【感想・ネタバレ】ジャガイモの世界史 歴史を動かした「貧者のパン」のレビュー

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Posted by ブクログ

2022/6/19
アンデス地方、高山気候の都市を中心に盛んに栽培されているじゃがいもは、今や世界の至る所で食べられていて、人々の食卓には欠かせないものとなっている。
もちろん日本も例外ではなく、現在でもじゃがいもで作られた食べ物や、料理の際にじゃがいもが必要になるものは数多存在する。
そんなじゃがいもに焦点を当てて、じゃがいもという切り口から世界の歴史を見ていった本である。じゃがいもの広がりと、その国で起きた出来事は実は深く結びついていてじゃがいもの存在が多くの人々を窮地から救ってきたことがこの本を読むととてもよくわかります。
また、植物学の観点からのじゃがいもの利点、アンデス地方からどのようにして世界へ広がっていったのか、日本ではじゃがいもはどのようにして広がっていったのかなど今まで当たり前に食べていたじゃがいもについてこれほど深く考察してある本は本当に珍しいのではないかと思います。
じゃがいもの普及も人々の歴史と切っても切り離すことはできず、とても深いつながりになっていることや、世界の征服の歴史の背景に食の歴史としてのじゃがいもがあり、とても読み応えがある本だと思いました。

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2022年06月23日

Posted by ブクログ

歴史を動かしたというより、歴史の脇役じゃがいも、といった内容です。
脇役がいなければ物語は成り立たない。個々で覚えてもらえることはなくても重要といったやくどころ。
じゃがいもは米に次ぐ第二位のエネルギー量をもつ作物として人々の食卓にのっかってきました。
今ではエステでもスポーツジムでもライ●ップでも、最大の敵としてまっさきに挙げられる高い栄養価を誇ります。
簡単に作ることができてたくさん収穫できるこれは家庭菜園でも大人気、その代り病気に弱いことが知られず、失敗した人が種苗会社やホムセンにクレームするというそれくらい作り易い認識があります。
考えるとこれもアイルランドの飢饉と原因は同じです。
じゃがいもの伝搬により人口が増えたアイルランドはじゃがいも疫病の流行により、人口を著しく減らしてしまったことは有名な話で当然この本にも出てきます。
他にも満州に渡った日本人やシベリア抑留、公害により北海道に移住しなくてはならなかった人々を支えた作物として登場します。
このあたりは少々強引な気もしますが、川田龍吉のマッサンばりのスコットランドの娘さんとの恋物語のエピソードと男爵イモ導入を絡めて見たりと、面白いエピソードがたくさん。
読みやすい。

