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Posted by ブクログ
マジックを入り口に、認知心理学における「注意」に関して解説。
入門書でありながら、注意研究の発端となったポズナーの1980年の知見から最新の動向、また注意研究の応用として高齢者の鉄道駅構内における標識認知困難事例まで紹介している。かつ、実験心理学に詳しくなくても、どうやって仮説を検証したのか、具体的な心理学実験課題についても丁寧に触れられており、認知心理学・実験心理学の魅力を科学的・学術的にも耐えうる形で読者に伝えようという著者の意欲を強く感じる良書だと思う。
Posted by ブクログ
推薦理由:
不注意で気付けなかった、注意していたのに見落とした、錯覚をしたなどという事がなぜ起こるのか。人の脳は必要な情報をどのように選択して処理しているのかという「注意」のメカニズムを、認知心理学の視点から解説した本である。人間の認知機能の複雑さがとても興味深い。
内容の紹介、感想など:
『マジックにだまされるのはなぜか』というタイトルと、表紙に描かれているシルクハットに入った可愛い白ウサギに惹かれて手に取ると、読み始めてすぐにこれはマジックの本ではないことに気付く。本書は、人間の認知機能を全般的に研究する認知心理学の本であり、特に「注意」の機能を中心に取り上げたものである。
人が「見ている」のは光の信号が脳で再構築された画像であり、しかも目に見えることを全て認識しているわけではない。視野に入っていても、そこに注意が向かなければ認識できない。どこに注意が向くかは色々な条件によって無意識に誘導されるので、本人の気付かないところで多くの錯覚が起こっている。マジシャンは、手の動き、目線、言葉、衣装の色やライトの輝きなど様々な要素を利用して巧みに観客の注意の方向を操作し、マジックを成功させているのだ。
本書では「あっち向いてホイ」がなぜ難しいのかなど、日常的な事が認知心理学の視点から説明されている。様々な実験を通して実証されてきた「注意」のメカニズムが分かりやすく解説されていて大変興味深い。本書を読んでからマジックを見ると、一層楽しめるだろう。
2011年夏号の読書案内で紹介した『錯覚の科学』も「注意力の錯覚」や「記憶の錯覚」を扱った本でとても面白い。合わせて読んでみては如何だろうか。