【感想・ネタバレ】笹の舟で海をわたるのレビュー

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Posted by ブクログ

自分を正当化してしまう、無意識のうちに他人を妬んでそのことに戸惑うなど、場面ごとの繊細な心理描写に引き込まれた。
章を追うごとに過去の出来事が詳細に描かれていく流れがあり、続きが気になって読み進めてしまったが、それだけでなく主人公から見た「風美子」の印象がコロコロと変わっていくのが良い意味で特徴的だった。
勧善懲悪的な復讐物語をどう思うかという議論が随所にあり、善悪の価値観(多様性の観点も含めて)、幸せとは何かということについて考えさせられた。
「現在」の時間軸で描かれている出来事はかなり少ないが、最終的にはその中に、思い出したくない過去やコンプレックスと向き合った上での主人公の決断を見てとれて、壮絶な読後感を覚えた。

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2022年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本当に素晴らしい小説だった。
一人の女性と、その周辺(おもに家族)の、戦時中の子供時代から平成の老後を描いた長い物語。
主人公の左織は、戦時中には家族と離れて疎開を余儀なくされ、父親も戦争で亡くしているが、それ以外はごく平凡で、親からも兄姉からも愛されて育った普通の女性。特に悪いこともしていないし、特に何かに努力して自分を高めようともしていないけれど、まぁ昭和の時代の「普通の母」たちはみんなそんなものだったんじゃないか…。主婦(妻そして母)として、一生懸命家庭を守り、子育てをしている。なのに、なんだかうまくいかない。まず、第一子である長女百々子と異常に相性が悪い。あまり可愛いと思えず、第二子の男の子柊平の方がかわいいと思ってしまうことを自覚している。
この子育て奮闘記に、昭和時代の社会のできごとがいろいろ絡めてあるだけでも面白いのだが、ここに「風美子」という個性的な女性が深くか関わってくる。風美子は疎開中に左織に助けてもらったと言って、そのお礼がしたかったというが、左織自身はまったく覚えていないし、風美子をきっかけに忘れていた疎開中の出来事を思い出すと、リーダー格の上級生に言われるがまま、自分もいじめに加担していたような気もする。肝心なことがよく思い出せずに苦しみもする。いつも自分では何も決められず、誰かに決めてもらっていた。年の離れた兄や姉が、「あなたはいいから」となんでも先にしてしまったせいでもある。それで母が死んだとき、姉のすることにちょっと口をはさんでみたら、姉とは決定的な溝ができてしまう。(これは小説中特に、とてもとても悲しいエピソード)。
夫を信頼できずにいるのも、娘の百々子とうまくいかないのも、風美子のせいにしてしまいそうなできごとが数々出てくる。
読者も、「風美子っていったい何者なの?」と佐織と一緒になって疑いそうになる。
でも、風美子は風美子なのだ。左織が左織であるのと同じように。自分の人生は、他の誰のものでもない、自分の人生なのだ。それに気づくのが、左織は、遅すぎたのだろうか?
もし「何でも人のせいにしようとして自分で努力しなかった」せいで、「娘から決定的に嫌われ、息子にも裏切られ、家族がみんな去ってしまい、一人ぼっちになった」という物語の結末であるならば、あまりにも重い代償だと思わざるを得ない。だって左織は、勇気がなく、平凡を望んでいただけで、ごくごく普通の主婦ではないか。あまりにも悲しすぎるではないか。
でも、左織の物語は続いていく。まだ人生は終わったわけではない。どうやって生きていくのか、どうやって死を迎えるのか、自分で決めることができる。自分の人生は自分の人生なのだから。

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2021年07月31日

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女性の気持ちをこんなにわかってくれる!爽快な感じがした。ただ、娘が母親から離れていく様子が切なかった。

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2018年03月27日

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疎開先が一緒だった佐織と風美子は、夫が兄弟の義姉妹。
性格のまるで違う二人、戦後から現代へ、女の友情と家族の物語。

疎開先での生活が根っこだと、風美子は言っていましたが、佐織にとっても同じだったのでしょう。
風美子は、そこからの反骨精神で強くたくましく生き、佐織はその記憶に振り回され、不安を感じながら生きてきた。
はたから見れば、幸せな上級の暮らしをしていたように感じますが、佐織とっては、幸せだったとは言いきれない人生だったのが悲しいです。

