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Posted by ブクログ 2022年05月01日
日本の資源外交史を石油に的を絞り、第二次大戦前から本書が書かれた2015年まで追いかけている。数あるエネルギー政策の中で石油に特化することで話を掘り下げて、話を無用に拡散させないように簡潔にまとめる意図で書かれているのだと解釈した。
資源を持たない日本が石油を巡る外交に戦前も現在でも右往左往させら...続きを読むれていることがよく伝わってくる。その最大の壁は「ワシントン・リスク」であり、日本のあらゆる政策がアメリカ追従になる背景(の大きな要素)となっている。自前で石油の調達に動こうとした田中角栄がロッキード事件で失脚したくだりについてはあえて本書では深入りしていない。
石油だけに目を向ければ、アメリカの石油メジャーのパワーがアメリカの政策を動かし、それが世界に大きな影響を与えていると印象付けている。巨額のカネが動く所にアメリカあり…だが、他のエネルギー政策と政治関連の本も読んでみたいと思った。そうすれば、昨今のウクライナ情勢もまた別の見方ができるかもしれない。
スケールこそ全く違うが、「戦略物資をどう調達して自国の発展に活かすか」を巡る行動は自分の仕事にも通じる要素がある。漫然と目先の忙しさに追われてしまうのではなく、業界全体の動向やら各社の戦略やらを広く情報を掴んでおく必要がある、と学んだ。
Posted by ブクログ 2016年04月18日
[一滴を求めて]エネルギーの多くを海外からの輸入に依存している日本。その中でも、日本は石油を求めていかに国際社会で奮闘し、そしてときに挫折と失敗を経験することになったのか......。題名が端的に示すように、日本と石油の関係をズバリ考察した作品です。著者は、日本エネルギー経済研究所で務められた経歴を...続きを読む持つ中嶋猪久生。
時系列的にまとめられているため、資源外交を考える上でコンパクトかつ明瞭な一冊だと思います。また、石油にまつわる政治や経済面のみならず、技術面にも説明が及んでいるため、多角的に日本にとっての石油を考える機会を与えてくれるかと。
著者のスタンスは一貫としていて、一部の例外を除いて日本の石油外交は失敗に満ちているというもの。個人的には著者の姿勢に同感を覚える点が多くありつつも、日本とその他の国々の石油に関する権益を、「取った・取られた的」な見方で常に捉える著者の視点は(日本の資源外交を成功に導くためにも)批判的に検証しても良い点ではないかなと感じました。
〜石油は金を出せば買えるもの。もしかしたら、そんな国の姿勢が、日本の負け続ける資源外交の一番の要因ではないのか、いまさらながらそう思うのである。〜
石油の技術的側面も学ばないといけないのかな☆5つ
Posted by ブクログ 2015年08月10日
副題の内容そのままの本である。日本は石油のほとんどを外国から輸入しており、国際政治の波に揺さぶられる中で民間や政府も取り組んできたが、資源外交的には敗北続きである。その歴史を振り返るに、本書はとても良くまとめてあってお勧めできると思う。
過去には、出光佐三や山下太郎などところどころで活躍した人物...続きを読むや出来事もあるが、全体の流れとしてはアメリカや中東諸国には正面切っては勝てないのかなあと感じてしまう。
外交力の欠如や資源政策の無策を嘆いても始まらないが、エネルギーの確保を考える際には本書を読んで先人の苦労や努力を知るのは大事なことだと思う。
Posted by ブクログ 2017年12月16日
石油が無いために戦争に追い込まれ、石油が無いために敗れた。でも、南方で必死に活躍した技術者たちが蓄積した経験と技術が、後に異端児アラビア太郎の開発する油田で役に立ったことを知って、嬉しかった。彼や出光佐三のような男たちは、今の日本では現れにくくなっているのだろうか?
Posted by ブクログ 2017年01月31日
タイトル通り石油・油田開発をめぐる日本の近現代史。
対米開戦、石油外交、アラビア石油の利権失効、イランでの権益を巡る外交交渉。資源を巡る20世紀のひとつの歴史です。
「原発がー」と語る前に石油を知ろうぜ。
Posted by ブクログ 2017年01月11日
日本がいかにして石油メジャーのなかをかいくぐり、自国のエネルギーとして石油を入手していくようになったのか、その背景がていねいに描かれている。
トピックとしては、
-映画「海賊と呼ばれた男」でも話題の出光
-アラビア石油の興亡をからめたサウジと日本の資源外交
-イラクに消えた日本の一兆円
-イランのア...続きを読むザデガン油田の権益獲得から消失
、といったことなどが取り上げられている。
イラク復興関連の仕事を経験した自分でさえ、過去にイラクに融資した日本の金はもう戻ってこないという事実を知り、唖然としてしまった。この事実は一般国民のほとんどが知らないのではないだろうか。