【感想・ネタバレ】炭素文明論―「元素の王者」が歴史を動かす―のレビュー

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Posted by ブクログ

とても大層な本題だが、中身はとても読みやすい。
砂糖やカフェインなど身近な炭素化合物から、現代文明のエネルギーたる石油まで、性質や歴史を理解しやすく解説している。

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2021年10月04日

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教科書には載っていない逸話が多くとても楽しめた。また、作者の秀逸な表現がところどころに見られ、読んでいて終始飽きない良書だった。

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2020年02月05日

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文明の発展や人口の増加が炭素化合物の獲得の歴史とどう符合するのかを分かりやすく論じている。文系の人でもわかる内容。生活とはこれ程までも炭素が欠かせなかったのか、と、改めて考えさせられる。食べ物に始まり、薬品、アルコール、カフェイン、石油、照明装置、テレビに至るまで炭素が発展を支えてきた。なぜカフェインを摂取したくなるのか?世界地中で飲み続けられるものには共通してカフェインが入っているのか?(お茶、コーヒー、コーラ)、ランナーズハイ、麻薬などとの共通点は?エネルギーは使い続けるだけでいいのか? 世界を大枠で捉える上で重要な一冊。

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2019年05月21日

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炭素というたった一つの切り口から歴史・経済・ヒト・生命・テクノロジーと様々な方面に話を広げていく。単純に話が面白く文章が上手いうえに、説得力もある。こういう教養人に私はなりたい。

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2018年12月16日

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古代ギリシャのデモクリトスが、アトムを考えた。すべてはアトムの組み合わせだ。ちょうどレゴブロックの1ピースを考えればよい。そして、死は、それらが散らばって、別のところで集合する。死後の世界なんてない。唯物論の始まり。 この本を読んで、 C炭素が、すべての生命の源。火葬 ちょうどCO2になって、別の植物に吸収され、そして動物に食われ、そして 誰かの体を構成する。また、その炭素原子は、散らばって‥生死は炭素の離散集合でしかない。では、こころとはなにか? デカルトの物心2元論だろうか。

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2016年05月03日

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有機化合物を軸に人間の化学・生理学的欲求とそれに引きずられる歴史を鮮やかに描き出したとても面白い本。銃・病原菌・鉄を炭素を中心に、そして冗長にならないように簡潔に、でもサイドストーリーも忘れずにしたような充実した読後感。

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2015年07月12日

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ーーー農耕開始から世界大戦まで、人類は地上にわずか0.08%しか存在しない炭素をめぐり、激しい争奪戦を繰り広げてきた。そして地球温暖化とエネルギー危機に直面する現在、新たな「炭素戦争」が勃発、その勝敗の行方は…?「炭素史観」とも言うべき斬新な視点から、人類の歴史を大胆に描き直す、興奮のポピュラー・サイエンス。

先輩のすすめで。

面白かった。小説ばっかりでこういうのは読んでなかったから新鮮だった。

読みながらSFを読んでいるときの感覚と似ているような気がしたが
恐らく、現状の問題点や未来に対して前向きな姿勢がそう思わせていたのだろう。

内容は濃いけれど文章は平易で、世界史をあまり学んで来なかった自分でも楽しめた。
逆に学んできた人たちは、今までとは違う視点での歴史を目撃できると思う。



過去に学ぶことはもちろん多いが、後戻りすることに意味はない。
道は、前方にのみ拓かれる。

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2015年04月05日

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炭素にまつわる本。タイトルの通り、地表にわずか0.08%しか存在しない元素・炭素が我々人類の歴史をうごかしてきた。決して飽きることなく読み進められる。

全12章からなる構成だが、各章で紹介される炭素化合物(一部無機化合物もあるが)のエピソードが一々面白い。個人的には砂糖(スクロース)の話が印象的。砂糖がなければ奴隷制度は存在しなかったのかもしれない。

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2014年05月31日

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化学と文明の深いつながりを学ぶ一冊。カーボンに特化し、本来なら香辛料から始まる系統の本だが、日本人に馴染み深いデンプンから始まるのは見事だと思った。

