感情タグBEST3
Posted by ブクログ
物語の構造の分析だとか、メタファーを勘ぐるだとかっていうのをしたくない小説。
センテンスが美しい。
それぞれ”魂”が知識、経験、本能、知性でできた土壌に根付く過程は人それぞれ違うのだから、構造や、個人個人の表面的な人格が気にくわないというのは、読み方としてちょっと違うような。
Posted by ブクログ
面白かった。
ムージルの他の著作にも言えることだけれど、最初はどうにも難解に思える。だけれど、読み進めていくうちに著者の語っていること(あるいは語っていないこと)がなんとなく見えてくる。
そして決して語り得ないことを必死で語ろうとするその姿勢に打たれる。
名作です。
Posted by ブクログ
"というのも、大人になりかけの人間の最初の情熱とは、ひとりの女にたいする愛ではなく、みんなにたいする憎しみなのだから。自分が理解されていないと思うこと。そして世間を理解していないこと。そのふたつのことは、最初の情熱にくっついているものではなく、最初の情熱のたったひとつの、偶然ではない原因なのだ。"
"人間が生きる人生と、人間が感じ、予感し、遠くから見る人生とのあいだには、狭い門のように、目に見えない境界線がある。できごとのイメージが人間のなかに入っていくためには、その門で圧縮される必要がある。"
"思想が沈黙しているときに、ものごとを見ていると、ぼくのなかでなにかが生きているのだ、と。それは、ぼくのなかにある暗いものです。あらゆる思想のなかに隠れているけれども、思想では測れないものです。言葉では表現できない生ですが、ぼくの生なんです・・・この沈黙している生が、ぼくを暗い気持ちにさせ、ぼくのまわりに押し寄せてきたのです。"
寄宿生テルレスが、そこで起こる暴力や性にたいして、ものごとと魂の関係性にたいして、意味を見いだし、心の平安を持ちたいと願うが、混乱する一方。世界はデタラメだし、自分自身、清らかでありたいと同時に、暗いものに魅せられていく心から逃れられない。ものごとはものごとのままでもあるし、ものごとのままでもないし、他人は他人。ひとりひとりの人生に出来事やものごとなど、まったく予測し得ない形で突然現れては消えるもの。
心の混乱を混乱として描いた傑作。
Posted by ブクログ
バジーニへのいじめのシーンは途中で本を置けなかった。少年たちと先生たちの生きている世界は違う。お互いの会話は噛み合わないし理解できないからこそ、子供時代は残酷だったことを思い出させてくれた。「ことば」の限界は体験でわかっているのに、それでもなお「ことば」を使って説明し、わかってもらったと思う大人。この先未完の『特性のない男』に手を出そうか悩んでいる。
Posted by ブクログ
おおお混乱してんな。乱暴にいえば厨ニ病(そういえばタイトルもラノベっぽ略)。題名のとおり寄宿生テルレスが混乱する話。特に後半。ものすごい。
大人から見たら「そんなの」って鼻で笑われるようなことが、僕らにとっては世界そのものだったのです――とでも言うべきか。
♪ちょっと違うかもしれないが「Aoi(サカナクション)」が合う。気がする。疾走する思考的な。
P.S.:よくよく考えると、寄宿学校(クローズした空間)を舞台に繰り広げられるいじめいびりと同性愛……これなんてじゃぱにーーーず。
Posted by ブクログ
思春期の少年が特定の(特殊な)環境に置かれることで
内面に生じる様々な「混乱」が描かれています。
だけど、これ、帯の売り文句がいただけないなぁ。
古典の新訳なので新たな読者層を獲得したいという意図は
理解できるんだけど、
「ボーイズラブの古典」という一言に喰いつく人と同じくらい、
逆に、そのフレーズにげんなりして
購入をためらう人も多くいるのでは?
――なんて、余計な心配をしたくなってしまった。
主人公たちは半人前の分際で娼館へ女を買いに通ったりしてて、
とても同性愛者とは思えない。
精神的な愛とは別に、性的な衝動が存在し、
年頃や特殊な環境のせいで、後者が暴力的に弾ける、
ってことなんじゃないのかと。
主人公はその暴力に消極的に加担しつつ、
結局嫌気が差して去っていくのでありました。
このラストにはホッとした。
映画も観てみたくなりました。
Posted by ブクログ
2021年 16冊目
もう、無邪気に小動物をいたぶり殺す子供ではない。物の分別と残酷さへの憧れの境界線にいる少年たち。性衝動の嫌悪、憧れ。少年の心理発達を真横で鑑賞しているような気持ちになりました。
Posted by ブクログ
人とは不安に陥りやすい生き物でして、きちんととその正体と向き合えればいいのだけれど、全然違う対象に攻撃をしかけてしまいがちです。その対象になりやすいのが、思春期の若者が今何を考え、将来をどう思っているのか、ということが一つあると思います。「白と黒どっちがいいの?嫌ならグレーにすればいいわ」などと解ったつもりで立ち向かうのですが、「わかってないなあ。今は何かを選ぶなんて気分じゃないのに、なぜ解ろうとしないのかなあ」というテルレス君のぶれない感じがとても現実的で、作者の目線が素晴らしい。
Posted by ブクログ
ストーリーとしては、なんだかんだ言ってうまく逃げた奴。もっと何かあっても良かったのにって思った。
寄宿学校でのイジメ、同性愛の中で、テルレスが自分の中にある第2の生が何なのか説明したいけど言葉で表せないという。
哲学論調。
イジメを見ました。自分は傍観のみ。
でも、影ではちょっといじめてみました。
でも、それも本心じゃない。
いじめてるやつもいじめられてるやつも、なんだかイライラする。
俺、かんけーねーし。巻き込むなよ。
なんか馴染めないから退学するわー。
テルレスはどっちにもならなかった。
ただただ、自分のわからない部分を分析しようもしてた。
Posted by ブクログ
テルレスの混乱ぶりを体験させられる本。笑
自分も迷い込んでしまいそうになる。テルレスが未知のものにぶつかりわけもわからないまま自分の中の衝動に惑わされる描写は素晴らしい。正直よくわからない部分もあった。全部わかったらそれこそ自分もめちゃくちゃに混乱するんじゃなかろうか。善悪だけでは判断できない官能という魅力にぶち当たりどう折り合いをつけていくのか、ということだったのだろうか。しかし物語は終わってもこれについて解決がされているわけではない。
この時期ってすべてに説明を求めてしまう。嫌悪感も増して、孤独感も増して、魂の清さを求めるんだけども、ちがう感覚も目覚めていて…。
Posted by ブクログ
ドイツのBL。だから少々観念的、一筋縄ではいかない。本文にもあるが、「すべてのものがダブルミーニングになる」瞬間を刻々と描く。表と裏がひっくり返り、覆いを取れば内実がまた新しい覆いとなって現れる。セクシャリティに関することもそうで(ちなみにプルーストは『失われた時を求めて』でほとんどの登場人物のそれを物語の後半にひっくり返した)、テルレスがエクスタシーに達するのはそのような反転のインパクトによってである。