【感想・ネタバレ】世界はシステムで動く ― いま起きていることの本質をつかむ考え方のレビュー

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世界を理解するためのバイブルと言っていい。
その意味で、J.E.ラブロック のガイア論と
並んで、私のおススメ図書の5本の指に入る。

ガイア論は地球の恒常性を示したもので、
提示的、啓発的だが、
本書は自然に加え、社会やその設計を志向する点で
より工学的、実践的。


世界は、単純な要素が繋がって
複雑な挙動を示す。

システム思考家は、世界を
フローの操作によってその水準を調整するメカニズムが付いているストックの集合体
と見ている。

そうですね!私もシステム思考家に
なっていきますとも、ええ。

これまで私が無意識、経験的に見つけて会社や家庭で作ってきたいくつかのうまくいく仕組み、
つまり、持続可能でシステムを自律的に改善、維持する仕組みと、その維持方法が、
この本で体系的に整理されている。


著者のドネラ・メドウズの、人類がよりよい未来を築くためのポイント
・ビジョンを描く
・仲間をつくる
・真実を語る
・学習する
・慈しむ
これも自分のモットーに加えよう。

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2019年10月13日

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"目の前で起こっている事象を出来事としてとらえてはいけない。
その事象は、何かとつながりがあり、その何かが起こした事象に影響されたもの。
だとすれば、その全体像を俯瞰して見つめて、上流から河口に流れる川の水のように流れをつかむような考え方がシステム思考。
もう一度読み、理解を深めたい。"

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2018年11月14日

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「システム屋」と呼ばれる方々がいらっしゃることがわかりました。
世の中で起きている出来事をシステム化してみると、科学的なこと、ITでおきていること、政治行政でおきていること、家庭の問題、など、実は統一したシステムで起きていることがわかった。

「お風呂の栓をしないまま水をためていってもたまらない」という単純なシステムで動いているシステムがいかに多いことか!

「このことに気がついて、万能感をもったシステム屋さんが調子に乗って行政に提言してもうまくいかない」
というのもひとつのシステムだそうで、それも面白かった。

ときどき難解に、そしてまたときどき具体的になりながら、私たちの注意を引きつける文章。この世の中の秘密がまたひとつ、解き明かされたような気がしました。

著者のドネラさんは夭逝されたとのことですが、ひとつの大きなシステムを人間は失ったことへの損失は計り知れませんね。

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2018年05月18日

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近頃、本を読むスピードが落ちたな〜、と思っていたけど、これは3日間で読んでしまった。
単に、最近、それほど面白い本に出会っていなかったということだね。

これは、本当に面白い、エキサイティングな本です。

システム思考については、ある程度、知っているつもりだったけど、なるほど〜、な話しが満載です。目から鱗が落ちまくります。全く新しいことが書いてある訳ではないのだけど、これまで知っているつもりだったこと、単独では分かったつもりだったことが、つながるわけ。まさに、個別要素の合計ではなくて、知識同士のつながりが新たな知識として、立ち上がってくる感じ。

ちょっと、またシステム思考、がんばってマスターするぞ〜、な気持ちになりました。

ちなみに、これは、入門書としては、やや難しいのではないかと思います。システム思考関係の本は、入門書か、スターマンとか、モデリングとか、どっちかというと中〜上級向けの本しかなかった印象なので、その間を埋める中級の本かな?と思います。

多分、「なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか」を読んでからにしたほうが、いいかな?あと、複雑系とか、限定合理性みたいなのに関連する本もパラッと読んだ方が分かりやすいかもしれない。

クドいけど、この本の価値は、分かりやすい中級レベルの本ということには留まらない。いろいろな刺激的な視点をくれる本です。

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2017年04月30日

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大変な名著ですので、ぜひ多くの人に読んで頂きたいと思います。

多くの人が「読みづらい」と言っていて、「あ、そういうものなのか」と思いました。

ぼくが「システムのモデリング」や「ダイナミクスの分析」というアイデアをすんなり理解できたのは、もともとシステム制御工学を専攻していたり、バージニア・アンダーソンの『システム・シンキング―問題解決と意思決定を図解で行う論理的思考技術』を若い頃に読んだりしていたからなのかもしれません。

ぼくはそのような知識に早くから触れるという「幸運」に恵まれていました。しかし、多くの人は、そうではないんですね。

たしかに、学校教育のカリキュラムを考えてみれば、「システム的な思考法」に関連した教育内容は、ほとんど無いかもしれません。

この「システム思考」というものが、多くの人にとって馴染みがないだけでなく、容易に理解できないものであるということを、あらためて認識しなければならないと思いました。

その認識から出発することで、よりよい実践や、よりよい教育につなげていくことができるだろうと。

いずれにせよ、この本を多くの人に読んでもらいたいと思いました。

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お気に入りの逸話:カーター元大統領はメキシコからの不法移民に対処すべく、「米国とメキシコとの間の、機会と生活水準のギャップが埋まらない限り移民は止まらない」「国境警備や防壁より、メキシコ経済の構築のためにカネを使うべき」と主張した。しかし実現しなかった。

本書の難点:索引がないこと。

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2016年12月03日

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システムとして仕事、世界、日常をとらえる考え方が私には新鮮であり、考え方をまとめるのに非常に参考になり、モデル部分を中心に、まとめるために積読する

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2016年11月19日

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世界はシステムでつながっていることを筆者の目線で論じている本だが、意見に偏りがないため、理解しやすく腹に落ちやすい。訳が読みやすいのもその理由かと思う。

以下、覚えておきたい二文。
・目的とは、美辞麗句や掲げられた目標からではなく、行動から推測されるものです。
・システム思考が私に教えてくれたのは、自分の直感を信じること、理解するための自分の合理性を信じるのは控えめにすること、できるだけその両方に頼ること、しかしそれでもなお、びっくりさせられることに備えることでした。