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2014年04月13日

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炭素で見る世界史的な流れで、堅苦しくなく、初めて知ることがたくさんあってかなり面白く読めた本。理系と文系をうまく融合させたなと感心しました。

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2014年02月28日

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炭素と世界史の関連の深さに驚いた。化学物質名は覚えられなさそうだけど。
世界の歴史はエネルギーや食料争奪の歩みなんだなって思った。今後エネルギー、食糧問題は避けられない大きな問題になる。
最後の最先端技術は心が躍る。メタンハイドレートが実用化されたら日本もついに資源国の仲間入り。期待しちゃうね。
二部の話も身近なトピックだけど壮大なロマンとフロンティア精神によって開拓発展したんだと思うと感慨深い。
切っても切れない人間と炭素の関係。面白く学ばせてもらえた。

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2014年02月23日

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世界史と有機化合物とを見事に繋ぎ合わせた傑作。過去に起こった様々な戦争が、実はたった一種類の有機化合物を巡っての争いであることも少なからず。このような観点で、化学の歴史も学べるなんて、まさに目から鱗。

もしこの現代になってアルコールが発見されたら、恐らくアルコールの摂取そのものが認可されないだろうというのは、確かにその通りと納得。

あとがきに書いてあるが、化学物質と聞くと世間一般には危険、汚染、悪者といったネガティブなイメージしか湧かないかもしれない。しかし、この世の人々の生活は全て化学物質・化学反応の進化の上に成り立ってるんだという著者の熱い思いには、同じ化学者として大いに賛同いたします。

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2014年02月09日

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 やばい。これはすごく面白い。興味深い。
 炭素由来と言って簡単に思いつくのは鉛筆やダイヤモンド、せいぜい石炭だろうか。

 現代の科学においては、有機物といえば炭素化合物になるのだそうな。私の中では有機物は生命が元になっているもの、無機物はミネラルなどの鉱物系のイメージだったので驚いた。 
 つまり、石炭は言うに及ばず、ガス、石油も炭素化合物なのである。
 いやいや、それだけじゃない。でんぷん質、砂糖……我々が生きていくために、炭素は必要不可欠なのである。

 人間が狩猟民族から農耕民族に代わり、穀類の争いが始まり、産業革命がおきてからはエネルギーをめぐる戦争が起きている。
 オイルショックから温暖化問題、PM2.5など、未だに炭素からは離れられないし、楽観も出来ない。

 炭素という切り口で、幅広く化学をめぐる歴史や実学を学べる。しかも大変興味深く面白いというすごい本。文章も読みやすいのでお勧め。
 説明が分かりやすく豊富なので、化学が苦手でも小学校の理科レベルの知識があれば大丈夫です。たぶん。

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2014年01月27日

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タイトルはちょっとごついが、炭素にまつわる科学史が非常に分かりやすく書かれていた。佐藤氏は一度講演をお願いした経験があり、話がとても面白い方だったけど、文章でも話の引き出しが多く最後まで飽きなかった。オーランチオキトリウム頑張れ!

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2013年12月03日

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 炭素の歴史といえば、「火の発見/活用」による(食材の軟化で)脳の発達にはじまって
 穀物栽培≒炭水化物食により定住、人口増加…。
 大航海時代になると新世界植物、食物だけでなくタバコや酩酊草、ゴム…火薬の威力により植民地支配…/近代化学の定量分析で分子構成の一部解明…/
 1856年、リン酸肥料確保の必要からアメリカは「グアノ島法」を成立させ、グアノ=海鳥糞のある島に領有をアメリカ人誰でも宣言可とした→ウェーク島やミドウェー島領有。
 1898年、英国科学アカデミー会長就任のクルックスは「文明は窒素肥料枯渇で衰退」と宣言→空中窒素固定法開発を促した。それは成功したが、高性能火薬や毒ガスも開発され第一次世界大戦の悲惨さをもたらした。
 砂糖(分子構造を少し変えるとカロリーがなく甘みを感じる物質=人工甘味料ができるが、なぜ甘みを感じるかはわかっていない)
 香辛料、うま味成分であるグルタミン酸といった食品、
 そしてニコチン、カフェイン、尿酸、アルコール(エタノール)といった嗜好品にまつわるもの、そして
 エネルギー源としての、ニトロ、アンモニア、石油…最近実用化されたシェールガス
 「第4形態」サッカーボール状粒子=フラーレンの発見は1985年、星間物質の研究から偶然に得られた。早くも1990年にアーク放電を用いた大量合成方法が発見され、すでに活用して多くの工業製品がある。

