【感想・ネタバレ】洞窟オジさんのレビュー

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加村さんの逞しい生きざま

QM
2024年03月11日

冒頭の虐待や家族からの仕打ち、長いこと相棒だったシロの死な前半は読んでどいて泣きたくなる部分が多かったけど、1つ1つの話が短く、すらすらと読めた。後半は加村さんが色んな人に巡り合って、助け合い信頼しながら生きていく様子が書かれていて心が温かくなった。自分が今どれだけ恵まれた環境にいるか改めて考えさせ...続きを読むられる1冊だった。現代の進化した文明に頼り切らず、それらがなくても自然にあるものを利用して生きてきた加村さんは逞しい。勇気をもらえた。

#アツい #泣ける #感動する

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年04月13日

ちょうど他の洞窟関連の本に夢中になっていた時に、たまたま目にとまり読んだ本。
洞窟で半生を生きてきた人と聞いただけで、やはり生い立ちは普通ではないと予測はついたが、実際ひどい内容だった。親からの愛情に飢え、人間不信になってしまった加村さん。山へ逃げる気持ちもよく分かった。

富士の樹海のエピソードは...続きを読む、かなり強烈だった。
自殺のメッカだとは聞いていたが、実際そうなんだな。

愛犬シロが何度も命を救ってくれたシーンは感動して思わず涙が出た。これだけ心を通わせていた犬の最期は本当に心が締め付けられる程辛かっただろうと思う。

波乱万丈な半生ではあったが、加村さんのお人柄からだろうか、出会った人達から慕われ今は施設で幸せに暮らされているという事なので、安心して本を閉じる事が出来た。
こんな生き方の人もいるんだ、と本当に勉強になる本だった。巻末に獣の食べ方やサバイバル術が絵付きで載っており、シュールで面白かった。(実際自分もサバイバルせざるを得ない状況の時は役に立つ内容だと思う)

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Posted by ブクログ 2022年11月20日

テレビ番組で特集していて興味を持ち購入。
まあすごい人生です。常識の範囲外。普段の生活であたふたしているのがバカバカしくなる。生きるとは何かを改めて考えさせられる。
作者は幸せだったのか?そんなことを考えても自分の考えると幸せと全く尺度が違うように思えて何か清々しささえ感じる。

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Posted by ブクログ 2021年02月03日

すごい体験をしたすごい人が過去を振り返る内容だった。語り口が面白く当事者も素直そうな良い方なお陰か、苦労したであろう事象も実直に受け止めることができた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年09月28日

「激レアさん」を見てすごく読みたくなって購入しました。愛犬シロとの場面で、ピンク色の蘭の花畑で、人生で一番信頼して大好きだった相棒とお別れするシーンが1番泣けました。来世でもぜひ一緒になってほしいと心から思います。虐待とか孤独とか、想像を絶する苦労に耐えてきた強い方なのだと実感しました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年08月18日

激レアさんで、洞窟オジさんを知り、早速読みました!
とても面白かったです。
加村さんの人が良いんだろうなぁ。
悪い人もいたのかもしれませんが、周りの人にも恵まれて、またその人たちにも様々な形で感謝を返してる姿が素晴らしかったです。
高齢になってもなお、夢を持ち続けている姿にも、見習わなくてはと思いま...続きを読むした。
シロとのことを語る場面は、うるっときてしまいました。
今まで読んだ本の中で、一番好きです。

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Posted by ブクログ 2019年01月20日

久々にワクワクする本に出会った。

主人公は13歳の時に家出して、
約40年間、人を避けながら
洞窟や山で愛犬シロとサバイバルな生活をした。

現代のネット社会では実現できない生活。
そんな事を体験できて、最後は人の温かさに触れる
人生をおくった『洞窟オジさん』。
最高に面白かった。

最後に今後の...続きを読む夢を書いているが、
洞窟探検をしたいというのにはビックリした。
まだまだ、元気な69歳だ!(文庫発売当時)

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Posted by ブクログ 2017年02月13日

「洞窟オジさん」というタイトルのこの本を友人から勧められた時、いわゆる「ゆるい系」の話なのかと思った。

ところが、あらすじを見ると43年もの間世俗を離れ、洞窟でヘビやカエルや猪を獲って暮らしてたという。
しかも実話だという。

いわゆるドキュメンタリーなのだろうか…。
などと思いながら読みだし、読...続きを読むむ前のあれこれを裏切られ、人間の抱える矛盾、弱さ、強さ、愛情、つまりは人間というものを加村さんの人生から感じないわけにはいかなかった。