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2023年08月04日

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長いこと積読してた本。積読してる間に他の本でシステム思考については読んできたけどやはりこの本は外せないかなと。訳文も非常に読みやすいしシステム思考について最初に学ぶならやはりこの本が良い。物事を眺める視座を一段高めて考える方法として一度は学んでおきたい。

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2023年06月07日

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ネタバレ

システムを理解する。これは政治家、行政の職員、経営者だけでなくあらゆる人が理解するべきだ。
国や地方自治体では何もしない。もしくは何か新しいことをするが思惑が外れて失敗する。これが延々と続けられている。それは何故か。システムへの無理解である。
システムを理解しようとしないから変化を恐れる。何かを変えると思わぬ副作用が出る。それを避けるために何もしない。逆に良いと思って新しいことを始めたがそれが限定合理性であることに気が付かなかった。システム的に考えないとこれらの不合理が生じる。
我々有権者、大衆も愚かである。サービスや商品、税金の値上げは反対などはその象徴である。日本のGDPはすでにジリ貧である。かつての栄光はないのである。新たな目標設定がいる。すなわち人口が減る中でのウェルビーイングの指標設定である。
システムはどうしてもタイムラグががある。それ故、共有地問題等直感に反する結果になる。これを理解することが必要である。
ビジュアル化は世の中を救うと考えている。手がきのライブドローイングを教えているのはこのシステムの厄介さをみんなで理解するため。国民のIQわ不断に上げていく。それが私達のウェルビーイングを上げていくはず。それ故、自らかくし、教えるのだ。

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2023年01月09日

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例えば、「この世界をより良くしたい」と考えた時に、どんな基本思考を生きる人すべてにインストールすれば良いのか?と思えば、名著「7つの習慣」とかは間違いなく入るのだけど、10冊選んで良ければ、この本はその内の1冊に入って良いと思う。

どうしても、短期的な感情で、人に対して良し悪しを評価したり、争ったり、目先の利益を追求したりとなりがちだけど、それらは、システムの中の小さな挙動の1つでしかない。

モノゴトを、長期的、論理的、システム的な捉え方をして、その結果が生まれるだけの理由がどこにあるのか?を建設的に議論ができるようになるには、多くの人がこの概念を持たなければならないなと。

本文中にもあるが、「システムのレバレッジ・ポイントは直感では理解できないことが多い」とあり、この構造は、専門家や天才は正しいことを提言していたとしても、多くの人から理解されなかったり、信じられなかったりすると、実現できなくなり、結局のところ、誰も得しない状態になってしまう。

戦争や貧困、環境問題やエネルギー問題、ワクチン等医療の問題など様々あるけど、解決するためには、全員がシステムを構築できるような天才でなくても良いけど、システムの基礎を理解していて、最低限、ポジティブな意思決定、票を投じるような状態になるのが重要だと思わされる。

シンプルにいえば、

「〇〇さんが悪い」×
「〇〇さんにそうさせた環境を改善しよう」◎

多数の人がこの思考になれば、それで充分。

本の内容について、勉強になるところを抜粋すると、かなりのボリュームになってしまうから、ここではやめておく。

分厚くて難しい本に見えてしまうかもしれないけど、抽象と具体の行き来が多いから、イメージもつきやすく、ざっくり理解できればOKくらいの感じで多くの人に読まれてほしい。

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2021年09月18日

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むずい。ノーフリーランチの定理が示すように万人・万物にとっての最適なシステムは存在しないのかもしれない。
それでも周りに興味・関心を抱くことがこの世界にとってより良いシステムを構築していくために必要なのかなと思います。

以下、印象的なシーン
1. 工場を取り壊しても、工場を作り出した理屈がそのまま残っているなら、その理屈が別の工場を作り出すだけだ...
→『禅とオートバイ修理技術』より引用。ここでこの本の一節が出てくるとは、、、読んだことあったので感激

2. 再生不可能な資源に頼って資本ストックを構築しているときは、大きく速く成長すればするほど、下落も大きくなる。
→ 資源には限りがあること、そしてそれらを喰らい尽くす人間のスピードはとてつもなく速くて大きい。人間のスピードに追従できるシステムを果たして考えることはできるのだろうか、、、(何もしないは除いて)

3. ジャストインタイムは燃料供給の変動や交通流量、コンプュータの故障や労働力の供給状況、そのほかにも可能性のある突然の問題などに対する生産システムの脆弱性を高めてきた。
→ 突然の問題に対応できるのは今のところ人間だけだろうな。これが機械でも対応できるようになればまさにAI革命だわ。

4. 平均的な人間の肺の表面積がテニスコートを覆うほどであるのは、フラクタル幾何学のため。
→ コッホ曲線て確か長さは発散するけど面積は収束するんだったような、、、

5. サブシステムの目的が支配的で、システム全体の目的を犠牲にしているとき、その結果としての行動は部分最適化と呼ばれる。
→ ここで言うシステム全体の目的がいわゆる「本質」なんだろう。

6. 私たちはシステムの作り出す出来事に心を奪われすぎており、これまでの経緯にはほとんど注意を払いません。そして、これまでの経緯の中に、挙動や出来事を生み出している構造についての手がかりを探すことが下手なのです。
→ なぜそうなっているのか(そうなったのか)を考えるのってめんどくさいもんね、、、実験なんかは考察が大事だけどめんどくさかったなぁ。

7. エコロジカル・フットプリント
→ 別の本で出てきたキーワードのだったのでメモ。
簡単に言うと人間が地球に与えている負荷の度合い

8. 境界とは、私たち自身が作っているものであり、新たな議題や問題、目的ごとに、考え直すことができるし、考え直すべきであると覚えておくことは重要な技能。
→ これは人間関係にも当てはまりそうだな。

9. 限定合理性:人は自分の持っている情報に基づいて極めて合理的な意思決定を行う。
→ もはや恣意的では?

