【感想・ネタバレ】増補 エロマンガ・スタディーズ ――「快楽装置」としての漫画入門のレビュー

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Posted by ブクログ

手塚治虫から氏賀Y太まで、エロマンガ通史及び分析。「米沢嘉博 / 戦後エロマンガ史」の90年代以降を任されたとあとがきにある通り(米沢氏の前掲書も凄まじい濃密さだった)、ディズニー・手塚治虫からスタートしつつも80年代〜90年代〜00年代のエロマンガを濃密に収めた一冊。通史としての読み物としてもかなり面白い上に、「乳首を**のように描いたのは**が最初」というようなトリビア的な羅列ではなく、エロマンガの題材から読者は何を読み取っているのかが(約2年間のロリコン漫画全盛期を経ていきなり巨乳ブームが来たとして、日本人がみな幼児性愛者から巨乳崇拝に変わったなんていうはずがない。一体読者は何を誰目線でどのように受け取っているのか?)かなり掘り下げられていてそこもとても面白かった。

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2022年01月08日

Posted by ブクログ

面白かったし勉強になる。
所詮は低俗なものとして扱われがちなエロマンガに焦点を当てて、文化史を紐解く。
日本のサブカルチャーと密接な関係にあるようだった。
これのエロゲー版もあったら面白そうだけどそういう本ないのかな。


氏賀Y太『毒どく猟奇図鑑』が出てきて、あっと思った。

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2019年05月04日

Posted by ブクログ

2006年に書かれたエロマンガの通史・解説書の文庫版。エロマンガというジャンルが豊穣で、それが日本のマンガの豊かさと密接に絡み合っていることがよくわかる。

読者の同一化の対象が、登場人物の男性ではなく、時に女性であるという指摘から、今でいう「男の娘」的なジェンダーの混乱に議論を接続していくのは興味深かった。原本が出た2006年と文庫版の2014年の社会的に大きな違いである「ポリティカル・コレクトネスの浸透」についての議論を捕捉する巻末の解説もよい。個人的には、文中に登場するエロマンガ家の作品を、自分がかなり読んでいた事におどろいたな……。

類書が少なく、マンガという表現ジャンルを理解しようとするときに、とても重要な一冊といえる。マンガは好きだけど、エロマンガに興味がないという人にもぜひ読んでほしい。

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2019年06月05日

Posted by ブクログ

文芸評論スタイルのエロマンガ史

年代、嗜好の縦串横串の視点からエロマンガ史を俯瞰。
80年代〜00年代のダイナミックな動きは、私自身も注目していた時期でもあり興味深い。
ロリコンマンガ(前衛的でエロが主目的ではない)→「抜き系」の巻き返し→「萌え」への大連合といった流れ。

そして、当局の取り締まりとの闘い(ほぼ一方的なのだが)も常に並行して続いていた。
著者は終始「エロマンガ」というワードを使用しているが、「成年コミック」という表記は規制反対側の人間からすれば進んでは使用したくない言葉なのであろう。
 
なお、規制反対派側の立場で、創作物に対する評論もやや奔放に(過激に)展開する傾向がある。
一ファンとしても、若干ハラハラする記述もみられる(LO系を絶賛するところなど)。

また、一般作品「ガンスリンガーガール」で論を終えているのは、随分とおとなし過ぎるなと感じた。

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2018年10月29日

Posted by ブクログ

漫画評論家 永山薫が2006年に発表した「エロマンガ・スタディーズ」の文庫版。オリジナル発表後の状況も追加。エロマンガが内包するミーム等を手がかりに手塚治虫から昨今の美少女コミック、萌えコミックまで当時の風俗や一般コミックと絡めながら作家や歴史を考察します。日本海溝よりも深いと思われるエロマンガの割れ目に果敢に挑んで生還した作者がもたらす凄まじい情報量に脱帽です。アレやコレが足りないという向きもありますが、あくまで男性向けのエロマンガをテーマに絞っており教養として知っておくと人生が豊かになると思いました。

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2018年04月12日

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第1部「エロマンガ全史」は、手塚治虫の記号絵に孕まれたエロティシズムを解読することから始まり、1970年代の「三流劇画」ないし「エロ劇画」と呼ばれるジャンルの隆盛と、80年代以降のロリコン・ブーム、そして遊人の『ANGEL』や上村純子の『あぶない! ルナ先生』が被った「有害図書問題」と90年代以降の「抜き」と「萌え」における新しい展開などが、簡潔ながら手際よくまとめられています。