サバイバルものというのは通常文明から放り出されて、それまでと違う価値観を突き付けられ、最後には当たり前の幸せを再認識するという話が多い。

しかし、加村さんの場合は違った。戦後の時代、両親からの虐待から逃れるため13歳で家を飛び出した彼は、文明どころか当たり前の幸せすら知らなかった。

彼が持っていたのは、山で暮らす術と、シロという愛犬の存在のみ。
語り口が加村さんの一人称によるためか、獲物を解体するシーンなどもエグさを感じない。それどころか朴訥な人柄を感じるくらい。
それだけに、エピソードの一つ一つが胸に迫るものがある。大げさな表現もなく、淡々と語りかけてくる。
山や川でのサバイバル生活も、そこが主題なのではなく、その生き方の中で彼が感じたものすべてを描いているだけにすぎないのだ。

そんな生き方を見ていると、人生というものの矛盾、偶然、理不尽さを感じる。
山で暮らす術は、山で暮らすきっかけを作った父親から見て盗んだ。
愛犬シロのお墓に供えた花が、実は高価な花であり、高く売れることが分かった。
お金が手元にあり、食うことに困ることがなくなると、生きていることの意味が分からなくなり、自殺を試みる…等。

一人の男の人生を描いているのだから、そこには割り切れるものとか、綺麗に約束されたハッピーエンドは存在しない。

虚構でもなく、ドキュメンタリーならではの「リアリティ」でもない。
淡々としたリアルを感じる。

「怖いことは耐えられる。でも、寂しさだけは耐えられない。」
小説でも映画でもない、自身の経験から吐き出された言葉の重みが、読み終わった後の今も離れない。

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Posted by ブクログ 2016年06月07日

昭和35年、両親の虐待から逃れるため、13歳の加村少年は愛犬シロと家出。そこからはじまったホームレス生活。足尾銅山の洞窟を住処とし、ヘビやトリ、イノシシを食べる。食べ物がなければ、3、4日は食べずに過ごす。富士樹海で死体を見たこともある。人のいることろで山菜や魚を売って現金を手にすることもある。老夫...続きを読む婦に我が子のように可愛がられたこともあった。

しかし、結局、彼は人のいない山奥へ戻っていく。彼が求めるのは愛じゃなくて、洞窟。暗くて孤独でサバイバルな場所こそが彼の安らぎだった。

・・・という「洞窟オジさん」も年をとった。やはり、 老いて人は最後に人とのふれあいを望むのだろう。洞窟オジさんは洞窟を離れ、障害者支援施設で働きはじめる。家族のような仲間もできたし、子供にアウドドア術を教えることも生きがいになった。

人間は自分一人だけでは生きられない。彼の人生はそんなことを語るためにあったのかな。

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Posted by ブクログ 2024年03月21日

タイトルでは面白い本かと思ってしまいましたが、
子供の頃に家出して洞窟で生活していたおじさんの話です。
悲しくて、どこか優しい本。

私はおじさんに会ったら抱きしめたいと心から思いました。

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Posted by ブクログ 2021年10月31日

テレビ番組の『激レアさん』に出演しているのを観て興味をもったまま、しばらく経ってしまった。先日、古本屋で文庫本をみつけたので読んでみた。

 洞窟おじさんの少年期、昭和30年代はまだまだ日本は貧しい時代。兄弟は多く、いつも腹ペコ。ひもじさからついついつまみ食い。それにお父さん激怒! ぶん殴られて、墓...続きを読む石に一晩くくりつけられるという虐待を受ける。しかし少年の胃袋は、そんなことくらいで空腹に打ち勝つことはできない。ふたたびつまみ食い。父親が楽しみにしていた蝮の干し肉も食べてしまう。ふたたび父は激昂!ぶん殴られて、墓石に一晩くくりつけられる。

 そんな虐待に耐える日々に嫌気がさして、13歳のときに家にあった塩と醤油と干し芋を学生鞄に詰めるだけ詰めて家出。とにかく捕まりたくなかったので、線路をひたすら遡り、たどり着いた先が足尾銅山。廃山跡には洞窟がいっぱい。かくして加村一馬くん、洞窟で自給自足の暮らしを始める。ここに”洞窟少年”が誕生する。

