【感想・ネタバレ】燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年06月29日

『懐かしい年への手紙』の続編です。
まだ三部作の第一部ですが、この一冊ですでに十二分の満足感がありました。

『懐かしい年への手紙』で試みられた「魂の救済」について、この物語の長さを利用して、更に深く追求しようとしています。

印象に残った2つのシーン。

ギー兄さんが信用を失い、町民からのリンチに...続きを読む遭う場面。黙って暴力を受け入れる姿は、磔にされたイエスのようで、まさに“救い主”という言葉が適当でした。

そして、ギー兄さんが小児癌を患う少年カジに、“救い主”として言葉をかける場面。
「ほとんど永遠にちかいほど永い時に対してさ、限られた生命の私らが対抗しようとすれば、自分が深く経験した、“一瞬よりはいくらか長い間”の光景を頼りにするほかないのじゃないか?」

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Posted by ブクログ 2010年03月16日

僕にとっては『万延元年のフットボール』以来のがっちり四国の森が舞台の小説。三部作なのでまだ2冊もあるのだと思うと楽しみでしょうがない。今この小説をはじめて読むことが出来る自分の読書歴(の欠落)に感謝。

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Posted by ブクログ 2020年12月01日

大江健三郎 「 燃えあがる緑の木 」 1部 救い主が殴られるまで

100分de名著により 人物イメージと主要テーマを学習済みなのでスイスイ読める。

1部の内容は 土着宗教の誕生プロセス と 魂の動きに関する思考実験と捉えた。これから宗教と魂、人間と命、記録としての文学を考察するための伏線だと思う...続きを読む

土着宗教の誕生プロセス
*土地の伝承を蘇らせる 救い主が現れる
*救い主の言葉と神秘的な力により、信仰者と糾弾者が現れる
*救い主と信仰者が一体となり 教会を建てる

魂の動き
魂が 身体の中で生き、身体を残して浮かび上がり、自分に割り当てられた樹木の根におさまる

救い主の言葉(死の恐怖の克服)
*一瞬よりはいくらか長く続く間〜自分が深く経験した生きたしるし
*永遠に近いほど永い時に対して 限られた生命の私たちが対抗するには〜一瞬よりはいくらか長く続く間を経験するほかない


名言「人生に失敗はない。愚痴があるだけだ」


ランボオの詩が盛り込まれているとは知らなかった
「永遠」もとより希望があるものか〜黙って黙って勘忍して〜苦痛なんざ覚悟の前


大江健三郎 の文学テーマ
*障がいを持つ息子との共生〜ケアする側も される側と同じくらい多くのものを受けている〜大江健三郎は 息子の誕生によって生まれ直した
*人間は続いている〜私たちは死んだ人間の代わりに生きている〜私たちは 未来の人間につながっている

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Posted by ブクログ 2013年04月06日

「一瞬よりいくらか長いあいだ」としての「永遠」!このくだりを見たとき私は大変驚愕して、というのも大江健三郎がここまではっきりこの言葉を口にするとは思ってもいなかったので…『嘔吐』では似た言葉が、存在の罪が一瞬だけぬぐわれるとき、などという表現されていたアレ…『嘔吐』以後サルトルが触れなくなってしまっ...続きを読むたアレ…。私にとってはこの「瞬間としての永遠」はサルトルとバタイユをつなぎ、または作中に引用されているランボーとも、プルーストとも強固に繋がるキーワードである。しかしこれを掲げて宗教を始めることが可能なのか…。自分の存在というものの途方もない無意味さ、偶然性を乗り越えることが出来るのは、自分の身を以て体験出来るこの「瞬間」以外にない。しかしこの「瞬間」は純粋には偶発的なものであって、いわゆる「企て」はそれ待ちきれない人々の暇つぶしでしかないように私には思える。後に覆されたとしても一度は自らの本の集大成として、とても積極的な社会参加とは呼べないこの宗教の本を据えた大江の学生時代のサルトル解釈は一体どのようなものだったのだろう…。

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Posted by ブクログ 2012年06月06日

第2部に移ります。

12.06.05(再読)


いきなり転換とかギー兄さんの話を持ってくるなんて、これ、今までの大江作品を読んでいないと何のこっちゃ分からないのでは??
全3巻だから、後に分かるようになってるのかしら。

とりあえずスロースターターな今までの大江作品に違わず、1巻はまったり気味で...続きを読むす。
とは言えテーマ的に底が深くて暗そうなので、ちゃんと全てを理解したい。
なのでもう1回読んで、2巻に移るとします。

12.05.29

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

16歳の私を「文学とはいかに難解で深遠なものか」と嘆かせた作品。
今思うと、もしかして簡単かもしれない「癒し」をここまで突き詰める、そういう作家がいること自体に価値を見出すべきなのかもしれない。

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