【感想・ネタバレ】ありふれた祈りのレビュー

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Posted by ブクログ

読書備忘録696号。
★★★★★。

翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。
アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。
ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックリベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑
すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。

そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステリでもある。
その年の夏、死の連鎖は知り合いの少年ボビー・コールがミネソタ・リバーに掛かるユニオンパシフィック鉄道の構脚橋で列車に轢かれるところから始まる。
そして、その事故死は、見知らぬ旅人の自然死を経て、最愛の姉アリエルの殺人事件に繋がり、連鎖して自殺と広がっていく。

物語は、主人公のフランクが当時の1961年夏を40年後の視点から回想する語り形式で進む。
まだ第二次世界大戦の傷跡が人々の心に残っている時代。戦争から戻り牧師となった父、牧師となったことに不満を持つ母、吃音が激しく人前では一切喋らないが聡明な弟ジェイク、そして音楽の才能がありジュリアード音楽院に進学予定だった最愛の姉アリエル。
教会で、父の手足となり働く戦友のガス、巡査のドイル、母の昔の恋人エミールとその家族たち。
ニューブレーメンという小さな町に暮らす人々がフランクの目を通して、生き生きと、日々懸命に生きる。

そして物語の大きな柱は中盤に突如訪れる。最愛の姉アリエルが家に帰らない。懸命に捜索する家族。そしてフランクはミネソタリバーに浮かぶアリエルの発見者となる。事故なのか事件なのか。悲嘆に暮れる家族の元に、検死の結果として殺されたことが伝えられる。
誰が何の目的でアリエルを殺したのか。町のごろつきや差別に苦しむインディアンに容疑者として浮かび上がる。しかし、フランクがたどり着いた真相は驚くべきものであった・・・。
少年であるが故、行動の不自由さ、それを巧みに潜り抜けて真相に近づいていくストーリーは、間違いなく珠玉のミステリー小説である。

牧歌的な風景の中で起きた死の連鎖、そして少年が必死で背伸びして青年になっていく通過儀礼的残酷なひと夏の物語には引き込まれました。

この作者の作品「このやさしき台地」も読む予定。そのうちに。舞台は当然ミネソタでしょう。笑

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2022年11月18日

Posted by ブクログ

少年の日の、ひと夏の事件を回顧する内容。
初めて読んだ作家さんですが、切なく、確かな描写で、とてもよかったですよ。

ミネソタ州の田舎町、1961年。
13歳のフランクはやんちゃ盛りで、街中をすばしこく飛び回っていました。
穏やかで博識な父親は牧師。
母は、良家の出で、芸術家肌。
二つ下の弟ジェイクは賢いが、緊張すると吃音になるため、からかわれることもあります。
姉のアリエルは美しく、音楽の才能に恵まれていて、弟達にも優しい。
一家の希望の星だった姉が行方不明となり、フランクの住む世界はとつぜん悲痛な色を帯び始めます‥

豊かな自然に恵まれた町ですが、上流階級と庶民の住む区画は分かれています。
人種差別もあり、普通の人々の中に、いろいろ癖の強い人間もいる。
互いに許しあってほど良い加減で暮らしていた、ゆったりした描写が、しだいにテンポを速めていきます。
複雑な出来事をただ目を見張って受け入れるうちに、男の子達は大人の世界に一歩、足を踏み入れていく‥

卑小な人間のどうしようもなさ、悪気はなくとも個性がぶつかり合い、弱点がすれ違う哀しさ、苛立ち、切なさ。
タイトルになっているシーンは感動的です。
よく描ききってくれたな、と胸をうたれました。
エドガー賞はじめ全米の主要なミステリの最優秀長編賞を独占した作品です☆

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2016年02月11日

Posted by ブクログ

犯罪を通して、宗教、人生観の違い、家族愛を描いたって感じ。一人一人の役割が重い。「解錠師」を思い出す。

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2015年12月29日

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ネタバレ

この作者の作品は以前読んだがさほど好みではなかったが…。
この作品は少年が遭遇したひと夏の出来事が抒情的に、そしてすごく視覚的に描かれている。
サスペンスという括りにするとさほどの事件も起きないし、犯人(真相)もあっさりと分かるのでは?
でもこの作品は殺人事件を核にしながら、61年夏のアメリカの田舎町の生活や人間関係を少年の視線を通して濃密に描きこんで、文芸作品に近い。
この時代を過ごした人々から見るとたまらなく懐かしく切ない物語であろう。
またこの時代を共有しない我々でも、トマス・H・クック、ジョン・ハードの小説や、「スタンド・バイ・ミー」「グリーンマイル」のような映画、ホッパーの絵画に描きこまれたアメリカの古き良き日常の生活が見事に再現され、懐かしさを感じる。
運命の糸のように絡んだ人々の人生と、兄弟の少年時代の終わりと卒業が切なく描きこまれて傑作となった。