 一馬くんには相棒がいた。家で飼っていた愛犬シロだ。
 家出したときにシロを連れてきたわけではない。なんと一馬少年の匂いをたどって、シロ自らが後から追いかけてきたのだ。うう、なんてカワイイ子なんだ。愛犬シロの健気さに涙を誘われる。

 シロといれば寂しくなかった。
 ひとりと一匹で狩りもした。蛇や蛙やウサギや猪、食べれるものは何でも食べた。高熱で寝こんだときは、どこで覚えたのか、シロがタオルを水で濡らして運んできた。

 何年もそんな生活をしてきたけれど、残念ながら、犬の寿命は人より短い。シロが死んでしまったあと、少年は山を降りた。
 
 その後も少年は野で暮らし、いつしかおじさんになった。山で茸や山菜をとったり、川で魚を釣ったり。そのうち、それを人に売ると、お金というものに交換できることを学んだ。多少なりとも文明というものに触れたけれども、やっぱり馴染めなかった。ひらがなしか読めないし、社会の仕組みがよくわからない。

 ときどき親身になって、助けてくれる人はいるのだけれど、どうにも馴染めないので、山や川に戻ってしまう。そっちのほうが気が休まるのだろう。

 その後も自殺を考えるほどの波瀾万丈の人生を過ごすが、いちいち説明してたら大変なので全て端折る。いまでは親切な人に巡り会えて、福祉施設で働きながら、サバイバル術を教えたり、農作物の栽培をしているようだ。

 就職先で用意してもらった家があるのだが、ときどきは、裏につくった洞窟に気を落ち着けるために戻って、過ごすらしい。

 もう、好きに生きてちょうだい。

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Posted by ブクログ 2021年03月23日

昭和34年13才だった少年は、父親の折檻に耐えきれず家を飛び出し、以来森や洞窟や川べりで43年も暮らした。読む前に私が確かめようと思ったのは4点。
(1)人間は人との間の交流がなく、生きていけるものなのか?
(2)人間は文明機器と一切隔絶して生きていけるものなのか?
(3)長い間で、喜びを感じたもの...続きを読むは何か?
(4)長い間で、悲しみを感じたものは何か?

結果
(1)表紙は洞窟の前に佇むカバンとスコップを持った少年と犬のシロ。下には無数の庶民がいる。読み終わってわかるのは、此処に出てくる主な登場人物だということだ。加村一馬少年は2年間洞窟でサバイバル生活を続け、その後数年間人にも会わずに生きていけたけど、最初はシロが居たから生きて行けたし、そのあと決定的に困った時には名もなき人の助けをもらっていたのである。人と話すのが苦手な加村さんではあるが、決して1人で43年間を過ごしたわけではない。

(2)文明機器は何かで、答は分かれる。2003年に自販機の小銭窃盗未遂で警察に捕まった時に、エレベーターもシャワーも初めて経験した。電気製品が無くても人は生きていけることを彼は証明したと思う。しかし、昭和34年最初持って行ったカバンの中には食料、四合瓶入醤油、塩一袋、ナタと小刀、研ぎ石、500本入マッチを入れた。スコップも持っていった。結果的に大嫌いな父親から教わった「生きるための知恵」であったが、文明機器と父親から教わったサバイバル技術が、彼を生きながらえさせたのは間違いない。

(3)何に喜びを感じたのか?人に親切にされたこと。人に頼りにされたこと。本を読んで気がつくのは、何にもメモしていないのに(少し文字を習ったのは30代後半)驚くほど生き生きと彼は覚えている。また、どんなものが美味しかったか、とかそういう記憶は忘れない。

(4)最大の悲しみは、間違いなく最初の2年間を洞窟で一緒に過ごしたシロの死であろう。群馬県足尾鉱山洞窟はシロの死で終わりを迎え、山梨県等の山中生活に移る。食べることはできても、孤独は癒せない。彼は死ぬために富士の樹海に入ってゆく。その彼を救ったのはやはり「人の死体」だった。骸骨や腐りかけた死体を埋葬していく過程で、彼は生きる気持ちが湧いてくる。

人間とは何か。
いろんなことを感じられる良書であり、
私にとっては生きたサバイバル技術の指南書だった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月30日