娘との関係にも辛いものがありました。
家を出る際に言われた言葉、あんな事をもし自分が言われたらと思うと苦しくなります。
同じく娘と息子を持つ母なので、思い当たることもあり、複雑な気持ちになりました。

折々に出てくる少し懐かしい昭和史。
疎開生活の悲惨さなど、新たに知ることも多く、佐織の性格のせいかモヤモヤした感じもありましたが、良い出会いだったと思います。

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2018年01月06日

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ネタバレ

とりとめもない左織の思い出話から、昭和を生きた世代の味わった苦労と戦後の大きな変化を肌で感じるようだった。
忘れたくても忘れちゃいけない、必死になって生き伸びた時代なのだと思う。運命に抗いながら、運命の中でしか生きられないような錯覚を何度もした。生きて生きてその先に何が待っているかはそこに到達した人にしか分からないのだと思った。
変わっていけない沙織を見ているのは正直苦痛だったのに、やがて人生を悟ったようになっているのを見ると切ない思いが押し寄せた。思わず鼻の奥がツンとなるラストだった。

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2022年08月02日

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若い頃ならこの作品、最後まで読みきれなかったと思います。女性の一生、時代や価値観が目まぐるしく変わっていくなかで根本の心根は変わらない、だけど変わった方がいいこともあると痛感しながら読み進めました。

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2022年04月22日

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一気に読み終えました。
主人公と長女の取り返しのつかない親子関係は我が家であっても十分に起こり得る事。

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2022年03月29日

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ネタバレ

どうか最後にどんでん返しがありますように…という思いだけで最後まで読んでしまうくらい、終始うっすら暗い話だった。
何十年もそばにいるのに、心の底ではふーちゃんを信用していない。家族も離れてしまった。
寂しいが連続する展開だった。
救いが欲しかったなぁ。

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2022年02月15日

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とても重かった。
大きな事件なども起こらず、淡々と1人の女性の半生が綴られているのだけど、その心情描写が凄くて最後まで一気に読んでしまった。
角田さんは女性の描写がとても上手い。
上手すぎて怖い。

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2022年02月13日

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ネタバレ

心がえぐられる気分で読んだ。

ずっと、どこか不幸な空気が漂う小説だった。短い間で読んだので、読み終わった今は1人分の人生を体験した気分。

選択肢が今よりずっと少なかった頃の時代の話。きっと、似た人生を過ごした人がいたんじゃないかなと思う。

娘のことを好きになれなくて、でもそれを見栄のために隠そうとして、自分も将来母親になったらそうなるんじゃないかとゾッとした。子供を愛せなかったらどうしよう。

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2021年12月19日

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左織に全然感情移入ができず、途中イライラしながら読み進めた。ただきっと、左織はあの時代の中の「普通」の人で、いつのまにか周りに置いてきぼりにされ、「普通」をアップデートできないまま、ずっと鬱屈していってしまう人もたくさんいるんだろうな…と思った。
風美子のことを「主人公」にするのではなく、左織のような市政の人を「主人公」にすることで、より物語に没入しやすく、心がひりついた。

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2021年12月17日

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敗戦からの復興、高度成長期真っ只中の日本。
めまぐるしく変わっていく激動の時代を生きた二人の女性の話。

時代の変化に対応できず、
疎開先でのつらく寂しい記憶にいつまでも心を囚われ、いろんなことを他人のせいにして自分の人生をうまく歩けない左織。
自分の力で運命を切り開く風美子。
疎開先で一緒だった二人の対照的な人生。
それが左織の目線のみで語られている。

二人は大人になり、銀座で偶然再会する。
疎開先でいじめられていた自分に、とてもやさしくしてくれた恩を忘れないという風美子のことを、左織はまったく思い出せない。思い出せないどころか、疎開先で風美子を執拗に虐めていたのは自分ではないか。その復讐のため、自分の人生すべてを奪おうとしているのではないかと勘繰る。
勘繰り続けて約40年。
そんな気持ちと常に隣り合わせの人生なんて、わたしには耐えられない。

感想はうまく書けないが、とにかく大作。
文章がとても滑らかで、テンポがよく、やさしいので、読みやすかった。ひとつの人生を終えたような気持ちにもなった。自分自身の人生の行く先が気になって、背伸びをして前を見たりしてみた。