10. 持つものには与えられる、成功者はさらに成功する
→ 大富豪のルールでも最下位から一位は次のゲームで強いカードをもらえるっていうのがあってそれを思い出した。一度全てをリセットすることがこのシステムからの逃げ道と書いていたけど現実は残酷。
唯一可能性があるとしたらどんな方法でもいいから学をつけることなのかな。持つものが持たざるものと助け合える優しい世界であれ。

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2020年12月27日

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2020.37

・自己強化とバランスの二つのループ。遅れの存在。
・レジリエンス、自己組織化、ヒエラルキーがシステムを機能させる上では大切。
・実行プロセスが存在する。

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2020年07月09日

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課題が顕在化したときに、それは何が原因なのか、その課題は今後どのような影響を与えるのかについて構造的に分析し、どこにどのように手を入れるのが有効なのかを広く長い視野で捉える重要性が書かれていた。

「思いやりの境界線を拡大する」という表現がしっくりきた。

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2020年04月05日

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システム思考はこれからのリーダーに必須のスキルだと強く感じた。目の前の課題に対して対症療法をいくら行っても構造自体にアプローチしなければ根本解決にならない。

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2020年02月29日

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課題解決のための視野を広げるために役に立ちそう。もっと関連書籍を読んで理解を深めたい。地球温暖化とか、貧富の差とか、解決すべき課題の捉え方が分かる。

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2019年12月16日

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ネタバレ

システムとはどのようなインプットに対してどのようなアウトプットを出すのか。
システムは複雑化してが、インとアウトをしっかり構造化すれば、そのシステムの効果が理解できる。やはりここでも構造化が重要である。

実際の経済の長期モデルは全て人口と資本の二つの構造をつなげ、それらが互いにどのように影響を与え合うかを占める必要がある。

複雑なシステムの挙動のあらゆる可能性と同じく、ここでのアートは「どの構造が、どのような潜在的な挙動を含んでいるか」、そして「どの条件が、それらの挙動を顕在化させるか」を認識すること。そして、可能であれば、構造と条件を調整することによって、破壊的な挙動が生じる確率を減らし、有益な挙動が生じる可能性を高めること。

システムが機能する要因:
レジリエンス
自己組織化
ヒエラルキー

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2019年10月13日

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様々な均衡から成り立つシステムとその捉え方、事例、落とし穴とその対策がきさいされており、参考になる。
システムというなのもと汎用的な概念がうまく抽象化されており、良著

レバレッジポイントという発想。小さな変化が挙動の大きなシフトをもたらす場所をいかに見つけ、介入すべきか。アンディグローブのハイアウトプットマネジメント にも同種の記載があり、改めての認識となった。

付録にシステム思考に関する考え方、定義がまとめられてるのも非常によかった。

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2019年09月24日

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システム・ダイナミクス学派に属する米学者によるシステム思考の解説書。政治、経済などの社会現象や政策について、システム的にはどのように考えるべきかをわかりやすく説明している。参考になる考え方だと思った。
「「成功者はさらに成功する」は、生態学の分野ではよく知られた概念であり、「競争的排除の原則」と呼ばれている」p208
「「成功者はさらに成功する」原型から抜け出すための最も明確な方法は、定期的に「条件を変更する」ことです」p211
「金持ちがより金持ちに、貧乏人がより貧乏になるというループを断ち切るために、さまざまな仕組みがあります。累進課税、慈善活動、公共福祉、労働組合。平等な国民皆保険と教育。相続税。ほとんどの工業社会には、だれもゲームから降りないように、「成功者はさらに成功する」落とし穴が働かないよう、このような牽制策を組み合わせたものがあります」p212
「昔は年寄りの世話は家族が行っていたものですが、必ずしも容易なことではありませんでした。そこで、社会保障制度、退職者のコミュニティ、老人ホームが登場しました。今では、ほとんどの家族にはもはや、年老いた家族の世話をするスペースも、時間もスキルも、気持ちもありません」p216
「米国の絶滅危惧種保護法は、絶滅危惧種の生育地がある場所での開発を制限するものです。地主の中には、自分の敷地内に絶滅危惧種の住み家があることを発見すると、その土地を開発できるよう、わざとその生き物を狩ったり毒殺したりする人もいました。法律の文言は守られていますが、法律の精神は守られていないのです」p223
「GDPは、達成したものではなく、達成のための取り組みや労力を測り、効率ではなく、総生産・総消費を測ります。同じ明るさを作り出すのに必要な電力は1/8で、寿命は10倍長い新型電球は、GDPを引き下げることになります」p228
「(イノベーションの必要性)体系的に実験をさげすみ、イノベーションの原材料を消し去ってしまうシステムは、この非常に変化しやすい惑星の上では、長期的には消える運命にあります」p260

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2018年10月24日

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「システム思考」の解説書。
ビジネス書的な問題解決を扱ってるはずなのですが、書きぶりからアプローチから、非常にユニークな本、という印象を受けました。「システムとダンスを踊る」って表現は面白いです。

そこまで難しい言葉では書かれていないはずなのですが、どういう訳か読みきるまで時間がかかりました。身につくにも少し時間がかかりそう。

入り口の入門書、キッカケとして良い本ではないかと。

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2016年06月05日

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物事をインプットとアウトプットのフローと、その差が生み出すストックの変化で考えようとするのが、システム思考。

