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Posted by ブクログ
扶桑社の『SPA!』誌に平成五年11月10日号から翌年2月16日号まで連載された分、第76章から89章までを書籍化。筒井康隆氏による断筆宣言に端を発する差別表現の自主規制問題から被差別部落問題に踏み込み、とうとう解放同盟の書記長で衆議院議員の小森龍邦氏との対談に臨むことになる作者。その模様を漫画化の上、対談を掲載。さらに「自主規制」をめぐって討論番組「朝まで生テレビ」に初めて出演。その感想が率直で面白い。作者の初めての朝ナマは思うようにいかなかったようである。
この頃、作者がかましはじめたゴーマンには大変な反響があり、多くの知的な若者に火をつけることになった。「おたく世代の行動の原動力となる倫理を作る漫画」(浅羽通明氏)、「時代の再建屋」(呉智英氏)との評価を得た作者は"カリスマ宣言"をして「どとー」の闘いに挑むことになる。一方、アンチも誕生してきたようで「しっとの嵐はうざったい」と挑発している。戦争責任にも一章をもうけて言及しているが、その後の作者の思想とは大違い、かなり戦後民主主義的なのが興味ふかい。当時の作者は知識はないことを自覚したうえで、直感に従ってゴーマンをかますとぶち上げている。
Posted by ブクログ
差別論を中心に、著者みずから問題にぶつかりながら、その問題の根源にせまっていくプロセスがえがかれています。著者はそうした自分自身のスタイルを、「わしはミスをする天才じゃい」と語っています。
戦争責任にかんする問題をあつかった章では、その後保守派の論客として名をはせることになった著者の意見の変更を踏まえ、文庫化にさいして注釈的なマンガが付されています。
また、著者のマンガを高く評価する評論家で戦後民主主義を痛烈に批判する論調で知られる呉智英や、消費社会的な感性に依拠してマスコミなどでさかんに喧伝されたポストモダン的なジャーナリズムの論調に対して異議申し立てをおこなっている浅羽通明も登場します。この二人は、日本社会の常識になっているさまざまな事柄に著者が感じている違和感を分析し言語化することのできる思想家として著者の信頼を得ることになるのですが、そうした関係がうかがわれるのも興味深く読みました。