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2015年03月11日

Posted by ブクログ

書名通り、「ジャガイモ」の歴史。
貴重な栄養源。ジャガイモ。
いかにして昔の人たちが苦心して、育ててきたのかがわかります。

最後の章には、今後の食糧問題についても触れています。
「ジャガイモが重要視される時代は、それは悲惨な時代だということです」。
印象的な言葉でした。

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2013年03月15日

Posted by ブクログ

じゃがいもの偉さがよく分かった。スペイン人がインカ帝国から持ち帰ったチューニョ(乾燥いも)がpatataとしてヨーロッパ史に参入し、痩せた土地でも育つため戦争や飢饉時、産業革命下では貧者のパンとして活躍した500年ちかい歴史を追っている。今目にするものより一層不細工で、普及当初は豚の餌に供されていたこの野菜に対する根強い偏見から、人々がじゃがいもを食べ、栽培するようになるまでには工夫が必要となることが往々にしてあったらしい。プロイセンのフリードリヒ2世は「じゃがいも令」を強権発動してじゃがいもの植え付けを義務付け、兵糧を確実にして強力な軍隊をつくった。フランスではプロイセンとは対照的に、農学者のパルマンティエはわざとこっそり隠れるようにしてじゃがいもを栽培し、農民たちに覗き見をさせ、興味を誘ってじゃがいも栽培に誘導し、洒落たじゃがいも料理を工夫したり、じゃがいもの花を宮廷ファッションとして流行させるといった努力をした。ロシアでは農民たちが宗教的、文化的偏見による頑迷さからじゃがいもを育て、食べることを拒み、じゃがいもの作付け強制に反対する農民の武装闘争すら起こったため、説得によるじゃがいも栽培促進に政策を変更してその後は現在にいたるまでロシア人には欠かせない食料となっている。デカブリストの乱でシベリア流刑になった青年貴族たちが当地でじゃがいも栽培をはじめ、時代が下ってシベリアのラーゲリに抑留された日本人捕虜が飢えをしのいだのもじゃがいもであった。一方、「じゃがいも疫病」と、単作のため代替作物が無かったことがアイルランド大飢饉の原因となり、日本ではオランダ船がジャワから長崎に伝えたじゃがいもは、飢饉時や労働者などのお助け芋となったが、青年将校を5.15事件に駆り立てるきっかけのひとつともなった東北の飢饉は、じゃがいもが当地ではマイナーな存在であったため救うことができなかった。満蒙開拓団もじゃがいも栽培に力を入れて引き揚げ時、食料が欠乏していた時に地中に埋めていたじゃがいもに助けられたという。朝鮮については本書では書かれていないけれど、『朝鮮食料品史』(朴容九)によるとじゃがいも(北甘藷)は1824年ごろ「北方から豆満江を越えて入って来た」(五洲衍文長箋散稿)。甘藷が対馬経由で日本から先に入って来ていたが、じゃがいもの方が栽培方法が容易で寒冷地でもよく出来たため穀類が希少な地域では主食の役割をするまでなったという。しかし植民地朝鮮では総督府はじゃがいもではなく、サツマイモを主食を補う野菜として生産奨励し(サツマイモの方がじゃがいもよりも日本人の口に合ったからとされているが)、39年から「甘藷増産計画」5年計画で投資をして朝鮮北部のハムギョン道以外の地方で薩摩芋畑を増やし、増産率もじゃがいもより高かった。ただし別の資料によると併合から解放までの間に、だいたい155%から236%程度の間でじゃがいもも増産している。著者は足尾鉱毒事件を調べる中で鉱毒被害民がじゃがいもを栽培して命をつないでいたというところからじゃがいもが只者ではないと気に留めたと言い、広範な地域、時代をカバーしながらも要領をえていてうまくまとまった面白い本だった。

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2009年10月07日

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最強の食料であるジャガイモが、「貧者のパン」として定着する各国史。

スーパーで安い方の部類に入る食材ごときが!と思い読み初めましたが、見事に世界史になっている事に、驚愕でした。
この著者が、新聞記者経験があるようで、学者作品と異なり、異次元の読みやすさにダマされた?笑。

食糧難の記録と食物自給率の記録を読んで、重要性が、本当に解った。資源のない貿易依存の日本では、必読書だと思います。
新書の名作入り決定!と思うぐらい刺激的な作品。ジャガイモばりにコスパがイイ作品。

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2016年09月27日

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普段食べている物を軸にして歴史を読み解くのはとても面白い。
人類の歴史を語るにおいて食べ物が果たす役割は重きを占めているが、特に歴史の立役者としてジャガイモが果たす役割は想像以上だった。
かつて世界を飢餓から、現代の低カロリー食材として、そして未来の食糧難を支えるかもしれない期待。
ジャガイモに足を向けて寝ることは許されない。

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2015年10月26日

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貧者のパンとは言い得て妙。インカで生まれ、スウェーデンで主食となり、バイエルンで争われ、北海道で開拓を支え、アイルランドで飢饉を起こし、世界を巡るじゃがいも。痩せた寒冷地でこそ育つという類稀な特徴が、いかに世界の飢餓を救い、また時として飢饉の原因となったのか。詳細な歴史と数字の解説ではなく、各地のエピソード集であるが、出典が多くそれぞれの逸話を楽しめる。個人的に気になったのは、ジャガイモの普及は民による自発的なものではなく、権力者によってなされてきたということ。英国はジャガイモ栽培に助成金を出し、北海道では県令自ら種芋と農具を持って農家を回り、プロイセンでは大王が勅令を出し、ロシアでは政府に国有農場で強制的に作らせられる。中世の民衆が保守的だからか、そもそも食物の普及とはそういうものなのだろうか。この辺り、今後の課題として調査したい。