第2部「愛と性のさまざまなカタチ」は、ジャンル別の考察です。「ロリコン漫画」「巨乳漫画」「妹系と近親相姦」「陵辱と調教」「愛をめぐる物語」「SMと性的マイノリティ」「ジェンダーの混乱」の7つのテーマについて、過去から現代までのさまざまな作品を紹介しながら論じられます。

また文庫化に際して増補された「二十一世紀のエロマンガ」と題された章では、いわゆる「非実在青少年」に関する表現規制をめぐっての攻防について解説されています。

容易にその全貌を見通すことのできないエロマンガという領域の歴史をたどることのできる名著です。著者はところどころでセクシュアリティをめぐる文化的・政治的問題の所在についても言及していますが、そうしたテーマを考察の中心に置くことはなく、性描写さえ含まれていれば何でもありとでも言うべきエロマンガにおける性的嗜好の多様化と細分化を叙述することに努力を傾注しています。「あとがき」で著者自身が「不可視の王国の年代記と地図を、たとえ大雑把な代物としても書けるのは自分しかいないという自負があった」と語っていますが、まさにこの著者にして初めて可能だった作品ではないかと思います。

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2016年01月10日

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こないだ秋葉原いって、表通りに面したごく普通の明るい本屋でマンガをみていて、すこし歩いたらほー。というくらい趣がかわったことがあり、いやまあ、ありていにいうとエロマンガばっかのコーナーにはいりこんだんですな。

海外でそんなコアかつ危険でない体験をすることはないので比較はできないけど、日本っておよそ、マンガはエロであってもものすごく好みが細分化されているのだな、と思ったわけです。ロリコン、巨乳、劇画ちっく、ホモ、レズ、SM、老人、肥満、プラスグロなどなど。
正直グロが入るとあるていどホラー要素、猟奇要素が入ってくるので自分のエリアとも重なり、あまり好みではないけど耐性はある。なんか立派な方も研究をしていらっしゃる。研究書といえどもなんとなく、「職業、いやいや研究に貴賤なしでしょうねえねえ」みたいにこの本を手にしてみたりなんかして。

で、結果からすると、さらなる趣味(エロ)の細分化に驚きもしたし、ロリコンブームの衰退やら宮崎事件でエロ?ロリ?が弾圧された話、手塚作品とエロなど、楽しく読めました。巨乳の表現など、ビジュアルの変化への言及も面白かった。

ごっそりホモレズの部分やら同人誌系が抜けて、といったらいいすぎだけれど、そこは増補版でもカバー出来なかったのかなあ、初版は2006年だからまた状況も違ったのかな?
とか、まったく時代考証もせずにこじつけの独りよがりで納得。
ただ、エロマンガの系譜に手塚作品まで含めつつ、松本零士作品がスルーされていたのは意外。クイーンエメラルダスといい、鉄郎とメーテルのキスシーンの衝撃への言及が、まるでなしとはこれいかに?

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2014年05月09日

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漫画評論家&編集者である著者が
真面目に業界&界隈を俯瞰した通史&解説書
大量の出版&作品の解説があり、知っている作品が見つかる事間違いなし。

自分の性癖を深掘りするのもヨシ!新しい扉を開くのもヨシ!(╹◡╹)

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2023年08月04日

Posted by ブクログ

「エロマンガ」の歴史と現在を詳細に分析した労作。第1部は戦後から現在に至るまでのエロマンガの歴史を描出する。源流としての手塚治虫、直接的な創始者たる石井隆、エロマンガの表現の幅を広げた山本直樹……エロマンガのの周辺も含めて多くの作家が紹介される。第2部は、そうして発展したエロマンガの現状をジャンル別に分析。ニーズに応じて細分化されたジャンルのそれぞれを見ていくことで、エロマンガの見取り図が立ち現れる。

「エロマンガ」っていうのは文化的には傍流中の傍流もいいとこのジャンルで、もっぱらオナニーの用具として「低俗」で「有害」で文化的には圧倒的な「低位」として取り扱われる。でも「実用」重視であるがゆえに、時代の空気や意識がダイレクトに反映されるし、そこには多くの表現の冒険がある。
考えてみれば、実用の具である以上、そこには欲望の表出がダイレクトに行われるし、セックスというものが必然的に2者以上の人間(場合によっては人間以外も)の関係性そのものでもある。あるいは、性愛表現は不可避的にジェンダーにかかる問題へも踏み込まざるをえない。
だから、そこに深い洞察と高度な表現が生まれてもなんら不思議なことはない。そこのところを鑑みるなら、エロマンガだからこそ描けるなにものかがある。

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2014年08月02日

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