 2019年02月08日

本屋でみかけて衝動買い。頑迷で愚鈍なカトリックの教職者どもにいじめられた科学界の英雄……というありがちなガリレオのイメージに一石を投じてくれた労作。人口に膾炙されている「地球はそれでも動いている」との言葉が、18世紀になってから啓蒙主義者たちによって広められたデマらしいという話は特に興味深かった。

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Posted by ブクログ 2018年07月09日

「それでも地球は動いている」

ガリレオは、旧態依然のローマ教会と戦い、裁判の家庭でこうつぶやいたという。
科学者であることを捨てなかったガリレオは、ヒーローだった、この話は後世の私たちにそんなことを想像させる。

しかし、ガリレオの裁判記録が明るみに出ると、この「物語」はどうも様子が違っていたこと...続きを読むがわかった。
と言っても、この裁判記録は多くが失われてしまったため、その全てを知ることはできない。
できないが、神話化されたガリレオ裁判を当時の状況に照らし合わせ、丁寧に見ていくと、裁判そのものは決してめちゃくちゃなものではなく、それなりに形式に則ったもので合ったことがわかる。
宗教裁判というと、一方的な決めつけがなされ、ろくな審議もしないように思えるが、ガリレオ裁判においては、第三回まで審問があり、軽い処分と厳格な処罰のどちらにするかという意見の対立すらあった。
また、そもそもの裁判にかけられた理由も、「禁止命令に背いたから」であって、名目であったとしても、神の御意志に背いた、というこじつけのような理由ではなかったようだ。

現代に照らせば、もちろんおかしい部分、足りない部分などもあろうが、少なくとも一定の基準に則って裁判が進められていたという事実は興味深い。
そして、現代人の、古人に対する偏見も感じさせるのであった。

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Posted by ブクログ 2017年05月20日

近年明らかになった証拠からガリレオ裁判の真実を客観的に推測している。私たちが学んでいる宗教裁判=悪、それに立ち向かうガリレオという印象とは少し違うのではという論調。

ローマ教皇側、ガリレオそれぞれの当時の正義に基づいての結果だったのかと感じた。地動説が当然と考えている私たちの認識から少し距離を置い...続きを読むて考える必要がある。ガリレオを徒に英雄化するものではないということ。

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Posted by ブクログ 2015年11月06日

合点がいく結末ですね。「それでも・・・」なんていう偉人説の方がおかしいので。それにしても・・・とことん自分を曲げていくというのはストレスもあるだろうし、悔しかったことでしょう。

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