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2018年10月20日

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ジャガイモの原産地はペルーのチチカカ湖周辺で、周辺には多様な遺伝資源が残っている。カラフルなジャガイモを紹介する口絵写真を眺めるだけでもわくわくする。
期待に胸を膨らませて読み進めると、その期待を裏切らない面白さ。世界史を陰から動かしていたのはまさにジャガイモなのであった。
話はいきなり足尾鉱毒事件から始まる。日本の近代化の負の側面であるこの事件の周辺でもジャガイモは「貧者のパン」として活躍していた。第二次大戦後のドイツや、ソ連邦の崩壊など、現代史を彩るさまざまな舞台でもジャガイモはしっかりその役割を果たしていた。
すごい食べ物、ジャガイモ!この本を読んだ人は、すべからくジャガイモを見直すだろう。一人でも多くの人にこの作物の運命の不思議さを感じて欲しい。

ところで、本書にたびたび出てくるけれど、ジャガイモは病害に弱い。19世紀にはアイルランドで大病害が発生し、ジャガイモが十分に育たなかったため、大飢饉になった。
そのようなことにならないよう、たねいも(原原種)は無病で管理・増殖する必要があり、国の機関である種苗管理センターが増殖を担っている。
財政状況が厳しい中、このような機関に対する助成も厳しく見直されていると思う。しかし、「貧者のパン」であるジャガイモは、私たちの生活の基礎である食料安全保障の最後のセーフティネットなのだから、しっかり守らないといけないことを改めて感じた。

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2012年05月27日

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 十六世紀,インカ帝国を滅ぼしたスペインによって,南米のアンデスからジャガイモが欧州にもたらされた。これが,世界史にジャガイモが登場した瞬間である。耐候性がよく,栄養価も申し分ないこの食糧は,同世紀末には地球を半周して日本にもつたわる。貧者のパンとして世界中の人々の生活に大きな役割を演じるこの作物,ジャガイモがかかわった歴史的事件は多い。
 当初ジャガイモに接した欧州の人々は,地下にできる植物など口に入れたことがなかった。聖書に記述のないような食い物はとんでもない,ということで,ジャガイモは「悪魔の林檎」と呼ばれ恐れられる。しかし,命をつなぐのに食はかかせない。いつまでもそんなことはいっていられず,ジャガイモは貧しい人々の間に次第に拡がっていく。普及に弾みをつけたのが,十七世紀前半の三十年戦争。宗教戦争から始まったドロ沼のこの戦争でドイツ全土が蹂躙され,食糧難により人口は激減。人々はジャガイモで糊口をしのぐ。
 ジャガイモが普及していくと,それまで人口が抑えられていた地域の人口は増え,作物の生育が難しかった無人の地域にまで人が住めるようになっていく。十八世紀,欧州諸国を巻き込んだ七年戦争では,スウェーデン軍はプロイセンに攻め込んだもののなすことなく引き揚げる。が,兵士はジャガイモを持ち帰った。そのため,スウェーデンではこの戦争をジャガイモ戦争とも呼ぶそうだ。はかばかしい戦果はなく,妙な作物だけがもたらされたと思ったら,はからずもそれこそ空前の大戦果であったというわけだ。
 ジャガイモ革命と呼ぶべき事件も十九世紀ロシアで勃発する。1825年のデカブリストの乱である。貴族出身の若手将校たちが圧政に苦しむ民衆を救うべく革命に立ち上がるが,準備不足もあってすみやかに鎮圧される。この事件,後のロシア革命の思想的支えの一つとなったことはよく知られているが,実はジャガイモの普及にも一役買っている。シベリア送りとなった叛乱者たちは,シベリアの地にジャガイモをもたらしたのだ。
 十九世紀中盤には,アイルランドで悲惨なジャガイモ饑饉もおこる。八百年にわたりイギリスの苛斂誅求に喘いでいたアイルランドの人々。そのころ彼らはイギリスのために小麦をつくり,ジャガイモを主食としていた。そのジャガイモが病気で大打撃をこうむる。餓死者はおびただしく,アメリカへ移民する人々も百万を超えた。後にカトリック初の米大統領となるケネディは,このときのアイルランド移民の子孫である。
 ジャガイモと日本史の関係も紹介しているが,こちらは少しインパクトに乏しい。北海道開拓や東北の饑饉で人々の命をつないだこと,敗戦前後の食糧難とシベリア抑留のことぐらい。やはり(特に昔の)日本人は米を食うもので,ジャガイモはあくまで代用食だった。世界には一人あたりのジャガイモ消費量が年間百五十キロという国もあるそうだが,日本は今でも二十キロ程度に過ぎない。食文化の違いというのはとても大きい。
 食文化といえば,ここ数十年,主要穀物をはじめ様々な食糧が地球上を移動し,先進国をはじめ食の内容も水平化しつつある。いまや中国さえ沿海部では食生活が欧米化しているという。しかし,土地の気候に応じた食というのが本来の姿であろう。その意味で,ジャガイモが世界各地で栽培され定着していったことにくらべ,国を超えて大量の食糧が出入りする現状は不自然な感じがする。このような人間の営みが,今後何十年も続くのかどうか大いに疑問である。

