【感想・ネタバレ】金融緩和の罠のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

河野龍太郎さんのインタビューを新聞で読んで、この方の本を読んでみたいと思い、この本に辿り着く。

この本は、萱野稔人(津田塾大教授)が、安倍政権で推し進める金融緩和に反対意見を主張する3名、藻谷浩介氏(日本総研主席研究員)・河野龍太郎(BNPパリバ経済調査本部長)・小野喜康(阪大教授)とそれぞれ対談した内容がまとめられている。

感想。とっても面白い。読んで良かった。

備忘録。
①藻谷氏の見解
・リフレ論は「供給されたお金は必ず消費される」という前提に立っている。それは現実と乖離している。
・バブル崩壊以降の日本の景気低迷は、貨幣供給量不足が引き起こしたのではなく、モノの需要不足によるものだ。だってバブル崩壊後日本の生産年齢人口が減っているんだもの(15年で7%減少)。
・人口オーナス→モノの供給過剰→モノの値崩れ、これが不況の原因だ。
②河野氏
・物価上昇→金利上昇→日銀は物価安定か金融システム安定のどちらかを選ぶ必要あり。たぶん金融システムの安定(国債買い支え)を選ぶ=金融緩和→円安→また物価上昇→また金利上昇・・・
・労働力と設備(資本)は独立していない。労働力が増加すれば設備も増える。労働力が減れば消費が減るから投資に躊躇し設備が減る。いずれも労働力(人口動態)から始まる)
③小野氏
・小野理論:成熟社会では欲望の対象がモノではなく、お金が究極の欲望対象になる→セイの法則が成立しない→モノが余る→雇用不安→不況

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2015年01月16日

Posted by ブクログ

あとがきにあるように,(結果的に)あまりにもタイムリーな本。デフレの主たる理由が生産年齢人口の減少であることを二人のインタビューイーが指摘している。おそらくこれが「デフレ」の真実なのだろう。小野氏は,「お金そのもの」が持つある種の魔力を考慮せずには,経済政策は成り立たないと指摘する。その指摘は自分の実感ともよく重なり,説得力のあるものだ。
現政権の経済政策の「突然死」が危惧される。

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2013年05月16日

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哲学者の萱野稔人氏が金融緩和策に批判的な三人の専門家(藻谷浩介氏、河野龍太郎氏、小野善康氏)と対話形式でのインタビュー内容を文字に起こしたものである。
3人の中でも小野氏の内容が興味深かった。
小野氏の論理展開の大前提は、「お金が究極の欲望の対象になる」ということ。成熟社会では、モノがあふれていて、モノへの欲求がお金への欲求より低くなってしまったとする。
「成熟社会になってもまだまだ人びとにはほしいモノがある」との反論に対しては、
「もっているお金をつぎ込んで、ほしいモノを次々に買うのかと聞いてみると、大概の場合、返ってくる答えはこうです。『いや、お金がもったいないから買わない』
 この言葉こそが、お金への欲求がモノへの欲求を上回ってしまったことをあらわしています。お金がもったいない、お金を保有していたい。こうしたお金の保有願望こそ、成熟社会での経済を分析するときにひじょうに重要な要素なのです。」
「さらに問題なのは、お金を保有したいと思っている人たちにとっては、物価下落、デフレは歓迎すべきことだということ」
「民間企業で雇われなかった…失業者に対して、政府が雇用を提供する。失業者が減れば、当然、賃金が下がらなくなってきます。賃金が下がらなくなれば、モノの価格の値下げができなくなる。そうすればデフレは止まってくるんです。」
日本には特にあてはまる事象であるように感じた。

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2021年08月08日

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2013年刊行の少し古い本。三人の著名エコノミストがアベノミクスの掲げる金融緩和を真っ向から否定し、その危険性を解く。
自分の理解できる範囲で、何で金融緩和が意味がないかという理由は2点)。
1.日本は人口オーナス期(現役世代が減少して高齢化社会)に入っていて、人口が減っていくところに需要は生じないというもの。需要のないところにお金をジャブジャブ注ぎ込んでもその効果は?
2.人は豊かになっていくとモノではなくお金の所有願望が強くなっていくというもの。ものが溢れている日本にお金をジャブジャブ注ぎ込んでも実際にお金がモノに変わるのか?
2番目については思いあたる節もあり目から鱗。ミニマミスト思考とか無駄を省こうとか、モノが減っていく方向への世の中の流れを感じる今日この頃。その中に企業が投資をしてモノを作っても消費されず過剰在庫に苦しむだけだろう。