笹の舟で海を渡ることは多分できないだろう。
それでもそれしかないのであれば、わたしたちは乗るしかないのだ。
人生という海はゴールも見当たらないまま、日々常に変化し続ける。
この世に生まれてきたわたしたちは怯えながら、ときに笑いながら、怒りながら、泣きながら、戦いながら、身を任せるしかない。

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2020年07月17日

Posted by ブクログ

戦前、戦後、平成初期を生きてきた中流女性の独白。
中盤までは少々退屈。娘との確執が顕在化したあたりから、ぐっと引き込まれていった。

(時代背景を考えたらごく一般的な感覚ではあろうが)あまり視野が広く賢いとは言えない主人公が様々な困難に直面するも、その後明確な解決やカタルシスは無いまま物語は終焉に向かう。

しかしそれは、自分の人生にどう落とし前をつけるかは、結局自分の判断次第、他人から見てどうか、一般論とは何かは二の次、ということに等しいかもしれない。

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2019年04月22日

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ネタバレ

生々しく感じた。ずっと主役の左織の心の中。時代背景があり、感情移入しやすかったからか。読後感は少し重ため

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2019年03月03日

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「家族」という言葉に縛られなくていいと思っている
無理に家族しなくたっていいし色んな言葉で表せない関係があっていい

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2018年08月13日

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物語の初めから終わりまでじっとりと不穏な空気を感じる。同じ時代を生きて同じ過去を背負った人なのにこんなにも人生の捉え方が違うって不思議だ。抱える過去の内容は異なれど、今の時代も変わらない。過去の捉え方、それを踏まえた人生の歩み方は、その人次第。

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2018年03月04日

Posted by ブクログ

今の70代以上は、激動を生きたのだな、生き延びたのだな、と改めて思う。

「アベック」など当時に忠実な用語を注意深く用いている地の文なのに、「事務所を立ち上げた」「映りこんでいる」「完食」など、これは昭和には使ってなかったよね今の言葉だよねという用語が混ざっていて気になる。もったいない。

戦前〜戦中の普通の暮らしが中島京子「ちいさいおうち」とするならば、戦中〜戦後のアンサーの1つがこれ、とも言えるのでは。また、時代や戦争に翻弄されるしかなかった女性たちという意味では、「屋根裏の仏さま」も思い出した。

途中何度も、なんて愚かなのかと思ったり、そんなことしちゃ子どもに嫌がられるに決まってるじゃないと思ったり、主人公にイライラしたが、最後まで読むと、ああこれは肯定なんだ、讃歌なんだ、と気づく。

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2017年07月06日

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主人公は、血のつながりは何もないが、
小学生の頃、疎開先で一緒だったとい過去の絆で結ばれた女性2人。
生き方・考え方全てに華やかな風美子と、
自分からは思い切ったことが出来ない地味な佐織、だ。

物語は60歳を迎えた佐織目線で坦々と語られていく。
夫に先立たれ子供たちが独立して一人になった佐織は
の棲家となるべき家を風美子と一緒に探していた。
そもそも風美子との縁は何なのか?
佐織の回想はそこから始まり、
辛い疎開生活や夫との出会い、婚家とのつきあいなど
どんどんと過去が明らかになってくる。

驚いたのは、疎開先で佐織を慕っていた風美子が
佐織の夫の弟と結婚して、本当に義妹になってしまったことだ。
これは偶然なのか? 風美子の策略なのか?
佐織にも判断しかねることなのだが、
本人に確かめる勇気もない佐織は
いつも気が付くと、風美子のペースに乗せられ、
彼女流のポジティブな人生計画に参加しているのだった。

そして、子供を授からなかった風美子と
2人授かったけれども2人ともなんとなく性格があわない佐織は
お互いの夫が亡くなった後、寄り添うように生きることに。

東京オリンピック、天皇陛下崩御、阪神淡路大震災など
昭和から平成にかけての社会的大きな出来事が書かれ、
それに追従するように翻弄する佐織の様子も書かれている。
作品のタイトルにもあるように、
人生という大海原に頼りなく浮かんでいる
笹舟のような佐織の姿が思い浮かぶ。
それでも笹舟が沈没しないラストにはホッとした。

自分の人生が幸せかどうか、佐織は随分と考えるが、
優しい夫とそれなりに理解ある婚家や
にぎやかなお正月を過ごせる実家。
子供たちが小さい頃に何回か行った家族旅行など
ある程度恵まれた結婚生活だった佐織は、
幸せだったのではないだろうか。

