【感想・ネタバレ】海上護衛戦のレビュー

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Posted by ブクログ

ローマ帝国一千年の礎は諺にもある通り「全ての道はローマに通ず」である。即ち平時においても戦時においても兵站・輸送は国体の護持に欠かさざるものであることを歴史において証明している。著者は、日本という海洋国家がいかに海上輸送を確かにしなければ開戦な能わずを主張していた。当時の日本の才ある人々が帝国海軍の中にあり、様々なデータを元に日本が戦うべきか戦うとしたらどのように戦うべきかを論じていた。後世から観ると軍の暴走やメンツばかりで論理的な勝算があったかわからない先の大戦であるが、開戦の是非は別にしても少なくとも数字的な根拠はあったことが本書によりわかる。おそらくこの数字的なベースが山本五十六をして短期決戦を条件に開戦に踏み切らせたが、その数字的な根拠もかなり条件が規定されていて、緒戦の好結果で浮足だち足元を忘れた帝国陸海軍のますますの専横、特に連合艦隊本部の決戦志向が海上護衛による輸送の確実化を阻み、輸送路の遮断による後方の国体の維持を不可能にしていったことが本書によりこくめに描かれる。この南方輸送の遮断は、原料不足による工業力衰退、そして支援物資の欠乏を出来させて敗戦への一本道へ誘ったのである。対する米国は、日本という国家を知悉しており、海上輸送こそが国家の生命線であり、これを破壊することこそが勝利への道であることを開戦より心得ており、これを徹底した。その本気度は米国潜水艦による補給線の遮断に投入された潜水艦数からも明白であり、しかも投入された潜水艦隊がドイツが得意としたウルフパック戦法を習熟していたとなれば質・量ともに日本を圧倒していたということになる。一方、護る日本の方は海上護衛というには護衛艦艇の割り振りや対潜水艦戦の習熟度と全てに後手を踏んでおり、ほぼ丸裸に近い状態でこれでは輸送していたのが実態であり、これでは先細るのも必定であった。
本書を戦記として読むのもいいが需要と供給の供給側の戦略として読むと啓示に富む。売り上げが亢進すると生産量が上がり、既存生産力や原材料供給では足りなくなり、その確保がないと早晩売り上げが落ちていくという経営工学にも相通ずるところがあり、大戦という国家を上げた一大プロジェクトにおいてもその原理原則は変わらないという証左である。勿論、戦争というプロジェクトはやらないという選択肢を選べなかったことが最大の間違いであったわけであることは揺るがないのであるが。

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2018年04月10日

Posted by ブクログ

祝!復刊!!
太平洋戦争で日本がなぜ負けたか、その直接の原因がわかるのみならず、戦略目的を達成するために、組織はどうふるまうべきかがよくわかる本。
そんじょそこらのビジネス書より、よっぽどおすすめ。
学研文庫版を所持しているが、これを機会に再読する予定。

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2014年05月27日

Posted by ブクログ

資源(石油)獲得の為に、始まった戦争であるにも関わらず、決戦重視で資源輸送への意識の低さの実態がよくわかる本。
戦争当初から、海上護衛やロジスティクスに対する意識が高かったとすると、どういうような戦争過程になっていたかという想像にかられる。
潜水艦による商船・タンカーへの攻撃が、日本のロジスティクスを破壊していったことがわかるが、当初から護衛&護衛戦略をつけていたら、潜水艦からの被害がどこまで減らせたか興味がさらにわきました。

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2014年11月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

徴用船舶の護衛を担当した海上護衛総司令部の参謀であった大井大佐による、シーレーン防衛の重要性を説く本です。

潜水艦・航空機の本格活用に伴い、物資を搭載した船舶を敵の通商破壊からエスコートすることは戦争を継続していくためには不可欠ですが、日本海軍は運用思想の相違からそれを重要視していませんでした。

詰めの甘さからくる楽観視や後手後手の対応、海上護衛の観点から見る連合艦隊の柔軟性の低さによって、貴重な人命と資源が簡単に海に沈んでいきます。

連合艦隊がいかに戦い、そして散ったかを書く本は多いですが、敗戦の直接の原因の一つである補給について個人名を出しながら痛烈に批判する本著は、海自がシーレーン防衛を最重視している理由を理解できます。また、華々しい連合艦隊の裏で、彼らを支えるために沈んでいった多くの船員たちの戦いを知るきっかけになるでしょう。

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2014年08月21日

Posted by ブクログ

書店在庫なくA経由購入。「決戦」「決戦」の連合艦隊。「総力戦」と上段に構えるまでもなく、国家同士がぶつかり合うことを想像する能力において劣っていたということか。先方だって決して最初から戦争の構図を理解していたわけではないだろうし、失敗だってあったはず。貧すれば鈍する。知れば知るほど、「頑張ったけど…」「陰謀が…」「ああすれば…」というレベルではなかったことが。自虐とか言ってないで、冷静に見つめてみたら。

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2022年05月08日

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