こんな文章が書ける作者だったとは!改めて他の作品を読んでみようと思う。訳も丁寧だしおそらく原作にあるリズムが大切にしてあってとても気持ち良く読めた。

・・・エピローグは心に沁みる。

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2015年08月09日

Posted by ブクログ

なかなかやるなあ、この人。

"少年時代""大人になって振り返る"という点で、思わず「スタンド・バイ・ミー」を連想させられる。
そして終わりには静かな余韻が用意されている。

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2015年04月11日

Posted by ブクログ

手にした段階から、自分好みの物語だとの予感がしました。アメリカ中北部ミネソタ、主人公が少年。大草原の小さな家? スタンドバイミー? ジェイムズディーンが出できそうな雰囲気、、、前半、なかなか舞台説明、人物紹介が長くてじらされますが(^^*)、待つだけ後半楽しめました。それだけ奥行きあり!

性格の違う兄弟、どちらもいいです。
庶民の生活、人生感にも見える神との距離。
心の平和なることを祈る、与えられた境遇から、人それぞれ、か、、、

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2015年03月23日

Posted by ブクログ

ミネソタ州の小さな町に暮らす牧師一家を襲った悲劇、渦中におかれた13歳の少年の視点で事件の顛末が語られていく。1961年という時代設定もあってか、時間がゆっくり流れるような前半の語り口が味わい深い。感情の起伏を制御し家族や友人を慈しむ牧師である父親の言動と思春期の入り口で家族に降りかかる災厄に胸を痛める兄弟の姿が琴線に触れる。翻訳ミステリを丹念に読むという久しくなかった行為を楽しめる秀作。

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2015年02月14日

Posted by ブクログ

 アメリカには少年の冒険小説がよく似合う。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンに始まった少年が冒険する物語は、少年向けの小説であったとして、スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』やロバート・マッキャモンの『少年時代』などなぜかホラー作家の正統派少年小説として、かつて少年であった大人たちに読まれ、評価された名作として知られている。

 時を経て、リーガル・サスペンスの巨匠、兼売れっ子作家であるジョン・グリシャムですら、『ペインテッド・ハウス』というジャンル外の傑作をものにしている。そららの流れはミステリの世界にも受け継がれ、ジョー・R・ランズデールの『ボトムズ』や『ダークライン』などは少年冒険小説でありながら、一方でミステリの形を損なわないばかりかむしろミステリとして評価されている部分が注目される。

 同時に少年の冒険の舞台としてしばしば取り上げられたのが、アメリカ南部である。南北戦争の影、黒人差別の文化、そしていっぱいの手つかずの自然。少年の眼という純粋な感受性のフィルターを通して、驚きと発見に満ち満ちた世界で、様々な大人たちの生と死を見つめながら、人間生活の矛盾に満ちた世界の仕組みを理解してゆくには適した土地風土であったに違いない。

 だからこそ南部出身の作家はジャンル外であろうと少年時代の物語を書いてみないではいられないのかもしれない。

 さて、その少年冒険小説の系譜に、また一作の金字塔が登場した。本書は、ミネソタ・リバー沿いに広がる田舎町を舞台にしたの郷愁と抒情に満ちたミステリーである。作者はコーク・オコナー
・シリーズで知られる作家だが、シリーズ外作品を書いたことで、なんとこれがアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)を受賞、さらにバリー賞・マカヴィティ賞・アンソニー賞と続けざまに受賞し四冠に輝くことになる。

 なんと言ってもこの作品の魅力は、1961年に生きる12歳の少年を主人公にした作品世界がとても魅力ある登場人物たちと時代背景によって構築されていることだろう。2歳年下の純粋な正義感に溢れた吃音の弟、音楽の才能に恵まれた年頃の美しい姉、大戦の傷を引きずる教会神父の父に、その父の戦友で放浪者のガス。『大草原の小さな家』と同じミネソタを舞台に、自然いっぱいのミズーリ川流域で、川にかかる鉄道線路を渡る二人の兄弟の姿があまりにもみずみずしい。

 それでいながら、これはしっかりとミステリである。死と向かい合い、やがて少しずつ成長をとげてゆく少年たちの物語でありながら、死の絶望的なほどの悲しさと、生き残った者が心に負う痛みは、抉られるようだ。それでも少年たちの生命力は泉のように途方もなく、彼らは真相に迫ってゆく。小さな名探偵たちが辿る冒険の道は、このひと夏にこめられている。

