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Posted by ブクログ
戦争末期の特攻に関して戦後おびただしい書物が編まれ、映画がつくられてきた。本書は特攻に対する批判『きけわだつみのこえ』とその後のわだつみに対する批判、反批判にかかわる言説を紹介する。特攻の映画をつくった人たちのスタンスが東映の任侠映画をつくった人たちのそれと同じであったというのも興味深いが、ぼくにはこの戦後の特攻をめぐる言説の仲で、安田武と野坂昭如の「死者の胸中を勝手に忖度するなど傲慢きわまりない」「その死が犬死にであったか、あるいは価値あるものだったのか、生きているものがえらそうに判定するべきものではない」ということばが印象に残った。また、戦艦武蔵の生き残り兵である渡辺清の場合は、命からがら復員すれば、天皇は敗戦の責任をとるどころか敵の司令官を訪問し仲良くならんで写真に収まっていた。かれはその写真を千枚通しでめちゃめちゃにつき、それ以後雑誌「わだつみのこえ」で執拗に天皇責任を追及するのである。こういう人が天皇責任を追及すれば右翼も文句のいいようがなかろう。