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2024年03月01日

Posted by ブクログ

炭素が主役なので、元素や化学がメインの話かと思いきや、どちらかと言うと、文化史。勿論、炭素を切り口として、人類がどのように社会を発展させてきたのかという内容で分かりやすく面白い。

スタートから説明が易しい。素人向きだ。

元素と元素が互いに結びつき、化合物と言うものを作る。紙ならばセルロース、食肉ならばアクチンとミオシン、衣服ならばナイロンやポリエステルといったように、身の回りのものは全てこの化合物の集まり。

中でも木材や皮膚、絹糸などの物質は有機化合物と呼ばれる。有機とは生命力が生み出したと言う意味。現在では有機化合物と言う言葉は、炭素を基本とした化合物と言う意味合いで用いられている。そう、ここから炭素だ。

砂糖の構造を一部変換することによってノンカロリーの甘味料にすることができる。また砂糖を酢酸と化合させれば苦い味、硫酸と化合させれば胃粘膜を守る医薬、硝酸と化合させれば爆薬に。

ブドウ糖=グルコースの分子が長くつながったのがデンプン。ホモエレクトスが初めて火を使い、加熱することで芋をふかし、米を炊いた。デンプンの鎖が緩んでいるので消化分解を受けやすく、摂取カロリーも増えた。同じ時期に人間の脳の容積が急拡大。そのかわり人間は粘化されていないデンプンを消化する能力を失った。多くの猿はどんぐりを生で食べられるが、人間だと腹を壊してしまう。デンプンの加熱調理を覚えたことが、人間にとって非常に大きなターニングポイントだった。

天然から発見されたもの、人工的に造り出されたものを合わせて化合物は7千万以上あるが、この内炭素を含むものは8割を占める。

ややそれるが、スケール大きく、興味深い話。
狩猟時代には1日3時間働けば必要な食料が確保できていたが、農耕開始後、労働時間はさらに長くなり、現在では8時間、10時間と延びている。
事情に迫られてやむなく農耕を開始したと考えるのが自然であり、おそらく急激な気温の低下により、多くの動物が絶滅したためというのが理由として想像される。

手軽にカロリー摂取できていた状態が、エゴにより、自らの食料を確保するための競争をせざるを得なくなり、労働時間や難易度が際限なく増していく。自然すらも所有して権利主張されれば、最早社会に組み込まれないものは、ただ一人では生きてさえいけない。飼い慣らされたのは、植物や動物ではなく、人間なのかも知れない。

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2023年10月24日

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ネタバレ

面白かった。高校の時に習ったハーバー・ボッシュ法にそんな背景があっただなんて知らなかった。さらにこのハーバーがナチスの毒ガス開発に一役買っていたなんてことも知らなかった。
知らなかったことを学ぶことができるのはとてもいいことだ。楽しいな。

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2022年05月24日

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地表における元素存在比0.08%の炭素が成り立たせる生命の世界。
我々の生活を支え、文明・文化のあり方に深く影響を与える物質を化学的視点から考察。

◯炭素が本領を発揮するのは、「化合物を作る」段階だ。今までに天然から発見された、あるいは化学者たちが人工的に作り出した化合物は7千万以上にも及ぶが、これのうち炭素を含むものはそのほぼ8割を占める。

・エネルギー源のグルコース、貯蔵形態としてのデンプン

・様々な化学構造で甘味を感じる不思議

・肉食、保存用途があった頃の香辛料の重要性。農業発達・冷凍技術で嗜好品化。唐辛子のカプサイシンは16世紀にアジアにもたらされて食文化を形成。発酵文化、新鮮な魚、穀物がある日本にはあまり浸透せず。