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2011年10月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
南米生まれのジャガイモは、インカ帝国滅亡のころ、スペインに渡った。
その後、フランスやドイツの啓蒙君主たちも普及につとめ、わずか五百年の間に全世界に広がった。
赤道直下から北極圏まで、これほど各地で栽培されている食物もない。
痩せた土地でも育ち、栄養価の高いジャガイモは「貧者のパン」として歴史の転機で大きな役割を演じた。
アイルランドの大飢饉、北海道開拓、ソ連崩壊まで、ジャガイモと人々をめぐるドラマ。

[ 目次 ]
第1章 オホーツク海のジャガイモ
第2章 ティティカカ湖のほとりで-ジャガイモ発祥の地
第3章 ペルー発旧大陸行き-そしてジャガイモは広がった
第4章 地獄を見た島-アイルランド
第5章 絶対王制とジャガイモ
第6章 産業革命と「貧者のパン」
第7章 現代史のなかのジャガイモ、暮らしのなかのジャガイモ
第8章 日本におけるジャガイモ
終章 「お助け芋」、ふたたび?

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月01日

Posted by ブクログ

1、2年くらい前に読みました。まさかジャガイモだけで本が一冊できるとは。内容はうろ覚えですけど、豆知識はいろいろ知れました。

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2011年01月26日

Posted by ブクログ

個人的に思わぬ収穫があったり行ったことのある場所が出てきたりして興味深く読めました。フランスでのジャガイモの広め方が上手いなあーと感心。
農業は大事ですね。

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2010年02月04日

Posted by ブクログ

タイトルはジャガイモの世界史となっているけれども、ジャガイモの世界史と日本史、みたいな感じだった。取り上げ方のスケール感がかなり違うので。

あまり全体を貫く凄い知見みたいなのは無くてエッセー集のような感じではあるけれども、個々の話は文句なく興味深い。

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2009年11月03日

Posted by ブクログ

貧者のパンと呼ばれる、ジャガイモ。
アンデス原産の穀物は、スペイン人の侵略の結果ヨーロッパにもたらされ、その栄養価と栽培の容易さから、ぶっちゃけ、人類の維持拡大に多大なる貢献をしてきたわけだ。

4大穀物、米、麦、トウモロコシと、ジャガイモ。
特に寒冷地においては、ジャガイモなくして、生活の維持はできなかった。

そんなジャガイモにまつわる、人類史のピックアップ。

なのだが、期待外れだったな。どれも散発的で、だから?という感想。

ほぼ唯一刺さったのが、足尾銅山鉱毒事件。あれ、歴史では習って社会問題化したって知ってたけど、その結果何が起きていたか気にもしてなかった。
解決としては、村民を北海道の開拓地へ送り込むって荒業やったんだ。全員ではないけど。
そこにジャガイモなくしては、生き延びることもできなかったろうって話。

個人的にはサツマイモの方が好き。

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2024年05月17日

Posted by ブクログ

じゃがいも日本含めた世界中のさまざまな事件にからんでおり、活躍していることがわかる。逆にいうとジャガイモを通して世界の有名な出来事に触れられるため、世界史というものに少し興味がわいた。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

独特なタイトル通り面白かった。
ジャガイモを食べるときに感謝の気持ちを忘れないようにしようと思います。

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2021年11月08日

Posted by ブクログ

「○○の歴史」を読むのは趣味みたいなものだが、歴史の大きな流れと○○が交錯するのが楽しい。

交易だけでなく、侵略行為や戦争によって酒や食べ物が別のエリアに渡ったり、○○の普及に歴史上の偉人がかかわっていたりする。

教科書上の史実や人物が急に生き生きと動き出すから不思議なものだ。

本書は、サブタイトルに「貧者のパン」とあるとおり、困窮史とジャガイモ史を重ね合わせた一冊。

清水安三(桜美林学園の創立者)とか川田龍吉(男爵イモの由来にして実業家)、志方之善(初の女医・荻野吟子の夫)なんかは、別途調べてみたくなった。それにしても大原孫三郎(クラレほか多数の企業にかかわり、社会貢献事業が半端ない)はいろんなところに出てくるなあ。すごい。

