【感想・ネタバレ】嵐が丘 上のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 19cイギリスヴィクトリア朝の小説。
 作者は有名作家三姉妹の次女、エミリー・ブロンテ。ヴィクトリア朝の小説は、栄華を極めたように見えるヴィクトリア朝期イギリスの水面下の社会問題に気付かせるためのものが多い。
 この小説の特徴は、初期の心理小説、情熱の小説(ヒースクリフとキャシーの関係)、ヨークシャーの田舎の荒涼とした丘陵地帯という舞台設定、一人称の語りである。他にも18cイギリスで流行った、恐怖による感情の揺さぶりを目指した「ゴシック小説」的要素を持つ。ゴシック要素に関しては下巻のレビューで触れたい。
 この作品の簡単な説明としては、スラッシュクロス屋敷と嵐が丘という屋敷に住むリントン家、アーンショー家の2家族の2世代と邪悪な心を持つ男ヒースクリフの、復讐と愛憎の物語である。
 作品の始まりは、スラッシュクロス屋敷を借りるために嵐が丘の屋敷にロックウッドという男が立ち寄り、彼が寝るときに嵐が丘に住む人たちの複雑な関係性について使用人のネリーが昔話を語って聞かせるというものである。なぜ嵐が丘の人々の関係性がそのように複雑になったのかが昔話により紐解かれていく面白さを感じた。
物語の流れとして、昔話と現在の話という時間軸の前後も特徴となっている。
 この小説の舞台設定は、ヨークシャーの田舎の荒涼とした丘陵地帯である。ヒースクリフとキャシーはとても気性が荒い。さらに2人はお互いと自分のことしか見えていないため、他の人を寄せ付けない。これらは丘陵地帯の悪天候の激しさ、荒々しさと重ね合わせられている。更にはこの小説の流れを見たとき、ヒースクリフが2家族に影響を与えたり人が亡くなったりする悪い時期と、そうでない平和な時期の繰り返しとなっている。これらは突然入れ替わったりする。これも山の天気の変化のしやすさが重ね合わせられているのかなと想像した。
 この小説の語り手は、ロックウッド、使用人のネリーとジラの3人である。ロックウッドは比較的中庸的な視点の傾向があり、ネリーとジラは、一人称の語りらしく、彼女らの主観交じりの視点で語る。一人称の小説では、語り手が与える人物や事柄への印象に関して、語り手の主観が入っていると考えて読むのが肝要である。次読むときは、彼らが自分の想像で結論付けた様々な人物の心情をもっと想像しながら読みたい。
 上巻では主にヒースクリフとキャシーの関係について書かれている。彼らの愛情や関係性について考えるのは楽しかったが、話の展開としては下巻のほうが動くので、むずむずする、先の展開が気になるといった感想を抱いた。

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2021年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こんなまるで台風のような愛を注ぎ合ってしまったら、魂を燃やし尽くしてしまっても仕方ない。
「僕の生命」という科白がヒースの愛と、そこから滲み出る切ない遣る瀬無い感情が一気に上巻終わりに読んでいる側に降り注いで、めちゃくちゃ面白かった。素晴らしい。

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2011年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Wuthering Heights(1847年、英)。
登場人物が見事に病んでいる。ただ、少なくとも虚無的ではない。彼等は力の限り相手を愛し、憎む。泥沼の愛憎劇なのに多くの人を魅了してやまない理由は、このひたむきさにあるのだろう。特筆すべきは、語り手の批評眼の公正さだ。道を踏み外す者にも理由があり、本人だけの責任ではないことを、彼女は熟知している。しかし、最終的に運命は自分で選び取るものであり、苦境を乗り越えて相手を許せる者にしか幸せを掴むことはできないと、物語の結末を通して言外に語る。病的なドラマの背後に、まっとうで強靭な人生観がある。30歳にもならない作者がどうやってこの心境に達したのか、感嘆するばかりだ。

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2013年08月03日

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