 いくつもの死と別れ、真相の残酷さ、癒しと成長をこめたこの素晴らしき世界にこそ、少年たちの夏があった。一ページ一ページに作家の品格が滲み出ていて、少年のどきどきするような好奇心に連れられ読者はこの本から眼が離せなくなるだろう。ぼくにとっても『ボトムズ』以来の傑作登場が嬉しい。アメリカならではの少年時代の郷愁小説である。この種の作品は希少ゆえにとても価値があり、なおかつ誰の心にもあるノルタルジーに共鳴するせいか、いつまでも心に残る。そんな作品に餓えている読者にお勧めの一冊である。

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2015年01月22日

Posted by ブクログ

1961年、ミネソタに住む13歳のフランクと弟ジェイクとその家族の物語。
その街に住むひとりの少年の死から物語は始まるものの、ミステリーというより、
少年の成長や人間ドラマにポイントが置かれていて、じっくりとその世界を楽しめた。

やんちゃでちょっと短絡的、だけど兄弟思いの兄と、
吃音というハンデをかかえつつ、慎重で思慮深い弟の対比が良かった。
最初は冒険を嫌い、前に出ない弟にヤキモキハラハラし、中盤からは「お兄ちゃんもいいとこあるやん!」と兄の印象も変化し、二人のことが大好きになった。
ラスト付近で起こる奇跡にも胸が熱くなった。

牧師であるこの兄弟の父親にも好感が持てた。
信仰心を持たない自分にも、彼が場面場面で放つ言葉にうなづいたり、考えさせられた。
怒りを抑えることや冷静に行動するためのヒントをもらえた。

登場する他の大人たち、特に牧師と兄弟を精神的に支える男と
犯人の嫌疑をかけられるインデアンの男も良かった。

※フォローしている方の読書記録は
次に読んでみたいと思う本の参考になり、たいへんありがたく思ってます。

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2023年07月22日

Posted by ブクログ

悲しい物語

でもミネソタ州の田舎町の風景と人々の情感がたっぷりで、荘厳な家族愛の映画を見終わったような、満足感と脱力感を感じる物語。

1961年夏
牧師の父と美しい母と姉に囲まれ、吃音障害を持つ弟と13歳の主人公フランクが経験した特別なこの夏の出来事。

自身の心の底に住み着いた戦争の後遺症ゆえに、ひたすら“神”の道を進む父の言葉は、困難にあった町の人びとの心にいつも寄り添っていた。
自分の家族に起こった困難のとき、母はそんな夫に「せめて今日だけは“ありふれた祈り”にして……」とつぶやく。

キリスト教の赦しや救済について、疑い迷い罵るという感情が普通にあること、それでいて、それらをすべて俯瞰するように包み込み潜んでいる“神”の存在。

信仰心ですべてを解決していたら、この本は「つまらない祈り」になっていただろう。

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2022年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いくつもの死に向き合う中で成長する兄弟。
とりわけひとつは最愛の姉の死。

姉の死にまつわるフーダニットの目くらましも悪くない。
また、そういったミステリ性をおいておいても、周囲の人々との繋がり、母の心身崩壊と再生を通じて過ぎて行く少年時代の特別時間の描き方がとても良いと感じた。

時間の軸を進め、関係者達のそれぞれの死でこの物語を締めくくっていくところもふさわしいクロージングだった。

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2019年08月20日

Posted by ブクログ

★3.5

少年達のひと夏の思い出は、キングの『スタンド・バイ・ミー』や『IT』を彷彿とさせ、取り返しのつかない過ちを回顧する語りは、クックの『記憶』シリーズを思い起こさせる。ただクック作品とは違い、ミステリやサスペンス色はかなり薄く、事件は起きても爽やかさ(と言うには死が身近すぎるが)が前面に出ている印象だ。

主人公兄弟の忘れ得ぬ夏は一人の少年の事故死から始まり、あまりにも痛ましい悲劇を経て否応なく子供達を大人へと成長させる。子供らしい好奇心がひとつの悲劇を生むきっかけを作ってしまうくだりは読んでいて痛ましいが、この後に迎える家族の再生と奇跡はその悲劇ゆえに心に響くものがある。

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2017年09月17日

Posted by ブクログ

ドイツ系住民の多い、ミネソタの田舎町の殺人。

牧師の父とその家族が経験する夏。
引き込まされる。

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2017年02月04日

Posted by ブクログ

他の方のご指摘の様に、スティーブン・キングの
「スタンド・バイ・ミー」っぽい事は否めないかも。
ですが、逆を云えばああいうテイストが好きならば
十二分に楽しめる事間違いなしです。

何より、行間から匂い立つような夏の強い日差し、
カラカラに乾いた砂や土、ひんやりとした石切り場、
咽るような草の香りに、汗。
著者の表現力の素晴らしい事!
死や悲しみ(差別的な事も多々)を根底に置きながら、
美しくまとめ上げ、そしてこのさわやかな読後感よ。
おお、神よ(笑)

あと、地味に食べ物の描写が好きでした。
ガスがドラム家の台所で作るポテトとチーズの料理が
美味しそうです食べたいです。

解説を読んで知ったのですが、意外にも
ニューブレーメンが架空の街とは…
これだけ風景描写が手に取る様に書かれているのに!