題名がソフトだからもっとポップな内容かと思っていたが、思っていたより全然壮絶だった。少年は、苛酷な環境から逃れるために、山の中へと逃げた。家族に虐げられる世界から逃れるために。それから生きる為に、壮絶なサバイバルの中、ずっと孤独を抱えて生きてきた。そして、ふとしたきっかけで、少年の頃の記憶からは想像...続きを読むもできない程に発達した人間社会に戻ってきた。
少年時代の家庭での孤独、山の中での孤独、全く様変わりした人間社会での孤独と、彼はいつも壮絶に孤独だった。それでも最後に、彼が辿り着いた場所とは?彼はどこにいることが幸せなのか?彼の本当の居場所は?
色々と考えさせられた。とても、面白かった。

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Posted by ブクログ 2020年12月27日

一気に読み切ってしまった。「激レアさん・・・」を見て著者を知りました。中学生くらいの時に家を出たまま一人で生き抜いてこられたまれな人生を覗かせていただいた。何度も窮地に立たされ、都度考え実行する逞しさは今の時代には極めて希薄になっていると思っている。だからこそこの時代に必要な情報だと感じた。

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購入済み

優しい人が沢山

2020年05月04日

激レアさんの再放送編集番組を見て購入。本当に珍しい人生を送ってきた人。お金に縛られないこんな生き方も幸せかも。でも本当にいろいろ親切な方々の支えがあって今の生活ができている。世の中には聖人のような方々がおられるのだな。と、ここに登場する全ての方々が激レアさん。

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Posted by ブクログ 2019年02月02日

本にも出会いがある。たまたま見つけた。タイトルに惹かれた。面白かった。サバイバルに生きる人の強さ。こんな人がいたなんて、驚き。人間は強い。逆に現代の生活はまったくゆるい。NHKでドラマ化されたそうだ。観てみたい。

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Posted by ブクログ 2018年07月10日

「洞窟ばか」という洞窟探検家の本を探そうとして、何故か洞窟オジさんと検索したのがこの本を知った切欠です。
似ているようで全く別。洞窟ばかは現代人らしく未知の洞窟の探検に血道を上げていますが、洞窟オジさんと来たら、親の虐待に耐えかねて愛犬シロと家出をした13才の少年が、足尾銅山の洞窟に住み、蛇や虫や猪...続きを読むを食べて生き延びていく話です。
本当に望んで山奥で自給自足するようになったのかといえば、人並みに生きていける環境になかったので結果的に野人になって生きていくしかなかったので、何とも切なくて切なくて。
字も読めないし計算も出来ない、白米も殆ど食べていなかったからおにぎりを貰ってもなんだか分からない。現代人が全部当たり前だと思って生きている事を、何一つ知らず、高度経済成長の恩恵も受けることなかった。そんな人間が居たなんて信じられないです。
読むまでは自給自足生活を楽しんでいた話なんだろうとワクワクしていましたが、読み始めたら可哀想で可哀想で。中学校1年生換算の男の子が一人で自給自足なんてほんと居たたまれない。何しろそれを自分で道を切り開いて生活していってしまう彼の精神力の強さが半端じゃないです。
でもね、シロも犬ですから先に死ぬんですよ。長かれ短かれ避けられない事です、彼の唯一の家族であるシロの死の悲しい事と言ったら・・・。
自分の力で生きていくわけですから自信満々でも良さそうなものですが、人間としてのアイデンティティはやはり教養に根差すところが多いので、彼のように否応なしに普通の社会生活からドロップアウトすると、コンプレックスからプライドを持つ事が難しいです。
恥ずかしいという意識も有りますよね、分かります。しかもシロが居なくなって孤独に苛まれ、自殺を試みる所まで追い込まれます。人間って完全に単独で生きていくのは難しいです。原野であえて一人で生きていく「マウンテンマン」と言われる人は、自分のアイデンティティの為に全てを捨てて自然に飛び込んで行くので,
全く意味が違うんです。
次第に人と交流しながら文明に触れていく姿は面白いのですが、なんだか胸も痛みます。色々な事におびえながら、威嚇しながら薄皮を剥がすように社会に溶け込んでいく姿は、安堵と共に少しの寂しさがあります。もしかしたら僕は彼が山に帰っていくのを期待していたのかな?僕も勝手なもんですね。

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Posted by ブクログ 2015年10月30日

昔、洞窟だかどこだかで自力で何十年も生活した人の本がある、と何かで見たか読んだかで興味を持ったことはあったんです。

でもその当時それはハードカバーで、大好きな作家以外の本は文庫派の私には手が出ないもので、いつの間にか忘れてしまってました。

今日、お気に入りの本屋をウロウロしていたときにこの本が目...続きを読むに入り、「なんか聞いたことある……」と手に取り、買ってきました。

すごい。
この人すごい。
13歳で家出して、犬と共にヘビとかネズミとかカタツムリ、コウモリ、その他たくさんのものを自分でとって食べて生活していたなんて。
何年も山の中にいたから、字も読めず、お金の使い方もわからなかったなんて。

今現在も、お元気でいらっしゃる人の話ですよ?