◯ニコチン、カフェイン、尿酸(プリン体)、エタノールの精神への影響、産業としての側面、文化の構成

◯エネルギー
・ニトロ:硝酸、衝撃に反応、珪藻土に吸収させてダイナマイトを発明

・アンモニア:本書で取り上げる唯一の無機化合物
生物の生育に必須元素、窒素固定は自然界では稲妻とマメ科根粒細菌のニトロゲナーゼのみ、採掘の限界、ハーバー・ボッシュ法による人工窒素固定、エネルギー大量消費の課題、毒ガスへの応用
・リン鉱石の採掘限界、2060年頃

・石油:現代のエネルギーの根幹。無機起源説等、未だわからない物質

・カーボンナノチューブ、人工光合成、オーランチオキトリウム等の新技術による新たな炭素循環

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2022年03月21日

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炭素という元素を、人類史に関係する化合物を出して性質を説明。
炭素化合物についてとても勉強になった。知らないことが多く、興味深い話ばかり。二酸化炭素削減など言う前にこのくらいの知識は必要だと痛感した。

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2022年01月12日

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人生で赤点を取った最初で最後(だと思う)の科目。何でも計算や記号で片付ける。授業中は意味不明すぎて、ずっとしかめっ面。
私にとって化学は相容れないどころか目の敵でしかなかった。
あれから10年。本書を手にとったのは、克服やないけど生活の中の「化学」くらいは知っときたかったから。

ポピュラーサイエンスと書かれているだけあってまぁまぁ読み易かった。数ある元素の中でも炭素ってどんな元素にも結びつけて化学式もごまんとあるらしい。ここではそんなオールマイティな炭素にちなんだ身近な物質(砂糖・ニコチン・エタノール等)の誕生を世界史と織り交ぜて紹介しており、文系人間(私の場合文系に逃げました人間)が読んでも大方理解できる。(化学式は相変わらず理解に苦しんだが…)

あれだけ毛嫌いしていた化学を書いた本なのに炭素がどんな風に結びついているのか、気がつくと凝視している。世界史も理系的観点から見直せる。意外な収穫が多かった。

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2015年09月08日

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地球の地表面(海水、気圏も含んで)における元素の重量比において、炭素の占める割合はわずかに0.88%だという。
クラーク数上位は、酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄と続くが、炭素は14位。
そんな炭素は生命にとってなくてはならない元素であり、ありとあらゆる化合物を生成して、役に立ったり立たなかったりしていることがわかる本である。

例えば、

芳香族化合物はなにやらいい香りがしそうだが、糞便臭の元であるスカトールもこの一種。

プリン体はDNAを構成するアデニンとグアニンに含まれている。

尿酸の存在下では神経細胞が死ににくい。

などなど

食物しかり、ニコチンやカフェイン、アルコールなんかもそうだし、エネルギーの源であったり、そのような炭素化合物を巡る化学的なそして歴史的なお話。

ところで、著者の名前をみてびっくり。『ふしぎな国道 (講談社現代新書)』も同一人物によるものだったとは。

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2015年09月14日

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化学物質が歴史に果たした役割について、生命、心、エネルギーの分野でまとめている。