システムには、自分を安定化させる作用や、暴走させる作用をもつものがある。

つながりと、時間軸の変化を追うことが大事

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2023年12月29日

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・物事を別の視点から見る。つまり、あれが間違いだと決めて分析するのではなくこれが間違いかもしれないと疑うことが大切。
・システムのフィードバックループは誰でも理解できる。それを世の中の状況に置き換えて思考できる人こそ一流。
・私達は出来事に目を向けすぎている。さらに、その出来事が起きた理由はある出来事のせいだという出来事−出来事の関係で説明している。しかし、本質はどういう経緯、過程、過去のつながりでその出来事が起こったのかシステムの中身を知ることが重要。
・人々は限定合理性を備えている。自分もそうであり、まず第一に自分の利益を優先する。正直、自分が満足すればそれでいいし他の人のことは考えないほうが楽。しかし、この地球にすんで地球を汚している以上、何かを犠牲にしてでも還元したほうがいい。
・社会の中で全員の利得上昇を達成するのは困難である。だからといって放棄するのではなく、狭い目標は一旦捨てて社会全体の長期的な幸福を優先させることが望ましい場合もある。

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2022年04月19日

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良書だし、表層や部分だけでなく、物事をシステムとして見てみることの重要さ、面白さはよくわかった。ただ失礼ながら少し冗長というか、長すぎるようにも思えた。また、やさしく、わかりやすく書かれているようで、実は難解な書物だと思う。

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2021年05月16日

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システム思考で世界を読み解く。

システムとは、要素、相互のつながり、機能の3つからなる。全てのシステムにとっての重要な機能は、自らが必ず永続できるようにすること。要素を変えてもシステムへの影響は小さい。つながりを変えるとシステムは別のものになる。システムの機能を変えるとシステムは根底から変わる。


ストックがある範囲内で保たれているとき、そこにはコントロールメカニズムがある。フィードバックループが作用している。安定追求型フィードバックと自己強化型フィードバックがある。

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2020年05月18日

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「システム思考」がどのようにして問題を理解して課題発見に役立つかが納得できる解説だった。ならば、使ってみたいと考えることろだが、おそらく活用するには訓練が必要で、この本だけでは練習することはできない。

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2020年02月18日

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ネタバレ

著者のドネラ・メドウズさんは、複雑なことでも、その本質をわかりやすく伝えてくれる人とのこと。社会や生態系などあらゆるものを、相互に複雑につながりあったシステムととらえ、コンピュータモデルで分析するという学問を研究されている。何か1つに影響があると、それは他のところにも影響が及ぶということがわかった。理解が及ばないところもあったので、何度も読んで理解を深めたい。

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2019年12月23日

Posted by ブクログ

システム思考についての解説書。自分はシステム思考については他で読んでいた事もあり、わかりやすい説明ではあったが得るところが少なかったので星3とした。知らない人にはいいかもしれない。

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2019年03月17日

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世界をシステムという概念で捉えようという書。システムうまくいかない場合とそれからの脱出方法が参考になる。基本、自助努力をモチベートする方向が良さそう。

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2018年11月12日

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仕事でお世話になっているシステムベンダーさんのお薦めの書。といっても、いわゆるシステムの話ではなく、もっと広く世の中は総じてシステムで成り立っているという、システム思考の話である。
解説より。
「本書では、システム思考の基本的な原則や、身の周りにあるシステムをどのように捉えればよいかを指南している。
「共通するプロセスは、(1)『何が起こっているか」』をありのままに見つめ(指標)、(2)なぜ起こっているかを説明できるものごとのつながりを見いだし(システムの観察)、(3)レバレッジ・ポイントと呼ばれる効果的な介入ポイントを特定して働きかけを探り(イノベーション)、(4)その実施や移行のための戦略を築いて(戦略)、(5)リソースを動員する人たちの合意を得る(合意)ことである。」
以下、本文より。
「システム思考は、構造(ストック、フロー、フィードバックの図)と挙動(時系列グラフ)の間を、絶えず行ったり来たりします。システム思考家は、スリンキーを話す手(出来事)とその結果としての振動(挙動)と、スリンキーのらせん状のコイルの機械的な特徴(構造)の間のつながりを理解しようとします。」
「『物事にはどれぐらいの時間が必要か』について、私たちは繰り返しびっくりさせられます。ジェイ・フォレスターはよく、こう言っていました。『建設や処理の時間的後れをモデル化するときには、そのシステムの中にいるすべての人にその時間的遅れはどのくらいの長さだと思うかを尋ねて、最も妥当だと思われる数字を考え、それを3倍しなさい』」
「限定合理性とは、『人は自分の持っている情報に基づいてきわめて合理的な意思決定を行う』ということです。」
「直視しましょう。世界はごちゃごちゃだということを。非線形で、乱流のようで、ダイナミックなのです。数学的に美しい等式ではなく、どこか別の場所へ向かう道上でのつかの間の挙動に時間を費やします。自己組織化し、進化します。多様性と画一性を作り出します。それが、世界を興味深いものにし、美しいものにするのです。それがあるから、世界は機能するのです。」


■再生可能な資源システムに起こりうる挙動
・行き過ぎてから、持続可能な平衡状態へと調節する
・その平衡状態を超えて行き過ぎ、その後、平衡点あたりで振動する
・行き過ぎて、その後、資源とその資源に依存している業界が崩壊する

 レジリエンス、自己組織化、ヒエラルキーという3つのものがあるから、ダイナミックなシステムはつねにうまく機能することができます。システムのこういった特性を促進・管理することは、長期的に機能する能力を向上させ、持続可能なものにできます。

■限定合理性
「人は自分の持っている情報に基づいてきわめて合理的な意思決定を行う」

 行動科学者は、「私たちは、自分の持っている不完全な情報を完全に解釈することすらしない」と言います。リスクの認識を誤り、物事について実際よりもずっと危険だと考えたり、実際よりもずっと危険ではないと考えたりします。私たちは”誇張された現在”に生きているのです。最近の経験には過大に注意を払い、それよりも過去の経験にはほとんど注意を払わず、長期的な挙動よりも現在の出来事を重視することになります。経済的にも環境的にも意味をなさないほど、未来を軽視します。入ってくるシグナルのすべてに、ふさわしい重きを置きません。自分の好まないニュースや、自分のメンタル・モデルに合わない情報はどれも受け入れません。つまり、私たちは、システム全体は言うに及ばず、自分個人にとってのよいことを最大化する意思決定すらしないのです。