ま、本書は本書でアリなんだけど、品種(改良)とか料理とか、別のアプローチからの歴史も読んでみたくなった。

世界的に定着し、さまざまな食べられ方をしているのは、「飢えをしのげる作物だった」だけじゃないはずだろうから。

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2021年03月29日

Posted by ブクログ

世界史?というより世界におけるジャガイモのエピソード。多くは飢饉を助ける貧者の食べ物であった。日本におけるジャガイモの物語も詳しい。

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2014年11月26日

Posted by ブクログ

ジャガイモの世界への普及状況が描写されています。
新書だから仕方ないけど、章ごとのつながりがなく、
ややとりとめのない内容になってしまっていますね。

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2014年09月08日

Posted by ブクログ

 本書は、ジャガイモがいつどのようにして世界に広がったのかの考察書である。内容は学術的考察が多いようにも思えたが、知識としては興味深い。
 本書によると、ジャガイモの原産地は南米ペルー・ティティカカ湖のほとりで、標高4000mの寒冷の地。人間の手による栽培化がはじまったのは、思ったよりも遅く西暦500年ごろだという。
 それが、16世紀にインカ帝国を滅ぼしたスペイン人によってヨーロッパにもたらされ、日本には16世紀の末にオランダ船員によって運ばれたという。日本にきたのが、江戸中期とは、思ったよりも新しい作物なのだと思えた。
 興味を引いたのは、ジャガイモは、寒冷地でも栽培が可能という点による「救荒作物」としての役割である。どの国でも「飢饉」は常態であった当時に「貧者のパン」として活躍した本書の歴史経過は、興味深いと思えた。
 ジャガイモ歴史は、単に作物の歴史にとどまらず、飢饉による政治変動や移民などの社会変動につながることが本書で明らかにされている。これは「人類の歴史」が同時に「食べることとの戦いの歴史」であったということだろう。
 本書によると、日本において三食とも米を食べられるようになったのは1955年(昭和30年)以降だったという。現在では想像もつかないことであるが、それまでは満足に食べることができなかったというのだ。歴史を考える上で、この視点は絶対に必要なものだとも思えた。
 ただ、本書はジャガイモをとおして世界史の一面を考察しているが、扱う領域が多すぎるようにも思え、駆け足の考察のようにも感じた。しかし、世界史におけるジャガイモの重要性は十分にわかる本である。

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2012年06月12日

Posted by ブクログ

ジャガイモ史はそのまま世界の歴史となる。といった具合に日本や世界の重要な事件にジャガイモがどう関わっていたかを説明している。

実際に世界中の人に話を聞いてきたようで、生の声が面白い。

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2010年12月06日

Posted by ブクログ

ペルーの高原地帯にその源を発っしたジャガイモが、アイルランドを襲った大飢饉、ドイツ(プロイセン)、フランス、ロシアの王政、産業革命、世界対戦からロシア崩壊を経て現在に至るまでを俯瞰する。必ずしも通史として形を成すものではないが、「ジャガイモ」という視点から世界史、日本史を様々なエピソードを交えつつ紹介するというのは、面白い試みだ。通常の通史を縦糸とするならば、この本はその中で様々な模様を織り描く横糸の一本と言えるだろう。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

「ジャガイモの世界史」というタイトルですが、中身はジャガイモに関する歴史エッセイで、半分くらいは日本に関することとなっています。南米のチチカカ湖付近を原産とするジャガイモは、土壌が悪くても収穫でき、栄養も豊富でまさに「貧者のパン」として救荒作物として世界を巡ります。ジャガイモが歴史に関与した事例は、有名なアイルランドのジャガイモ飢饉だけでなく、1991年のソ連クーデタにも顔を出します。また桜美林大学もまたジャガイモとつながりがあるそうです。ただ、著者がのべている「ジャガイモが「お助け芋」として登場する時代は「異常な時代」」という言葉は相当に重い言葉だと思います。

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2009年10月04日

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