炭化水素は油のような性質になるが、酸素や窒素が加わると分子内の電荷の偏りによって水になじみやすくなる。炭素と酸素や窒素との結合は離れやすいため、反応性が高い。

香辛料の多くは、フェニルアラニンが変換されてつくられており、ベンゼン環に3炭素程度の側鎖が付いた構造をしている。

江戸時代の薩摩藩は、奄美や琉球で生産された砂糖を大坂で販売し、その資金で蝦夷地の昆布を買い付けて大陸に売り込むことによって、巨額の利益を稼いだ。

ニコチンは、神経伝達物質のアセチルコリンと同様の作用を演じるため、神経の働きを活性化させるが、ニコチンを摂り続けているとアセチルコリンの生産力が落ちてしまう。

DNAの4つの核酸塩基のうちのアデニンとグアニン、エネルギーを運搬するATPやサイクリックAMPはプリン骨格を持つ。

ラムはサトウキビを搾りとった後の廃液(糖蜜)を発酵・蒸留したもの。カリブ海で奴隷を下した船に糖蜜を積んでニューイングランドへ運び、そこでラム酒を積んでアフリカへ戻るという三角貿易の一角を支えた。麦芽の発酵液を蒸留して樽に貯蔵し、木材の成分が溶けだしたものがウイスキー。トウモロコシを用いたものがバーボン。

宋代に発明された爆薬の原料のひとつである硫黄は、火山国日本からの輸入に頼っていた。もうひとつの原料である硝石は、尿糞が酸化された硝酸イオンから得ていた。イギリスがインドを植民地化したのは、ガンジス川で硝石鉱床が見つかったことが大きな理由だった。

リン鉱石は2060年頃に枯渇するおそれがある。

石油成分のうち、炭素がひとつだけのメタンは都市ガス、炭素数3〜4の成分はLPG、5〜10の成分はガソリン、11〜15の成分は灯油、15〜20の成分は経由、さらに大きなものは重油として利用される。シェールガスの主成分はメタンなので、発熱量当たりのCO2排出量は石油より少ない。

炭素繊維の重さは鉄の4分の1だが、重量当たりの強さは10倍以上。カーボンナノチューブはさらに強く、シリコンよりも低電力で高速な電導体にもなる。

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2018年10月31日

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傑作である「スパイス、爆薬、医薬品」にひけを取らない良書。海外経験のない日本人研究者がこれほど読みやすい文章を書け、俯瞰的視点が持てるとは驚き。
・イギリスは阿片の自国流通は厳しく規制
・狩猟時代の1日の労働時間は3時間程度
・人体が甘味を感じる仕組みは謎。各種甘味料の構造式に共通点無し
・将棋の「桂」はシナモン「香」はナツメグ、クローブ
・タバコ擁護論者は他では論理的だが、好きなものに対するバイアスが多大にかかっていて、ニコチンに操られているかのよう
・400リットルのウィスキーには樽由来成分が2kg近い
・チンパンジーに貨幣経済を教えると売春、強盗が発生する
・石油の由来について、無機起源説の説得力が増してきている

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2014年08月21日

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化学の知識無しでOKな楽しい読み物。作者の意図の通り化学への関心をそそり、かつ人の業を感じるような内容もちらほら。勉強になるわけではないけど良い読書体験が出来る

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2014年03月10日

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食べ物にしても、着るものにしても、住むところにしても、そして僕らの体も、あらゆるところに炭素化合物がある。炭素なくして文明は発生しなかったし成立もしない。本書は、炭素からなるいくつかの物質が、それぞれどのように人類史に関わってきたかを説く。この手の話は好きなのだ。人類最大の友・エタノールだとか、世界を制した合法ドラッグニコチンとか。僕は喫煙習慣がないが、これを読んだらタバコを吸ったほうがいいかもな、などと思った(本書は断じて喫煙を勧めてはいないが)。しかし、章ごとが物質で区切られていて、文明を築いていく俯瞰という風にはなっていないのが残念。とはいえ、物質毎の人類へのコミットぶりは愉快でもあり悲しくもあり。
終章では炭素のこれからを語っていて、これが恐らく著者の本領なのだろう。ここまで辿り着いたなら、誰だってこれまでもこれからも炭素がいかに重要かはわかる。21世紀は炭素争奪戦にならざるを得ないだろう。これからの道を切り拓くのは炭素をマネジメントする技術に他ならない、と。

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2014年02月25日

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面白かった。
地球上にほんの僅かしかない炭素が、むっちゃ影響力持ってることが良く判る。
炭素化合物が人に取ってどの位大切なのかはまあ普通として、それぞれの化合物が、歴史を動かして来た視点が良いのだ。
ただ、難点はタイトルで、読めばなるほどかもしれんが、タイトルから内容の面白さが想像し辛く、もうちょっと売れるタイトルにしてあげたら良かったのに。