「終の棲家」を求める余裕があるのは
やはり、幸せなんだよ、と個人的に思った。

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2017年11月09日

Posted by ブクログ

戦前から戦後の日本を生きた左織が、結婚して子育てをして歳をとっていく時の流れや、その中でどんどん変わる日本に恐怖を覚える様子が生身の人間並みにリアルだった。他人の人生にどっぷり浸かれる醍醐味のある小説であった。
左織の、卑屈なところや自分の意志で人生を謳歌しようとしないところが、もどかしくもあり個人的にも百々子と同じ側の気持ちになってしまう…。

小説の結末では、風美子と左織の繋がりの始まりで終わるところがとても好き。

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2023年04月21日

Posted by ブクログ

主人公の女性の主体性のなさが不快だった。主体性がなく流されているから他人に対して疑心暗鬼に陥ってしまう。自分自身の趣味とか楽しみとか全くないし。

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2022年06月30日

Posted by ブクログ

主人公の主観で全て描かれているので、結局のところ風美子の本心がどうだったのかが分からなくてモヤモヤした。
主人公がネガティブすぎるのか、そうなる程風美子から奪われてしまう何かを感じていたのか、、
終始暗い話でいい気分になれる話ではなかったけど、たまにはこういう小説もいいかな、とは思った。

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2022年03月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

デパートで出会った2人。実は前に会ったことあるのよ、と言われるが全く覚えてない。その後義理の姉妹になり自分が幸せなのか不幸せなのか悩ませられながら生きていく…。何かどんでん返しを期待しながら読み進めていたが、え、終わっちゃった。って感じでした。昭和から平成への時代の移り変わりのあたりも、戦後から急に展開されたって感じで懐かしむ間もなく平成に突入しちゃった様でした。んー。

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2022年03月08日

Posted by ブクログ

ゾクゾクする場面が何度かあった。最初は長い小説だなぁと思ったけど、後半になるにつれ引き込まれた。
風美子のことを不気味に感じたり、百々子のことを憎たらしく感じたりしながら読んだ。左織はただ普通に幸せになりたかっただけなんだと思うけどなぁ。自分の思う、“普通”に。
戦時中〜平成の話で、実際本当にこんな人生を送った人がいそうだなぁと思った。
やっぱり、自分の人生を決めるのは自分なんだよなぁ。私も自分の意思で選択して生きていきたい。

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2021年12月11日

Posted by ブクログ

「疎開」と、一言で片付けられない闇が主人公の人生に重くのしかかる?
時代の流れに対応しきれないジレンマにも陥り、ようやく悟った時は、家族を失い、ほぼひとりぼっちに。でも、悪かと思われたふーちゃんこそ、真の家族と言えたのでは。

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2021年07月18日

Posted by ブクログ

想像してたのとは違い重い内容。
ふたりの女の人の人生の対比。何か幸せなのかどうかは、その人自身が感じることだとつくづく思う。
そして、他人と自分を比べて生きることがどれだけ虚無感だらけか感じる本だった。

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2021年02月07日

Posted by ブクログ

 自分の人生を自分で切り拓くことが今よりもずっと難しい時代を生きた、両極端な性格の二人の女性の物語。
 左織は、良く言えば時代に忠実に、悪く言えば長いものにただひたすらに巻かれて生きてきた。お見合い、結婚、出産、専業主婦へ転身・・・というまさにその時代の女性を絵に描いたような人生を歩んできた。
 風美子は、負けん気が強くて活動的な。女性の社会的活躍がまだ困難だった時代に、家庭料理研究科として名を馳せ、一躍有名人となる。
 戦時中、小学生だった二人は同じ疎開先で暮らした。二十代で再会し、左織の夫・温彦の弟と風美子が結婚したことで義姉妹になり、六十代まで家族のように過ごした。