■オランダの家庭の電力 メーター
 アムステルダムの近くに、一戸建ての家が建ち並ぶ住宅地があります。同じ時期にどれも同じように作られた家です。そう、ほぼ同じように、ということです。理由はわからないが、何軒かの家の電力メーターは地下に設置され、ほかの家の電力メーターは玄関に設置されていたからです。
 その電力メーターは、ガラスの球体の中に小さな金属の輪が水平に置かれたものでした。その家庭が電力を使えば使うほど、その輪の回転が速くなり、目盛盤がこれまでに使ったキロワット時を加算していくのです。
 1970年代初めに石油が輸出禁止となり、エネルギー危機が到来した時、オランダ人は自分たちのエネルギー使用に細かく注意を払うようになりました。そこでわかったのは、この住宅地の何軒かの家の電気消費量は、他の家より3分の1少ないということでした。だれにも説明できませんでした。どの家も電力料金の単価は同じでしたし、どの家にも同じような家族が住んでいたのです。
 結局のところ、違っていたのは電力メーターの設置場所でした。
 電力消費量が多い家族は、メーターが地下に置かれた家に住んでいました。地下ではほとんど目にすることはありません。電力消費量が少ない家庭の家は、メーターが玄関に設置されていました。小さな輪が回って月の電気料金が上がっていくそばを、1日に何度もみんなが通るのでした。

 共有地を搾取する人の動機は理解しがたいと思うのなら、「自分はどのくらい進んで、大気汚染を減らすために、自動車の相乗りをするだろうか?汚したときはいつも自分できれいにしようとするか?」と自問してみてください。共有地のシステムでは、その構造から、コミュニティ全体や将来に対して責任のある行動よりも、利己的な行動のほうが、便利で儲かるものになるのです。
 共有地の悲劇を避けるには、3つの方法があります。
・教育し、勧告する。共有地を制限なく使うことの結果が人々に見えるようにする。みんなのモラルに訴える。控えめにするよう説得する。違反する人には、社会的に非難したり、「地獄に落ちる」と脅したりする。
・共有地を私有化する。共有地を分割し、各自が自分自身の行動の結果を受け取るようにする。自分の私的資源の許容量以下に抑える自制心を欠く人がいた場合、損なうのは当人の分だけであって、他の人には損害は及ばない。
・共有地を規制する。ギャレット・ハーディンはこの選択肢をぶっきらぼうに、「相互の合意による相互強制」と呼んでいます。規制には、ある行動を全面的に禁止することから、割当制、許可制、課税、奨励策まで、多くの形態がありえます。効果を出すためには、取り締まりや罰金で、規制を施行する必要があります。


 パラダイムにしがみつく人々(つまり、私たちのほぼ全員)は、「自分の考えていることはすべて、間違いなく無意味だ」という大きな可能性を一瞥すると、急いでペダルを踏んで反対の方向へ行ってしまいます。たしかに、「行動すること」は言うに及ばず、「存在すること」にも、力も、コントロールも、理解も、理由すらありません。「どんな世界観にも確実なものはない」という概念に具体化されています。しかし、実際には、瞬間的にせよ、生涯にわたってにせよ、この考え方を受け入れることができた人はだれでも、それが根本的な力を与えてくれる土台であることに気がつきます。正しいバラダイムは存在していないのであれば、どれであっても自分の目的を達成する役に立つものを選ぶことができます。どこで目的を得ればよいかわからなければ、宇宙に耳を傾けることができます。
 パラダイムを超越したこの「極み」の領域で、人々は中毒を捨て去り、不変の喜びの中に生き、帝国を打ち倒し、拘留されるか、火あぶりの刑に処されるか、はりつけになるか、撃たれるかし、何千年も続く影響をもたらすのです。


 できるならば、十戒に1番目の掟を付け加えたいと思います。「汝、情報をゆがめたり、遅らせたり、伏せたりするなかれ」。情報の流れを混乱させることで、システムをめちゃくちゃにすることができます。よりタイムリーで正確で完全な情報を与えることができれば、驚くほど簡単をよりよく機能させることができます。


 定量化が難しいなら存在しないことにしよう」ということにすると、誤ったモデルになってしまいます。重要なものではなく、測りやすいものを中心に目標を設定することから陥るシステムの落とし穴については、すでに見てきました。ですから、その落とし穴にはまってはいけません。人は、数える能力だけではなく、質を評価する能力も授かっているのです。質を検知するようにしてください。質の存在・不在を検出して歩く、”うるさいガイガーカウンター”になってください。
 何かが醜悪であれば、そう言いましょう。悪趣味なもの、不適切なもの、釣り合いがとれていないもの、持続不可能なもの、道義に反するもの、環境を劣化させるもの、人間をおとしめるものは、黙って見過ごしてはなりません。「定義し、測定できないなら、注意を払う必要はない」という作戦に足止めをくらってはいけません。だれも、正義、民主主義、安全、自由、真実、愛を定義したり測定したりすることはできません。どんな価値も、定義したり測ったりできる人はいないのです。しかし、それらのために声を上げる人がいなければ、システムがそれらを生み出すよう作られていなければ、私たちがそれらについて話し、そのあるなしを示さなければ、そういったものはなくなってしまうでしょう。
 

