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Posted by ブクログ
【本の内容】
女子高に通う雛子の家は、マンションの11階にある4LDK。
どうにかこうにか宙空を、地球と一緒にぐるぐる回っている。
暇さえあれば寝てしまう雛子、歳の割にしっかりした小学生の弟・真人、時々ヒステリックな母の圭以子。
同居する祖母の萩乃が「運針の病」にかかってしまったことで、ぎりぎり保たれていた均衡がゆらぎ出した…。
不安定な心のうつろいと喪失に、まっすぐにむきあう姉弟の物語。
[ 目次 ]
[ POP ]
眠ってばかりいる高校生の雛子を主人公とする、家族の物語。
詩的なタイトルは、マンションの11階にある雛子の住み処を表したもの。
空の家、ではなく、宙の家。
そらのいえ、ではなく、ソラノイエ。
「宙」という字を当ててカタカナを振ると、11階という実際の高さ以上に、とてもとても高い位置にあるように思えてくる。
カタカナといえば、本文中のルビがすべてカタカナになっているのが大きな特徴。
描かれているのはどこにでもあるような家族だけど、このタイトルとカタカナ表記のおかげで、ちょっと別世界の話を読んでいるような、ふわふわとした不思議な感覚を味わえる。
「きらりと冷たい風」、「透明な眠り」、「心の指の先っぽがしくしく疼く」など、独特な言葉の組み合わせが随所に見られる。
言葉や文字に対する繊細なこだわりが感じられて、「あ、良いな」と思う表現を見つけるのを楽しみながら読んだ。
悩みを抱えた家族ではあるけれど、全体的にやわらかく淡く描かれている。
登場人物たちが新しい一歩をそっと踏み出す形で終わるので、ちょっと疲れ気味のときに読むと、ほどよく気持ちを上に向けてくれそう。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
マンションの11階、空のすぐそばにある場所で暮らす雛子一家。なんとなく保たれていた均衡は祖母の萩乃が「通信不能」状態になったことで一気に崩れだす・・・
「宙の家」だけでも完結しているが、後日譚の「空気」も含めて、この話はひとつにまとまっているような気がする。
全体に漂うなにかもやもやとして抜け出せないもどかしさ、けれど透き通る空気。
ここに「答え」はひとつも出てこない。けれどそれでよい気がする。答えはないのでなく、「書かれていない」だけであるような。
Posted by ブクログ
とてもいい作品。久々に気持ちをスーッと突き抜けてくミント味の物語を読んだ気がする。
2019.8.11 再読
直木賞を記念しての再読。
登場人物みんなの心に影が見えるのは、背景に青い空があるから。光が強ければ影が濃い。
でもそンなこともどうでもよくなるくらい、青い空が見える。物語自体は派手さは無いのに、読後感がすごく良い。
大切なものをなくすこととは
姉と弟、母と単身赴任中の父。そして、父の母、つまり姉弟のあばあちゃんの5人家族。おばあちゃんはゆっくりと認知症が進行する。家族の認知症の捉え方が危うくて、心配になった。関わり方次第だとも思う。でも、それはかなり難しいこともわかる。おばあちゃんが亡くなった後、姉は眠さに支配される毎日を送るようになる。弟の友人とその兄との交流。ふわふわと不思議な展開であった。大切な人の死がもたらすものをしみじみ感じた作品であった。
Posted by ブクログ
解説にもある通り、この作者はあまり詳細を敢えて語らない
そのため、全体的にふわっとしている印象を受ける。一見どうでもよいことに主人公はじめ登場人物がこだわってその分セリフのかさが増すので話の進みが遅いと感じる時がある。
個人的には2つ目の作品のほうが、話に動きがあって好み。
Posted by ブクログ
マンションの11階に暮らす家族を描いた中編2作。
両親と弟、祖母と暮らす女子高生が主人公。
ある日祖母にボケの症状が見られはじめ、平凡な日常にズレが見られていく。
”運針の病”と名づけた謎の行動など、ボケの描写はあるものの介護の苦しみや家庭崩壊などはなく、静かな日々が描かれる。
2作目は小学生の弟の親友兄弟と主人公との交流。
ちょっと展開が唐突かな。2作目より1作目がよかった。
文章表現は巧みで、特にタイトルにある通り地上40メートルのマンションの一室について描写する表現がいい。
こういう雰囲気の作品はハマると感動すると思う(今回はそういうメンタリティじゃなかった)。
Posted by ブクログ
表題作である「宙の家」の続編である「空気」を含む二編の連作。
とあるマンションの1105室に暮らす家族の物語です。宙空の4LDKに住まうこの一家の家族構成は、主人公の女子高生・雛子のほかに母親と、小学生の弟と、祖母。父親は九州に単身赴任中。
ある日突然、祖母が交信不能(痴呆症)になったことで、平穏な家庭にズレが生じ、その波紋が少しずつ広がっていく模様が雛子の視点で描かれます。
続編では、祖母の死後、自分の扱いが下手になってしまった雛子の心情が、弟の友人とその腹違いの歳の離れた兄・波貴との関わりの中で語られていきます。波貴もまた、自分を持て余し、周囲との折り合いをつけるのが苦手なタイプの男性なのでした。
・・・・・と書くと、なんだかジメジメしたお話のように思われるかもしれませんが、淡々とした文体で、あまり多くを語り過ぎないことで微妙な距離感が保たれ、湿っぽさのない物語に仕上がっています。
「宙の家」はデビュー作なんだそうですが、若い女性がなぜこのような作品を書こうと思ったのか、そのことにとても興味を惹かれました。