 左織の生き方や考え方は、なかなか理解に苦しんだ。自意識過剰で周囲の目が気になりすぎるあまり、物事の本質を直視できない。他人任せで自分で決めない割に、後になって愚痴を言う。娘・百々子の怒りに触れても呆然とするばかりで、自分の態度を省みようとはしない。あの子も母親になったらわかってくれるかしら、などと呟くことしかできない。
 そんな左織の視点から語られているからかな、読み終わったあとどっと疲れた。風美子、百々子、柊平はとても現代的なキャラクターとして描かれていて、父親の温彦も努力して折り合いをつけようとしている中、ひとり取り残されてなお自分の生き方がに固執し続けるその無邪気な頑なさは、いったいなんなんだ?と。
 一方で、あまりにも感情移入できないキャラクターとしての左織が中心の物語だからこそ、目から鱗を飛び散らしながら、ある意味で最後まで興味を失うことなく読めた、というのもあるかもしれない。あぁ、この時代の女性の多くはこんな考え方だったんだ、現代だったらこんな苦労はないだろうけど、でも今より楽なところもあるな、とか、特に中盤以降はもはや異文化交流みたいな感覚で読んでいた気がする。

 「ミッドライフクライシス」という言葉を知ったの、たしか高校生のとき。意味を知って、なにそれ怖っ、と咄嗟に戦慄したのを覚えている。それ以来、人生の後半に差し掛かったときに「自分の人生ってなんだったんだろう」とぼんやり感じてしまうことのないよう、なかなかの注意を払って生きてきたように思う。
 こういう小説を読むと、その気持ちがより強くなる。より強くなった結果、夫に「君は性格きっついからね」なんて言われるのだけど、でもだとしても左織みたいな人生は個人的にまっぴらごめんだなぁと思う。自分の人生なのにいつも他人事みたいに醒めていて、俯瞰で遠くから自分自身を眺めているようなスタンス。物語のかなり終盤になって、東日本大震災が起き、些細な諍いで一年近く疎遠になってしまった風美子の安否を確かめずにはいられず電話するシーンがある。左織の生きた感情はここでやっと少し垣間見られたけれど、そこまではほとんど無。他人に共感する力が乏しいんだろうなぁ。

 「自分の人生を切り拓く」なんて言うと大袈裟だけど、自分で決められることはなるべく自分で決めて、責任感を持って生きていきたいなぁと思うのでした。

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2019年12月19日

Posted by ブクログ

読書再開!事情があり、長く読めなかったー。
大好きな角田光代さんから。

角田さんの明るいテンポのものと違い、暗い人間の内面が満載だった。久しぶりの読書にしては、重かったな。女性として、共感するところもあり、余計に暗くなる。苦笑

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2019年12月11日

Posted by ブクログ

長いので半ば淡々とつまらなく感じたところもあったけど、この世代の昭和に生きた多くの主婦は、嫉妬・羨望・敗北感が他人や自分の子供に対しても強く、自意識過剰で他人からみっともないと思われることを怖がり、かといってコレがしたいという強い意思もなく何でも人のせい。フミコみたいに強くない普通の女性はそうならざるを得ない時代だったのかもね。

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2019年06月24日

Posted by ブクログ

冴えない主婦の、ささやかな幸せさえも常に横取りされるのではないかと懐疑する心。そして実際に指の間から抜け落ちるように、その僅かな幸せの要素一個一個が去っていく様。それは疎開という異様な原体験のせいなのか。忘れられないいじめが発端なのか。風美子という強い女性の存在感のせいなのか。

私には、この本の根底には、疎開先だろうが戦後だろうが、時代を超えて存在する「女子」特有の心情の駆け引きが全編を通して蔦のように絡まっており、主人公がその蔦に絡まって身動きとれなくなっていくようで、読んでいて疲れ果てた。一度読み出した本を放棄したくないから読み続けたが、もうこれ以上読みたくない、あと何ページで終わってくれるのと終始思わせる本だった。女子の心情といえば「細雪」もそうだが、谷崎目線で美化された女子の心の機微とは打って変わって、女性作家の描く女性のしつこさの何と疲れることか。同じ女子を経験したからこその、この疲れ、この嫌な感じ。

この人の魂胆は…実は陰では…と思っては打ち消しする沙織。人を疑う自分を嫌だと思いながら、うまくいかない原因を探りたい。それに対して夫温彦の無関心さは、いわゆる「男性的」、本気で気にしていない態度そのもの。家庭がうまくいかないのはこういう無害に見えて自分中心の男のせいもあるのではないかと、彼の煮え切らない傍観ぶりに腹がたつが、逆に男性がこの本を読んだら「ハテナ」の連続だろうなあ。

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2019年02月10日

Posted by ブクログ

これは全然はまらなかった。なんなんだろうかと思いながら読み続けてたら終わったというところか。不完全燃焼感。

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2017年12月07日

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