 わからないときにすべきことは、虚勢を張ったり凍りついたりするのではなく、学ぶことです。学ぶのは、実験によってです。または、パックミンスター・フラーが言うように、「試行錯誤」どころか「試行錯誤・錯誤・錯誤」によって学ぶのです。複雑なシステムの世界では、逸脱を許さない硬直的な指示を手に進んでいくことは適切ではありません。「進路から外れない」のがよい考えであるのは、自分が正しい方向に進んでいると確信できるときだけです。実際はそうではないのに、自分は掌握しているというふりをすると、過ちを招くだけではなく、過ちから学ぶこともできなくなります。学ぶ際に適切なのは、小さなステップで、つねにモニタリングしながら進み、その先に何があるのかがよりわかるにつれ、進路変更を厭わないことです。
 それは大変なことです。間違えること、そして、より大変なことに、その過ちを認めることな心理学者のダン・マイケルが「誤りの受容」と呼ぶものなのです。自分の誤りを受け入れるには大きな勇気が要ります。



■システムの定義
・システム(System):一連の要素や部分が整然と組織され、相互につながったもので、多くの場合「機能」または「目的」と称される、特徴的な一連の挙動を生み出すパターンや構造を持つ。
・ストック(Stock):時間をかけてシステムに貯まってきた物質や情報の蓄積。
・フロー(Flow):ある時間軸で、ストックに入ってくる、またはストックから出ていく物質や情報。
・ダイナミクス(Dynamics):システムやその部分の経時的な挙動。
・フィードバック・ループ(Feedbackloop):ストックの変化が、その同じストックへのインフローまたはアウトフローに影響を与えることができるメカニズム(ルールや情報の流れ、シグナル)。ストックからの因果のつながりが、そのストックの水準によって決まってくる一連の意思決定や行動を通して、ふたたび、そのストックを変えるフローとして戻ってくる。
・バランス型フィードバック・ループ(Balancingfeedbackloop):安定に向かう、目標追求型の調整フィードバック・ループ。どの方向への変化かにかかわらず、システムに課せられる変化に逆行・反転しようとするため「負のフィードバック・ルーブ」とも呼ばれる。
・自己強化型フィードバック・ループ(Reinforcing feedback loop): 増幅・強化型のフィードバック・ループ。変化の方向性を強化するため、「正のフィードバック・ルーブ」とも呼ばれる。悪循環または好循環。
・支配のシフト(Shifting dominance):競合するフィードバック・ループの相対的な強さが、経時的に変化すること。
・レジリエンス(Resilience):かく乱から回復するシステムの能力。外的な力による変化のあとの、復旧・回復・立ち直る能力。
・自己組織化(Self-organization):新しい構造を作り出し、学び、多様化するよう、自らを構造化するシステムの能力。
・ヒエラルキー(Hierarchy):より大きなシステムを作り出すやり方で組織されているシステム。システムの中にサブシステムがある。
・部分最適化(Suboptimization):システム全体の目標を犠牲に、サブシステムの目標を優先することから生まれる挙動。
・動的な均衡状態(Dynamic equilibrium):インフローとアウトフローにもかかわらず、ストックの状態(その水準や規模)が安定して変わらない状態。インフローの合計がアウトフローの合計と等しい時のみ起こりうる。
・線形の関係(Linear relationship):原因と結果が比例するシステム内のふたつの要素の関係性。グラフ上では直線として描くことができる。その影響は追加的。・非線形の関係(Nonlinear relationship):原因が比例的な(直線的な)結果を生み出さないシステム内のふたつの要素の関係性。
・制約要因(Limiting factor):ある具体的な瞬間に、システムの活動を制限するのに必要なシステムのインプット。
・限定合理性(Bounded rationality 122 頁):システムのある一部では合理的であるものの、より大き 文脈や、より幅広いシステムの一部として捉えたときには、合理的ではない意思決定や行動を導く論理。
・原型(Archetypes): 特徵的な挙動パターンを作り出す、よく見られるシステム構造。

■システムの原則のまとめ
システム
・システムは部分の総和以上のものである。
・システムの相互のつながりの多くは、情報の流れを通じて作動する。
・システムの中でも最も目につかない部分である機能や目的が、システムの挙動を決める上で最 も重要であることが多い。
・システムの構造がシステムの挙動の源泉である。システムの挙動は、経時的な一連の出来事としてその姿を現す。

ストック、フロー、動的な均衡状態
・ストックとは、システム内の変化するフローの歴史の記憶である。
・インフローの合計がアウトフローの合計を上回れば、ストックの水準は上昇する。
・アウトフローの合計がインフローの合計を上回れば、ストックの水準は下落する。
・アウトフローの合計がインフローの合計と等しければ、ストックの水準は変化しない――動的な均衡状態に保たれることになる。
・ストックは、アウトフローのペースを落とすことによっても、インフローのペースを上げることによっても、増やすことができる。
・ストックはシステム内で、時間的遅れ、バッファー、衝撃吸収材として機能する。
・ストックは、インフローとアウトフローを切り離し、独立したものにすることができる。

フィードバック・ルーブ
・フィードバック・ループはストックから、ストックの水準によって定められる一連の意思決定やルール、物理的な法則、行動を経由し、フローを通してふたたび戻ってストックを変える、閉じた因果関係の連鎖。
・バランス型フィードバック・ルーブは、システムの中で釣り合いをとろうとする、または目標追求型の構造で、安定性と変化への抵抗の両方を生み出す。
・自己強化型フィードバック・ループは、自らを強化するもので、時間の経過とともに、幾何級数的な成長または暴走型の崩壊につながる。
・フィードバック・ループ(非物理的なフィードバックですら)のもたらす情報が影響を与えうるのは、将来の挙動だけである。いま現在のフィードバックを駆動している挙動を正すことができるほどの素早さでシグナルを届けることはできない。
・ストック維持型のバランス型フィードバック・ルーブは、そのストックに影響を与えるインフローまたはアウトフローのプロセスを補うよう、適切に目標を設定しなくてはならない。そうでなければ、フィードバック・プロセスはストックの目標に足りなかったり行き過ぎたりすることになる。
・似たようなフィードバック構造を持つシステムは、似たようなダイナミクスの挙動を生み出す。