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2018年01月22日

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■生産年齢人口の総人口に占める割合のピークは、日本は1990年頃、アメリカ、アイルランド、スペインは2005年頃、中国は2015年頃。
■中央銀行ファイナンスによる追加財政、すなわちマネタイゼーション戦略は、当初は高めの実質成長率、低いインフレ率、やや高めの名目成長率、低い長期金利、リスク資産価格の上昇が観測され、バブル的な様相が強まる。しかし、その後は、低い実質成長率、高いインフレ率、高めの名目成長率、リスク資産価格の下落が訪れる。
■人は、お金そのものが欲しい。純粋に、今お金があるからあれもこれもと実感できて嬉しい。
■完全失業者は300万人前後。彼らを100万人雇うためには消費税を数パーセント上げるくらいで十分。1パーセントの増税でだいたい60万人から70万人を雇うことができる。
■生産性が上がって輸出が増えたら経常収支が改善して円高になるが、同時に、国内の需要不足で輸入が減っても経常収支は改善するので円高になる。

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2014年01月08日

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昨今言われている金融緩和で日本経済は打破できるのか?
これについて、3人のエコノミスト・経済学者へのインタビュー形式で書かれています。

セオリーベースではなく、ファクトベースで判断するのは、何も経済学だけに限ったことではありません。その重要性にもきづくことのできる1冊です。

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2013年05月02日

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対談集。
藻谷浩介;「デフレの正体」著者。
河野龍太郎;BNPパリバ証券経済調査本部長。
小野善康;大阪大学社会経済研究所教授。

はじめに
第1章 ミクロの現場を無視したリフレ政策 藻谷浩介×萱野稔人
第2章 積極緩和の長期化がもたらす副作用 河野龍太郎×萱野稔人
第3章 お金への欲望に金融緩和は勝てない 小野善康×萱野稔人

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2019年03月27日

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ネタバレ

金融緩和に懐疑的なインタビュアーが、意見を同じくする3人の専門家との対談を通じて、アベノミクスの金融緩和を批判的に記したビジネス書。結局『罠』とは、政府債務の増大とその後訪れるであろう国債価格の暴落、通貨信用の毀損(円の暴落)と、従来の反リフレ派の主張と変わらないところ。
3人の専門家の意見に納得する部分も多かったが、同時に100%同意できるわけでもなく、納得できない部分も多々あります。とはいっても、全般的にわかりやすく、楽しく読ませていただいた。

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2015年03月16日

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マクロ経済学の骨格を外すような話をするので、学者を始め、各方面から揚げ足取り的な批判をされている各論者たち。しかし、三者に共通する、過度な金融緩和は、現在の日本において、根本的な解決策になることはないという点はとてもしっくりくる。生産世代の減少、将来への不安、社会の成熟化による物的需要の減少、に対応した構造改革を含めた施策が必要だ。これらの問題の解決が無いままの金融緩和は、国の信用を損ね財政破綻に陥る危険性がある。アベノミクスでいうと「第3の矢」である成長戦略がめっちゃ大事という事かな。とても面白かった。

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2013年09月19日

Posted by ブクログ

一人のインタビューアが、リフレ反対派の3人に一人づつインタビューをしていくという形式。この点の本は主張がバラバラとアチコにに書かれていてポイントがわかりづらいという特徴がある。

一人目の藻谷浩介氏はリフレ派に否定された大ヒット作『デフレの正体』で言わんとすることを再度主張。数年前に読んだ時には、日本の『現役世代を市場とする商品の供給過剰による値崩れ』の原因は『15歳から64歳までの生産年齢人口の減少』にあるという氏の主張の分かりやすさに大いに納得したものだ。ただその後多くの『リフレ派』に、その主張が経済学的検知から間違っている、『デフレ』の定義を勘違いしている、高齢化が進んでいる他国でもデフレになっていない国がある、などと結構叩かれていた。が、この本の中で自身の主張を改めて丁寧に説明しているし、否定された内容が、そもそも氏の本を丁寧に読んでいないことが原因であると真っ向から反対している。私は、『リフレ』は信じているが、『デフレの正体』に書かれている内容については、藻谷氏の主張は正しいと思うし、別に『リフレ派』の主張と大きく相反しているものではないと感じる。

二人目の河野龍太郎氏は、日本の低成長の原因は人口動態だと主張し、その状況を認識しない極端な金融緩和は百害あって一利なしと訴える。対策が書かれていないので、、、うーん・・という感じ。

三人目の小野善康は民主党管政権の経済ブレーンだったらしい。金融政策でお金の量を増し物の値段が下がっても、今の日本のように生産力が拡大し物が満ち足りた成熟社会では、それ以上欲しい物もなく需要は伸びないという。こういう国では政府は、国民生活に不可欠でも利益が少なく民間が手を出さないような産業に、税金から集めた金、余っている人をつぎ込むような政策が有効だと主張する。国民全員に最低限の生活ができる金額をばらまくベーシックインカムについては、最低賃金の撤廃につながりデフレを引き起こす可能性があるし、雇用を増やさないので反対している。また、この政策を支持する日本維新の会も切り捨てている。

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2013年04月29日

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