この人はもう、どこでだって生きていけるなあ、でも信頼できる人たちに出会えてよかったなあとあたたかい気持ちになる反面、切なくもなります。

両親から虐待さえされてなければ、貧しいながらも明るく楽しく暮らせていたかもしれないのに……。
8人兄弟で、なぜ加村さんだけ虐待されていたのか、本当にご両親に聞いてみたい。

その虐待していた父親がいたからこそ、加村さんも山の中で生きる術を身に付けていたんだと思うと、複雑な気持ちになります。

どんなにあたたかい人たちに出会っても、今までで一番の思い出は愛犬シロと暮らした洞窟生活、という加村さん。
きっとそうなんだろうなあ、とジーンとします。

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Posted by ブクログ 2024年04月18日

感想
人を拒絶する。ずっとし続ける。だけど人の温もりが忘れられない。それが人間。社会復帰を果たしたオジさん。洞窟の外の幸せを噛みしめて。

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Posted by ブクログ 2021年04月28日

テレビで紹介されていたのですね。
好きな作家さんがおすすめしていたので読みました。

虐待から逃れるために中学生の年齢で犬と洞窟で生活。その後も事実は小説より…という怒濤の展開。

ホームレスに文字を教えてもらうまで読み書きできなかったというあまりにも現代離れした純粋さ。
恐らくかなり編集やライター...続きを読むの手が入っていますが、その素朴さが表れています。
話し言葉を書き下ろした様な文章は読みやすく親しみやすいですが、もう少し突っ込んだところを聞きたかったというのが本音。

余計な知識のなさからくる魅力と、これだけの経験に学力が伴っていたらもっと面白い人生になっていたのではという矛盾した思いを抱えてしまう。

壮絶な人生を送ってきながら、日本一周するのが現在の夢だというのが驚き。
人間の本質的にやりたいことって、隣町に初めて自転車で行くような…つまり好奇心を満たすことなんじゃなかろうか。

少年が山で獣とって健康に生活しているという時点でめちゃくちゃな運と天性の感の持ち主。普通に天才です。自分も強くなりたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年11月16日

兄弟の中で一人だけ疎まれ虐待を受けて育った理由はもちろん知る由もないが、もしかしたら、我が子ながら恐くなるほどの、他を駆逐してしまうほどの強烈な力を持っていたから、無意識に抑えつけずにはいられなかったのではないかと思った。
とにかくすごい生命力だ。この人が社会から見捨てられずところどころで世話を焼い...続きを読むてくれる友人ができたり支えようとする人々が出現するのは、犬のシロを思う情愛の濃さがあり実はコミュニケーション力が高いこと、サバイバルスキルが高く憧れを抱かせてくれること、建前がなくても人間どうとでも生きられるという安心感をくれるからなのかもしれない。

加村氏が途中で一度死のうと思ったことがあるというのが意外だった。この本の前に「ハイパーハードボイルドグルメリポート」で、極限下にあって生き延びること以外の正しさを持たないリベリアの青年の話を読んだばかりだが、そう考えると人を殺す凶器は孤独感だけなのかもしれないと改めて思った。