支配のシフト、時間的遅れ、振動
・システムの複雑な挙動はフィードバック・ループブが、続いて別の相対的な強さがシフトし、最初にあるルー別のループが挙動を支配するにつれて生じることが多い。
・バランス型フィードバック・ループにおける時間的遅れは、システムの振動を生じさせる可能性がある。
・時間的遅れの長さを変えることは、システムの挙動を大きく変える可能性がある。

シナリオとモデルのテスト
・システムのダイナミクスのモデルは、起こりうる将来を探り、「もし~だったら?」と問う。
・モデルが役に立つかどうかを決めるのは、「その推進力となっているシナリオが現実的かどうか」だけではなく(だれも確かなことはわからないので)、「現実的な挙動パターンに対応するかどうか」でもある。

システムに対する制約
・幾何級数的に成長する物理的なシステムでは、少なくともひとつの成長を推進する自己強化型ループと、少なくともひとつの成長を制約するバランス型ループがあるはずである。有限の環境において永久に成長するシステムはないからだ。
・再生不可能な資源は、ストックの制約を受ける。・再生可能な資源は、フローの制約を受ける。

レジリエンス、自己組織化、ヒエラルキー
・レジリエンスにはつねに限界がある。
・システムは生産性や安定性のためだけでなく、レジリエンスのためにも管理される必要がある。
・システムは自己組織化の特性を持つことが多い。自らを構造化し、新しい行動を作り出し、学び、多様化し、複雑化する能力である。
・ヒエラルキーのあるシステムは、ボトムアップで進化する。ヒエラルキーの上層の目的は、下層の目的に資することである。

システムにびっくりさせられる理由
・システム内の多くの関係は、非線形である。
・切り離されたシステムはない。世界はつながっている。システムのどこに境界線を引くかは、議論の目的による。
・どのタイミングであっても、システムにとって最も重要なインプットは、最も制約的なものである。
・複数のインプットとアウトプットを有する物理的なものは何であっても、層状の限界に取り囲まれている。
・成長にはつねに限界がある。
・あるものの量が限界に向かって幾何級数的に成長する場合、驚くほど短時間でその限界に達する。フィードバック・ループに長い時間的遅れがある場合、何らかの「先を見ること」が極めて重要である。
・システム内のそれぞれの主体者の限定合理性は、システム全体の幸せを高める意思決定をもたらさない可能性がある。

メンタル・モデル
・「世界について知っている」と考えていることはすべてモデルである。
・私たちのモデルは世界と強く調和している。
・私たちのモデルは、実際の世界をすべて代表するにははるかに足りない。

■システムの落とし穴から逃れる
施策への抵抗
・落とし穴:さまざまな主体者がさまざまな目標に向かってシステムのストックを引っ張ろうとするとき、結果として、施策への抵抗が生じる場合がある。どんな新しい施策でも、効果的なものであれば特に、他の主体者の目標からさらに遠くへとシステムの状態を引っ張ることになり、さらなる抵抗を生み出し、だれも好まない結果を維持するために、だれもが大きな努力をすることになる。
・脱出法:手放すこと。すべての主体者を集めて、抵抗のために使っていたエネルギーを用いて、すべての目標を実現するための相互に満足のいくやり方を模索すること。または、全員が力をるための相互に満あわせて引き寄せることのできる、より大きくて重要な目標を定義し直すこと。

■共有地の悲劇
・落とし穴:共有の資源があるとき、どの利用者もその利用から直接的に利益を得るが、その過剰な利用のコストは全員と分かち合うことになる。したがって、資源の状態から、資源の利用者の意思決定へのフィードバックはとても弱いものになる。その結果、資源は過剰に利用され、減衰し、最後には、だれにも使えなくなってしまう。
・脱出法:利用者への教育や勧告をし、資源の過剰利用の結果が理解できるようにする。また、各自が自分の過剰利用の直接的な結果を感じられるよう資源を私有化するか、(私有化できない資源もたくさんあるので)利用者全員の資源へのアクセスを規制することによって、欠けているフィードバックのつながりを取り戻したり強めたりする。

■低パフォーマンスへの漂流
・落とし穴:パフォーマンスの基準が過去のパフォーマンスに左右されることを許していると(特に、悪いものに偏って過去のパフォーマンスを認知していると)、目標のなし崩しの自己強化型フィードバック・ループが生まれ、システムは低いパフォーマンスへと少しずつ流されていく。
・脱出法:パフォーマンスの標準を絶対的なものにしておくこと。さらによいのは、最悪のパフォーマンスにやる気をそがれるのではなく、実際の最良のパフォーマンスによって、基準を良のパフォーマンスにド高めていくこと。高いパフォーマンスへの漂流を設定すること!

■エスカレート
・落とし穴:ひとつのストックの状態が、他のストックの状態を上回ろうとすることで決定されるとき(逆も同じ)、そこには自己強化型フィードバック・ループが存在し、そのシステムを、軍拡や富の競争、中傷キャンペーン、エスカレートする騒がしさや暴力に引きずり込む。エスカレートは幾何級数的で、驚くほどあっという間に極端な状態につながる可能性がある。何も手を打たなければ、そのスパイラルはだれかの崩壊によって終止符を打たれることになるだろう。なぜなら、幾何級数的な成長は永久には続けられないからだ。
・脱出法:この落とし穴から脱出する最善の方法は、その落とし穴の深みに入らないようにすること。エスカレートのシステムにはまったら、競争を拒むこと(一方的な武装解除)で、自己強化型ループを断つことができる。または、エスカレートを統制するバランス型ルーブを持つ新しいシステムを交渉することができる。