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2016年12月30日

Posted by ブクログ

いろいろな事を考えさせられる深い本だった。ミステリーというよりも「祈り」と「赦し」の本。背景描写も登場人物の心理描写も 素晴らしく静かに落ち着いて心に訴えかけるのは 翻訳も良かったからだろう。ただ自然信仰と神道と仏教を足して割ったような考え方を持ってる私には どうしてもキリスト教の教えを骨にして書かれているこの本の作者が伝えたかったであろう事は 心の底からは やはり理解できない部分が残る。それでも 読んで良かったと思える 深い本だった。

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2016年08月28日

Posted by ブクログ

トマス.クックが好きなひとははまる。確かに、ミステリー色は薄いが、アメリカの片田舎の都市のよき文化と悪しき文化が匂いたつ。なぜか、行ったこともないのに、懐かしい気がするのはどうしてなんだろう。

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2016年06月21日

Posted by ブクログ

ボビー少年と旅の人の死、この二つの死の真相については結局語られなかったな。正し過ぎる人は周囲の親しい人達を追い詰めてしまう可能性があるのかも。

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2016年03月03日

Posted by ブクログ

コーク・オコナーのシリーズは未読のまま。ウィリアム・ケント・クルーガーの作品を初めて読む。

あの夏のすべての死は、ひとりの子供の死ではじまった――。1961年、ミネソタ州の田舎町で穏やかな牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉、聡明な弟とともに暮らす13歳の少年フランク。だが、ごく平凡だった日々は、思いがけない悲劇によって一転する。家族それぞれが打ちのめされもがくうちに、フランクはそれまで知らずにいた秘密や後悔に満ちた大人の世界を垣間見るが……。少年の人生を変えた忘れがたいひと夏を描く、切なさと苦さに満ちた傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作!

教会付属の幼稚園に通っていたので、食前のお祈りを必ずしていたことを思い出した。一貫して静かな、心に残る物語。ミステリとしては珍しい読後感であった。

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2016年02月02日

Posted by ブクログ

ミステリーというより,家族の物語としての重みが先に来て,読み応えたっぷりの満足感がある.現在の私が40年前を振り返って書くという形式で,13歳の少年にすぎない私の考察も重厚になって,一夏の経験というにはあまりにも次々起こる出来事に崩壊していく家族と踏みとどまる人の強さがぎっしり詰まっている.ニューブレーメンという街の様子もそこにあるかのようで,川や草原や吹きゆく風など匂いなども確かに感じられた.吃音の弟ジェイクに訪れた奇跡に感動した.

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2016年01月25日

Posted by ブクログ

アメリカの家族もの、とりわけ父子ものはちょっと苦手だけれど、これはおもしろく読めた。主人公の少年、父母、姉と弟、周囲の人々、それぞれの造型にリアリティがあって、しみじみ胸に迫る物語になっていると思う。

ミステリとしての「真相」は、そういうのに鈍い私でも途中で見当がついたし、すごく派手な展開があるわけでもない。同じようなのをどこかで読んだような気もする。それでも最後までぐいぐい読まされた。あざとさのない語りがいい。欠点のない人などいないし、苦しみのない人生もないけれど、人は生きていくのだ。そんなことを思った。

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2015年08月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何故かはわからないがちょっと取っつきにくくて読み進むのに時間がかかった本だった。タイトルの意味が分かったあたりから盛り上った感じでしたが。主人公が男の子だったせいですかね?感情移入がイマイチ出来なかったような……

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2016年01月30日

Posted by ブクログ

始まりが1人の少年の死からなので、『トーマの心臓』を思い出す。
少年の死は直接メインテーマではないけれど、この話の始まりとしてはすごく大事。
子供のままではいられない、というさしせまってくる話。
真実は残酷なものだったが、知りたいと思ってしまった以上、突き進まないわけにはいられないという心理は理解できる。

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2015年05月27日

Posted by ブクログ

「天にましますわれらが父よ、この食べ物と、これらの友と、わたしたちの家族への恵みにたいし、感謝します。イエスの御名において、アーメン」それだけだった。それで全部だった。実にありふれた祈りで、記憶にとどめるほどの理由もないくらいだった。だが、あれから四十年、その祈りを私は一字一句おぼえている。「ありがとう、ジェイク」母が言い、わたしは母の顔つきに変化が生じているのに気付いた。父は魅入られたような、ほとんど幸せともいえそうな顔をしていた。「ありがとう、息子よ」そしてわたしは、畏敬の念に近いものを持って弟を見、心の中で思った。神よ、感謝します。

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2015年04月19日

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