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2014年01月11日

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宇宙はもちろん,地表・地殻を見てもごく僅かしかない炭素。にもかかわらず,この元素は驚くほど多様な化合物を構成する主役であり,生命に欠かせない。食糧,薬物,エネルギーの三部構成で綴る有機化学と人類の歴史。
化学がテーマではあるけれど,歴史的雑学的知識が豊富に紹介されてて(むしろそっちがメイン),亀の子苦手でも全然大丈夫。

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2013年12月25日

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生命・文明のキープレイヤーである「炭素化合物」という視点からみる歴史・人類史。本著の主要参考文献達からエピソードを拾い上げたような内容だが、サイエンスライターの著作だけあり、程よく知的好奇心をくすぐる範囲でまとまっており、スラスラと読める。炭素が歴史上いかに決定的な役割を演じ、これからも重要な役割を担っていくかがよくわかる。人口増による消費エネルギーの増加とその弊害に対応する重要かつ欠かせないファクターが化学の進歩であると改めて実感。炭素化合物の保持や技術が今までもこれからも争いを生み、勝敗を決していく。

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2013年12月16日

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文系を学んでいた身としてはよく分からないこと含めて新鮮な内容。

教科書ででてくる発明や争いなどの出来事には、分かりやすい人やモノがクローズアップされるが、そこには小さななにかが確実に影響していて、実はそっちのほうが重要だったりする。今回でいう炭素のように。

自分がものごとやひとを見る時も、炭素のような存在を見落とさないようにしたい。これあまり本の内容と関係ない(笑)

著者が強調していた、なんだかとっつきにくい化学を身近に。は、読んで感じられたので、化学のことを知らない人にこそおすすめかも

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2018年11月13日

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題名からは意外な流れで有機物(炭素化合物)が歴史に果たした役割を開設している。参考文献の最初に出てくるのが「銃・病原菌・鉄」で2番目が「スパイス・爆薬・医薬品」で似たような雰囲気ではある。他にも参考文献には読んだ本がいろいろ入ってたが帯の「今年度No1のサイエンス本の呼び声!」と言うのはちょっと言い過ぎだろう。化学式はちょっと出てくるがあまり専門的ではない。

序章のアヘン戦争にはじまり、デンプン、砂糖、芳香族化合物(香辛料)、グルタミン酸という食品のグループ、次にニコチン、カフェイン、尿酸(これだけちょっと毛色が違う)、エタノールと言うドラッグ、嗜好品、そしてニトロ、アンモニア(炭素ではないが肥料とニトロの原料)、石油というエネルギー関係そして最後にフラーレンやカーボンナノチューブ、そして人工光合成と炭素の未来の物質までつづく。「スパイス・爆薬・医薬品」が少しづつ関連する物質を紹介していたのに比べると並びは普通。

せっかくなのでなぜか混ざっていた尿酸について。
プリン体はもはや悪者扱いだが実はDNAをつくる構成成分のうち2つはプリン体骨格を持つ。青酸(HCN)とアンモニアという比較的単純な物質を混ぜて加熱すると高確率でできるアデニンに糖とリン酸が結合したのがDNAの構成単位でありアデノシン3リン酸(ATP)は糖の代謝経路にも使われる。このプリン体が酸化して出来たのが尿酸で水に溶けにくく、体内で結晶化すると痛風の原因になる。なんと最古の痛風患者は人ではなくティラノサウルスだそうだ。

歴史上の痛風患者にはアレキサンダー大王、フビライ・ハーン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ニュートン、ダーウィン・・・と錚々たる天才が並ぶ。20世紀に入り知能指数が高い人を調べてみると痛風患者が通常の2〜3倍もいることがわかり、「天才物質」という説が出てきたそうだ。う〜む、因果関係が逆で収入が高くていいもの食ってるだけじゃないのか?と思うのだが。ビールを飲みながらの小ネタとしてはなかなか使えそうではある。

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2014年11月16日

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