成功者はさらに成功する
・落とし穴:競争の勝者が再び勝つための手段を報酬として与えられるシステムになっていると、自己強化型フィードバック・ループが形成され、そのループが阻害されることなく回ると、最後に勝者はすべてを得て、敗者は消え失せることになる。
・脱出法:多様化すること。それによって、競争に負けている人がゲームから降りて、新たにゲームを始めることができるようになる。だれであれひとりの勝者が手に入れられる割合を厳しく制限すること(独占禁止法)。条件を公平にする施策。それによって、最強のプレーヤーの優位性の一部を取り除いたり、最も弱いプレーヤーの優位性を高めたりする。次回の競争に傷りを生じないように、成功に対する報酬を工夫する施策。

介入者への責任転嫁
・落とし穴:責任転嫁、依存、中毒が生じるのは、「システムの問題に対する解決策が、症状を減らす(または隠す)が、根本的な問題を解決することはなにもしない」ときである。人の知覚を鈍らせる物質にせよ、根本的な問題を隠す施策にせよ、選んだ、麻薬”は、実際の問題を解決しうる行動のじゃまをする。
 問題を正すための介入によって、元々のシステムの自己維持力が弱まったり損なわれたりすると、その後、破壊的な自己強化型フィードバック・ループが動き出す。システムは悪化し、すると、解決策がさらに多く必要となる。システムは、介入への依存度を高めるようにな自らの望ましい状態を維持することはますますできなくなっていくだろう。
・脱出法:繰り返しになるが、この落とし穴を避ける最善の方法は、落とし穴にはまらないことである。実際には問題に取り組むわけではない、症状を和らげたり、シグナルを否定するような施策に注意すること。短期的な苦痛の除去に注目するのをやめ、長期的な再構築に注力する。自分が介入者なのであれば、システム自体の問題解決能力を取り戻す、または高めるようなやり方で取り組み、そのあと、自分自身は身を引くこと。
 もし自分が支えがたいほど依存している側なのであれば、介入を外すまえに、自分のシステム自体の能力を構築して戻しておくこと。早ければ早いほどよい。先送りにすればするほど、抜け出すプロセスは困難なものになるだろう。

ルールのすり抜け
・落とし穴:システムを統治するルールは、ルールのすり抜けにつながる可能性がある。それは、「ルールに従っている」、「目標を達成している」という見かけを与えながら、実際にはシステムをゆがめる、邪悪な行動である。
・脱出法:ルールのすり抜けの方向ではなく、ルールの目的を達成する方向に創造性を解き放つよう、ルールを設計したり、設計し直すこと。

間違った目標の追求
・落とし穴:システムの挙動は、フィードバック・ループの目標に特に敏感である。目標(ルールを満足したという指標)の定義が不正確または不完全だと、システムは従順に機能して、実際には意図していない、または望んでいない結果を生み出すかもしれない。
・脱出法:システムの実際の福利を反映する指標や目標を明確に示すこと。特に、「結果」と「それを得るための努力」を混合しないように気をつけること。そうでないと、「結果」ではなく、「努力」を生み出すシステムになってしまうだろう。


システムに介入すべき場所(有効性の増す順)
12 数字:補助金、税金、基準などの定数やパラメーター平などの定数やパラメーター
11 バッファー:フローと比較したときの安定化させるストックとその結節点
10 ストックとフローの構造:物理的なシステムとその結節点
9 時間的遅れ:システムの変化の速度に対する時間の長さ
8 バランス型フィードバック・ルーブ:そのフィードバックが正そうとしている影響に比べてのフィードバックの強さ
7 自己強化型フィードバック・ルーブルーブを動かす増幅の強さ
6 情報の流れ:「だれが情報にアクセスでき、だれができないか」の構造
5 ルール:インセンティブ、罰、制約
4 自己組織化:システム構造を追加、変化、進化させる力
3 目標:システムの目的または機能
2 パラダイム:そこからシステム(目標、構造、ルール、時間的遅れ、パラメーター)が生まれる考の大きさ
1 パラダイムを超越する


システムの世界に生きるための指針
1 システムのビートを理解する
2 自分のメンタル・モデルを白日にさらす
3 情報を大事に考え、尊重し、広げるシステムの概念で強化する
4 言葉は注意して用い、大事なものに注意を払う
5 測定可能なものだけではなく、大事なものに注意を払う
6 フィードバック・システムのためのフィードバック方針をつくる
7 全体の善を求める
8システムの知恵に耳を傾ける
9 システムの中の責任のありかを見つける
10 謙虚であり続け、学習者であり続ける
11 複雑性を祝福する
12 時間軸を伸ばす
13 学問の”領域”に逆らう
14 思いやりの境界線を拡大する
15 善の目標を損なわない

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

世界の流れや社会の仕組みを総合的な関係性から解き明かすものの考え方を説いている。訳者である枝廣さんの著書システム思考の元になっていると感じた。
成長の限界を考えた考え方の基本が書かれている。

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2017年12月24日

Posted by ブクログ

システム思考の中でもシステム・ダイナミクス学派に属する著者がシステム思考の基本から、身の回りにあるシステムの捉え方をレジリエンス、自己組織化、ヒラエルキーなどの視点も合わせて指南、シンプルな例題から経済問題、そして環境問題や格差問題にまで切り込み、間違った目標を落とし穴として指摘します。 終章では、システムの世界に生きる心得が15ほど訓示されています。なかでも「自分のメンタルモデルを白日にさらす」、「測定可能なものだけではなく、大事にものに注意を払う」、「謙虚であり続け、学習者で有り続ける」、「複雑性を祝福する」、「時間軸を伸ばす」、「学問の”領域”に逆らう」などが印象に残りました。

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2016年05月08日

「ビジネス・経済」ランキング