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Posted by ブクログ 2020年02月26日

体験者が語る本には、時々凄いものがあって、これもそうだと思う。思う、というのは、凄いんだけど、多分ライターが書いたせいもあり、本人の性格もあり、どこかひょうひょうとして、あっけらかんとしたところがあるせい。
もし小説家が書いたらもっと劇的に書いただろうが、これはこれで良い。
著者(本人は学校もほとん...続きを読むど行かず、読み書きもあまりできないので、もちろん書いてはいないだろうが、書いた人の名前があるわけではないので、とりあえず「著者」にする)は兄弟の中でも自分だけ親から虐待を受け続けることが我慢ならず、13歳の時に家を出て、追いかけてきた犬のシロとともに足尾銅山の洞窟で数年暮らす。シロが死んだあと、山中や川べりで暮らすが、獲物がなく所持金もないためバールで自販機をこじ開けようとしたところを見つかり、逮捕される。その後建設会社や福祉施設で住み込みで働く。
シロと著者が飼い主とペットではなく、対等な生き物として協力しながら、互いを思いやりながら暮らすところが心に残る。どちらかが具合が悪くなれば看病し、食べ物を調達してやる。これが愛とか家族の基本で、これができないなら、一緒にいても意味無いってことだな、と。そこに戸籍の縛りや血の繋がりは必要ではない。互いを思いやる心のみで結ばれている。怖さや飢えは耐えられるが、寂しさは耐えられないという言葉も忘れられない。
シロが死んで、自分も死のうとしたり、クマに襲われたり、ホームレスの元社長に字を教わったり、確かに映画にしたくなる話だ。『レヴェナント』みたい。
しかし、一番刺さったのは、一人で狩猟をし、誇りを持って生きてきた著者が、人間社会に入った途端、学歴も職歴もなく、字も読めず、機械も扱えない最底辺の人間として扱われ、尊厳を失っていくところ。世話をしてくれる周りの人たちは「我慢しなくちゃいけないよ」と言うが、対等な人間として扱われないことがいかに辛いか、これは孤独や寒さや飢えより辛いのだ。著者は山中で一人で生きるノウハウがあるから、山へ帰ろうとするが、どこにも帰る場所がない人はどうしたらいいのか。これは、現代社会の大きな問題だと思う。
戦後から平成という、世の中が大きく変わる時代に著者が生きたということが、面白さ(と言ったら失礼だけど)を更に増している。電話もほとんどなかった幼少期から、電話が普及し、公衆電話ができ、携帯になるなんて、なかなか経験できるものではない。
読んで損は無い本だった。

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Posted by ブクログ 2019年11月23日

いざとなったら人間なんとかなるだろうという安心感と、それにしても壮絶な人生だったんだなぁと楽しく読めた。

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Posted by ブクログ 2019年08月30日

“洞窟おじさん”と言いながら、実際の洞窟生活は最初の数年だけだったようだ。

 家と学校。小学生の世界って、基本はこの2つ。両方からはじかれた主人公が向かった先は、小学校に入る前の世界。それは山と川。主人公はそこで飼い犬シロとともに自由を手にする。でもその自由も、シロの死で価値がなくなり、手放す。
...続きを読む
 その後はあちこちの山や川を行ったり来たりして、いろいろな人と出会う。徐々に人間社会に入って行き、成長を遂げる。自殺を図ったこともあったが、貨幣経済との出会い、そして商売を始めたり、読み書きを覚えたり、酒やタバコ。釣りを通じて友人もでき、シロの死以降感じたことのなかった寂しさも感じるようになる。

 「いい人」に出会って幸運であったことが大きな要因だろう。蘭の花のバイヤー、トラックの運転手、釣りをみとめてくれた漁協組合長、そしていろいろと一緒に遊んだ釣り仲間。読み書きを教えてくれたこれまたホームレス元社長。

 でも、まともに読み書きもでき無かった主人公、かつまともに入浴もしていなかった主人公。騙されて金を巻き上げられたこともあったんじゃないか?会う人会う人、いい人ばかりじゃなかったんではないか?

 おそらく、そんな人のこと、気にしていなかったのでは?
「そうやって魚を取って行ったら、多い日には1日1万円くらいになった」
「最初に釣れた魚を掌に載せて魚の体温を見ると、その日どれくらい捕れるかがわかるんだ」

 主人公の、自然との共生力を認めてくれる人が、沢山いる、それが自分の自信の根幹にあったからではないだろうか?そして、自分自身が成長している。その毎日がたまらなく楽しかったのではなかろうか?

 逮捕後、社会復帰からの主人公の生活は、どうも人とコミニュケーションが苦手なようだ。精神障碍者施設の理事長と、何人かの職員、そして特に面倒を見てくれた女性、そして本の出版社くらいにしか心を開ききれなかったようだ。

 ひょっとしたら、施設自体も、実は本当は居心地のよいところではなくて、施設の関係者への恩義、面倒を見てくれた女性への恋心が今の主人公を支えているのでは?とも思う。

 そして、最初の洞窟で死に別れた飼い犬、シロへの愛情につながるのかもしれない。

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